トラック業界は「長時間労働」と「不規則な勤務形態」がある過酷な仕事です。しかし、働き方改革によりトラック業界の労働環境が変化しつつあります。
この記事ではトラック業界の現状と働き方改革で変わる未来について解説します。トラック業界の現状と働き方改革で変化する未来が気になる方は是非、参考にしてみてください。
トラック業界の現状と課題
まずトラック業界の現状と特徴、労働環境や人手不足などの課題を明確にします。
トラック業界の現状
トラック業界は法人などから手数料収益を受け取ることで、目的地までトラックを使用して荷物を運ぶ運送サービスです。ここ数年のトラック業界においての営業収入は2016年以降、急激に増加傾向にあります。
しかし、その反面、物流の貨物1件あたりに対する量は減少傾向になっており、荷物の小口化が進んでいる状況です。
近年、インターネットショッピングが生活の中でも主流の購入方法として利用されている関係上、EC市場規模の拡大に伴い、宅配便の取扱件数は年々増加しています。新型コロナウィルスで外出自粛期間が長期化されていたこともあり、感染防止のため、宅配便を利用したショッピングサービスが普及しています。
つまり、1つ1つの宅配量や件数が多い割に「トラック運送者の人手が足りない状況」が続いている状況です。
企業側として1人でも多くのトラック運転手の人材確保に繋げたい考えを持っていますが、採用活動が中々上手くいかない状況にあります。
労働環境の問題
トラック業界は「過酷な長時間労働」や「不規則な労働規則」など労働環境の問題点が多く挙げられる職種です。
過酷な長時間労働の中でも、トラックドライバーの年間労働時間は、全産業平均と比べて大型トラック運転者で432時間（月36時間）、中小型トラック運転者で372時間（月31時間）長い傾向にあります。
長時間労働が増える理由としては、荷待ち時間が長いケースや道路が混雑すると就業時間をどうしても延長しなければいけないという原因が挙げられます。
さらに「長時間労働」の原因により、早朝や深夜に就業する可能性も考えられます。
2024年にはトラック業界の働き方を一新するため「働き方改革」が実施される予定です。そのため、トラック業界の運転手には、より効率的に稼働状況を上げる努力が今以上に必要になるでしょう。
働き方改革の導入
働き方改革の基本的な概要と、トラック業界での具体的な改革の取り組み、それが業界に与える影響を説明します。
働き方改革とは何か
トラック業界の働き方改革とは、2024年4月以降に予定される働き方改革関連法の改正のことです。トラック業界では働き方改革のことを「運送・物流業2024年問題」とも呼ばれることがあります。
トラック業界における働き方改革の具体的な取り組み
トラック業界における、働き方改革関連法の具体的な改正案は、以下3点です。
・時間外労働の上限規制
・月60時間超の労働外割増賃金率引き上げ
・勤務間インターバル制度
それぞれ詳しく解説します。
時間外労働の上限規制
時間外労働の上限規制は、年間残業時間を最大「年720時間（休日勤務を除く）以内に抑える規則」です。法定労働時間は「1日8時間・1週間40時間」までとなっていますが、「36協定」を締結すると「月45時間・年間360時間」の上限まで時間外労働が可能になります。
これまで無制限に決められていた時間外労働については「年間960時間まで」に制限される予定です。
労働条件を守れない場合には「労働基準法違反」により「6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金」が課される可能性があります。より厳しい労働環境と時間外労働に対応するスキルがトラック運転手に求められるでしょう。
月60時間超の労働外割増賃金率引き上げ
2023年2月以降、労働外割増賃金が引き上げされる予定です。
割増される賃金については、以下の通りです。
・法定労働時間（1日8時間・週40時間）を超える労働については＋25％増し
・休日労働は＋35％増し
・深夜労働（夜22時〜翌朝5時までは＋25％増し
2023年4月からは働か方改革により、中小企業としても月60時間以上の労働に対して50％以上の割増賃金を支払う必要が出てきます。
勤務間インターバル制度
2024年1月以降、終業時刻から翌日の始業時間の間を「8時間以上空ける勤務制度」が設けられます。長時間労働に対する従業員の心身への負担を軽減するために適用された新制度は、トラック運転手からすると金銭面的に不利な状況になってしまうでしょう。
働き方改革のメリットとデメリット
働き方改革のメリットとデメリットを解説します。
労働者にとってのメリット
働き方改革による労働者のメリットは「労働負担の軽減」です。2024年から開始される働き方改革は「労働者の勤務時間」や「残業規制」「継続勤務」に大きな規制と賃金の割増制度を設定しています。そのため、残業時間の減少により、仕事以外のプライベート時間を有意義に過ごせるようになるでしょう。
その反面、収入の減少により生活が苦しくなる可能性も考えられます。
企業にとってのメリットとデメリット
企業側のメリットとしては以下2点です。
・労働者の残業規制
・社員満足度の充実
企業側からすると残業時間に規制を設けることで、無駄な業務によりトラック運転手に支払う残業代をなくす効果に繋がり、利益率を重視した経営方針によりシフトチェンジできます。
また、残業がなくなることで社員1人1人のプライベートな時間が増え、結果的に「社員満足度の向上」にも繋がるでしょう。
働き方改革による企業側のデメリットとしては、現在トラック運転手として勤務するドライバーの収入不足により、退職者が増える可能性が考えられます。
トラック業界の働き方の未来
働き方改革がもたらす長期的な影響と、改革によって進化する可能性のあるトラック業界の未来像について考察します。
働き方改革の長期的な影響
働き方改革による「トラック業界の今後の長期的な影響」は、第一に労働時間が制限されることで「労働生産性の向上」が重視され、営業利益が高い経営基盤を構築できます。
具体的な施策としては、
・ETC2.0車載器を活用した高速道路の利用
・都市内共配に促進や共同配達ボックスの設置利用
・ダブル連結トラック・スワップボディによる「新しい車両技術の導入」
などが挙げられます。
労働者に支払う無駄な賃金をなくし、労働の対価として正しい給料を支払えるようになるでしょう。また、企業の長期的な運営を行うためにも「運送業者の経営改善効果」も期待できます。
未来のトラック業界の働き方
未来のトラック業界の働き方は、インターネットや自動運転技術を取り入れた労働環境に変化していく予定です。人が操作する仕事内容がなくなれば、より希少価値の高い人材が生き残る未来がすぐそこまできています。
トラック業界が抱える問題点と現状を把握し、改善もしくは対応策を考えておくことが重要です。今後、トラック業界で長く勤めていくためにも、是非理解してほしい内容です。
