トラックドライバーとして運送会社で働いている人の中には、将来独立を考えている人もいるのではないでしょうか。独立のための手続きや個人事業主のメリットと実態、ナンバー取得の問題などを解説します。
トラックドライバーとして独立する方法
トラックドライバーとして独立するために必要な手続き手順と、個人事業主、法人の違いを解説します。
独立するために必要な手続き
トラックドライバーの独立は、トラックに緑ナンバーの事業用登録を行い一般貨物自動車運送事業や特定貨物自動車運送事業の許可を得るのが一般的です。許可を得るためには必要な要件があり、事業用登録をした5台以上の貨物自動車・営業所、休憩所の確保・運行管理者、整備管理者の選任・所要資金などが必要です。
必要な手続きの手順
・申請書類の準備・作成
・管轄の運輸局を通じ申請
・運輸局での審査
・役員法令試験の受験
・許可が下りる
・12万円の登録免許税を納付
・運行管理者・整備管理者の選任届を提出
・運輸開始前確認報告書を提出
・運輸支局にて事業用自動車等連絡書を発行してもらう
・車検証を緑ナンバー事業用に書き換える
・運輸開始届を運輸支局に提出
個人事業主と法人設立の違い
運送業許可申請は個人事業主であっても法人であっても行うことができます。
個人事業主と法人で違いがあるのは、一般貨物自動車運送事業の申請書類を提出した後に受ける「役員法令試験」です。役員法令試験は、申請者がトラック運送事業を安全に行うための知識を有しているか確認するためのものです。
注意しなければならないのが、この試験の受験者は個人事業主と法人とで異なる点です。
個人事業主で申請した場合は個人事業主本人が受験するのに対し、法人で申請した場合は法人の常勤役員のうちの1人が受験者となります。法人の常勤役員が複数人居る場合はそのうちの1人が受験すればよいことになります。
個人事業主でトラックドライバーをするメリットとデメリット
個人事業主でトラックドライバーをするメリットとデメリットを解説します。
個人事業主のメリット
個人事業主でトラックドライバーをするメリットは、法人設立の費用(20万円程)が必要ないこと、法人設立のための事務手続きが必要ないことです。他にも、会計処理が法人に比べ複雑でないので税理士に依頼するコストがかかりにくい点もメリットです。
個人事業主のデメリット
個人事業主でトラックドライバーをするデメリットは以下の通りです。
法人に比べて社会的信用が低い
最近では多様な働き方が増えつつありますが、個人事業主は法人に比べて社会的信用が低いといった現実があります。返済能力が低いのではないかといった考えから銀行からの融資も受けにくくなります。
また、従業員を雇うときには個人事業主と法人では受ける印象が異なり、人が集まりにくい傾向にあります。
利益が出た場合、法人に比べ節税対策が取りにくい
所得税と法人税の違いや、経費で落とせる範囲の違いなど法人に比べて節税対策が取りにくいデメリットがあります。
法人化する場合に運送業許可の譲渡、役員法令試験の再受験が必用
個人事業主から法人にする場合には譲渡譲受認可申請や役員法令試験の再受験が必要になり、始めから法人で事業を開始した場合に比べ事務手続きが煩雑になります。
自前のトラックを持つことの意義
自前のトラックを持つ重要性やメリット、トラックの入手方法を解説します。
自前のトラックを持つ重要性
トラックを自身で持つことの一番のメリットは自身の資産になることです。
リース契約をして使用しているトラックはリース会社の所有物ですが、自身で購入したトラックであれば不要になった場合、売却して現金化することもできます。また、事業用に購入したトラックは数年にわたり減価償却で経費として計上できます。高額なトラックを数年にわたり計上することで会社の経営を安定させることができます。
また長期リースと購入を比較した場合、リース料には金利などが含まれているため購入価格を上回るタイミングがいずれ訪れることになり、リース料よりも購入価格が安価になります。
自前のトラックを手に入れる方法
個人事業主、法人設立ともにトラックドライバーとして独立するのであれば、トラックを手に入れる必要があります。
新車のトラックは購入した人のニーズに合わせて荷台の架装や細かい設備・機能をほとんどオーダーメイドのように作り上げますが、納期が長く価格が高額といったデメリットがあります。そういった理由からおすすめするのが中古トラックの購入です。
実際に独立した多くのドライバーが中古トラック専門店などから車両調達を行って事業をスタートさせています。
運送業界内の競争
運送業界での競争、競争の中で独立を成功させる戦略を解説します。
運送業界での競争
1990年の物流二法による規制緩和をきっかけに爆発的に新規参入が増え、2007年頃までは2000社を超える新規参入がありました。
近年での新規参入は年間1000社前後にとどまっていますが運送業界は過当競争状態にあります。運送業界は運送や倉庫管理により運賃や手数料をもらうといった構造であるため他社との差別化が難しく、他業種に比べてそれぞれの会社の個性が出しにくい側面があります。
荷主側にとっては、早く確実にモノを運んでくれさえすればどの運送会社も一緒といった考えになりやすく、その結果運送会社同士の値下げ合戦になってしまっている現状があります。
独立を成功させる戦略
ドライバーとして独立・企業するには高い運転技術や安全に対する意識はもちろん、仕事を受注する営業力や顧客との信頼関係を築く力が必要です。
もともと運送会社に勤めていて独立したドライバーの中には顧客との信頼関係がすでに構築されていて、受注が見込めることを予想した上で独立・企業するドライバーも多くいます。現在運送会社に勤めていて将来独立・企業を考えている人は、顧客とのつながりや信頼関係を構築しておくことをおすすめします。
また、前述した通り運送業は同業他社との差別化が難しい業種です。この人に頼めばこんなメリットがある、といった付加価値を自身に持たせることも大切な経営戦略になります。
個人事業主トラックドライバーの現実
個人事業主の実態とナンバー取得の問題と対策を解説します。
個人事業主の実態
個人事業主としてのトラックドライバーに多いケースはいわゆる「1人親方」です。1人親方とは、自身で購入したトラックを「車両持ち込み」といった形で自分1人とトラック1台で従業員を雇わず仕事を請け負う個人事業主を指します。
トラック業界の1人親方が請け負う仕事としてオーソドックスなものが建設現場で土砂を運ぶ大型ダンプです。多くの場合は業務委託といった形で請け負うことが多く、ひと月の収入は100万円を超えるケースもあります。
100万円の収入と聞くとかなり高給に感じますが、その多くは自前の大型ダンプの維持費に充てられるため手元に残る金額はそう多いものではありません。
ナンバー取得の問題とその対策
トラックドライバーが独立をする上で切っても切り離せないのが、白ナンバー・緑ナンバー問題です。
荷物を運送し依頼主から運送料金を貰う場合、貨物自動車運送事業者として緑ナンバーを取得しなければなりませんが、緑ナンバーの取得は前述した通り5台のトラックの確保を始め、さまざまな条件をクリアする必要があるためハードルが高いと言わざるを得ません。
反対に、家電量販店などが自社の商品を運送する場合は白ナンバーの自家用トラックでも問題がないため、この業務を1人親方と契約し請け負ってもらうケースが多くあります。量販店は1人親方と車両持ち込みの契約社員のような形で運送をしてもらい、運送料金相当の賃金を支払うといった形です。