ディープラーニング実装の完全ガイド。手順を基本から解説

近年発達している技術の1つにディープラーニングがあります。ディープラーニングは今後も発達が進み、私たちの生活を変えていく可能性が非常に高いです。
しかし、そもそもディープラーニングとはどのような技術であるのか、あまり知られていないのではないでしょうか。

そこで、ここではディープラーニングの基本概要や実例、具体的な実装手順について解説します。ディープラーニングの概要について知りたい方、具体的な実装手順を知りたい方は、ぜひご確認ください。

目次

ディープラーニングの基本概念

そもそも、ディープラーニングとはどのような技術なのでしょうか。もしかすると、人工知能といった大まかな認識を持っているかもしれません。ディープラーニングは複雑で分かりにくいこともありますが、ここでしっかりと基本概念を知っていきましょう。

ディープラーニングとは何か?

ディープラーニングは多層のニューラルネットワークを駆使して複雑なパターンを学習し、高度な情報処理を可能にする機械学習の手法です。この「ニューラルネットワーク」は人間の脳を模したものであり、階層的な表現を学習することで非常に複雑で抽象的な概念や特徴の抽出ができます。

とくに、下記の3つはディープラーニングが得意な分野です。
・画像認識
・自然言語処理
・音声認識
・異常検知

たとえば、画像認識の実例としては羽田空港の認証ゲートへの導入が挙げられます。
羽田空港では人の顔をディープラーニングの画像認識で判断し、パスポートと入国ゲートで撮影した顔と照合しています。この技術の優れている点は化粧や老化、表情による顔の変化もディープラーニングによって判断し、高精度な照合を実現していることです。

自然言語処理の実例としてはChatGPTが挙げられます。
ChatGPTは私たちが普段使用している言語を理解し、それに適切な返答をすることが可能です。この技術によって簡単なものであればChatGPTが代替してくれるようになりました。ただし、人間が利用している言語は非常に複雑な物であり、誤った認識や適切でない文脈などの課題点は残っています。

ディープラーニングの基本原理は入力層、中間層、出力層の3つの層から構成されています。入力層は、学習対象のデータが入力される層です。中間層は、入力層から受け取ったデータを処理する層です。出力層は、学習した結果が出力される層です。

そして、ニューロンは、入力された信号をそのまま出力するわけではありません。活性化関数によって、出力を加工します。活性化関数には、さまざまな種類があります。代表的な活性化関数は下記のとおりです。
・シグモイド関数
・ReLU関数
・tanh関数

そして、学習法の代表例である誤差逆伝播法では出力の誤差を入力層から逆算して、各層のニューロンの重みを調整します。そして、調整によって誤差が小さくなるようにしていくことで学習をしていくのです。

ディープラーニングの可能性

現在のディープラーニングは完璧とは言えません。誤作動や誤認識は必ず付いてきます。しかし、今後は精度がさらに向上していく可能性が非常に高いです。

そして、精度が向上することで現在では導入できていない分野にも適用できるようになるでしょう。たとえば、自動運転は誤認識による危険性や精度によって完全導入には至っていません。しかし、ディープラーニングの精度が上がることで問題なく利用できるようになった場合、世の中はディープラーニングによる自動運転が溢れることになるでしょう。

これら以外にもディープラーニングは社会システムの多くに利用ができるとされています。ディープラーニングは人がおこなっていたことのほとんどを代替する可能性を持っているのです。

ディープラーニング学習のステップ

ディープラーニングを自分で実装したいと思う方も多いのではないでしょうか。しかし、ディープラーニングは仕組みが複雑かつ新しい技術であるため、学習に困ることも多いかと思います。ここでは学習のステップについて解説致しますので、ぜひご確認ください。

効果的な学習リソース

効果的な学習方法としては、書籍、オンライン学習が挙げられます。また、これらに共通してディープラーニングを学習するためには下記の4つが必須です。

・プログラミング言語に対する知識
・高校レベルの数学知識
・データモデリングに対する知識
・英語の知識

とくに、4つめの英語の知識は、ディープラーニングが最新技術であることから英語文献が多いことから来ています。時間がかかっても良いので、英語は読めるようにしておくと勉強効率が上がるでしょう。

向いている書籍、オンライン学習は人それぞれ異なりますが、基本的には人気なものであると大きく外れる可能性は下がります。ただし、あくまでも初心者向けのものであるかは確認しておきましょう。

実践プロジェクトを通して学ぶ

書籍やオンライン学習で基本的な知識は学ぶことはできても、実際の実装に慣れるためには手を動かすことが必須です。基本的な知識が身に付いた後には自分なりのディープラーニングを実装してみましょう。

ディープラーニングは基本的に下記の手順で実装をしていきます。
・データの準備:目標に沿ったデータ収集
・手法の選択:目的・データに沿った手法を選択
・前処理:必要なデータを選別
・モデルのトレーニング:モデルの訓練をすることで最適化
・モデルの評価:出力の精度確認
・運用

初めての実装であればデータ収集や前処理に手間取るかもしれません。しかし、最近ではデータセットも用意している書籍・オンライン学習があるため、そのようなものを選ぶと実装も比較的手軽にできます。

ここでデータの前処理とは学習に使用するデータを整える作業です。データの前処理には以下のようなものがあります。

・欠損値(データのなかに存在しない値)の補完
・異常値(データの傾向からかけ離れた値)の除去
・データの正規化(データの範囲を一定に整える)
・特徴量(ある1つのパラメータに関するデータ)の選択

また、モデルのハイパーパラメータを調整することも重要です。ハイパーパラメータの値によって学習の精度が大きく異なるため、その学習での最適な値を探していかなければなりません。ハイパーパラメータを調整する方法には以下のようなものがあります。

・交差検証:学習データと評価データに分けて、評価データで学習モデルの精度を評価する方法
・グリッドサーチ:すべてのハイパーパラメータの値を組み合わせて学習モデルを作成して、評価データで精度を評価する方法
・ランダムサーチ:ハイパーパラメータの値をランダムに組み合わせて学習モデルを作成して、評価データで精度を評価する方法

ディープラーニング実装の手順

前述のとおり、ディープラーニングは、データ準備、手法の選択、前処理、モデルのトレーニング、モデルの評価、運用といった手順でおこないます。ここで、とくにデータ準備とモデル構築・訓練は重要な部分です。

データ準備の重要性

ディープラーニングはデータを処理して将来を予測する技術であるため、そもそも与えるデータが意味の無いものであればディープラーニングも意味がなくなります。有効なデータは目的によって異なるため、どれが良いデータかは一概には言えませんが、少なくともノイズの少ないデータであることは必要でしょう。

また、データは学習用のデータだけを与えるものだけではありません。ディープラーニングには学習用データとチューニング用のバリデーションセット、精度確認用のテストセットの3種類を用意することが必要です。最初から適切なデータを集めることは難しいので、インターネットで公開されるデータセットを基本的には利用していくことをおすすめいたします。

モデルの構築と訓練の方法

実装にはモデル構築が必須ですが、モデル構築は1つの答えがあるわけではありません。モデル構築に関しては自分の目的に合わせて試行錯誤することが必要です。具体的なコード例は下記のようになります(TensorFlowを使用したシンプルなディープラーニング,Python)。

import tensorflow as tf
from tensorflow.keras import layers, models

# データセット読み込み(MNIST)
(train_images, train_labels), (test_images, test_labels) = tf.keras.datasets.mnist.load_data()

# データの前処理
train_images = train_images.reshape((60000, 28, 28, 1)).astype(‘float32’) / 255
test_images = test_images.reshape((10000, 28, 28, 1)).astype(‘float32’) / 255

train_labels = tf.keras.utils.to_categorical(train_labels)
test_labels = tf.keras.utils.to_categorical(test_labels)

# CNNモデルの構築
model = models.Sequential()
model.add(layers.Conv2D(32, (3, 3), activation=’relu’, input_shape=(28, 28, 1)))
model.add(layers.MaxPooling2D((2, 2)))
model.add(layers.Conv2D(64, (3, 3), activation=’relu’))
model.add(layers.MaxPooling2D((2, 2)))
model.add(layers.Conv2D(64, (3, 3), activation=’relu’))
model.add(layers.Flatten())
model.add(layers.Dense(64, activation=’relu’))
model.add(layers.Dense(10, activation=’softmax’))

# コンパイル
model.compile(optimizer=’adam’,
loss=’categorical_crossentropy’,
metrics=[‘accuracy’])

# 学習
model.fit(train_images,train_labels, epochs=5, batch_size=64, validation_data=(test_images, test_labels))

こちらのようにデータセットやモジュールを取り込むことで意外とシンプルに実装することが可能です。上記コードのような基本的なコードが理解できるまでには学習を繰り返すことをおすすめいたします。そこから自分独自のアルゴリズムを実装していきましょう。

ディープラーニングの活用事例と展望

最後にディープラーニングの活用事例と展望を確認し、今後の世の中がどう変わっていくのかを考えていきましょう。

業界別の活用事例

まず、製造業では下記のような形でディープラーニングが利用されています。
・製品の外観検査
・異常検知

このように見た目で判別できる作業はディープラーニングに置き換わりつつあります。近年では人間の目よりも高精度であることが多いです。

医療分野には下記のような活用法があります。
・画像診断
・創薬

画像診断は、黒い影があるなどで症状を判断する際に利用されています。検査できる数も医者より多くなるため、多くの病院で導入され始めています。創薬は薬の化合物の考案や副作用の予測に用いられることが多いです。
しかし、これらは人の命に関わるものでもあるため、かなりの高精度が見込める場合のみ利用されていることがほとんどです。

金融分野では下記のような活用法があります。
・不正検知
・投資判断

これらは今までの動きと異なったものが見られた場合にアラートをするといった使われ方をしています。金融分野は複雑な要因が絡み合っているため、将来の予測というより過去の動きとの比較が活用法として多いようです。

具体的な企業例にはみずほリサーチ&テクノロジーズが挙げられます。みずほリサーチ&テクノロジーズは鋳造部品の連続撮影画像から欠陥を含む画像5万枚、欠陥がない画像8万枚弱を作成し、ニューラルネットワークにより学習させることにより自動欠陥認識をおこないました。

ディープラーニングの未来

ディープラーニングの将来は、より社会実装が進むと予想されます。現在はツールとして販売されており、使いたい人だけ使うといったのが現状です。しかし、道中にディープラーニングが組み込まれたシステムが出てくるなど、すべての人がディープラーニングと関わる未来が訪れるでしょう。

現代において電気を使わず生活をしている人は非常に少ないです。ディープラーニングも未来においてはそのように当然のものになるのかもしれません。

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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