深刻化する欧州・米国での長距離トラック運転手不足問題とその対策

米国や欧州では近年、日本同様に、長距離トラックのドライバー不足問題が社会的な問題になっています。
ドライバー不足が、近年加速していて、深刻化が懸念されています。
オンライン販売などの普及により、配送需要が高まり続けており、人材確保が運送業界の喫緊の課題になっており、また、経済に悪影響を及ぼす可能性も高まっています。
今回本記事では、深刻化している欧米のトラックのドライバー不足に関して、現状と今後の対策について掘り下げてお伝えします。

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欧米のドライバー不足の現状と背景

欧米では、今後数年間で、ベビーブーマーが大量に定年を迎えるため、現在の多くのドライバーが退職する見通しです。
さらに、高齢で引退するドライバーの穴を埋めるべき若いドライバーたちが、ストレスの少ない仕事に転職したり、若い人材になり手が少なかったりと、人手不足は運送会社に危機をもたらしています。
加えて、過度な長時間労働と、それに比べて、ドライバーの給与は、他業種と比べても決して高くない水準にあることが、人材確保が困難になっている原因とされています。

深刻化する欧州・米国の問題

アメリカトラック協会公表の報告書によると、ドライバー不足は記録的な水準となっており、2021年には推計8万人でした。
しかし、深刻なのは、今後、定年による退職者が増えるため、2030年までに、ドライバーの不足人数は倍増する可能性があると言われています。
欧州でもドライバー不足は深刻な状態にあり、今後10年くらいで、現在のドライバーの半数近くが退職する見通しで、新しいドライバーを募集するに当たり、給与の増額が必要となっていて、運送会社の利益は薄いため、利益への圧迫が経営に深刻な影響を与えています。
さらに、欧米共通で、コロナ禍によるサプライチェーンの混乱や、急激な需要増が、さらなるドライバー不足や物流業界の劣化など、さまざまな問題にいっそうの拍車をかけています。

経済と社会の影響

トラックによる輸送は、アメリカの貨物輸送の実に70%以上を占めています。
欧州域内輸送でも、トラック輸送が全輸送量の70%以上を占めていて、欧米ともに、輸送をトラックに大きく依存しています。
そのため、もしもトラックによる輸送が大きく減少したら、社会全体に大きな影響がでざるを得ない状態です。

需要の増加に対して、トラックドライバーの不足により、供給が間に合わないという事態が発生して、一時的に需給のバランスが崩れてしまい、品不足などが発生して、経済や社会に対して多大な影響を及ぼします。

ドライバー不足の経済と業界への影響

ドライバー不足は、物流業界のみならず、経済の全体に非常に大きな影響を与えていきます。
ここでは、ドライバーの不足問題が、業界や社会全体に与える波及効果について解説します。

物流業界への直接的な影響

トラックドライバーの不足により、1人あたりの仕事量が増大しており、長時間労働が深刻になっており、さらに、労働環境の過酷さが、求人に対する応募者の減少につながっています。
また、人手不足は、配送の遅延や、業務の品質の低下につながり、さらには、過酷な労働環境が原因で事故が増加していて、物流業界全体にとって大きな課題になっており、多大な影響を与えています。

さらに、業務をこなすために必要なドライバーの人数が増えることは、人的コストの増加となり、運送会社の利益率低下を招いています。
人材を確保するために、ドライバーの賃上げも必要となっており、それもコストの増大になっています。
原油高の影響と合わさって、倒産する運送会社も増えており、物流業界をあげてのサポートが必要となっています。

経済への波及効果

トラックドライバー不足は、経済の危機をも招きかねません。
欧米では、日本同様に、物流において、最大の役割を果たしているのがトラック輸送です。
現代では、物流、つまりロジスティクスが経済を支えており、その中でも、重要な要素として組み込まれているのがトラックです。
ロジスティクスのプロセスこそが、経済を支えていると言っても過言ではないのです。
しかし、ドライバー不足によって、実際に物を動かしているトラックが、動かないことに陥れば、たちまちロジスティクスに支障をきたしてしまいます。

サプライチェーンを「動脈」と呼びますが、サプライチェーンの基盤となるロジスティクス
のトラック輸送が支障をきたすことは、動脈であるサプライチェーンの中の血流が滞ってしまいことを意味しており、経済全体が機能不全に陥ってしまいます。
原材料を工場に届けることができず、工場から製品を出荷できず、顧客に注文した品を届けることができなくなります。

解決策と未来

持続可能な物流を実現するには、トラック運送業界が、問題解決に向けさまざまな整備に取り組むことや、各配送業者が独自で対策をすすめること、そして、自動運転技術などのテクノロジーを活用していくことが欠かせません。
最後の章では、ドライバー不足を解決する方法や、トラック運送業界の未来について説明します。

業界による今の取り組み

まず米国では、「Driver Solutions」という特殊法人を設置して、新たなドライバーをトラック運輸業者に送り込むサポートをしています。
・ドライバー未経験者が、日本での二種免許に相当する「営業免許」を取得しやすいように、教習所を運営
・教科を標準化するなどの普及策を講じる

また、人手不足を解消するために、女性や非白人の採用の拡大に向けた投資を呼び掛けています。

欧州では、ドライバー不足を解消するために、中長期的なアクションプランが計画され、次のような取り組みが行われています。
・「Women in Transport network」の立ち上げ:女性従業員の数を増やすことを目的としたEUとしてのプラットフォーム
・ドライバーの待遇を改善するために、業界パートナーとの協同の開始
・教育機関とのパートナーシップ確立
・駐車場確保・安全対策

EU域内には、トラック駐車スペースが300,000カ所しかなくて、夜間駐車や通常の休憩の際の駐車場が100,000カ所不足しています。
また、安全性が確認されている駐車スペースは、わずかに7,000カ所しかないため、盗難など、輸送中に受ける犯罪が頻発しています。これは、日本ではあまり起こらないことですが、欧州では一般的なことになっていて、業務中の安全の確保も急務になっているのです。

テクノロジーによる解決

人手不足の解決のために、物流・運送業界でもデジタル化の活用は積極的に進められています。ここでは、ドライバーの代わりとなる新しい技術、ドライバーの生産性を上げるためのIT活用事例をみていきましょう。

・ドローンでラストワンマイルを配送
ドローンでの無人輸送サービスです。多くの企業でドローンによる無人輸送を試験的に実施しています。今のところ、ドローンで配送できるのはラストワンマイルの短距離輸送のみですが、長距離輸送が可能になることで、トラック輸送業界の人手不足が緩和できると期待されています。

・無人隊列走行
イギリスが先駆けて実用に向けていて、先頭のトラックにドライバーが乗車して運転することで、後続車は、自動運転により、一定間隔を空けて追走します。

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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