近年、自動運転技術は目覚ましく進歩しています。
すでにいくつかの新技術は試験したのちに実用化されており、安全に運転するためにあらゆるドライバーをサポートしてくれています。
トラック業界の新潮流!自動運転技術の進化
テクノロジーの進歩にともなって、自動運転技術は今後ますます普及していくことは間違いなく、この流れはトラック・輸送業界にも波及しています。
しかしながら、自動運転技術による無人トラックの普及には多くの課題が存在し、完全な実現にはまだまだ時間がかかることは事実です。
そういった課題がある一方で、効率面や人手不足などの問題に対応するためにはトラック業界は自動運転技術に一刻も早く着手するべきだと言われています。
自動運転トラックの進化の軌跡と最新技術
乗用車に限らず、トラック・輸送業界は近年急速な進化を遂げています。
かつては、ドライバーの手によって運転されることが当然だったトラックもAI技術の進歩により、乗用車同様、自動運転が可能となっています。
この技術変革は、物流・輸送業界全体の仕事効率化やコスト削減、さらには安全性の向上に貢献しています。
・日本におけるトラックの自動運転技術の現状
2023年8月時点で、日本では世界で初めてレベル3(ドライバー乗車での自動運転)
を実現するなど着実に技術は進展しており、レベル3までのトラックを含めた商業市販車が実用化されています。
・自動運転トラックの未来のロードマップ
国土交通省の計画では、2024年度に新東名高速道路の駿河湾沼津~浜松間約100kmにて自動運転車用レーンを設置し、深夜時間帯に自動運転トラックの実証運行を開始する計画を立てています。
そして2025年度には神奈川〜愛知間でレベル4自動運転トラックの実証運行を行う予定(高速道路での車両が少ない夜間時間帯のみ)、実証実験後には全国約50か所の高速道路にてレベル4の実現を計画。
2026年度以降の実用化拡大を目指すとしています。
トラックの場合は乗用車に比べ車体も大きく車重も重たいため、自動運転技術の開発には高度な技術が必要となります。
しかし現在、多くの企業や研究機関は自動運転トラックの開発に取り組んでいるところです。
具体例として、いすゞ自動車グループのUDトラックスと神戸製鋼所は、2022年8〜10月にかけて大型輸送トラックでの自動運転レベル4の実証実験を実施したことを発表しています。
神戸製鋼加古川製鉄所において、レベル4の自動運転技術搭載のUDトラックス開発の大型トラック「クオン」を用いて行い、自動運転車両が正確なルートを走行することを実証したほか、一連のオペレーションの完全自動化も実現したということです。
参照:UDトラックスと神戸製鋼所がレベル4自動運転トラックの共同実証実験で基本合意|KOBELCO 神戸製鋼
レベル4自動運転の解禁がもたらす変化
改正道路交通法が2023年4月1日に施行され、自動運転バスやタクシーなどの移動サービスの本格実用化が大きく近づいています。
また、輸送・物流分野においても自動運転に対する期待度は非常に高まっています。
近年の宅配需要の増加、それに伴うドライバー不足が深刻化するトラック業界をはじめ、運転業務を無人化する技術の恩恵は計り知れないです。
さらに自動運転「レベル4」を実施するための要件を規定した改正道路交通法も同時に施行されました。
まず、自動運転レベル4とは運行ルート・地域・天候など、特定の条件を満たした場合に、ハンドリング操作、ブレーキ操作、危険回避等の運転操作を、すべて自動運転システムが担うものであります。
このようなレベル4の自動運転システムが解禁されると、トラック業界ではどのような変化があるのでしょうか?
まず一つはコスト削減です。
メンテナンスなどにかかる費用は変わらず必要であるものの、仮にすべてのトラックが自動運転化した場合、人件費はもちろん、人的事故によるリスク補償や様々なコストが削減できます。
現在従事する雇用への影響ですが、従来のトラックドライバーの仕事は運転だけではありません。運転と同時にドライバーの重要な職務は、貨物の積み卸しや管理や、集荷先・配送先での受付業務など、貨物輸送の円滑な遂行のためにトラックドライバーは多くの責任を持っています。 したがって、輸送以外をロボット化しない限り、「運転の自動化」が「トラック輸送業務の完全自動化」ではありません。
つぎに変化としては事故防止が挙げられます。
交通事故において、大型トラックの運転事故は頻発しており、その事故の多くはドライバーの運転ミスによるものがあります。
自動運転化し、オートブレーキや速度低下のシステムを取り入れることで、これら事故リスクを大きく下げられると技術者たちは考え研究しています。
参照:自動運転レベル4とは?
AIと自動運転の融合による物流革新
現代のAI技術が物流業界にもたらす変革はますます顕著であり、日本国内でもAIを駆使した輸送・物流プロセスの最適化が進んでいます。
AI技術による物流最適化とその効果
実際に、AI技術によって物流業界にどのような効果がもたらされているのか見ていきましょう。
・効率的な輸送ルートの最適化
AIによる輸送ルート最適化システムは、輸送コストの削減に貢献します。
トラックだけでなく船舶などの運送手段の最適な組み合わせや、配送地点の最適な順序をAIが計算することで、燃料消費の削減や運送時間の短縮が実現します。
・物流在庫管理の最適化
AIシステムの在庫管理により、最適な在庫の適切な量と配置を保ち、在庫コストの削減と売り上げの増加が実現されます。また過去のデータ分析によっても、需要の変動に対応するための的確な予測が可能になります。
・物流トラブルの早期発見と対処
AIのモニタリングシステムは、物流領域の機器故障やトラブルを早期に検出し、予防する役割を果たします。これによって運送中のトラブルは減少します。
日本国内の物流業界でも、AIシステムを駆使した成功事例が数多く存在します。
その一例として、ヤマト運輸では自動運転技術とAIを組み合わせた新たなデリバリーサービスを展開しています。これにより効率的な荷物の集配を実現し、日本全国での配送効率を向上させながら、環境にも配慮した物流サービスの提供を可能にしています。
参照:AIを活用した配送業務量予測および適正配車のシステム導入について | ヤマトホールディングス株式会社
ロボット配送と新しい物流の姿
AI技術もさることながら、配送においてはドローンを活用した配送・物流が実用化されつつあります。中国では、大手ECプラットフォームのアリババやJD.comが、山岳地帯や過疎地域への商品配送にドローンを使用し、従来難しい地域への配送サービス提供を実現しています。
参照:ドローン配送サービスを正式に開始(中国) | ビジネス短信 – ジェトロ
このように技術発展と普及によって、ドローンの配達が一般的になってきました。
これにより、都市部であれば交通渋滞回避はもちろん、配送時間の遅延を減少し、消費者への安全で迅速なサービス提供が可能になります。
また国内の事例としては、改正道路交通法の施行に伴い、2023年4月より人が遠隔監視する自動運転の配送ロボットが公道を走れるようになりました。
2022年12月には、無人宅配ロボット「デリロ」による実証実験が東京都中央区月島で行われました。
大通りを大人の早歩き程度の速さで進み、注文を受けた商店から約500m離れたオフィスまで運ぶことに成功しました。
この「デリロ」には、周辺地図の歩道データが組み込まれ、6台の搭載カメラによって通行人や障害物を察知し避け、信号の色も識別できるということです。
開発したロボット開発ベンチャーのZMPはENEOSホールディングスなどと共同で、約2年前から実証を始め、配達範囲は南北1キロ、東西2.7キロが可能であるということです。
経済産業省の担当者は「人口減少・過疎地域では、将来的にロボットが物流の人手不足解消の手段になり得る」と話しています。
参照:宅配ロボット・配送ロボットDeliRo(デリロ) | 自動運転・ADAS技術のZMP
法規制と技術の進化
日本においては、現状「レベル4」までの自動運転が実用化され、2023年4月から施行された改正道路交通法に基づく特定自動運行の許可を受けた事例もいくつかあります。
その導入効果や今後の運行課題が注目されます。
しかし、完全自動運転である「レベル5」はいまだに実用化されていません。
今後、技術の進化にともなって、わたしたちは法規制や課題についても考える必要があります。
自動運転トラックの法的課題
トラックにおける自動運転は実用化段階を迎えつつあります。
しかし、完全自動運転を実現するに当たっては、さまざまな法制度上の課題に対応しなければなりません。まず自動運転技術は事故を減らすでしょうが、ゼロにすることは絶対になく、事故が起きたときの法的責任の所在も考える必要があります。
道路交通法における問題
実際のところ、完全な自動運転車に現在あるすべての交通法規を順守させつつ、周囲の交通状況に柔軟に対応しながら円滑な交通を維持させることは容易ではありません。
システムを活用するのみで周囲の状況を合理的に推定してよいのかなど、人間が運転する場合は柔軟に対応できる場面で、完全自動運転車はどうすべきかが問われます。
すなわち、ロボット的な四角四面な推測行動ではなく、周囲の運転者や交通状況に波長を合わせた「人間のように柔軟なAI」の開発が求められます。
さらに、道路交通法7条の「警察官等の手信号等」を順守する義務もあります。
しかし、自動運転車に手信号を理解させることは難しいです。これらの課題については、適切な法改正とともにより高度な技術発展を検討していく必要があります。
自動運転免許制度
前述のように自動運転車がすべての道路交通法規を順守し、安全に運行する能力については、一定基準が定められることは必須です。
予想ではありますが、自動運転システムが法定基準を満たすかどうかについては、公的機関が認証するための試験や審査が実施されるでしょう。言うなれば自動運転車の運転免許制度です。
「運転免許試験」は、普通運転免許同様に実環境下で自動運転走行させる「実技試験」はもちろん、自動車コンピューターと「試験官」の役割をもつ外部コンピューターを接続し、さまざまな場面をつくりだして行うシミュレーションによって行われることは考えられます。
これらのように、(完全)自動運転車の実用化を前提とした法規制の整備は、技術向上と同時に必須の課題です。
あらゆる法規制は、交通安全を確保しながら製造や活用にかかわる過度な負担を回避し、自動運転車の優位性を保つものである必要があります。
技術進化が開くトラック運送の新時代
さまざまな課題がある一方、全面的な自動運転トラック化が実現すると運送業界は大きく変化することは間違いありません。
現在深刻な運送業の経営課題である「人材不足」が緩和される可能性が大いにあります。
一般道での自動運転についてはインフラや技術上の課題が多く、実現は数年以上先になると見られていますが、高速道路を利用する一部の輸送車が自動運転トラックに置き換わるだけでも大きい変化と効果がもたらされるでしょう。
次に、事故の削減効果も期待されています。ドライバーの運転ミスや、長距離業務による居眠り運転等による人的事故を防止することは可能です。
その他にも、物流の観点から見ると、運行時間が短縮されることにより物流効率化が期待されます。人間の通常運転の場合、労基法や改善基準告示等の法的規制上、運転可能時間や休憩時間、休息期間などのルールに則って運行するため、多くの非運転時間を設ける必要があります。しかし完全自動運転に変わった際は24時間運行も可能になり、運行時間短縮が期待できます。
さらに人件費削減や、自動運転により「等速運行」が実現することで、低燃費運行が期待でき、あらゆるコスト削減も可能になるでしょう。
AIなどによる技術革新が急速に進む時代で、自動運転を含む最新の技術情報に常に目を向け、新しい時代のトラック運送業の有り方を柔軟に考えられる会社が今後は求められるでしょう。