物流業界は人手不足や労働環境の課題、サプライチェーンの複雑化などが課題としてあり、これら課題はますます厳しさを増しています。
こうした状況下で物流業界の効率化と生産性向上を実現する手段としてIoTの導入が注目されています。物流業界においては在庫管理や配送管理の自動化、サプライチェーンの最適化などさまざまな分野でIoTの活用が期待されている技術です。
そこで、本記事では物流業界の現状とIoTの重要性、物流効率化のためのIoT活用法、物流DXとIoTの相乗効果、今後の展望と課題について解説します。
物流業界の現状とIoTの重要性
現在、物流業界はどのような現状となっているのでしょうか。また、なぜIoTが物流業界の課題を解決すると言われているのでしょうか。ここで、物流業界の現状とIoTの重要性について確認していきましょう。
人手不足と労働環境の課題
物流業界は人手不足が深刻な課題となっています。国土交通省の調査によると2023年の物流業界のドライバー不足は36万人と推計されています。また、帝国データバンクの調査では物流業界に属する企業の38.7%が人手不足と回答をしています。さらに、ドライバーなどだけでなく倉庫内作業員や配送スタッフも不足していることが現状です。
そして、人手が足りていないことから一人あたりの労働量が多くなり、労働環境の悪化も懸念されています。このことから業界から離れる人が出てくる、と悪循環が続いてしまっているのです。
IoT導入による効率化とその利点
IoTはセンサー、デバイス、ネットワークを通じて物理的な物を接続し、リアルタイムでデータを収集・分析する技術です。IoTを利用することで物流プロセスが透明化され、効率的かつ効果的な運用が可能になります。
例えば、トラックやコンテナにセンサーを組み込み、その位置情報や荷物の状態をリアルタイムでモニタリングすると物流拠点・倉庫での作業を最適化できます。なぜなら、荷主や運送業者は物品の移動状況を把握しやすくなり、迅速な意思決定が可能となるからです。また、最適化されることからドライバーや作業員の労働環境も改善され、人手不足と労働環境の悪循環を断ち切れる可能性も出てきます。
さらに、IoTを導入すると在庫の正確なトラッキングやリアルタイムな最適化ルートの提案が可能になり、燃料消費も最適化されるのではないかと期待されています。
物流効率化のためのIoT活用法
IoTは物流の効率化を果たすことも可能です。では、IoTをどのように活用すれば物流効率化ができるのでしょうか。ここで具体的な活用法について確認していきましょう。
在庫管理の自動化
物流業界におけるIoTの活用法の一つは在庫管理の自動化です。センサーやRFID（Radio-Frequency Identification）などの技術を活用すると倉庫内の商品・資材の位置や数量をリアルタイムで把握できるようになります。これが実現すると手動での在庫監査や管理作業が大幅に削減され、人的ミスや在庫不足・過剰の問題が軽減されます。
例えば、商品に埋め込まれたセンサーが商品の棚への収納や出庫を検知し、その情報をクラウド上でリアルタイムに更新していきます。リアルタイムな情報があることから在庫の動向が把握しやすくなる、需要の変動に柔軟かつ迅速に対応できます。
配送管理のデジタル化
在庫管理と同時にIoTの活用によって物流の配送管理をデジタル化することも重要です。具体的にはトラックやコンテナにセンサーを組み込み、位置情報や運送中の状態をリアルタイムでモニタリングします。そして、リアルタイムな把握が可能になることから配送中のトラブルや遅延を検知・アラートすることができ、迅速な対応が可能となります。
また、気象情報や交通情報と組み合わせてルート最適化を行うことで配送の効率が向上する可能性も高いです。適切なルート選択は燃料の節約につながり、同時に配送時間の短縮や納期の厳守が可能になるなど企業にとって多数のメリットが出てくるのです。
これにより、配送の遅延や商品の破損などの問題が最小限に抑えられ、お客様へのサービス品質が向上します。デジタル化された配送管理は、物流企業にとって競争力の向上と効率的なサービス提供を実現する重要な手段となります。
物流DXとIoTの相乗効果
物流DXとIoTは深く関わり合っているものであり、両者を改善していくことで相乗効果が現れます。片方でも効果は出てきますが、より効果的な改善をおこないたいのであれば2つともに取り組んでいくべきです。では、なぜ相乗効果が起こるのかを確認していきましょう。
物流DXの概要とメリット
物流DX（デジタルトランスフォーメーション）とは物流業界においてデジタル技術を活用し、業務プロセスを効率的かつ革新的に改善する取り組みです。DXの物流業界に限定したバージョンだと認識しても問題ないでしょう。物流DXには様々なテクノロジーが組み合わさっていますが、その中でもIoTが物流DXにおいて特に重要な役割を果たしています。
物流DXによる主なメリットの一つは業務プロセスの効率化です。IoTセンサーを活用して物流拠点や運送車両、在庫などのリアルタイムなデータを収集・分析することで全体の可視性が向上することが可能です。そして、結果的に在庫管理やルート最適化、トラッキングが効率的になるなどのメリットが出てきます。
また、データ駆動型の意思決定が可能になることから需要予測や在庫調整などの戦略立案も改善されます。戦略立案の迅速さ、効果の大小は企業の今後にも深く関わってくる重要なものです。
実例に見る物流DXの成功
実際の物流業界での成功事例としてはAmazonが挙げられます。AmazonはIoT技術を積極的に導入し、倉庫内のロボットやセンサー、ドローンを活用して物流プロセスを最適化している企業です。これにより、商品の受発注や梱包、出荷作業が迅速かつ効率的におこなうようにしていることからAmazonの早い配達が実現しています。
また、AmazonはIoTセンサーを商品に搭載し、商品の位置や状態をリアルタイムでモニタリングすることで在庫の正確な管理や商品の品質管理も向上しています。これらの取り組みなどから利用者の評判が高くなり、現在ではGAFAと呼ばれるほど世界でのトップ企業になっているのです。
今後の展望と課題
物流業界の将来像
物流業界の将来像としては、テクノロジーの進化や社会の変化に大きく影響されることが考えられます。その一つの鍵となるのは持続可能性への取り組みです。物流業界は環境負荷が大きい業界と言われていますが、IoTによって環境への負荷を軽減する可能性が高いです。とくに自動運転技術や再生可能エネルギーの活用などは物流業界において環境への配慮と効率の向上を同時に実現するカギとなるでしょう。
また、デジタル技術の更なる普及も見込まれます。人工知能やビッグデータ解析、クラウドコンピューティングなどが組み合わさり、物流プロセスがより効率的で柔軟なものになる可能性が高いです。そして、多くの企業が取り組むことで生き残るためには必須な要因となるでしょう。
IoT導入における課題
まず、セキュリティの問題が挙げられます。多くのデバイスやセンサーがネットワークに接続され、大量のデータがやり取りされる中でセキュリティ対策が不十分であれば機密情報の漏えいリスクが高まります。このため、IoTデバイスやネットワークのセキュリティ強化は必須です。
さらに、標準化や規制の整備も必要です。異なるIoTデバイスやプラットフォームが相互に連携できるような標準化が進むことで異なるベンダー間での連携が可能となります。逆に、標準化がなされなければ連携できないといった現象も起こり得ます。さらに、各国や地域ごとの異なる要件に対応することも必要など導入にはまだ課題が多いです。
