冷凍車は食品や医薬品など温度管理が必要な貨物を輸送する際に欠かせない車両です。
ただ物を冷やすだけでなく、その仕組みは意外と複雑です。
この記事では冷凍車の基本的な仕組みや選び方、そして日常のメンテナンス方法について初心者でも理解しやすいように解説します。
冷凍車を利用する上で適した車両を選ぶ方法、日々の管理に至るまで冷凍トラックに携わる全ての人に有益な情報をお届けします。
冷凍車の基礎知識
冷凍車は食品や医薬品のように温度で品質が変わるものを運ぶのに必要な車です。
以下では、冷凍車がどう動くのか、どうやって良い車を選べばいいのか、そして普段どう管理するべきかについて詳しく説明します。
冷凍車とは何か? – 概要と機能
冷凍車は新鮮な食品や精密機器のように一定の温度で輸送する必要がある商品を運ぶためのトラックです。
このトラックの存在により、私たちは毎日新鮮な野菜や冷凍食品を安全に購入できます。
冷凍車は外部が断熱材で保護され、内部はアルミパネルやFRPパネルで組み立てられていて、荷物を氷点下の条件で安定して保持できます。
以下では、冷却システムの主な部品と機能、冷媒がどのように循環するかについて詳しく説明します。
冷凍車の冷却システムは主に以下の部品で構成されています。
①コンプレッサー
コンプレッサーは冷媒ガスを圧縮し、その圧力と温度を高めます。この高圧ガスはコンデンサーへ送られ冷却プロセスが開始されます。
②コンデンサー
コンデンサーで高圧ガスは冷却され液体冷媒に変換されます。ここで放出される熱は外部環境に放出され、冷媒は次のエバポレーター段階へと移動します。
③エバポレーター
エバポレーター内で液体冷媒が低圧の環境下で蒸発します。この過程で周囲の熱を吸収し、荷台内の空気を冷やします。冷たい空気はファンによって荷台内に循環され、内容物を冷却します。
④膨張バルブ
膨張バルブは圧縮されて液化した冷媒がエバポレーターに入る前に、圧力を低下させる役割を果たします。これにより冷媒は蒸発しやすい状態になります。
⑤ファン
荷台内の冷たい空気を均一に分布させるためにファンが使用されます。これにより全ての部分が均等に冷やされ、商品の品質が維持されます。
冷媒はこれらのコンポーネントを循環しながら荷台内の温度を制御し、食品や他の温度敏感な商品を適切な条件下で運ぶことを可能にします。この高度な冷却システムにより、冷凍車は食品輸送における重要な役割を担っています。
冷凍車の種類とその仕組み
冷凍車の荷台で使われる冷却方法には、機械式、窒素式、蓄冷式の3つがあります。それぞれの特徴などを以下で詳しく説明します。
①機械式
機械式冷凍車は、さまざまな荷物の冷凍輸送に対応し荷台の温度を簡単に調整できます。
この方式は冷蔵庫と同じ原理で作動し、荷台内の空気を冷やして温度を管理します。
荷台にはコンプレッサー、コンデンサー、エバポレーター、ターボファン、コントローラーの5つの装置が装備されており、これらが連携して荷物を適切な温度で保ちます。
動力源には車両自体のエンジンを利用する方法と冷却専用のエンジンを使う方法の二種類があります。
多くの冷凍車は車両のエンジンを使用していますが、冷却専用エンジンを備えた車両はエンジンを切った状態でも荷台を冷やし続けることができるため長距離を運ぶ際には便利です。
②窒素式
窒素式冷凍車は液体窒素を使用して急速に温度を下げることができるため、とくに鮮魚や精肉など傷みやすい商品の輸送に適しています。
この方式では液体窒素の沸点が-196℃であることを活かし、荷台内の温度を-40℃以下まで効率よく下げることが可能です。
この高い冷却効率は他の冷却方式と比べて群を抜いています。窒素式冷凍車を利用することで品質を維持しながら商品を目的地まで安全に運ぶことができます。
③蓄冷式
蓄冷式冷凍車は短距離配送や頻繁な荷物の積み下ろしが必要な場合に適しています。
とくに青果やケーキ類のように一定の冷蔵・冷凍温度を保つ必要がある商品の運送に役立ちます。
この方式では配送のない夜間に電力を使って冷凍機を動かし、冷凍板を凍らせておきます。
その後、配送中はこの凍った冷凍板から放出される冷気で荷台内の温度を適切に保ちます。蓄冷式の大きな特徴はエンジンが停止しても温度が急激に変化しないため、品質を維持しながら効率的に商品を届けることができます。
冷凍車の選び方
適切な冷凍車を選ぶことは、温度管理が必要な貨物を輸送するときに非常に重要です。
以下では貨物の種類や運搬条件に応じた冷凍車を選ぶための基準とポイントに焦点を当てて解説します。
冷凍車選びの際に考慮すべき要素としては車両の種類、新車または中古車の選択、予算と運用コストのバランスなどがあります。
これらの要素を総合的に検討することで貨物を効率的で安全に輸送するための理想的な冷凍車を見つけることができます。
運搬物に応じた冷凍車の選定
冷凍車、冷蔵車、保冷車の違いは、主に冷却機能の有無と商品を保持できる最低温度にあります。
冷蔵車は冷却装置を備えており、最高5℃で食品を保管できるため、野菜、果物、乳製品、薬品の輸送に適しています。保冷車には冷却機能がなく、断熱材のみで既に冷やされた商品を短距離輸送するのに用います。以下では車両の選定基準について詳しく解説します。
適切な車両の選定基準
①車両の大きさと容量
小規模な配送には小型の冷凍車が適しており、市内配送や狭い道での配送が簡単です。大量の商品を運ぶ長距離輸送では大型トラックが必要となります。
②断熱性能
輸送する地域の気候に合わせて断熱性能を選ぶ必要があります。寒冷地ではより高い断熱性が求められ、熱帯地域では内部の冷気を保持する効率が重要です。
③冷却能力
冷却能力は運送する商品の種類によって異なります。
たとえば生鮮食品や花などのデリケートな商品は0℃以下で保持する必要があるため、強力な冷凍機能が装備された車両が求められます。一方で飲料や加工食品などは5℃〜10℃の範囲が適切です。
④輸送距離と使用頻度
長距離輸送では燃料効率の良い車両を選ぶことが経済的です。また頻繁に使用する車両はメンテナンスが簡単にできるモデルを選ぶことが重要です。
これらの要素を総合的に考慮し、輸送する商品の種類、必要な温度維持の度合い、輸送距離、外気温などの条件を慎重に検討することで理想的な冷凍設備を備えた車両を選ぶことが可能です。これにより商品の品質を維持しながら効率的に運搬作業を行うことができます。
新車VS中古車 – どちらが適切か
冷蔵・冷凍トラックは新鮮な商品の輸送に欠かせませんが、新車では1千万円以上と価格が高いこともあります。
予算を抑えつつ必要な機能を手に入れたい場合、中古トラックの購入がおすすめです。中古トラックなら追加のカスタマイズ費用なしで、必要な機能が既に装備されています。
また、しっかりとメンテナンスされた車両が増えており、安心して使用することができます。
しかし購入前には車両の足回りや冷却機能が正しく機能するかどうかを確認することが重要です。
試乗や冷却機能のテストを行うことで、安全に使用できる車両を選ぶことができます。
もし最新の技術が必要なら新車が向いていますが、中古は価格と性能のバランスが取れているのでおすすめです。大事なのは予算とニーズに合った車を選ぶことです。
冷凍車のメンテナンスと日常管理
冷凍車の長期的な性能維持と安全性を保証するためには、適切なメンテナンスと日常的な管理が重要です。
以下では冷凍車の効率的な運用を支えるメンテナンスの基本から、日々の使用において注意しておくポイントまでを詳しく説明します。
定期的な点検と適時の対応を行うことで車両の故障リスクを最小限に抑え、いつも理想的な状態での運用を目指します。
冷凍車の日常メンテナンス
冷凍車の効率的なメンテナンスは性能を維持し、食品輸送の品質を保つために重要です。以下の表では冷凍装置の点検、清掃、部品の交換に関する手順を詳しく解説します。
活動カテゴリ | 詳細内容 | 頻度 |
日常的な点検 | 外観のチェックとエラー表示確認 | 毎日運行前 |
詳細な点検 | 冷却システム全体の診断、必要に応じて専門技術者による評価 | 月に一度 |
清掃 | 荷台と冷却装置の拭き掃除、ドレンホースの洗浄 | 週に一度 |
チェックポイント | コンプレッサーとコンデンサーの汚れと異常音確認、エバポレーターの氷結や霜の確認、ドレンホースの詰まりと損傷チェック | 同清掃時 |
部品の交換 | ドレンホース、シール類の交換、冷媒ガスの補充やフィルターの交換 | 劣化や損傷時、年に一度 |
故障時の対応 | 冷却性能の低下や異常音の確認後、メカニックへ相談 | 発生時 |
上記のメンテナンススケジュールを適切に実行することで、冷凍車は常に良い状態で運行されます。
これにより、食品などの温度に敏感な商品を安全に輸送し、運送効率と経済性を同時に高めることが可能です。
荷物を積む前の準備
荷物を積む前に冷凍車を適切に準備することは輸送効率を向上させ貨物の品質を守る上で重要です。
予冷をして荷台の温度を下げ、荷物は空気が循環するように隙間を空けて積むことが重要です。
これにより荷物が輸送中に遭遇する温度変化を最小限に抑えることができます。
また、冷凍車の日常メンテナンスは食品運送の品質を保つために欠かせません。
とくに荷台の清掃とドレンホースの定期的な点検・洗浄は、冷却性能を維持する上で重要な作業です。
ドレンホースの損傷があると冷気の漏れが発生し、冷却効果を低下させる可能性があるため定期的なチェックが必要です。