夜間や悪天候での安全な運行において、トラックのテールランプ(尾灯・制動灯・方向指示器)は非常に重要な役割を果たしています。これらの灯火には色・明るさ・見える角度・取り付け位置・個数などに厳しい基準が設けられており、車両の年式によって適用される基準や流用の可否も変わってきます。
本記事では、道路運送車両の保安基準をもとに、車検に通るための具体的な要件を整理しました。さらに「Eマーク/eマーク」の見方、LEDやシーケンシャルなどの人気カスタムを適法に行う条件、よくある不合格事例の対処法、そして当日慌てないための実用的なチェックリストまで、現場でそのまま使える内容をまとめています。
トラックのテールランプに適用される車検基準の基本
テールランプの基準は「何色で、どのくらいの距離・角度から見え、どこに何個付けるべきか」を詳細に定義しています。
まず尾灯(リアポジション)について説明します。夜間に後方300メートルから点灯を確認できること、灯光の色は赤であることが基本となっています。見える角度については、垂直方向が水平線に対して上方15度・下方15度(ただし照明部の上端が地上0.75メートル未満に設置される場合は下方5度まで緩和)、水平方向は内側45度・外側80度で見通せる必要があります。荷台のゲートや架装物で遮られて、この角度内で見えないと車検に通りません。そのため、ステーや角度調整で確実に見通しを確保することが重要です。
また尾灯には光の強さの上限・下限があり、暗すぎる(スモークで暗くなった)・明るすぎる(まぶしい)どちらも指摘の対象となります。検査は「見える・見えない」の主観ではなく、規定された範囲内での見え方・光の分布を満たすかで判定されます。
制動灯(ブレーキランプ)は運転者の意思を表示するランプで、赤色で尾灯よりもはっきりと明るいこと、兼用設計時の光の配り方・明るさの条件などが細かく決められています。LEDユニットや明るさ制御の組み合わせで「尾灯と制動灯の区別がはっきりしない」ケースは不合格につながるため、配線系統と明るさの差をはっきりさせることが重要です。
方向指示器(ウインカー)は橙色で、毎分60~120回の一定の周期で点滅することが必須です。前後用は垂直±15度、水平は内45度・外80度の視認角が定められています。上下2段構成の後部方向指示器については、下段の上端1.5メートル以下、車体最外側から400ミリメートル以内、上下段の間隔は600ミリメートル以上など、具体的な数値が定義されています。
さらに「取り付け装置の技術基準」も重要で、灯火の基準軸(向き)は路面に平行・車両中心面に対して所定の向きになるように装着し、許容誤差は±3度です。左右対称性や複数面で構成する灯火の「見た目の一体性」なども規定されています。実際の取り付けでは「きれいに付いた」だけでなく、「基準軸と誤差を満たす装着」を最後に確認するのが鉄則です。
保安基準における尾灯・制動灯・方向指示器の役割
尾灯は「存在と幅の表示」、制動灯は「減速・停止の意思表示」、方向指示器は「進路変更の意思表示」と役割がはっきりと分かれています。
尾灯は赤一色で後方300メートルからの視認性と配光角度を満たすこと、制動灯は尾灯より十分に明るく赤であること、方向指示器は橙で一定周期の点滅・所定の視認角を満たすことが大前提です。
これらは光の配り方・明るさ・色の規定とセットになっており、例えばスモークレンズの濃い色化で尾灯の赤色度が落ちる、LED化で方向指示器の点滅周期が60~120回/分から外れる、といった変化は即座に不適合につながります。交換・カスタム時は各灯火の「役割に応じた要件」を崩さないことを最優先に考えましょう。
年式によって異なる保安基準のポイント
基準は近年段階的に見直され、特に2012年1月1日以降の生産・登録車(中古新規含む)は「尾灯・制動灯は片側1個(左右計2個)」に制限されました。法改正前に見られた4灯構成(片側2個)は、2012年以降の年式には使用できません。
さらに2006年改正前の旧モデルでECE非対応のテールランプは、2005年末までの生産・登録かつ継続検査中の車両に限定される扱いが整理されています。現行基準適合(ECE等)の最新モデルは一般に古い年式にも適合しやすい一方で、旧基準製品を新しい年式へ載せ替えるのは制約が厳しい、と覚えておきましょう。
なお、現場での適用では「灯火の個数制限」「色・配光・視認角」「取り付け高さ・外側距離」の3点でつまずきやすく、年式をまたぐ流用時はこの順に確認するのが効率的です。
車検に通るテールランプの選び方と認証表示の確認方法
テールランプ選びでは「認証表示」「仕様明細」「年式適合」の3つを揃えるのが近道です。特に認証表示は、製品自体がどの規格の試験に合格したかを示すため、現物やパッケージの刻印を必ず確認します。
併せて、灯火ごとの色(赤/橙)、点滅周期(方向指示器)、視認角、夜間視認距離(尾灯)などの数値要件が製品仕様に明記されているかを確認すれば、検査ラインでの指摘を大幅に減らせます。
「eマーク」など適合を示す認証表示の読み解き方
灯火類に刻印される主な適合表示は「Eマーク(ECE規則)」「eマーク(EU指令)」です。日本の車検適合の目安としては、UNECEのECE規則に合格したことを示す「Eマーク」を優先して確認します。
表示は「E+国番号+機能記号等」で、国番号は認証国(例:1=ドイツ、2=フランス、43=日本)を示します。灯火の種別(尾灯R、方向指示器の分類記号など)も併記されるため、刻印を見れば「その用途として認証済み」かを読み取れます。
eマークはEU域内の適合表示で、日本の検査に直接の根拠とならない場合があるため、国内実務ではEマークの有無が判断の軸になります。
なお、Eマークがあるからといって取り付け位置・角度・個数など「装着側」の基準を無視できるわけではありません。認証は製品の性能保証、車検は装着状態の適合確認と役割が異なる点に注意してください。
純正品・社外品・LEDテールランプを選ぶ際の注意点
純正品は型式認定時の仕様に合致するため適合リスクが低く、配光や視認角の検査でつまずきにくいのが強みです。
社外品でもEマークの刻印と、尾灯の赤色・夜間300メートル視認・配光角度、方向指示器の橙色・60~120回/分の一定周期・配光角度が仕様書に明記される製品は選択肢になります。
LEDモデルは反応の良さ・耐久性に優れる一方、部分的な消灯や明るさ制御の不具合が不適合の原因になります。特に「流れるウインカー(シーケンシャル)」は、告示が「一定周期で点滅」を要求しており、順次発光そのものを明文で許可していません。
採用する場合は方向指示器としてEマーク認証があり、周期・視認角・色の条件を満たす設計であることを現物仕様で確認し、取り付け後に実測で周期と角度の基準内を再チェックしてください。
反射器内蔵タイプも人気ですが、反射器は「受動反射(自ら光らない)」が条件です。LED発光は反射器と認められないため、仕様が曖昧なら独立した受動反射器を所定位置へ追加した方が確実です。
見落としがち!テールランプ取り付け時の車検NG事例と対策
この章では検査ラインで実際に指摘されやすい「位置・個数・視認性」と「仕様・配線」の両面から、NG事例と手直しのポイントを解説します。数値基準は「角度・距離・高さ」の三次元で決まるため、図面上で満たしていても現物の架装やゲートの影で外れることがあります。最終的には車両側での「角度(基準軸)合わせ」と「遮蔽のない見通しの確保」が決め手になります。
取り付け位置・個数・視認性で確認すべき具体的な数値基準
尾灯は、夜間後方300メートルでの視認、垂直は上15度・下15度(上縁0.75メートル未満なら下5度)、水平は内45度・外80度で見通せることが基本です。遮蔽物でこの角度内の視認が妨げられると不適合となります。
現行基準が適用される製作車両では、尾灯の照明部上縁が地上2.1メートル以下、下縁が地上350ミリメートル以上、照明部の最外縁が車体最外側から400ミリメートル以内に収まるのが実務の目安です(架装や複灯構成で判定方法が変わるため、左右対称かつ外観で判定しやすい位置決めが無難)。
方向指示器は橙・60~120回/分の一定周期で、前後用の視認角は垂直±15度・水平は内45度/外80度が目安です。後部下側の対になる一対は上縁1.5メートル以下、最外縁400ミリメートル以内、上下段構成なら上下の照明部の間隔が600ミリメートル以上必要です。
トラック特有の高い床面・ゲートで角度を外しがちなので、取り付け面の角度補正(±3度誤差内)やステー追加で基準軸を合わせ、遮蔽物の回避を優先します。
反射器(受動反射)の後部設置は全車必須で、反射部の上縁1.5メートル以下・下縁0.25メートル以上、最外縁は車体最外側から400ミリメートル以内が基本です。総重量7トン以上は大型後部反射器も義務化され、同じ高低条件の中で確実に配置します。LED発光は反射器ではないため、見た目が反射器風でもNGです。必ず受動反射の製品を正規位置に取り付けます。
よくある不適合事例と簡単な是正方法
最も多いのは「スモーク過多による光度不足・色度外れ」です。尾灯の赤・方向指示器の橙は色の範囲があり、尾灯は配光範囲の最小光度、最大光度上限も守る必要があります。濃色スモークは暗くなる・色が外れる両方のリスクが高く、透明度の高いレンズに戻すか、Eマーク付きの適合ユニットに交換するのが確実です。
LED特有では「素子の不点灯(部分消灯)」と「減光制御の誤配線」があります。兼用設計で尾灯と制動灯の差がはっきりしなくなると落とされます。配線をマニュアル通りに組み直し、尾灯(常時)と制動灯(制動時のみ高輝度)の切り分けを明確化しましょう。方向指示器はハイフラッシャー・スローを抵抗器や対応リレーで60~120回/分に補正し、色は必ず橙に統一します。
シーケンシャル採用時は、方向指示としてEマーク認証のあるユニットに限定し、装着後に周期と視認角を実測で確認しましょう。
反射器忘れ・位置不適合も定番です。後部反射器は必須で、受動反射のJIS/ECE相当品を上縁1.5メートル以下・下縁0.25メートル以上・最外縁400ミリメートル以内で確実に固定します。大型後部反射器が必要な車両は、適合サイズの専用品を選び、脱落防止も合わせて点検しましょう。
車検前に最終確認!チェックリストとよくある質問
最終確認は「点灯・位置・角度・色・周期・反射」の6つの視点で行います。暗い場所・明るい場所の両方の条件で確認すると検査当日の手戻りが減ります。特にトラックは荷台やゲート、架装で遮蔽が起きやすいので、装着後に実車姿勢で角度と見通しを必ず再確認します。
自分でできる!車検前の最終チェックリスト
尾灯(スモールON)については、左右均一に赤で点灯し、夜間300メートル相当でも見える明るさかを確認します。スモークや汚れで暗くなっていないかも重要なポイントです。
制動灯は、ブレーキ操作で尾灯より明確に明るくなり、遅れ・ちらつきがないかを確認します。兼用設計の減光・増光がはっきりしているかも見ておきましょう。
方向指示器は、橙で毎分60~120回の一定周期かを確認します。左右・ハザードとも速度一定で、角度内で遮蔽がないかもチェックしてください。
取り付け位置・角度については、尾灯は上縁2.1メートル以下・下縁0.35メートル以上・最外縁400ミリメートル以内の目安を満たすかを確認します。基準軸は路面平行で±3度内かも重要です。
反射器は、後部に受動反射が必ずあり、上縁1.5メートル以下・下縁0.25メートル以上・最外縁400ミリメートル以内かを確認します。LED発光で代用していないかも見ておきましょう。
外観・配線については、レンズのひび割れ・欠け・著しい汚れがないかを確認します。点灯中の曇り・水滴が配光を乱さないか、配線の擦れ・接触不良・アース不良がないかもチェックしてください。
判断に迷うケースに関するQ&A
Q. 古いトラックに最新のテールランプを流用できる?
A. 現行基準適合(Eマーク等)の最新モデルは、一般に古い年式にも装着可能です。一方で2012年以降の年式は「尾灯・制動灯は片側1個」の制限があり、従来の4灯構成は不可です。年式を跨ぐ流用時は、この個数制限と色・配光・視認角の条件を先に確認してください。
Q. Eマークとeマーク、どちらを見れば安心?
A. 国内実務ではEマーク(ECE規則適合)の有無を優先して確認します。刻印の国番号や機能記号で、用途として認証されているか読み取れます。eマークはEU指令の認証で、日本の検査への直接的根拠とずれる場合があります。
Q. 流れるウインカー(シーケンシャル)は車検に通る?
A. 告示は「毎分60~120回の一定周期で点滅」を要求し、順次発光そのものを明文で許可していません。方向指示器としてEマーク認証のユニットで、橙色・周期・視認角の条件を満たす設計に限定し、装着後に実測確認を行うのが安全策です。
Q. 反射器内蔵テールなら別体反射器は不要?
A. 受動反射として機能し、取り付け位置の数値基準も満たしていれば内蔵タイプで適合可能な設計もあります。ただしLED発光は反射器ではないため、仕様が曖昧なら受動反射の独立反射器を追加する方が確実です。
Q. 帯状LEDを1灯として扱える?
A. 取り付け装置基準では帯状・細長い発光面の扱いに条件(偶数個扱い等)があり、配置次第で「2個扱い」になる場合があります。境界事例は解釈が割れるため、Eマークと製品図面で裏付けを持って臨むのが無難です。
結論として、テールランプ周りの車検は「製品の適合(Eマーク等)」と「装着状態の適合(位置・角度・個数・視認性)」の二段構えでクリアします。年式差では2012年以降の片側1個制限が最大のつまずきポイントです。反射器は受動反射で所定位置に必須で、LED発光は代替不可です。この記事の数値を基準に、交換前・取り付け後の二段階チェックを実施すれば、検査ラインでの指摘は大幅に減らせます。



