現在、世界各国で環境問題へのさまざまな取り組みが進められています。
そのなかでも大きなカギとなるのが「循環型社会」です。
循環型社会とは何か、そして日本国内や他国での実践事例やSDGsとの関連性などをまじえてご説明いたします。
循環型社会とは何か?
20世紀以降の経済発展と技術革新によって、大量生産、大量消費、大量廃棄の時代が続いています。商品やサービスは安価かつ大量に供給されるようになり、人々の生活水準は向上しましたがそれらの恩恵の一方では、環境破壊や資源の枯渇問題、廃棄物の増加などの問題が顕在化しています。
例えば、世界194ヶ国で年間排出されるゴミの量は約21億トンで、そのうちリサイクル率はわずか16%、3億2300万トンにとどまっています。
日本国内では、環境省の発表によると、令和2年度の日本のごみ総排出量はおよそ4,167万トン、1人当たりの一日に出すごみの量は901グラムという結果でした。
食糧に関しては、世界では約40億トンにも及ぶ食糧が生産されており、世界のすべての人口の食をまかなえるだけの量が十分にあります。
それにも関わらず、食品ロスを含む食品廃棄物の量は年間で13億トンも出ており、生産量から見ると約3分の1が廃棄されていることになります。
日本においても、2015年には食品廃棄物は年間で2,842万トンも出ていて、そのうちの646万トンが食品ロスによる廃棄物でした。
さらには、その中でも家庭から出る食品ロスはおよそ289万トンであるという結果もでています。
このような問題はすべてエネルギー資源の枯渇問題や、環境問題につながり、循環型社会への早急な転換が求められています。
循環型社会を知る
まず、循環型社会とは有限な資源を効率的に活用し、再利用などで循環させながら、資源を枯渇させないように長期にわたり持続利用していく社会を指しています。
また、循環型社会のカギでもある基本となる、3R(リユース・リデュース・リサイクル)を意識する必要があります。
リユース「再利用」:モノやエネルギーを繰り返し使うことによって、廃棄物削減や資源の循環と枯渇対策につながります。エネルギー面では、住宅に太陽光発電パネルを設置することで電気の自給自足や、EVへの活用も可能になり、さらに地球温暖化の原因でもある温室効果ガスの削減に貢献できます。
リデュース「消費量の抑制」:生活の中で発生するごみを減らす、無駄なものを省く、不要なものを買わない、貰わない、使用するエネルギー資源の量を減らすなど、廃棄物の発生やエネルギー資源の消費を抑えるアクションを指します。
リサイクル「再生利用、資源利用」:すぐにごみとして廃棄する前にリサイクルショップで売ることや、自治体や企業の回収サービスを活用するなど、できる限り資源としてリサイクルすることを意識。
このように、廃棄物の発生量を減らし適切に消費・再利用化し、環境負荷を減らすことも循環型社会への達成には重要な論点です。
循環型社会が必要な理由
前述の現状を背景に、循環型社会への早急な転換が求められています。
具体的に循環型社会の必要性をより詳しくご説明します。
限りある天然資源の枯渇問題
現代社会の主要資源として、化石燃料をはじめとした天然資源で成り立っています。
しかし天然資源には限りがあり、これから掘り出して活用できる年数は、石炭は約118年、原子力発電の燃料であるウランで約106年、天然ガスが約59年、石油は約46年という見通しです。このような貴重な地球のエネルギー資源を今後何百年、何千年と利用できる時間には限りがあります。
現状の採掘ペースを続けていると、地下資源の安定供給は困難になり、将来の世代に必要な天然資源を残せない事態が生じると懸念されています。したがって、循環型社会は早急に実現すべき取り組みの一つとされています。
気候変動問題への対策措置
つぎに、天然資源の活用は二酸化炭素の排出量がきわめて多く、気候変動の一つである地球温暖化の加速をも促す問題があります。
地球温暖化の主な原因として、人間の産業活動によって排出される温室効果ガスの増加が挙げられます。太陽から放射されるエネルギーを地球は吸収し、また一方で放出をしています。放出されるエネルギーの一部は、大気中のあらゆる温室効果ガスに吸収され、大気圏に滞留して気温を上昇させます。温室効果ガスとして代表的なものは、二酸化炭素(CO2)やメタンガス(CH4)、フロンガス、亜酸化窒素(N2O)などです。
また、石油・石炭といった化石燃料を燃焼させる際にも、二酸化炭素などの温室効果ガスが多く発生します。さらに森林破壊により、二酸化炭素を樹木が吸収する量も減少していることも、地球温暖化の原因とされています。
現在生じている気候変動は、国際的に解決が急がれている環境保全問題の1つです。循環型社会の推進は重要課題であり、あらゆる対策が講じられています。
環境破壊への深刻化と助長
さいごに、世界中で採掘されている天然資源は年間でおよそ300億トン、このうち化石燃料資源の利用はおよそ85億トンにもなります。日本国内においては年間約18億トンもの天然資源が消費されています。しかし、再利用されている資源は年間で約2億トンしかなく、ほか約8億トンは廃棄物発生時やエネルギー消費に伴う二酸化炭素などで環境に排出されています。これは環境破壊の拡大に繋がる深刻な問題として周知されています。
この現状解決のために、わたしたちは優先的に循環型社会実現に取り組み、環境負荷を最小限に抑える必要があります。
世界各国での取り組み事例
では、上記の理由から必要とされている循環型社会にむけて、日本や世界各国では具体的にどのような取り組みをしているのでしょうか。
日本の循環型社会形成推進基本法とその影響
日本では、循環型社会実現のために、2001年に「循環型社会形成推進基本法」が完全施行されました。これは循環型社会に向けた主軸となる法律で、そのもとに適正処理を規定した廃棄物処理法や、資源の再生利用を推進する資源有効利用促進法など細かく規制されています。
別名循環基本法と呼ばれているこの法律は、昨今の廃棄物問題が大きな起因となり制定されたものであり、
・廃棄物処理法の改正
・容器包装リサイクル法
・家電リサイクル法の拡充
などの、日常生活で関わることの多くがこの基本法に含まれています。
そしてこの法の遵守の目的としては、環境的側面、経済的側面、社会的側面の統合的向上が挙げられます。
さらに、この推進法において電子マニフェストの導入が必要不可欠とされています。
電子マニフェストの制度としては、廃棄物の情報を電子化し、排出事業者、収集運搬業者、処分業者の3者合同で情報処理センターを介し、廃棄物の運搬・処理までを共有する仕組みです。
廃棄物の適正処理が行われているかの情報を一括管理できる電子マニフェストの導入により、資源の循環可能率を把握することができます。これによって、効率的な循環方法を考えていくきっかけが生まれます。また、廃棄物が常に正常で適正な処理方法を経て最終処分にまで回されているかどうかの確認も可能になり、より良い未来に繋がっていくことが十分に予想されます。
ヨーロッパでの使い捨てプラスチック製品禁止などの動き
また、環境意識の高いヨーロッパに焦点を当ててみましょう。
2019年にEU理事会は、使い捨てプラスチック製品の流通を禁止する法案を採択しています。法におけるガイドラインでは「プラスチック」や「使い捨て」の明確な定義と、流通が禁止される9種の製品も例示されています。
<EU内での流通が禁止されているプラスチック製品>
・綿棒の軸部分
・カトラリー(ナイフ、フォーク、スプーン)
・皿類
・ストロー
・マドラー
・風船の取手部の棒
・発泡スチロール製食品・飲料容器、飲料用カップ
また、2023年1月よりフランスのファーストフード店内(20席以上の店舗のみ)での使い捨て容器の使用禁止法が施行されました。
具体的には、店内飲食用の皿、コップ、スプーン、フォークは使い捨てが禁止され、環境に優しい紙製の容器であっても、使い捨てであれば使用が禁止されています。
また、テイクアウトする場合には、従来通り使い捨ての容器を使用することは認められています。
これらの措置に違反すると最高1万5000ユーロもの罰金が科されます。この法導入にあたってフランスのファーストフード店では洗って使える食器を導入していますが、それらのほとんどはプラスチック製で、他のレストランで使用される陶器やガラス製の食器と比較すると、環境保護や耐久性には劣るという問題も指摘されています。
隣国のドイツでは、国内のファーストフード店・マクドナルドは独自のドリンク用カップを用意しており、利用する際に2ユーロ支払う必要がありますが、その後店舗にカップを返却すると、2ユーロ返却される仕組みです。
これに対して、バーガーキングでは同様のシステムですが、他業者と再利用ドリンクカップを共用しています。そのため、バーガーキングの店舗以外でも利用し返却することが可能になっています。
個人ができる環境保全の取り組み
メリットが多い一方で、循環型社会の実現には多くの課題があります。
では私たち個人でできることはどのようなことがあるのでしょうか。
3Rを意識した生活とは
冒頭でもご紹介した循環型社会を実現する上で重要なキーワードである「3R」。
Reduce(リデュース)は、ごみを減らすこと。
・必要ない物は買わない、不必要にもらわない
・買い物時にはマイバッグを持参し、使い捨て袋を利用しない
Reuse(リユース)は、使える物を可能な限り繰り返し使うこと。
・詰め替え可能な製品を積極的に選ぶ
・フリマアプリを利用し、不要なものを譲り合う
Recycle(リサイクル)は、資源をゴミとせずに再び利用すること。
・ごみの適正な分別を意識する
・再生素材などから作られた製品を利用する
最近ではRefuse(リフューズ)とRepair(リペアー)が加わった「5R」という言葉も見られるようになりました。
不要なものは断るというリフューズ、容易に捨てずに修理し使用するリペアーは、循環型社会にとって意味があり大切な行動です。
エコな電気とCO2フリープランの実践
次に、循環型社会で重要となるエコな電気とは、再生可能エネルギーでつくる電気を指します。再生可能エネルギーは、温室効果ガスを排出させない、もしくは増加させないエネルギーであり、さらには枯渇しないため世界中から注目を集めています。
具体的な種類としては、主要な太陽光や風力、地熱、波力、バイオマス発電などがあります。
そして、2016年に発足した電力自由化を機に、現在さまざまな企業が電力事業に参入しています。私たちは、自分に合った好きな電力会社を選び契約できるようになりました。
再生可能エネルギーを扱う電力会社も多く、そのような会社に切り替えることは循環型社会の実現に個人レベルで貢献できます。
新たに生まれた電力商品の代表的なものにCO2フリープランがあります。
国際的にCO2(二酸化炭素)排出削減の声に応じる形で、この電力プランのニーズは近年高まっています。
例として、エバーグリーン・リテイリング株式会社が展開するCO2フリープランは、FIT電気(再生可能エネルギー電気)に環境価値を持つ非化石証書を組み合わせることによって、再生可能エネルギーを提供しながら、実質的なCO2排出係数をゼロにするプランがあります。
一般的に通常の料金よりも高価ですが、場合によっては電気料金の削減と並行してCO2フリーを実現することが可能です。CO2排出量を抑えた電力会社や、CO2フリープラン選択のメリットとしては、SDGs目標の達成といったものが挙げられます。
循環型社会とSDGsの関係
SDGsへの関心が集まるとともに、社会のあらゆる場面において持続可能かつ循環型の社会が重視されています。
SDGsとの関係
循環型社会の実現は、2015年に国際サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)に大きな関連性を持っています。SDGsの主軸として、「誰ひとり取り残さない」世界・社会を目指して具体的な17の目標が掲げられています。そのなかでも、目標12の「つくる責任・つかう責任」は循環型社会に深い関わりを持っています。
持続可能で生産的な消費形態を確保することを目指した目標であり、これはあらゆる資源の効率的な有効活用と、廃棄物の削減を進め環境負荷を考慮した循環型社会の概念とつながっています。
循環型社会がSDGs達成にどう貢献するか
では、循環型社会は持続可能な社会実現へ向けてどのような効果・影響をもたらすのでしょうか。
まず、循環させることは天然資源、必須エネルギーの持続可能で効率的な利用を達成することを可能にします。
SDGsの目標のように、合意された国際的な枠組みに従い、人への健康や環境への悪影響を最小化し、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減します。
また、循環型社会へつながるSDGsの取り組み目標としては以下が挙げられます。
目標12「つくる責任・つかう責任」
つくる生産者から、つかう最終消費者までのあらゆる人々を巻き込んだ供給連鎖(サプライチェーン)を重視すること。
資源の有効活用や廃棄の削減などを明確にし、循環型社会において必須である、
「廃棄物発生の抑制」「資源の循環利用」「資源の適正な処分」への取り組みを進めることで、目標達成に大きな役割を担います。
目標13「気候変動に具体的な対策を」
また、気候変動対策(とりわけ地球温暖化対策)は、地球規模での循環化を目指す上で不可欠であります。
現在おこなわれている例として、
・再生可能エネルギーによるクリーンエネルギーを積極的に利用する
・脱または低炭素製品の開発や物流の効率化
・EVなどの次世代自動車や、公共交通機関の利用促進
・エネルギー効率の高い設備や機器の導入
気候変動対策でとくに意識されている地球温暖化は、一つの自然現象に対する対策であり、必ずしも循環型社会の構築を目指さなくとも存在します。
一方で、循環型社会への構築は、気候変動・温暖化対策をも含む地球全体の環境保全を睨んだ社会改革といえます。したがって、循環型社会の構築を進めることは一挙両得にあらゆる問題を捉えることができるでしょう。