持続可能な未来を築くために欠かせない「Reduce（削減）」「Reuse（再利用）」「Recycle（リサイクル）」の3R。この記事では循環型社会に必要な3Rとは何か、今後の課題や解決策を紹介します。
3Rと循環型社会
まずは、循環型社会の定義と目的を解説します。3R（削減、再利用、リサイクル）の基本的な概念についても把握しておきましょう。
循環型社会とは？
「循環型社会」とは、限りある資源の持続可能な活用を追求し、廃棄物の削減、再利用、適切な処理を通じて、環境への影響を最小限に抑える社会のモデルを指します。
循環型社会では、資源の持続可能な循環を実現し、天然資源の過度な消費を防ぐことで、生態系への負荷を最適化します。
3Rの目的とその役割
循環型社会を実現するために重用視されているのが「3R」の存在です。3Rとは「Reduce（削減）」「Reuse（再利用）」「Recycle（リサイクル）」の頭文字を取ったものです。3Rには、それぞれに以下のような目的や役割が充てられています。
資源削減（Reduce）：「リデュース」は、資源の無駄な使用を削減することを目的とします。これにより、新たな資源の採掘や生産を減少させ、環境への負荷を軽減します。
資源再利用（Reuse）：「リユース」は、使用済みアイテムや製品を再度利用し、廃棄物を削減することを目的とします。これにより、製品の寿命が延び、廃棄物処理に伴うエネルギー消費が削減されます。
資源リサイクル（Recycle）：「リサイクル」は、使い終わったアイテムや資材を資源として再利用することを目的とします。これにより、廃棄物の発生を最小限に抑え、新たな製品や材料の製造に再利用できます。
3Rの具体的な取り組み
3Rについて理解したところで、それぞれの具体的な取り組みについても見ていきましょう。
Reduce（削減）の実例
リデュースの実例として挙げられるのが、省エネ家電とエコカーの存在です。この2つは、エネルギーの使用効率を向上させ、環境への負荷を減らすために非常に重要になっています。
省エネ家電は、エネルギー消費を最小限に抑えるために設計されており、エネルギーコストと環境への負荷を削減する役割を果たします。例えば、LED電球は従来の白熱電球に比べて消費電力が低く、寿命も長いため、電力消費を削減し、交換頻度も減少します。大塚商会による比較実験では、従来の40形蛍光灯（安定器込み42W）から直管形LEDランプに交換したところ、5年間で1本あたり約9,730円の削減効果が得られるという結果になっています。
エコカーは燃料効率を向上させ、排出ガスを減少させる車両の一種です。その中でもハイブリッド車は、ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせ、停止時にエンジンを切るなどして燃費を向上させます。その中でもプラグインハイブリッド車は、完全に電力で走行し、排出ガスを一切発生させません。ハイブリッド車は2.0Lガソリン車と比べてCO2の排出を約43％低減できるのが特徴です。
首都高速道路株式会社では、環境負荷の軽減に向けた取り組みとして、高速道路会社として初めてのプラグインハイブリッド車を導入しています。また、社用として使用しない休日には当面社員が利用できるなど、無駄がありません。
Reuse（再利用）の実例
リユースの実例として挙げられるのが、フリーマーケットの存在です。フリーマーケットは資源の削減を抑え、新たな資源入手の効率アップを促進しています。
フリーマーケットでは中古品が販売され、買い手に再利用されます。これにより、新製品の生産にかかるエネルギーと資源の浪費が減り、買い手としては安価な商品を手に入れることも可能です。
また、フリマ大手である「メルカリ」は2018年の時点で、フリマアプリによる周辺サービス業の経済効果が、年間最大752億円に上ると発表しています。周辺サービス業とは、物流やクリーニング、修理のことで、物を少しでも長く使う思考の方が増えたことで、それらの需要が増えました。
Recycle（リサイクル）の事例
リサイクルの実例として挙げられるのは、古紙や段ボールなどの再利用です。これらは、資源の効率的な活用、廃棄物削減、環境への負担軽減、持続可能な社会の構築に貢献しています。
古紙やダンボールなどの材料は回収された後、製紙工場で再処理されて新しい紙製品を生産するために使用されます。
例えば、山陽製紙株式会社では、不要なコピー用紙を再活用するための「PELP！」というアップサイクルサービスを提供しています。オフィスで使用しなくなったコピー用紙を回収し、それらのコピー用紙から名刺や封筒を製造する仕組みです。また、使用しなくなったコピー用紙を用いて、自社のビジネスツールを注文できるサービスもあり、無駄になる古紙はほとんどありません。
3Rの課題と解決策
続いて、国内外での3Rの普及状況と技術の課題を見ていきましょう。法的措置や個人・企業の意識変革がどのように必要かも解説します。
3Rの普及度と技術課題
日本の3Rの普及度は高く、多くの市町村でごみの分別回収やリサイクルが行われています。リサイクル率も高水準を維持し、特にPETボトルや紙類のリサイクルは世界的に見ても優れた成果を上げています。また、リユース文化も広まっており、エコバッグやマイカップの利用が普及している状況です。
しかし、技術課題も存在します。特にプラスチックのリサイクル技術の向上が求められており、難分解性プラスチックの効率的な処理やリサイクル品質の向上に取り組む必要があります。
海外での3Rの普及度は国によって大きく異なりますが、先進国では高いリサイクル率とリユース文化が根付いており、環境への意識も高いことが多くなっています。
例えばアメリカでは、多くの州や市がゴミを「資源物」「家庭ごみ」「草木類」の3つに分別し、新聞紙、缶、ペットボトルなどのゴミは民間業者によって買い取られています。ただし、アメリカ全体での3Rの実践には課題がある状況です。中国がゴミの輸入を停止したことをきっかけに、東南アジア諸国も同様に輸入をやめる動きが広がり、アメリカもゴミ処理に困難を抱えています。
今後の具体的な推進方法
今後、3R推進するためには、法的措置としては、リサイクルや廃棄物削減を促進する法律や規制を強化し、リサイクル率の向上を図る必要があります。また、プラスチック削減などの具体的な法的規制も検討されるべきです。
また、個人と企業の意識変革も重要です。教育と情報提供を通じて環境への意識を高め、3Rの重要性を広める必要があります。企業に対しては環境に優しい製品設計や包装材料の見直しを奨励し、全体で政策を支援することで、それぞれの企業の貢献度も高まります。例えば資生堂は、独自の容器包装開発ポリシー「資生堂5Rs」を掲げ、2025年までに100%サステナブルな容器を実現するために、容器の軽量化や「リフィル＆リユース」容器、再利用可能な単一素材容器の普及などに努めています。
日本の循環型社会と3R
最後に、日本での3Rによる循環型社会の推進事例を紹介します。成功している事例とその要因について解説。
日本における3Rの取り組み
日本は長らく資源の有効活用と環境保護に力を入れ、その結果、3Rの原則を積極的に推進してきました。この取り組みは、日本の環境への貢献と経済的な効益を両立させる重要な戦略となっています。
成功事例とその理由
日本における3Rの成功事例として挙げられるのは、リサイクル技術と施設の高度化です。例えば、日本ではペットボトルのリサイクル率が86.0％（2022年）と非常に高く、これは一部の要因として、高度な技術と設備が存在することが挙げられます。回収されたペットボトルは、高温での洗浄や製品化プロセスを経て、新しい製品として再生されます。
成功の理由の1つは、技術と研究開発への積極的な行動です。日本は1980年代頃から高度経済成長による大量生産や大量消費、ペットボトル・プラスチック製品の普及で廃棄物の量は増加、廃棄物処理場の不足などが問題視されていました。それらを解決すべく、日本はリサイクル技術の研究と開発に積極的に取り組み、リサイクルプロセスの効率が向上しました。
