SDGsと食品ロス削減-私たちの行動が地球を変える

SDGsの取り組みは世間に浸透してきていますが、まだまだ課題は多くあります。私たちの身近なところでは、食品ロスの問題もその1つです。今回は、食品ロスの現状と社会や環境への影響、SDGs目標達成に向けた食品ロスの削減方法について解説します。

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食品ロスとSDGs-世界的な対応

食品ロスの問題とSDGsの取り組みは直結しており、切り離せないものです。食品ロスに関する世界の現状と、SDGsとの関係を見ていきましょう。

食品ロスの定義とそのグローバルな影響

食品ロスとは、まだ食べられるのに廃棄せざるを得ない食品のことを指します。国連食糧農業機関(FAO)では、「人の消費に当てることのできる食料が、サプライチェーンの様々な段階で失われ、量が減少すること」と定義されています。

FAOによると、全世界の食品生産量のおよそ3分の1にあたる、約13億トンの食品ロスが1年間に発生していると報告されています。そうした状況にも関わらず、2022年の世界の栄養不足人口は7億6,800万人にものぼり、10人に1人が栄養不足に陥っているのが現状です。
これは明らかに生産や供給が偏っており、行き渡るべきところへ食料が届いていないことを示しています。食料生産で本来必要のない無駄なエネルギーを消費している他、廃棄によってCO2を排出するなど環境への悪影響も少なくありません。

出典・参照:消費者庁 P12.世界の食料品廃棄の状況
出典・参照:消費者庁 P13.世界の栄養不足人口

SDGsと食品ロスの相互関係

食品ロスの削減は、SDGs目標を達成する上で重要な課題です。先述した通り、世界の飢餓人口は8億人も存在します。SDGs目標2「飢餓をゼロに」を達成するために、食品ロス削減の取り組みは必要不可欠です。

そして、SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」は、直接的な食品ロス削減の大きな指針とも言えるでしょう。この目標では、限りある資源を持続可能な形で有効利用し、2030年までに一人当たりの食品廃棄量を半分にすることを掲げています。
また、食品ロスの問題は、SDGs目標13の「気候変動に具体的な対策を」にも関係しています。食品の生産や輸送、消費、廃棄には多量のエネルギーが使用されており、その過程で大量にCO2が排出されているからです。廃棄された食品には通常のゴミに比べて水分が多く含まれているため、より多くの石炭や石油燃料が必要になります。食品ロス削減の取り組みは、気候変動を抑えるための重要施策とも言えるのです。

日本の食品ロス-現状と解決策

国内でも食品ロスの削減は大きな課題であり、日本特有の問題も抱えています。日本の食品ロスの現状と解決策について見ていきましょう。

日本における食品ロスの原因と規模

食品ロスは、主に家庭系と事業系の二つに分けられます。家庭系の食品ロスは、食べ残しや賞味期限切れなどによって手付かずで捨てられる直接廃棄が主な原因です。
一方、事業系では、売れ残りや食べ残しの廃棄が中心になっています。事業系の廃棄ロスが増える要因としては、食を扱う業界全体の商慣習となっている3分の1ルールが大きく影響しています。3分の1ルールとは、賞味期限の3分の1以内で小売店などへ納品するというものです。
消費者に新鮮なものを提供することは必要ですが、過剰在庫などによる食品ロスの原因にもなっており、現在では見直す動きも出てきています。

農林水産省による2020年のデータを見ると、日本の食品ロスは523万トンでした。これを1人当たりに換算すると、毎日大体茶碗一杯分のご飯を捨てているという計算になります。このうち家庭から出る廃棄物は244万トン、飲食店や食品メーカーなどによる事業系廃棄物は279万トンです。
事業系では、飲食店と食品小売業の食品ロス割合が多くなっています。その大半は仕込みによるロスと、来店客の食べ残しによるもので、対策を講じることが必要です。

出典・参照:農林水産省 ~食品ロス量(令和3年度推計値)を公表~

食品自給率と食品ロスの関連性

日本の今後の課題は、食品ロスと食品自給率の関係から浮き彫りになります。
日本は食料供給の大部分を海外からの輸入に頼っており、2017年の段階で食品自給率(カロリーベース)は37%です。諸外国(カナダ:233%、アメリカ:121%、ドイツ:84%)と比較しても著しく低いことが分かるでしょう。

食料の輸入には当然海外の生産力が必要です。また、輸送にかかるエネルギーコストもかかります。それにも関わらず、多くの食品ロスを生み出している現状が問題をさらに大きくしています。食品ロスを解決するには、今後食品自給率を高めていくことが必至です。

出典・参照:農林水産省 世界の食料自給率

食品ロス削減への具体的な取り組み

現在日本では、食品ロス削減推進法により、具体的な取り組みが定められています。実際どのような取り組みが行われているのか、食品ロス削減への具体的な取り組みを紹介します。

法律による食品ロス削減の推進

2019年7月、農林水産省は食品リサイクル方に基づく「食品循環資源の再生利用等の促進に関する基本方針」を公表し、2030年度を目標に2000年度比で事業系食品ロスを半分にすると宣言しました。また、同年に公表された「第四次循環型社会形成推進基本計画」では、家庭系の食品ロスも同様に半減させると目標設定しています。

そして、2019年10月1日には、食品ロスの削減の推進に関する法律(食品ロス削減推進法)が施行されました。食品ロス削減推進法は、国や地方公共団体の責任を明らかにし、社会全体で食品ロスの削減を推進していくために定められた法律です。その前文では、「国民が主体的に課題に取り組むこと」、「食べられるものは廃棄せず、できるだけ活用すること」という2つの基本的な視点が明記されています。

食品ロス削減推進法には、以下のような方針および具体的な取り組みが定められています。

基本方針
・政府は食品ロス削減の基本方針を策定し、閣議決定する
・各自治体は、基本方針を踏まえ、食品ロス削減推進計画を策定する

具体的な取り組み
・食品ロス削減月間(10月)を設ける
・消費者、事業者への教育・学習の振興、知識の普及・啓発
・食品関連事業者の取り組みに対する支援
・食品ロス削減に関して顕著な功績を残した者への表彰
・食品ロスの実態調査、効果的な削減方法に関する研究
・食品ロス削減についての先進的な取り組みに関する情報収集
・フードバンク活動の支援

実践的な食品ロス削減戦略

食品ロスの半分近くは家庭から出るものです。私たち一人一人ができることを行えば、食品ロスの削減やSDGsの達成に貢献できます。

たとえば、食材を使い切るアイディアや、残り物をアレンジしたレシピなど調理方法を工夫することで食品ロスを減らせます。環境省や消費者庁では、料理研究家とコラボしたアレンジレシピの紹介、動画配信を行っています。普段は捨ててしまうような野菜の皮などを使った調理も紹介されているので活用してみましょう。

事業者の取り組みとしては、商慣習になっていた3分の1ルールの見直し、緩和が進んでいます。たとえば、これまでは在庫商品よりも賞味期限が少しでも古ければ、納品できずに廃棄されていた商品もありました。そこで、年月日で表示されていた賞味期限を、年月のみ、または日まとめにする(同月内であれば10日に統一するなど)など大括り化することでロス削減が図られています。

また、フードバンクを活用した食品ロスの削減施策もあります。フードバンクとは、スーパーや飲食店の余った食品を回収し、福祉施設や食品支援団体に提供するボランティア活動です。世界で広く展開されており、国内でも企業や自治体と連携して取り組みが進んでいます。

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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