サステナビリティリンクローンの全て!環境に貢献しながら資金調達

近年、環境問題や社会課題の解決に貢献する企業が、資金調達の手段として活用している「サステナビリティリンクローン」が注目されています。ここでは、サステナビリティリンクローンの仕組みやメリット、利用方法や活用事例について解説します。

目次
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サステナビリティリンクローンの基本解説

サステナビリティリンクローンは、そのほかの事業ローンやグリーンローンなどの類似した融資ローンとどのような違いがあるのでしょうか。その特徴とメリットについて解説します。

サステナビリティリンクローンとは?

サステナビリティリンクローンとは、明確なサステナビリティ目標を持った企業が資金を調達する際、SPTs(サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット)の達成状況に応じて融資条件が変動するローンです。SPTsとは、環境問題や社会的課題の解決に向けたサステナビリティ活動に関する企業目標を指します。

SPTsの具体例としては以下のようなものが挙げられます。
・生産・製造サイクルにおける温室効果ガス排出量の削減
・再生可能エネルギーの生産量もしくは使用量の増加
・天然資源投入量の増減、廃棄物処理におけるリサイクル率
・ESG格付けの改善、ESG認証の達成

変動する融資条件とは、主に適用金利の優遇措置を指します。ほかにも、SPTs達成時に貸し手のHP等へ掲載、外部機関からの意見書の発行などのインセンティブがあります。
グリーンローンと異なり、融資対象は特定のプロジェクトに限定されないため、借り手のニーズに合わせた柔軟な商品設計が可能です。また、融資後のレポーティングが義務付けられているので、透明性も確保されます。

日本では2021年以降急速に普及が進み、2022年には融資総額が6,500億円を超える規模にまで拡大しています。
出典・参照:環境省 サステナビリティ・リンク・ローン組成額の推移

サステナビリティリンクローンのメリット

サステナビリティリンクローンは、借り手と貸し手双方にメリットがあります。

借り手のメリット
・サステナビリティ経営の高度化
・企業イメージの向上
・サステナビリティパフォーマンス向上によるインセンティブ

サステナビリティリンクローンは、SPTsの達成を目指して、企業内のサステナビリティ戦略やリスクマネジメント、企業ガバナンスの体制整備につながり、サステナビリティ経営の高度化につながります。また、サステビリティリンクローンによって資金調達することで、ESGに配慮した企業活動を他の企業や投資家へアピールすることができ、企業イメージの向上にもつながります。サステビリティリンクローンは、目標達成に応じて金利が変動するため、融資条件で好待遇を受けられる可能性が大きいのもメリットです。

たとえば、みずほ銀行がサステナビリティリンクローンで融資を行なっている株式会社マッシュホールディングスの事例では、SPTsの目標達成で適用金利が最大0.2%優遇される内容設計になっているとしています。
出典・参照:みずほ銀行 6.ローンの特性(1)SPTと融資条件連動

貸し手のメリット
・ESG融資の対象となる
・間接的に環境問題に貢献できる
・借り手とのエンゲージメントを高められる

サステナビリティリンクローンの借り手は、デフォルトがない限り安定的なキャッシュフローをもたらす融資対象となります。なおかつ持続可能な経済活動を支援する立場として社会的な支持を得ながら、間接的に環境問題に貢献することにもなります。また、融資対象となる企業にサステナビリティ経営を行う強い動機付けを与え、ステークホルダーとしてお互いにエンゲージメントを高めることが可能です。

申し込みプロセスと条件

サステナビリティリンクローンは、通常の事業ローンで適用される借入条件に加え、さまざまな融資条件をクリアする必要があります。申し込み条件と具体的な手順について見ていきましょう。

申し込み条件の詳細

サステナビリティリンクローンで融資を受けるには、KPI(重要業績評価指標)の選択と選択理由、SPTs達成に向けた動機・意欲を明示する必要があります。SPTsは、環境や社会にもたらす影響が大きく、定量的なものを設定することが求められ、以下のようなものが例として挙げられます。

・温室効果ガスの排出量削減
・再生可能エネルギーの導入
・持続可能な原材料・供給品の増加
・廃棄物処理におけるリサイクル率

申し込みから承認までのステップバイステップガイド

サステナビリティリンクローンの、申し込みから承認までのフローは以下のようになっています。

・借入準備(KPIの選定とSPTsの策定など)
・金融機関の選定・審査(面談、審査書類提出、審査)
・承認・契約・融資実行

事業計画の策定と必要書類作成までは通常のローン借入と同じです。その上でサステナビリティリンクローンの借入に必要な追加手続きを行います。具体的には、前述の通りKPIの選定、SPTsの策定や、SPTs達成状況に対するローンの特性の決定、レポーティング方法の検討などです。必要に応じて、第三者評価機関によるレビューの取得又は自己評価プロセスの策定・実施も行います。

契約後は、資金管理、返済・情報開示(SPTs達成状況の測定・レポーティング、外部機関による検証)、SPTsの達成状況に応じて融資条件の見直しが行われ、契約書にもとづいて借入金償還となります。

サステナビリティリンクローンの活用事例

サステナビリティリンクローンは日本でも普及・拡大が見込まれ、すでに多くの企業で融資事例があります。海外での事例も踏まえ紹介します。

国内企業の活用事例

大手総合建設会社の清水建設は、みずほ銀行や農林中央金庫と融資締結を結び、建設業界で初めてサステナビリティリンクローンの借り手となりました。清水建設が中期経営計画に掲げたKPI「建設事業におけるCO2排出量(2017年度比)の削減率」に、みずほ銀行や農林中央金庫が賛同し融資が実現しました。

九州全域に鉄道網を有する鉄道事業者の九州旅客鉄道株式会社(JR九州)は、三井住友信託銀行とサステナビリティリンクローンの融資契約を締結しています。JR九州でも、CO2排出量の削減をKPIに設定し、2030年度におけるCO2排出量を2013年度比で50%削減するというSPTsを策定しました。資金調達を通じて持続可能な社会の実現に向けた企業活動を促進するとしています。
出典・参照:清水建設 建設業界初、サステナビリティ・リンク・ローンで資金調達
出典・参照:JR九州 サステナビリティ・リンク・ローンによる資金調達を行います

海外企業の活用事例

オランダのヘルスケア・テクノロジー大手のフィリップスは、2017年に邦銀を含む16の金融機関と10億ユーロのサステナビリティリンクローンの融資契約を締結しました。フィリップスでは、「2025年までに30億人の人々の生活を改善すること」をKPIとし、CO2排出量ゼロ、環境改善をもたらす製品などの収益を7割以上にする、循環型経済関連ビジネスの収益を全体の15%以上にするなどの具体的なSPTsを策定し、サステナビリティ活動に注力しています。

中央ヨーロッパやアジアにも展開するイギリスの小売大手TESCOは、2020年に25億ポンドのサステナビリティリンクローンによる資金調達を発表しました。既存のKPIであるスコープ1とスコープ2のCO2排出量削減率、再生可能エネルギー調達率、食料廃棄率と連動させ、SPTsを設定しています。

ほかにも、チリのCMPC(紙パルプ)やスペインのberdrola(電力)、カナダのGildan Activewear(飲料)など、世界中の幅広い業種でサステナビリティリンクローンの活用事例があります。
出典・参照:野村資本市場クォータリー 諸外国のサステナビリティ・リンク・ローンの組成事例
出典・参照:環境省 TESCO(イギリス、小売り):サステナビリティ・リンク・ローン概要

サステナビリティリンクローンと他のローンとの比較

サステナビリティリンクローンと他のローンにおける指標となる融資条件の違いを紹介してきました。金利や対象となるプロジェクトについても違いをみてみましょう。

利率の違い

サステナビリティリンクローンは、KPIの選定やSPTsの策定、レポーティング方法の検討といったさまざまな融資要件を満たす必要があります。SPTsの達成状況によって融資条件が変動するため、通常の借入のように一定の金利目安は明示されていないことがほとんどです。
三井不動産ロジスティクスパーク投資法人による「フレームワークを活用したリンク・ローンの借入状況」によると、おおむね0.5〜1.3%の固定金利となっており、SPTsの達成度合いに応じて借入利率が連動するとあります。一方、環境に関連する特定のプロジェクトに限定される融資であるグリーンローンでは、1%内というケースが多くなっています。

一般の事業ローンでは、銀行系で1%〜15%、ノンバンク系5〜18%が相場となっているので、かなり開きがあることが分かります。サステナビリティリンクローンは、持続可能な企業活動への強い動機があれば資金調達のハードルは低く、かつ事業を広げる好機ともいえるでしょう。
出典・参照:三井不動産ロジスティクスパーク投資法人 本フレームワークを活用したリンク・ローンの借入状況

対象となるプロジェクトの違い

前述したようにグリーンローンとは異なり、サステナビリティリンクローンの融資条件は特定のプロジェクトに限定されません。たとえば、再生可能エネルギーの開発やエネルギー効率の向上に関する資金調達など、一般事業に広く適用されます。

グリーンローンやサステナビリティリンクローンのほかにも、社会課題に対処するための活動を融資対象にした「ソーシャルローン」や、環境・経済・社会の観点から総合的に取り組むプロジェクトを支援する「サステナビリティローン」などがあります。これらは広義では類似したローン制度といえますが、それぞれ準拠するガイドラインが異なり、サステナビリティリンクローンと比べるといずれも資金用途が限定的であると捉えておく必要があるでしょう。

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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