近年、コンビニ業界ではビッグデータの活用が急速に進んでいます。活用法はPOSデータや会員データ、店舗内カメラの映像データなど、膨大なデータの分析など非常に様々なものがあります。
そこで、本記事ではビッグデータのコンビニ業界への影響について、基本概念から実際の活用事例、そして将来の展望までを解説します。コンビニ業界の未来を担うビッグデータに興味のある方は、ぜひご確認ください。
ビッグデータのコンビニ業界への影響
ビッグデータはさまざまな業界に利用されている技術です。そして、それはコンビニ業界も例外ではありません。では、ビッグデータはどのような技術であり、コンビニ業界においてはどのような活用のされ方をしているのかを確認していきましょう。
ビッグデータの基本概念
ビッグデータとは従来の統計処理やデータベース管理システムでは扱いきれないほどの大量のデータのことです。具体的には1テラバイトを超えるような容量のデータを指します。
そして、ビッグデータは3Vと呼ばれる以下の3つの特徴を備えています。
・大量性:従来の統計処理やシステムでは扱いきれないほどの大量のデータ
・多様性:さまざまな種類
・速度:リアルタイム
さらに、近年では下記の2つのものも加えて5Vと呼ばれることもあります。
・真実性:データに嘘や誤りがなく正確であること
・価値:データを分析、活用することで経済的な価値をもたらすようなデータのこと
このようにビッグデータは単に大きなデータであるだけではないことにご注意ください。
コンビニ業界におけるビッグデータの役割
コンビニ業界におけるビッグデータの役割としては下記のようなものがあります。
・顧客ニーズの把握
・ビジネスモデルの創出
・競争力強化
まず、1つ目の顧客ニーズの把握としては、POSデータや会員データから顧客の購買履歴や属性情報を分析することで、顧客がどのような商品を欲しがっているかなどをより深くシルコトガできます。これによって、商品の品揃えや販売戦略を最適化することができ、売り上げを伸ばすことができるのです。
2つ目の新たなビジネスモデルとしては、売れている商品と売れている商品を合わせて新たなビジネスモデルを創出するなどに利用されています。また、ある特定の顧客に対してのアプローチもすることができるなど活用法は様々です。
3つ目の競争力の強化は上記2つのような商品力だけでなく、店内のレイアウトなどにも利用する活用法です。顧客データだけでなく店舗での移動経路なども取得しているとこのようなことに利用できます。
実際の活用事例-ローソンとセブン-イレブン
では、実際の活用事例としてはどのようなものがあるのでしょうか。ここではコンビニ業界に属するローソンとセブン-イレブンの活用事例について確認していきましょう。
ローソンとセブン-イレブンのビッグデータ活用法
ローソンでは単純にビッグデータを使うのではなく、まず「どのようなデータを活用すべきなのか」ということに着目し、データの厳選をおこないました。そして、その過程でローソンに本当に必要なデータというものを見つけ出し、様々な活用法を見出しています。
セブン-イレブンではビッグデータを活用するためにPOSデータをリアルタイムに収集・分析するセブントライアルの構築に取り組んでいます。POSデータはGoogle Cloudのストリーム分析ソリューションを活用しています。セブントライアルは2万1,000店舗に適用しており、データ収集の量も大きいです。
ローソンとセブン-イレブンにおけるビッグデータ活用の具体的な事例とその成果について紹介
ローソンはビッグデータを活用した結果として、長期的に見ると売れている商品の発見などに繋がっています。今までは短期的な観点で判断していたものが、より全社にとって有益な経営判断を取ることができるようになりました。
セブン-イレブンでは依頼した翌朝にしか手に入らなかったデータが最短一分で手に入るようになりました。そこからリアルタイムな在庫確認が可能となり、ユーザーもすぐに在庫を確認できるサービスの提供に繋がっています。
ビッグデータによる未来予測と戦略策定
ビッグデータはデータを用いることで未来予測や戦略策定もおこなうことが出来ます。では、ビッグデータを用いてどのような未来予測と戦略策定がおこなえるようになるのかを確認してみましょう。
需要予測と在庫管理の最適化
需要予測は多くの顧客の購買行動を分析することでより良いものにすることができます。さらに、近年はデータ取得の技術も上がり、より多くのデータに対して分析できるようになっています。代表的な分析法は下記のとおりです。
・デルファイ法
専門家や有識者から意見を集計する方法
・クロス集計
データを地域別、年齢、性別など属性に分けて傾向を調べる方法
・時系列分析
時間経過による傾向を調べ、販売時期や量などを調べる方法
在庫管理に関しては、ビッグデータがあらゆるデータが含まれていることから来ています。POSデータや天気データなどを考慮した在庫管理を行うことで、人間で考えていたよりも高度な管理がおこなえるようになっているのです。
顧客体験の向上と新しいマーケティング戦略
まず、顧客体験とは顧客が企業と接する際に得られる体験のことです。そして、顧客体験の向上は顧客満足度やロイヤルティの向上が起こり、売り上げに直結します。例えば、顧客の購買履歴や行動履歴を分析することで各顧客にその場に最適なサービスや商品の提案が可能になります。
もちろん、最適なサービスや商品の提案は社内のマーケティング戦略にもつながるものです。実際にビッグデータを用いてマーケティング戦略を立てている企業にはAmazonが挙げられます。具体的には、人気でない商品は値下げせずに販売機会を保つロングテール戦略というものを現在でも進めています。
これからのビッグデータ活用
現在でもさまざまな分野で用いられているビッグデータですが、今後はIoTやAIなどの技術革新によってさらに活用の幅が広がると言われています。ビッグデータの今後について、テクノロジー進化と新たな活用法、ビッグデータによる持続可能なビジネスモデルの2つの観点から考えてみましょう。
テクノロジー進化と新たな活用法
ビッグデータを活用するためにはデータの収集・蓄積・分析に高度な技術などが必要です。そして、近年はデータの収集・蓄積はIoTデバイスやクラウドコンピューティングの普及によってより効率的になってきています。また、AIや機械学習の進歩によってデータの分析精度も向上し、新たな活用法が生まれています。このようにデータ収集と分析の両方でテクノロジーが進歩しているのです。
ビッグデータによる持続可能なビジネスモデル
ビッグデータは持続可能なビジネスモデルの構築にも貢献することが可能です。例えば、以下のような取り組みが挙げられます。
・資源の効率的な利用:ビッグデータを活用し、需要予測や生産計画を最適化することで資源のムダを削減
・環境負荷の低減:ビッグデータを活用し、物流や輸送を最適化することでCO2排出量を削減
・社会課題の解決:ビッグデータを活用し、人手不足や高齢化などの社会課題の解決に取り組む
ビッグデータの活用は企業の競争力の強化だけでなく、技術を用いることで社会課題の解決につながる可能性を秘めています。前述のように今後はテクノロジー進化と新たな活用法の進展する可能性が高く、ビッグデータの活用はさらに加速していくと考えられます。特に、近年の経営はこれらのような観点も重要視されているため、大企業などは活用していく可能性が非常に高いです。