ビッグデータは巨大な情報という意味は伝わりますが、なぜここまで話題になっているのでしょか。このことを理解するためにはビッグデータの定義や実際の活用法を知っておかなければなりません。
ここではビッグデータの定義と活用法にくわえ、ビッグデータ自体が持っているメリット・デメリットについて解説します。ビッグデータの意味合いが曖昧な方、より具体的な活用法が気になっている方は、ぜひご確認ください。
ビッグデータの基本
そもそも、ビッグデータとはどのようなデータを指すのでしょうか。ビッグデータという言葉は多く使われていますが、その意味をしっかりと理解している方は多くありません。ここでビッグデータについて深く知り、その後に活用法について知っていきましょう。
ビッグデータとは?
ビッグデータは従来のコンピュータでは取り扱えないほどの膨大な量、多様な形式のデータのことを指します。総務省はビッグデータを下記のように定義・分類しています。
・オープンデータ:国や地方公共団体が提供
・産業データ:企業が保有するパーソナルデータ以外の幅広いノウハウなどのデータと、M2M と呼ばれる産業用機械の機器間通信時のデータ
・パーソナルデータ:個人の属性情報、移動・行動・購買履歴などの個人情報
このようにビッグデータにも分類があることは認識しておきましょう。そして、近年ビッグデータが話題になっている背景にはインターネットの普及があります。以前までは取得できるデータ数に限界がありましたが、ありとあらゆるものにインターネットを付けることができる現代では取得できるデータ量が爆発的に増えているのです。
ビッグデータの3つのV
ビッグデータには下記の3つのVといった概念があります。
・Volume:データ量が大量にある
・Variety:データの種類、情報源が豊富である
・Velocity:データ生成や更新頻度、処理のスピードが早い
1番目は直感的に理解できるのですが、2番目と3番目は忘れられがちなので注意しましょう。さらに、近年では下記の2つを足して5Vとすることもあります。
・Veracity:データ内に含まれる不確実なデータを管理し、正確性の高いデータに近づけること
・Value:企業に対してプラスの影響を与えられること
つまり、データの性質のみに着目するのではなく、そのデータが人間にとってどのような影響を与えるのかといったことにも着目するようになったのです。3Vまたは5Vはビッグデータについて学習する際に必ず出てくるものであるため概要は知っておきましょう。
ビッグデータの分析方法
ビッグデータは分析することが必要なのですが、その手法にはさまざまなものがあります。そして、扱うデータによって適切な手法を選択しなければなりません。ここで代表的な手法について知っておき、どのように選択をすれば良いのかを確認していきましょう。
異なる分析手法
ビッグデータの分析手法は主に6つに分類されます。あくまでも大きな分類であり細かな手法は多岐にわたりますが、6種類の大まかな概要については知っておくのがおすすめです。
・クロス集計:データを属性ごとに分け、その属性の傾向を把握する分析手法
・クラスター分析:集団ごとの特徴を分析する手法
・アソシエーション分析:データ同士の関連性を分析する手法
・ロジスティクス回帰分析:事象の発生確率を予測する分析手法
・決定木分析:クロス集計を繰り返すことで関連性を見つける分析手法
・主成分分析:複数の要因を持つデータから一部の要因を除くことでデータを単純化する分析手法
このように手法それぞれで特徴が異なるため、目的に沿ったものを選ばなければなりません。
分析ツールの選定
ビッグデータを用いる度に分析を1から構築していると時間もコストもかかってしまいます。そのため、基本的には分析ツールを利用することがおすすめです。ツールの選び方には様々なものがありますが、下記の基準は少なくとも考慮すべきものになっています。
・分析精度が目的にマッチしているか
・操作は簡単か
・ランニングコストが許容範囲内であるか
・サポート内容の充実さ
これら基準を満たしているツールであるとビッグデータの分析によって有効なものが生まれる可能性が高いです。これらを確認するにはツールのHPを確認することが必要ですが、実際に触ると思っていたものと違うことは良くあります。そこで、無料トライアルを公開しているツールであると、この事象を防ぐことが可能です。
ビッグデータの活用事例
ビッグデータは有効性からさまざまなものに活用されています。ここで実際の活用事例について確認し、ビッグデータの可能性について知っていきましょう。
ビジネスにおける活用事例
ビジネス面での活用事例には下記のようなものがあります。
・マーケティング:顧客の行動データを分析して、商品やサービスの需要を予測する
・製造業:機械の故障を予測して、生産効率を向上させる
・物流業:配送ルートを最適化して、輸送コストを削減する
・金融:不正取引の検知や投資判断を行う
たとえば、製造業では株式会社トヨタ自動車が挙げられます。トヨタ自動車は機械の稼働状況や振動などのデータをAIに学習させ、機械が故障する可能性を予測しています。
このように非常に幅広い分野でビッグデータは利用されています。とくに、マーケティング分野は大量の顧客情報から戦略を組み立てることができるため導入が盛んです。ビッグデータを活用してマーケティングしている企業には下記のようなものがあります。
・Amazon
・ネットフリックス
・楽天
・LINE
・Google
・Facebook
たとえば、Amazonは膨大な量の顧客データや商品データを活用し、顧客のニーズに合った商品をレコメンドするサービスを提供しています。具体的には過去の購買履歴やWebサイトの閲覧履歴などのデータをAIに学習させ、顧客がどのような商品に興味を持っているかを予測しているのです。この予測結果を基に顧客一人ひとりに最適な商品をレコメンドすることで顧客満足度の向上や売上アップにつなげています。
日常生活における活用事例
日常生活面でのビッグデータの活用事例としては、以下のようなものが挙げられます。
交通:渋滞や事故の予測、公共交通機関の利用状況の把握
医療:健康状態のモニタリング、病気の早期発見・早期治療
教育:学習履歴の分析、個別最適化された学習コンテンツの提供
エンターテインメント:ユーザーの嗜好に合わせたコンテンツの提供
私たちがビッグデータを直接的に活用することはありませんが、知らず知らずのうちに実は利用しているのです。とくに、エンターテインメントのYouTubeなどは自分の指向に合わせた動画が自然と上がってくるため、触れ合っている人が多いのではないでしょうか。
ビッグデータの活用は日が浅く、今後はさらに身の回りに利用されていく可能性が高いです。
ビッグデータ活用のメリットとデメリット
ビッグデータはメリットだけでなくデメリットもあるものです。メリットについてだけでなく、必ずデメリットについても確認するようにしておきましょう。
ビッグデータ活用のメリット
ビッグデータ活用のメリットは、大きく分けて以下の3つが挙げられます。
1.マーケティングの効率化
前述のとおり、ビッグデータを用いることで顧客の行動やニーズをより深く理解することが可能になります。これにより顧客に合わせたマーケティング施策を実施し、効果を高めることが可能です。
2.新たなビジネスの創出
ビッグデータを用いるとこれまでになかった新たなビジネスを創出することも可能です。例えば、顧客の購買履歴や行動データを分析することで新たな商品やサービスの開発につながる可能性があります。また、近年では人工知能と組み合わせることでビジネスの考案すらも機械側がおこなうことが可能です。
3.社会課題の解決
ビッグデータを用いることで社会課題の解決にも貢献することができます。例えば、交通事故の発生予測や災害時の被害予測などにビッグデータを活用することで人々の安全を守ることにつなげることが可能です。
社会課題の解決であれば国立がん研究センターが挙げられます。国立がん研究センターでは膨大な量の患者データなどを活用し、がんの早期発見・治療法の開発に取り組んでいます。国立がん研究センターはNature Communications誌に掲載されるなど世界的にも研究成果が認められている組織です。
このように、ビッグデータの活用はさまざまな分野で成功事例を生み出しています。今後も、ビッグデータの活用はさらに進展し、私たちの生活や社会に大きな影響を与えていくことが予想されます。
ビッグデータ活用のデメリット
ビッグデータ活用のデメリットには以下の3つが挙げられます。
1.プライバシーの侵害
ビッグデータには個人を特定できる情報が含まれる場合があります。そのため、ビッグデータの収集や解析にはプライバシー保護への配慮が重要です。何も考えていないと個人情報が誰にでもアクセスできるようになってしまうかもしれません。
2.誤った判断のリスク
ビッグデータは膨大な量のデータを分析することで傾向やパターンを見つけるものです。しかし、その傾向やパターンが必ずしも正しいとは限らず、誤った判断につながるリスクがあります。実際に女性差別につながった事例などもあるため、最終的な判断は人間がしなければなりません。
3.技術的な課題
ビッグデータの収集・蓄積・分析には高度な技術が求められます。より多くの分野・人が活用するようになるためには、より簡易的に扱えるような技術の開発が必要です。
実際にデメリットがあらわれた事理としては全米で病院チェーンを展開するCommunity Health Systems(CHS)が挙げられます。CHSは不正アクセスによって患者約450万人の個人情報が流出した可能性があることを公表しています。本来は患者の情報を管理し、活用するためでありましたが、けがや病歴といった重要な個人情報が流出してしまったのです。