人工知能は生活や産業活動を便利にする一方、さまざまなデメリットが出てきます。とくに「2045年問題」と「技術的特異点」、「倫理的問題」は対処しなければならない重要な問題です。
そこで、ここでは人工知能の利点にくわえ、各種問題やこれからの人工知能とロボット技術について解説いたします。人工知能の問題点についても知りたいとお考えの方は、ぜひご確認ください。
人工知能の進展とそれに伴う利点
現在、人工知能はどのように進展しており、どのような利点を持っているのでしょうか。人工知能と聞くと万能なシステムのように思えますが、ここで現時点での限界を知っていきましょう。
人工知能の現状と活用事例
人工知能は機械が与えられた情報を人間のように処理する技術であり、下記のようなことが実行できます。
・画像認識
・音声認識
・自然言語処理
・異常検知
・検索/探索
・予測
活用事例としてはIBM Watsonがあります。IBM Watsonは医療診断で用いられているAIサービスであり、診断が難しいと言われていた特殊な白血病を10分ほどで発見することに成功しています。また、医療分野において次々と発表される論文をAIに学習させることでさらなる効率化や新たな治療法の考案なども可能です。
米New York Times紙の報道によると、最初期にワトソンを導入した米ノースカロ
ライナ大学・医学大学院では各種がんの症例を1000ケースほどワトソンに入力したとこ
ろ、その99%でワトソンが提示した治療法は癌専門医によるものと一致しました。それにくわえ、全体の30%ではワトソンは医師が見落としていた別の治療法も発見する偉業を成し遂げています。
日常生活に深く関わる活用事例としてはスマートスピーカーが挙げられます。Google HomeやAmazon Echo、CLOVAなどのスマートスピーカーはAIが搭載されており、ユーザーの声を音声認識によって機械が認識できるものに変換します。この技術によって機械に声で指示をすることが可能になったのです。
未来に向けた人工知能の発展
未来に向けた人工知能の発展として、下記の2つが期待されています。
・人間以上の知能を持つ人工知能の実現
・社会実装の拡大
まず、1つ目に関しては現在の人工知能は特定のタスク処理しかできません。人間のようにあらゆるタスクをこなす人工知能は実現できていないのです。しかし、技術の発展やビッグデータの学習によってこれらから人間と同等もしくはそれ以上の能力になることが期待されています。
2つ目は、自動運転や介護などが挙げられます。現在の人工知能は社会実装が限定的ですが、安全性などの面が確実になれば社会実装は広がっていくでしょう。
また、ハードウェア自体の改善もこれから起こる可能性が高いです。たとえば、従来のコンピュータと異なる方法で動作する量子コンピュータがより容易に利用することができるようになれば上記問題点を解決することが可能になるでしょう。
2045年問題と技術的特異点
人工知能が起こしうる問題として2045年問題といったものがあります。そして、2045年問題は技術的特異点によって起こる可能性が高いとされています。では、それぞれどのような内容であり、私たちにはどのような影響があるのでしょうか。
2045年問題の概要
2045年問題とは人工知能が人間の知能を超える「技術的特異点(シンギュラリティ)」が2045年に起こると予測されることから、その際に生じる予測不可能な事態やそれに伴う影響全般のことを指します。
2045年問題はアメリカの人工知能研究者であるレイ・カーツワイル氏が提唱しました。本問題はムーアの法則と収穫加速の法則といったものに基づいており、その結果AIの性能が2045年には人間の知能を超えると予測されています。
技術的特異点が起こるかどうかは賛否両論あるものです。また、2045年ではなく2029年ごろに起こる可能性をレイ・カーツワイル氏が発言したこともあります。しかし、現段階ではこのまま進化が進むと技術的特異点が起こる可能性が高いです。
技術的特異点の影響
技術的特異点が起こると下記のような影響が出てくると言われています。
・雇用の変化
これまで人間が担ってきた仕事がAIに代替される可能性があり、失業率の上昇や社会の格差拡大につながる可能性
・新たな価値の創造
AIの能力が人間の知能を超えることで、これまでにない新たな価値が創造される可能性
・人類の存在意義の変化
AIが人間の知能を超えることで、なぜ人類が必要であるのかと人類の存在意義が問われる可能性
とくに、雇用の変化は既に現実のものになっています。銀行窓口や事務処理などの単純作業は人工知能に取って代わり、大手企業であっても大規模リストラが起こっています。
人工知能と倫理
人工知能と倫理は切り離せないものです。倫理は非常に人間的な判断である一方、人工知能を社会実装するためには倫理問題を考えなければなりません。
人工知能の倫理的問題
倫理とは「社会で何かしらの行為を起こす際に善悪を判断する根拠」のことです。しかし、善悪の判断は人間的なものであり、人工知能にとっては非常に難しいものです。
そして、人間が考えて悪のことでも人工知能は簡単に実行してしまう可能性があります。
実例としてはAmazonの人材採用が挙げられます。Amazonは人材採用においてAIを活用していますが、その際に男性を高く評価してしまうケースがありました。性別による割引は倫理的な問題がありますが、人工知能はこのように判断してしまったのです。
Amazonは上記の問題を解決するために2つほどの取り組みをおこなっています。まず1つ目は学習データの偏りを是正することです。Amazonは学習データに偏りがあることを認識し、偏りを是正するための取り組みを行っています。具体的には女性応募者のデータを増やしたり、偏りのないデータで学習させたりするなどの取り組みを行っています。
2つ目の取り組みはAIの判断を人間がチェックすることです。AmazonはAIの判断を最終的には人間がチェックすることで偏りのない判断になるようにしています。
このように人間が考えると当り前のことでも人工知能にとっては当り前ではなく、さまざまな工夫をしなければ倫理的問題は解決できません。
倫理的なフレームワークの必要性
人間にとっての当り前を人工知能に与えるためには、そもそも人間の倫理観とは何かをフレームワークとして与えることが必要です。しかし、倫理観は人によって異なるものであったり、数式として明確に表現ができなかったりと数々の問題があります。
下記のように倫理観に対してさまざまな取り組みがおこなわれていますが、今後もこれを続け、人工知能が人間と同等の倫理観を持つようにすることが重要です。
・国際社会/政府:人工知能に関するガイドラインの制定
・企業:定期的にアルゴリズムを見直してアップデートを続ける
・機関:人工知能学会倫理委員会、JDLA公共政策委員会の発足など
さらに、私たち利用者にもリテラシーが求められます。人工知能の出力を鵜呑みにするのではなく、これは倫理的にはどうなのだろうと考えることが求められるのです。
人工知能とロボット技術の未来
人工知能が進歩すると同時にロボット技術も進歩しています。ロボット技術の未来についても考え、将来世の中がどうなっていくのかを確認していきましょう。
ロボット技術の進歩
ロボット技術は「人工知能(AI)」「センシング」「制御」「駆動」が4大技術要素とされています。ここまで解説してきたように人工知能の発展は著しく、それに伴ってロボット技術も進歩を遂げています。
人工知能はロボットの「判断」を担っていますが、制御部分も企業の努力によって進歩しているものです。たとえば、ファナック株式会社の協働ロボットCRXでは生産現場で作業がおこなえ、生産性の向上に寄与しています。
人工知能とロボットの未来の可能性
現在、日常家庭にロボットはあまり普及されていません。しかし、近年ではサービスロボットの開発が進んでおり、日常で利用できるようなロボットが増えてきています。日常ロボットとして有名なものにはルンバなどがありますが、今後はさらに多くの用途に用いられるロボットが普及していくでしょう。
ロボット市場動向の調査結果では2035年には市場規模が5兆円レベルになると予想されています。今後多くのサービスロボットが販売されていく中で、自分の生活をより豊かにするものはどのようなロボットなのかを考えていきましょう。
また、前述のように人工知能を搭載しているものは倫理問題についても深く考えることが重要です。