ブロックチェーン技術は取引の記録を分散的に処理・記録するデータベースの一種です。とくに、データの信頼性を担保できることに着目されています。
また、物流業界ではブロックチェーン技術を利用することで在庫管理の最適化や国際配送の効率化などさまざまな変革が期待されています。
そこで、本記事ではブロックチェーン技術の基本と物流業界への応用について解説します。ブロックチェーン技術が物流業界にどのようなインパクトを与えるのか、ぜひご確認ください。
ブロックチェーン基本と物流業界への応用
そもそも、ブロックチェーンとはどのような技術なのでしょうか。また、物流業界のみに着目した場合、どのようなポイントを意識する必要があるのでしょうか。まずはこれらの把握から始めていきましょう。
ブロックチェーン技術とは
ブロックチェーン技術とは取引記録を暗号化し、複数のコンピュータに分散して記録していく技術です。また、記録したデータはチェーン状に複数連結されています。そのため、ある取引を改ざんしようとした際にはそれより新しい取引も改善しなければなりません。
この仕組みによって取引の改ざんや不正が困難になり、今までよりも信頼性の高いデータ管理が可能になります。
有用な技術なのですが、現在のブロックチェーンは一部のみが利用しており、一般的なものにはなっていません。しかし、矢野経済研究所によると2025年度には中堅企業にもブロックチェーンが普及していき、市場規模も7000億円を超えると予想されています。今後は普及していく可能性が高い技術です。
物流業界への応用ポイント
ブロックチェーンはあらゆる業界に活かせる技術と言われています。そして、物流業界も例外ではありません。なお、物流業界はIT化の余地が大きく残っている業界と言われています。そのため、他の業界と比べてもブロックチェーンがより活かされる業界です。
応用するためのポイントとしては下記の事柄が必要になります。
・ブロックチェーンについて深く知る
・具体的な事例を確認しておく
・ブロックチェーンを業務のどの部分に適用するのかを考える
ブロックチェーンによる物流業界の変革
前述のとおり、ブロックチェーンは物流業界を大きく変える可能性を持っているものです。では、具体的に物流業界のどの業務に活かしやすいのでしょうか。結論から申し上げると、物流業界のなかでも在庫管理と国際配送に活かすことができます。では、どのように活かすことができるのか確認していきましょう。
在庫管理の最適化
ブロックチェーン技術を活用することで在庫のリアルタイムな状況を把握し、最適な在庫量を管理することができます。従来の在庫管理は各企業が独自のシステムを構築していました。そして、これらでは在庫の状況がリアルタイムで把握できず、最適な在庫量を管理することが困難でした。
そこでブロックチェーン技術を活用することで各企業が在庫情報を共有できるようになり、リアルタイムで把握することができます。これによって在庫の過剰や不足を防ぎ、最適な在庫量を管理することができるようになります。このようにブロックチェーン技術とは他社との連携を円滑する、在庫・仕入コストを下げるなどが可能です。
例えば、ウォルマートはブロックチェーン技術を活用し、在庫のリアルタイムな状況を把握する取り組みを進めています。これによって在庫の過剰や不足を防ぎ、最適な在庫量を管理することができるようになりました。ウォルマートはさらにブロックチェーンによってトレーサビリティを高め、食品衛生管理の質を上げるなどもおこなっています。
国際配送の効率化
ブロックチェーン技術は国内間での取引だけでなく、国をまたぐ輸送状況の追跡や通関手続きの簡素化など国際配送を効率化することができます。従来、国際配送においては輸送状況の追跡のために専用のシステムを作る、他社とのやり取りで把握するなどさまざまな手続きが必要でした。ブロックチェーンを用いることでこれらの必要がなくなるため、国際配送をおこなっている企業には大きなメリットが出てきます。
例えば、世界最大規模の郵便会社であるUPSはブロックチェーンが基本となっているプラットフォームを利用し、電子商取引を改善しました。これによってプロセスの簡素化をおこない、より低コストで郵送がおこなえるようにしています。
ブロックチェーン活用のメリットと課題
ブロックチェーンにはさまざまなメリットがあります。また、それと同時に課題もいくつか出てきています。メリットだけでなく課題についても確認し、双方を確認したうえで積極的に活用していくことが大切です。では、ブロックチェーンのメリットと課題について確認していきましょう。
コスト削減とスピードアップ
まず、ブロックチェーンは最適な取引をおこなえるようになることから在庫コスト、管理コストが減ります。また、これらはリアルタイムであることから常に今の時点での最適を目指していくことが可能です。物流業界でデメリットとなりやすい在庫コストに直接的に関与することができるため、コスト削減は大きなメリットと言えます。
また、ブロックチェーン技術を活用することで取引の処理速度を向上させることも可能です。これは、取引記録を分散型台帳に記録することで取引の承認に必要な時間を短縮できることから来ています。
例えば、国際配送においてブロックチェーン技術を活用すると輸送状況の追跡が可能になります。これによって輸送の遅延や紛失などのリスクを抑えることができ、今までよりスピード感を持って事業を進めていくことが可能です。
導入における課題
ブロックチェーン技術には、技術的、セキュリティ、法規制の3つの課題が残っています。
まず、技術的な課題についてですが、ブロックチェーンはまだ発展途上にある技術であり、改善の余地が残っています。例えば、処理速度の改善やスケーラビリティの向上などが課題です。
セキュリティについては、ブロックチェーンは改ざんが困難な技術であるのは確かですが、完全に改ざんが不可能というわけではありません。そのため、セキュリティ対策は不必要といったわけではなく、まだ常に意識しておくことが必要です。
法規制は、技術が新しいため整備がなされていないことから来ています。現在は金融法や知的財産法などすでにある法律を厳守する必要があるため、ブロックチェーンを活かすことができない状況があります。今後は整備なされていく可能性が高いですが、それまでは他の法律に触れないように意識しておくことがより重要です。
未来の物流業界とブロックチェーン
ブロックチェーンは物流業界に大きなメリットがあるため、今後はさらに導入が進むでしょう。また、これによって業界が変わる可能性もあります。では、ブロックチェーンが導入されることで物流業界がどのように変わっていくのかについて確認していきましょう。
環境改善への貢献
ブロックチェーン技術は物流業界の環境改善に貢献する可能性があります。例えば、輸送が効率化されることでCO2削減につながります。また、無駄な在庫を抱えにくくなることから廃棄物も減るでしょう。
このように物流業界は地球に対してクリーンな業界になる可能性を秘めているものです。ビジネスモデル上、現在は環境に対して悪影響を大きく与えていますが、ブロックチェーンによってそちらを改善することができます。
新規企業の参入と競争
現在の物流業界では物流サービスやシステムを提供するため、膨大な設備投資や人材育成が必要です。そのため、新規企業の参入がなかなかおこないにくい業界となっていました。
しかし、ブロックチェーン技術を活用すること障壁が低くなります。ブロックチェーン技術はインターネットを通じて利用できるオープンソースソフトウェアであるため、誰でも簡単に導入することが可能です。
また、効率化されることで必要な人員も下がる可能性があります。このようにブロックチェーンは新規参入しやすくするため、業界図を徐々に変える可能性を持っているのです。