宅配ゴミ削減の新戦略!エコパック&リユースの可能性

普段何気なく私たちが利用している宅配便ですが、ダンボールや梱包資材などをそのまま捨ててしまっているケースは多いのではないでしょうか。これらの宅配ゴミが環境に及ぼす影響は深刻です。今回は、宅配廃棄物の削減方法、エコパックやリユースに関する環境保護への寄与、個人でできる実践方法について具体的に解説します。

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宅配廃棄物問題の現状とは?

現在、宅配ゴミの状況はどのくらい深刻化しているのでしょうか。宅配ゴミが環境に与える影響と課題について見ていきましょう。

増加する宅配ゴミの実態

2020年から2021年にかけて、コロナ禍の巣ごもり需要でEC市場が大幅に拡大し、国内の宅配便取扱数は急激に増加しました。それに伴い、再配達やドライバーの不足など様々な問題が顕在化してきましたが、その中の一つとして浮き彫りになってきたのが宅配ゴミの問題です。

宅配便は、ビジネス・個人含め年間32億件の利用があると言われています。その際に使用されている梱包資材で大半を占めているのは、紙袋、ダンボール、プラスチックの包装材などです。ダンボールは比較的リサイクル率が高いとされていますが、プラスチックはコストの問題などで十分なリサイクルがなされていないとされています。

国内だけでなく世界全体で見てもその状況は深刻です。国際海洋保護団体オセアナの最新の報告書によると、米アマゾンで宅配に使用されたプラスチック使用量は、2020年から21年までに18%増加したとされています。さらに、プラスチック緩衝材を主とする包装ごみは、合計3億2,100万kgにものぼるとしています。

出典・参照:3.宅配便包装材の再使用化(エコパック・システムの構築)に向けた提言 1)提言の骨子
出典・参照:宅配便量世界一の中国、激増のプラごみ問題。アリババなどEC各社、削減へ取り組み

環境への影響と課題

増え続ける宅配ゴミが環境へ与える影響は甚大です。宅配ゴミの問題の背景には、廃棄はもとより「製造し続けなければならない」という課題があることもわかってきました。

宅配資材として使われるダンボール箱1kgを製造する過程では、平均1.91kgのCO2が排出されています。宅配便で1年間に消費されるダンボール(平均重量を500gと仮定)は、16億枚程度(約8億kg)と推定され、約153万tのCO2が排出されている計算になります。

ほとんどのダンボールは資源ゴミとしてリサイクルされるものの、そのままの形で再使用されることはほとんどありません。そのため、再び宅配資材として製造する必要があり、CO2が排出され続けているのが現状です。

出典・参照:3)現場の問題点(4)段ボール使用にかかわる環境側面

エコパックの役割と効果

宅配ゴミの問題解決にあたり、エコパックの利用が注目・推進されています。再利用可能なエコパックの特徴やメリット、期待される具体的な効果について見ていきましょう。

エコパックの特徴と利点

宅配便におけるエコパックとは、再使用可能な梱包材を指します。主にプラスチックダンボールを素材としており、プラスチック製のオリコンなどに比べるとかなり軽量なのが特徴です。また、簡素なつくりにも関わらず箱のコーナーは堅牢で、耐久性にも優れています。さらに、折畳めば使用時の約5分の1の容量になり、持ち運びにも便利です。マジックテープ仕様になっているので粘着テープなども一切必要ありません。

日本ロジスティクスシステム協会の推計によると、宅配便の年間件数全体の約3%にあたる1億件がエコパックを利用したものと仮定すると、CO2削減効果は92,890t、ダンボールのゴミ量の削減は1億枚、50,000tの削減になると見込まれています。

出典・参照:5)期待される環境負荷低減効果 (1)梱包材製造にかかわる CO2 削減効果

実践例と成果

エコパックの実践・成功例として、耐久性に富んだ再使用可能なエコパックを製造・販売している株式会社アパックスの事例があります。同社の開発したエコパックは、採用企業において5年間で50回以上繰り返し使用されるなど、一定の効果が実証されました。

また、エコパックの側面にスポンサー広告を印刷することで価格を補填し、利用者負担の軽減も実現させています。さらに、100万個単位の量産効果により1箱500円程度の価格で製造でき、経済的合理性を持った効率的なシステムの構築にもつながっています。

出典・参照:4)エコパックシステム構築への提言 (1)エコパック(再使用可能梱包材)の開発

リユースの力で宅配ゴミ削減

宅配ゴミを削減するためには3R(リデュース、リユース、リサイクル)の取り組みが欠かせません。ここでは、リユースの重要性にスポットを当てて解説していきます。

リユースの概念と重要性

リユースとは、使用済みの製品を廃棄せず繰り返し使うことです。リユース可能製品の提供や、修理などのアフターサービス充実、他人への譲渡もリユースに含まれます。

廃棄されたものを加工して再利用するリサイクルに対し、廃棄せずにそのままの形で再利用するのがリユースの特徴です。そのため、リサイクルに比べて個人でも簡単に取り組めるのがメリットだと言えるでしょう。

前述したように今後は、宅配資材を製造する過程におけるCO2の排出量を抑えていく必要があり、その観点からもリユースの重要性が注目されています。

国内外のリユース成功事例

実際に、宅配ゴミの削減に向けたリユースの取り組みは世界中で行われています。

海外での成功事例としては、フィンランドの再利用可能なパッケージサービス「RePack」があります。同サービスでは、古い家電をリサイクルしたポリプロピレンを原料とする封筒を採用しており、20サイクル(40回の郵送)以上の再利用が可能です。環境効果としてプラスチックやダンボールなどに比べて、発生するCO2を80%近く削減できるとしています。

また、アメリカ・カリフォルニアのスタートアップ企業が開発した「Limeloop」というリユース可能な包装材も注目を集めています。リサイクルしたプラスチックが原料で、耐久性・防水性もあり、実に200回以上の使用が可能です。アメリカの宅配商品の個数は毎年約1,650億個にものぼるとされており、同製品・サービスによって包装資材の使い捨てという資源の大きなムダをなくすことに成功しています。

出典・参照:フィンランド発「RePack」
出典・参照:アメリカ発「Limeloop」
出典・参照:使い捨てじゃなく10年使えるモノを。看板をリサイクルした商品配達バッグ

実生活での実践方法

宅配ゴミの削減は企業の取り組みはもちろん、個人のレベルで行えることも多くあります。個人と企業が宅配廃棄物を削減するための具体的な方法とその効果について見ていきましょう。

個人ができるエコ活動

個人で行える宅配ゴミ削減のための取り組みとしては、以下のようなものが挙げられます。

・フリマアプリなどでリユースする
・友人に譲渡したり、地域に寄付したりする
・リサイクルショップに持ち込む
・チャリティーイベントなどで寄付する
・前述のエコパックを使用する

ダンボールや緩衝材などは、どうしてもそのまま捨ててしまいがちですが、これだけの再利用方法があります。捨てる前に、身近なところで使い道がないかを考えてみましょう。

企業の取り組みとその効果

国内の主要な宅配サービス各社では、それぞれ宅配ゴミ削減のための取り組みを行なっています。

クロネコヤマトでは、持続可能な資源利用を推進する一環として、緩衝材削減・廃棄分別が簡単な包装資材「クイックフィット」を導入しています。ダンボールを折るだけのシンプルな包装で、余分な緩衝材を使わずに済む点が特徴です。また現場で使用するパレットの素材にも配慮しています。従来の劣化しやすい木製パレットよりも耐久性の高い再生材を使ったパレットを利用し、事業で使用するモノの廃棄削減にも努めています。

福山通運では、送り状用紙の削減に取り組んでいます。自社の出荷支援システム「ⅰSTAR-2」「ⅰSTAR-X」を活用し、出荷作業をペーパーレス化することで、紙資源の削減を行なっています。

出典・参照:ヤマトホールディングス 持続可能な資源利用
出典・参照:福山通運 3.その他省資源・省エネ活動

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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