ドローン配送で変わる物流業界ラストワンマイルの未来

物流業界には、環境への負荷や労働力不足、小口配送の増加、燃料費の高騰、過疎地への配送などさまざまな課題があります。この記事では、物流業界の将来を変える「ドローン配送」とは何か、ドローン配送の最新技術や導入時のメリット・課題、ラストワンマイルへの展望について解説します。

目次
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ドローン配送の最新技術とその可能性

近年のドローンに対する法規制の緩和や5G回線普及によるネットインフラ向上により、ドローンがもっと身近になり、2025年頃から一般的な配送が実現するのではないかとも予想されています。
ドローン配送の可能性として、大きく5つのメリットが挙げられます。

労働力不足の解消
近年のネット通販の普及拡大で、ドライバーの業務負担が増え、労働環境の悪化による人手不足の改善は困難とされていますが、これらの問題もドローンの無人配送なら解決可能になります。

交通渋滞の緩和
ドローン配送が一般化すれば、従来の配送トラックによる配達は減少すると考えられ、都市部や高速道路での渋滞が発生しにくくなるでしょう。

環境負荷・コスト削減
ドローンは電気で動くためCO2などの環境負荷の原因を排出せず、トラック維持費や燃料費、人件費なども不要になるので、大幅なコスト削減にもつながります。

業務効率の向上
上空を飛ぶことで配達先まで一直線に最短距離を移動することができ、山間部や離島のように車の侵入や走行が難しい地域にも、簡単に配送が可能になります。

災害時などにも配送可能
大規模災害が発生すると、陸路での物資運搬は難しくなります。ドローンであれば車両や船では行けない場所や、ヘリコプターの着陸場所がない所でも、被災地へ物資を安全に運搬することが可能です。

参照:ドローン物流サービスの実例と 今後の展望|経済産業省

自動運転車とドローンの協働

物流業界で実用化に向けた取り組みが進められている、ドローンを使用した配送サービス。
2023年9月には、KDDI株式会社とアイサンテクノロジー株式会社が、進化が著しい自動運転車とドローンの連携による物流実証実験に成功したという報告もあります。具体的には共同開発した協調制御プラットフォームを活用し、異なる測位方式を連携させ、自動運転車とドローンが相互の位置情報を共有して協調動作が可能なことが確認されました。

従来の実験では、高精度位置測位サービス対応のドローンと、受信機付きの自動運転車で位置情報を連携させる仕組みでした。ですが今回の最新実証では、自動運転車に受信機は取り付けず、協調制御プラットフォームを活用することで、それぞれが持つ測位方式をそのまま使用できることを確認しました。これによって、各モビリティーが連携の際に個々のカスタマイズの手間を削減できるようになります。

この成果を受けて、両社は2030年までに都市部からの大規模な配送を自動運転車に任せ、陸上からの輸送が難しい場所へはドローン配送とする、全自動の荷物配送サービスの実現を目指すとしています。

参照:自動運転車からドローンの離着、多様な位置測位方式での物流実証に成功 | 2023年 | KDDI株式会社

PPP-RTK方式による高精度位置測位

物流IT業界で注目されているPPP方式。
「Precise Point Positioning:高精度単独測位」と呼ばれ、近接の基準局のデータを利用せず、搬送波位相で数cmの精度を達成させる方式です。
二重位相差などを使用せず、衛星の軌道・時計の精密歴が与えられるものとして、2周波で電離層遅延量の影響のない観測値を作り出し測位を行っています。

PPP方式の利点は、受信機側ソフトの比重は大きくなりますが、近接基準局が不要だという点が大きな魅力です。
また、現場で取得した衛星データと、周辺の電子基準点の観測データから作成された補正情報を組み合わせて、リアルタイムでcm級の測量を効率的に行うRTK方式(Real Time Kinematic:相対測位)。

これら異なる2方式を合わせた「PPP-RTK方式」の高精度位置測位技術は、RTK方式の測位精度の高さに加え、PPP方式の広いカバー範囲という両者のメリットを併せ持った新しい方式の高精度位置測位技術です。RTK方式と比べ10分の1以下の基準局の設置数で十分なエリアカバーが可能になり、高速・広域移動時でも安定した高精度位置測位を提供することができます。

特に、今後のスマートモビリティ社会の実現においては、ドロー配送や自動運転ロボによる無人配送、自動運転車との連携や実用化などモビリティ分野の進展が見込まれ、これらの安全性や効率化を図るため、高精度かつ安価な位置測位技術が高く期待されています。

参照:KDDIとSwift Navigation、移動に強い高精度位置測位サービスの提供にむけて業務提携契約を締結 | KDDI株式会社

実用化への課題とその解決策

日本において、ドローン配送は実用化に向けて実証実験が繰り返されている段階です。
まずドローン飛行には4段階のレベルがあり、2022年12月にレベル4飛行が解禁されています。レベル1・2までは、有人地帯におけるドローンの飛行は目視内に限られていて、レベル3では目視外の飛行が可能になるが、無人地帯しか飛行できませんでした。

しかし、改正航空法が施行されレベル4飛行が解禁されたことで、有人地帯でもドローンの自律飛行ができるようになりました。
これにより物流業界では2025年の実用化を目指しているが、技術課題やインフラが整備されていないなどの懸念点もあります。

物流のオペレーションと技術課題

現時点では、ドローン配送におけるオペレーションにはあらゆる課題が見られます。

配送時の安全性
ドローン配送において、安全性を確保することは必須課題です。ドローンは天候の影響を受けやすく、強風や雷雨により墜落するおそれがあります。また飛行する鳥や電線に衝突して墜落することも予想されます。その墜落したドローンが人や車、建物などを傷つけてしまえば、深刻な被害が生じます。

このような事態を防ぐために、天候の確認と予想、機体の整備は不可欠です。また、あらゆるサイズの荷物を搭載したドローンを正確に飛ばせる操縦者はまだごく僅かなのが現状。時間と費用はかかりますが、正確にドローンを操れる技術者を確保し育成することで、このような課題やリスクは回避できるでしょう。

盗難・ハッキングなどのセキュリティ対策
盗難リスクにも注意が必要で、配送中の荷物が盗まれたり壊される可能性もあります。また、ドローンそのものが盗まれたりハッキングされるなどの恐れもあります。ドローンに物理的攻撃やハッキング防止機能を備えれば、確実に荷物を届けることは難しくありません。ドローン自体の安全な運用のために飛行ルートを工夫し、人的サポートを行うなどの対策が必要になります。

重量・積載量の制限
トラックなどに代わり、ドローン配送を実用化するなら、あらゆる荷物を複数運ぶ必要があります。
現在流通している産業用ドローンの多くは、まだ積載量が大きくありません。積載量を増やすために、開発や運用コストがかかりますが、ドローンの性能を高めるには必要不可欠です。開発コストを下げつつ、積載・重量制限の課題を改善しなければなりません。

搭載バッテリー容量
ドローンのバッテリー容量は飛行時間に大きく影響します。配送中にバッテリーが尽きてしまうと墜落する可能性があるため、発送元から超遠隔地への配送が困難なのが現状です。飛行時間や積載量によって、バッテリーの負荷は変わります。今後物流業界で活用するためには、バッテリーの消耗を抑えて長時間飛行できるドローンの開発が必要です。

社会実装への道のり

都市部よりも過疎地域で、配送ロボットやドローンが利用されることが望まれている物流業界。最近では地方移住者も増えていますが、一方で、深刻な過疎化が進んでいる地域も多くあります。そのような過疎地では、都心部に比べて、運ぶ荷物の数は圧倒的に少なくなり、密集度も低くなります。

物流会社において、時間あたりどれだけ荷物を配送したかが収益に繋がることを考えると、過疎地は採算を合わせにくいのが事実です。しかし現在の物流はライフラインに直結します。収益が上がらないからといって見捨てるわけにはいきませんが、収益がなければ会社が潰れてしまうことも現実。そこで、電力コストだけで安定稼働することの出来るドローン配送が、大きな可能性を見出してくれると期待されています。

離島では、一日の運航数が少ない地域があり、船がないと物が届きません。大型のドローンで運搬回数が増えれば、離島により多くの荷物を届けることができます。山間部でも同様であり、地理的特性により荷物を届けづらいという問題点を、環境に合わせ開発されたドローンが解決してくれることは明らかです。

ドローン配送の未来展望

日本国内におけるドローン活用は、前述のように2022年にようやくレベル4の飛行が解禁され、有人地帯における目視外飛行が可能になり、より一層ドローン配送の普及に期待がかかっています。これまでのドローン配送の実証実験は離島や過疎地域で主に行われてきましたが、今後は都市部を含めた一般地域における配送利用が本格化すると予想されています。

気象条件と地形を考慮した飛行計画

上空を飛行するドローンは、UTM(UAV Traffic Management)と呼ばれるドローン運行管制システムが不可欠であり大きなカギとなります。

将来的に様々なメーカーの多様な性能のドローンが同時に複数飛び交う状況になれば、適切な管制システムがなければ事故や混乱などのリスクは大きくなります。また、こうした管制システムを機能させるために、HDマップと呼ばれる高精度の3次元地図も必要です。過疎地域などでは問題ないが、様々なビルが建ったり取り壊されたりする都市部で飛行するには、リアルタイムなマップデータは欠かせません。

さらに気象情報も低高度な上空において、風力分析など環境整備において欠かせません。
ドローンによる荷物配送では、配送地域の風量などの気象条件・予測や地形などが飛行ルートや飛行日時の設定に大きく影響を与えます。

例えば、強風雨時は本来の飛行ルートからの離脱や、離着陸時の事故リスクがあるため、これらを考慮すると、飛行地域の風向風速を把握できる仕組みが必要となります。具体的には、あらかじめ選定した地上局ソフトウェアを使用して、飛行予定ルートの気象予測情報や地形・標高を可視化し、飛行計画策定時に利用できるかを確認します。

結果として、飛行前に配送ルートと対象区域の風速や降雨量などを確認することで、予定していた飛行ルートの修正は十分に行えます。今後、飛行可否の判断を正確に定量的に下す指標策定は、ドローン配送運用を属人化させないために必要です。

参照:ラストワンマイル領域におけるドローンを活用した配送業務|日立コンサルティング株式会社

多様な地域での実用化へ

現在、Amazonや日本郵便などがドローン配送の実証実験を進めています。しかし、両社いずれも人口の非密集地域、過疎地での導入を目指したドローン配送です。

一方で、大都市部でドローン配送を実現するためには、墜落のリスクヘッジ、着陸地の確保、ビルの乱反射による測位システムの混乱や騒音問題などの課題があるものの、海外のドローン配送の実例を見ると、中国の大手デリバリー企業「美団」は、深圳市という大都市の市街地でドローン配送を実現しています。

また、Amazonのドローン配送サービス(Amazon Prime Air)は、逆転の発想をしています。それは万が一墜落をしても被害を与えない地域を配送先に選び実用化するという考え方です。カリフォルニア州ロックフォードとテキサス州カレッジステーションで実用され、いずれも人口密度は高くない地域です。飛行をしながら地上を監視し、人や動物などを察知すると、迂回をして飛行をするシステムが組み込まれています。
ただし、道路を横切る許可は連邦航空局から取得できていないため、その中でも配達先はまだ限られているということです。

では日本のケースを紹介すると、日本郵便は、東京都奥多摩町で郵便物のドローン配送の試行を行なっています。奥多摩郵便局からの荷物を同じ奥多摩地区の送り先まで届けるというもので、ルートに沿った自律飛行ですが、操縦士が常時リモート監視を行い、問題があれば操縦に介入をして安全誘導するというもの。また、配送中に異常が発生した場合は自動的にパラシュートが放出され、不時着をする仕組みです。

そして着陸地が個人宅の庭になるケースがあるため、人がいた場合はリモート監視をする操縦者が音声で退避するように求めてから着陸し荷物を置くという方法をとっています。

このようにつまり、中国のケースを除く、日米いずれのドローン配送も人口密度の低い地域で飛行させています。そもそも事故被害が起きる確率は少ない上に、さらに事故被害が起きるリスクを回避する工夫もしています。

将来的に過疎地のみならず、都市部でもドローン配送を視野に入れて日本のドローン・物流業界は動いています。
多様な地域での実用化達成のためには、成功例を基にした基盤システムの改良開発、ネットを含めたインフラ整備は欠かせないことは明らかです。

参照:Amazonがイタリアとイギリス、および米国内3か所目となる地域でのドローン配送の開始を発表 – About Amazon
未来の物流レボリューションVol.4 日本初!レベル4飛行でのドローンによる配送を実施!|JP CAST

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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