トラックで荷物を運搬する際、最も重要な要素の一つが最大積載量です。この情報は通常、車両後部のステッカーや車検証に記載されており、日常的に目にする機会が多いでしょう。
本記事では、トラックの最大積載量の種類、見分け方、用途別の選び方、そして注意点について詳しく解説します。
トラックの積載量の種類と基本知識
トラックの最大積載量は、大型・中型・小型の分類によって異なります。法律で定められている「車両総重量」に基づいて、大型トラックは11t以上、中型トラックは3t以上~7.5t未満、小型トラックは3t未満が一般的な目安となります。
積載量の計算方法は以下の通りです: 最大積載量 = 車両総重量 – (車両重量 + 全乗員重量) ここで、全乗員重量は定員×55kgで計算されます。
トラックの積載量の種類とそれぞれの違い
大型トラック
大型トラックの車両総重量は、ホイールベース(最遠軸距)によって変わります。ホイールベースとは、車両最前部の車軸中心から最後部の車軸中心までの水平距離のことです。
・5.5m未満:車両総重量20t
・5.5m以上7m未満:全長9m未満で20t、全長9m以上で22t
・7m以上:全長9m未満で20t、全長9m以上11m未満で22t、全長11m以上で25t
これらの規定により、大型トラックの積載量目安は6.5t以上となります。
中型トラック
中型トラックは一般的に4t(または5t)トラックと呼ばれ、積載量は3~6.5tが目安です。ただし、必ずしも4tが上限ではありません。2007年の道路交通法改正により、中型トラックの車両総重量は7.5tまでと変更されたため、現在では4t以上の積載が可能なトラックも多く存在します。
小型トラック
小型トラックの積載量は2t以下が一般的です。加えて、中型トラックの積載量を増加させた「増トントラック」も展開されています。
積載量を決定する重要な要素として、架装の有無や種類も考慮する必要があります。架装が重くなるほど最大積載量は減少するため、架装を選択する際には最大積載量への影響も考慮することが重要です。
トラックの積載量の見分け方
トラックは車幅、長さ、高さによって小型、中型、大型の3つに分類されます。それぞれの積載量の見分け方について、外観的特徴を中心に詳しく説明します。
トラックの外観から積載量を見分けるポイント
小型トラック
小型トラックは最もコンパクトなサイズで、小回りが利くのが特徴です。主にコンビニやスーパーの配送、宅配便など、地域内の短距離輸送に使用されます。
・最大積載量:3トン以下
・車両総重量:5トン以下
・寸法:全長4.7m以下×全幅1.7m以下×全高2m以下
・荷台寸法:約1.9m(幅)×4.3m(長さ)
・特徴:2軸(前輪1軸、後輪1軸)、シングルタイヤ
現在の運転免許基準では、準中型免許以上で運転可能です。普通免許保持者は2tトラックまで運転できます。
中型トラック
中型トラックは小型トラックより一回り大きく、引越しや製造業・小売業の近距離から中距離輸送まで幅広く使用されます。
・最大積載量:3トン以上~6.5トン以下
・車両総重量:7.5トン未満
・寸法:全長8.5m以下×全幅2.5m以下×全高3.8m以下
・荷台寸法:約2.23m(幅)×6.2m(長さ)
・特徴:2軸または3軸、後輪ダブルタイヤ
中型免許保持者が運転可能です。
大型トラック
大型トラックは中距離から長距離の輸送で使用され、一般的に10トントラックと呼ばれるサイズです。
・最大積載量:6.5トン以上
・車両総重量:11トン以上
・寸法:全長12m以下×全幅2.5m以下×全高3.8m以下
・荷台寸法:約2.3m(幅)×9.6m(長さ)
・特徴:3軸以上、後輪ダブルタイヤ、エアサスペンション
大型一種免許の取得が必要です。
また、トラックのナンバープレートの色も重要な識別要素です。白ナンバーは自家用車、緑ナンバーは事業用車(貨物運送事業者が使用)を示します。
メーカーや車種ごとの特徴から積載量を見分ける
各メーカーが販売しているトラックを、車種やサイズ別に紹介します。
小型トラック:いすゞ エルフ
いすゞ自動車の小型トラック「エルフ」は、流通量が多く人気のモデルです。1959年の販売開始以来、数々の改良を重ね、2023年には7代目モデルが発売されました。
・最大積載量:3トン以下
・車両寸法:全長4,685mm×全高1,960mm×幅1,620mm
・荷台寸法:全幅1,695mm×長さ3,120mm×高さ380mm
中型トラック:日野 レンジャー
日野自動車の「レンジャー」は、中型トラックとして幅広いラインナップを持ち、4トンクラスから10トンまでの車種があります。長年、国内中型トラック販売数でトップシェアを維持しています。
・最大積載量:3トン以上~6.5トン以下
・車両寸法:全長8,677mm×全高2,445mm×幅2,130mm
・荷台寸法:全幅2,230mm×長さ6,705mm×高さ395mm
大型トラック:いすゞ ギガ
いすゞ自動車の「ギガ」は車両総重量25トンの大型トラックです。2023年には国内初の車両総重量25トンの低床3軸車が新たに追加され、衝突回避支援機能の追加や前方検知精度の改良により、安全性が向上しています。
・最大積載量:6.5トン以上 ・車両寸法:全長11,985mm×全高3,795mm×幅2,495mm
・荷台寸法:全幅2,410mm×長さ9,675mm×高さ2,655mm
用途別のトラックの選び方
トラックには多様な種類があり、積載量、燃費、運転性能などに大きな違いがあります。トラックの種類は、車両に搭載されている装備(架装)によって決まります。適切な架装・トラックを選ばなければ、業務に支障をきたす可能性があるため、各特徴や用途を十分に理解することが重要です。
引越しに最適なトラックの選び方
引越し用トラックは、搬送荷物量に応じて軽自動車から4トン車まで様々なタイプが利用されます。適切なサイズ選びは、コスト効率と作業効率に直結します。
軽トラック
・適した用途:一人暮らしの引越し(ワンルーム、1K)
・荷台サイズ:約1畳半
・積載可能な荷物例:冷蔵庫、洗濯機、シングルベッド、テーブル、小型テレビ、テレビ台、掃除機、電子レンジ、扇風機、カラーボックス、ダンボール約10個
2トントラック
・適した用途:荷物の多い単身者や2人住まいの引越し
・荷台サイズ:約3畳半
・積載可能な荷物例:1トン車の荷物に加え、洋服ダンス、食器棚、メタルラック、自転車、2ドア冷蔵庫、全自動洗濯機、中~大型テレビ、衣装ケース、布団、ダンボール約20~30個
3トントラック
・適した用途:2~3人家族の引越し
・特徴:2トン車より横幅が広い
・積載可能な荷物例:2トン車の荷物に加え、大型冷蔵庫、ドラム式洗濯機、大型液晶テレビ、整理タンス、サイドボード、テーブルと椅子、セミダブルベッド、ソファ、コタツ、デスクトップパソコン、ハンガーボックス5個、ダンボール約30箱
4トントラック
・適した用途:3~4人家族の引越し(2LDKや3K以上)
・荷台サイズ:約8畳
・積載可能な荷物例:ダンボール約40~60個、家電一式、家具一式、ベッド、ダイニングテーブル(4人掛け)、食器棚、レンジ台などキッチン家具、本棚、布団(人数分)、衣装ケース
事業・運送に最適なトラックの選び方
運送業では、荷物の種類や輸送条件に応じて様々なトラックが使用されます。主な種類は以下の通りです:
アルミウィング
側面の開閉が可能で、効率的な荷物の積み下ろしができます。多様な貨物の運送に適しており、軽量なアルミ製ボディにより燃費向上にも貢献します。
アルミバン
軽量で堅牢な構造を持ち、外部の影響から貨物を保護します。電子機器や精密機械など、繊細な荷物の輸送に適しています。
冷凍バン
温度管理が必要な食品や医薬品の輸送に不可欠です。品質を維持しながら長距離輸送が可能です。
冷凍ウィング
アルミバンと冷凍バンの特性に加え、側面が開く特徴があります。大量の冷凍・冷蔵貨物の迅速な積み下ろしが可能です。
平ボディ
制限内であれば大きさや形に関わらず積載可能です。自転車、家具、家電などの輸送に使用されます。クレーン付きの場合、重量物や大型荷物の輸送に適しています。
ダンプ
建設現場や土木工事で使用され、土砂や砂利などのばら積み貨物の運搬に適しています。荷台を傾けて積荷を降ろすことができます。
タンクローリー
液体や気体の輸送に使用されます。石油製品、化学薬品、食用油などの運搬に適しています。
キャリアカー
自動車の運搬に特化したトラックです。複数台の車両を一度に運搬できます。
これらの特殊な架装を持つトラックは、それぞれの業界や用途に特化した設計となっており、効率的な物流を支えています。
トラック選びの注意点
トラック選びには多くの要素を考慮する必要があります。積載量、燃費、運転性能などの違いを理解し、適切な選択をすることが重要です。
トラックの積載量に関する法規制と注意点
トラックの積載量に関しては、以下の点に注意が必要です。
車両総重量
車両総重量は次の式で計算されます。
車両総重量 = 車両重量 + (乗車定員 × 55kg) + 最大積載量
この値は、道路の保護と安全運転の観点から法律で規制されています。
最大積載量
最大積載量は車検証に記載されており、この重量を超える荷物の積載はできません。同じ形状のトラックでも、燃料タンクの増設やユニック装備、ウイングや冷蔵冷凍機の装着により最大積載量が変わることがあります。
最大積載量は以下の式で計算できます。
最大積載量 = 車両総重量 – (車両重量 + 乗車定員 × 55kg)
過積載に関する注意
最大積載量を超えて荷物を積むと過積載となり、法律違反になります。過積載で運転すると、ドライバー、事業者、荷主に対して罰則が適用される可能性があります。悪質な場合は事業許可の取消処分や運行管理者の資格取消などの厳しい措置が取られることもあります。
大型車の過積載における運転者への罰則は以下の通りです。
過積載割合が100%以上:違反点数6点、懲役6か月以下または罰金10万円以下
過積載割合が50%以上100%未満:違反点数3点、反則金4万円
過積載割合が50%未満:違反点数2点、反則金3万円
最大積載量の2倍を超える過積載(2015年以降):即時告発の対象となり、100万円以下の罰金が課せられる可能性あり
これらの罰則は、道路の保護と交通安全を確保するために設けられています。過積載は車両の操縦性や制動性能を低下させ、重大な事故につながる危険性があるため、厳しく取り締まられています。
中古トラックを購入する際の注意点
中古トラックを購入する際は、以下の点に特に注意を払う必要があります。
エンジンのチェック
エンジンはトラックの心臓部分であり、最も重要なチェックポイントです。年式が新しく走行距離が短くても、エンジンの状態が悪ければ選択すべきではありません。
エンジンチェックの主なポイントは以下の3つです。
エンジンオイル交換記録の有無
エンジン作動時の異音の有無
マフラーからの異常な煙の有無
これらのチェックに加えて、実際に試運転を行い、加速性能や異音、振動などを確認することも重要です。
外装・内装・付属品のチェック
エンジン周りをチェックした後は、外装、内装、付属品の順にチェックします。特に以下の書類は慎重に確認してください。
・車検証 ・整備記録簿 ・自動車税納付書 ・自賠責保険証
これらの書類は、トラックの法的な状態や過去の整備状況を知る上で重要な情報源となります。
耐用年数の確認
中古トラック購入時には「耐用年数」にも注意が必要です。法的に定められた新車トラックの耐用年数は、用途によって異なります。
・自家用トラック:ダンプ式が4年、その他は5年
・業務用トラック:小型貨物(積載量2トン以下)が3年、普通貨物(積載量2トン超3.5トン以下)が4年、大型貨物(積載量3.5トン超)が6年
例えば、新車登録から5年以上経過している大型貨物車の場合、法定耐用年数を超過した車両となります。ただし、これはあくまで会計上の基準であり、実際の使用可能年数は整備状態や使用状況によって大きく異なります。
整備状況の確認
中古トラックは外装が良好でも、内部のパーツが劣化している場合があります。見た目だけでなく、エンジン周りの状態や車検証、整備記録を参考に選ぶことが重要です。また、信頼できる販売店や整備工場での点検を受けることをお勧めします。
新車購入時の注意点
新車を購入する際も、いくつかの注意点があります。
用途に適した車種選択:オーバースペックな車両を選ぶと初期コストだけでなく、維持費も高くなります。
燃費性能の確認:長期的なコスト削減のため、燃費性能の良い車両を選ぶことが重要です。
安全装備の確認:最新の安全技術を搭載した車両を選ぶことで、事故リスクを低減できます。
アフターサービスの充実度:メンテナンスやサポート体制が充実しているメーカーや販売店を選ぶことが大切です。
車両の将来性:環境規制の強化などを考慮し、将来的にも使用可能な車両を選択することが重要です。
トラック選びは、事業の効率や安全性、コストに直結する重要な決定です。新車・中古車を問わず、十分な情報収集と慎重な検討を行うことが、適切な選択につながります。
結論
トラックの積載量や種類、選び方について詳しく見てきました。適切なトラック選びは、効率的な業務運営や安全な輸送、コスト削減につながる重要な要素です。
積載量や車両サイズ、用途に応じた架装など、多くの要素を考慮する必要がありますが、最も重要なのは自身の業務や用途に最適なトラックを選ぶことです。過積載や不適切な車両選択は、法的問題だけでなく、安全面やコスト面でも大きなリスクとなります。
新車購入の際は、長期的な視点で燃費性能や安全装備、アフターサービスなどを考慮し、中古車購入の際は特にエンジンの状態や整備履歴に注目することが大切です。
トラック選びに際しては、専門家や信頼できる販売店のアドバイスを受けることも有効です。また、実際に試乗を行い、操作性や乗り心地を確認することも重要です。
適切なトラック選びは、ビジネスの成功と安全な輸送の基盤となります。本記事の情報を参考に、自身の需要と条件に最適なトラックを選択し、効率的で安全な輸送業務の実現につなげていただければ幸いです。