トラック運転手の年収は、長距離なのか地場配送なのか、軽・中型なのか大型・けん引(トレーラー)なのかによって大きく変わります。さらに会社の規模、元請けなのか下請けなのか、配車の仕組みや評価制度まで、同じ「トラック運転手」でも収入には大きな差が生まれるのが現実です。
2024年4月からは時間外労働の上限(年960時間)が本格的に適用され、これまでの「長時間働いて稼ぐ」やり方から「効率よく働いて稼ぐ」やり方への変化が進んでいます。
この記事では、平均年収と給与の内訳、車種・働き方別の相場、地域・会社規模・経験年数による違い、働き方改革の影響、現職での年収アップ術、転職と独立の現実、未経験からのステップアップまでを、実際に役立つ視点で詳しく解説します。
トラック運転手のリアルな年収事情
全国平均の目安は「400万円台」が中心です。調査によって多少の違いはありますが、複数の統計や業界の解説を見ても400万円台を中心とする相場観で一致しています。ただし、職種や勤務形態が幅広いため、実際に自分の収入を見積もる時は、車の種類・働き方・地域・企業規模・経験などを考慮して判断する必要があります。
平均年収と給与の仕組み
平均年収はおおむね400万円台、月給は24万〜32万円がボリュームゾーンというのが一般的な整理です。実際の記事や統計を見ても、トラック運転手の平均は400万円台に収まっており、車の種類・勤務時間帯(夜間・深夜)・走行距離によって上下が決まります。
小型トラックは300〜400万円程度、中型は450万〜550万円程度が相場という解説が多く、長距離や夜間の仕事に入ると総収入は上がりやすくなります。
給与の内訳は、固定の基本給に加えて、距離・回数・作業内容(積み下ろし・荷扱い・待機等)に応じた歩合給、そして時間外・深夜・休日の割増手当、無事故・皆勤・資格・通勤などの各種手当が積み重なる仕組みが一般的です。
実際の収入の差が出るのは、歩合の単価や上限、待機・荷待ちへの手当の有無、深夜割増の計算開始時間、無事故評価の仕組みなど、会社の制度設計によるところが大きいです。同じ総支給額でも明細の構成によって稼ぎ方の自由度が変わるため、求人票や就業規則で「歩合の基準単価・上限」「待機時間の扱い」「深夜手当の計算方法」「評価期間」を具体的に確認することが、入社後のギャップを避けることに直結します。
【種類別】トラックの車種と働き方でこれだけ変わる年収
車が大きくなるほど単価は上がり、けん引(トレーラー)は大型よりも一段高い水準になるのが一般的です。令和6年賃金構造基本統計調査(2025年3月公表)をもとにした整理では、営業用大型貨物車運転手の平均年収は約491.9万円とされ、けん引はこれを上回る水準が相場となっています。
長距離は1回の運行での売上が大きく、距離歩合や深夜割増の積み重ねで年収が伸びやすい一方、地場は毎日帰宅しやすいが単価は控えめという構造的な違いがあります。
相場の具体例として、長距離は約400万〜750万円の幅で語られ、大型は約450万〜650万円、中型は約450万〜550万円とする例が一般的です。小型は300〜400万円程度が目安で、日帰りの地場は範囲がやや下がりやすい一方、夜間や安定した荷主との取引、高付加価値の荷物(危険物・重量物・温度管理)では水準が底上げされます。
高単価の仕事は求人数が相対的に少なく、無事故の実績・資格・勤務態度などの評価要件を満たして配車担当からの信頼を獲得することが前提になります。
給与明細だけでは見えない年収を左右するポイント
同じ車種・同じ働き方でも、地域(都市圏か地方か)、企業規模(大手・元請けに近いか下請けの深い層か)、経験年数・評価(無事故・無違反の積み重ね)で年収は大きく変わります。
さらに、企業側の運用能力(配車の平準化、荷待ち削減、積み下ろし予約、デジタコ・安全投資の導入状況)によって、時間当たりの収益が変わるため、規制強化の状況では会社選びがより重要になります。
地域・会社規模・経験年数で見る年収差
都市圏は案件の密度が高く、夜間・幹線や高付加価値の荷物に関わりやすいため、単価と稼働の両面で年収が底上げされやすい傾向があります。企業規模では大手・元請けに近い企業ほど福利厚生や賞与の原資が厚く、固定給の比率が高い設計も見られます。
経験年数は、無事故・無違反の継続が評価に直結し、車種のステップアップ(中型→大型→けん引)や高付加価値の荷物への配車の可否を左右します。企業規模や経験年数で水準差が生じる傾向を示すデータもあり、規模が大きいほど、経験が深いほど段階的に上がる実態が示されています。
応募を検討する時には給与だけでなく、商流での位置づけ(元請け直接契約か、下請けの階層の深さ)も確認し、賞与や各種手当の評価条件、配車方針(繁忙期と閑散期の差・穴埋めの頻度)、待機削減の仕組み(予約での荷卸し、荷主の協力)まで確かめるとミスマッチが減ります。
働き方改革は収入にどう影響する?
2024年4月から自動車運転の業務にも時間外労働の上限規制が適用され、臨時的な特別の事情があっても年960時間(休日労働を含まず)が上限となりました。あわせて、拘束時間・休息期間・連続運転等を定める「改善基準告示」の見直しが進み、長時間に依存する稼ぎ方は制約を受けます。
現場の実感としては、時間外の抑制で残業手当の積み重ねが鈍る一方、基本給の底上げや出来高制度の見直し、配車の平準化、積み下ろし予約導入などで生産性を補う動きが広がっています。
収入への影響については、年960時間を超える時間外労働で稼いでいた層を中心に「年収最大62万円の減少可能性」を示すシミュレーションもありますが、これは予測値であり、企業の運賃交渉や業務設計の見直し次第で実際の影響は変動します。
したがって、業界全体での一律減少ではなく、各社の適応力の差が年収差として表れやすい局面に入ったと捉えるべきです。
今からできる!トラック運転手として年収を上げる方法
年収アップには「土台(資格・車種)」「中身(荷物の付加価値・運用設計)」「評価(無事故・勤務態度)」を同時に高めるのが近道です。規制強化の状況では、労働時間の総量よりも、時間当たりの収益性と作業単価の引き上げが鍵になります。
資格で運転できる車・扱える荷物を広げ、配車と段取りで無駄な時間を削り、無事故・無違反・勤怠を安定させて良い案件を継続的に回してもらう——こうした設計が、残業に依存しない持続的な年収の底上げにつながります。
現職で収入を増やす3つのコツ
第一は「資格で単価の土台を上げる」ことです。大型免許は中型からの明確な単価差を生み、けん引免許はセンター間や幹線の高単価ゾーンを開きます。危険物取扱者(乙種第4類)は燃料・化学品など高付加価値の荷物の門戸を広げます。取得コストはかかりますが、車種×荷物の付加価値の二軸で単価を上げる王道の方法です。
第二は「担当する荷物と運用を見直す」ことです。同じ距離でも、重量物・精密機器・危険物・温度管理の荷物は作業価値が高く単価が上がりやすい。積み下ろし予約や荷待ち短縮が整っている現場ほど時間当たりの収益は改善します。
フォークリフトの技能、積み付けの合理化、安全運転での燃費・消耗品抑制など「日々の改善」も、年間で見ると大きな差に変わります。配車担当との連携で、夜間やセンター間など安定的に稼ぎやすい枠に入る働きかけも効果的です。
第三は「無事故・無違反を継続し、評価軸に合わせて行動する」ことです。事故コストが大きい運送業では、無事故の継続が案件・車種の配車、賞与・昇給の査定に直結します。多くの企業が無事故・皆勤手当を設け、評価期間の継続で増額する仕組みを採用しています。
査定項目(無事故期間、遅延・クレーム、協力度等)を面談で確認し、目に見える貢献を積み重ねると、好循環が生まれやすくなります。
転職か独立か?キャリアチェンジの現実
転職での現実的な解決策は、「車種アップ×高付加価値案件×元請けへの近さ」の掛け算です。大手・元請けに近い企業ほど賃金と運用体制が整い、センター間の大型・けん引や危険物などで水準が上がりやすい。ただし、夜間・宿泊運行、休日の柔軟性、家庭との両立などのトレードオフは避けられません。
歩合の単価・上限、待機時間の扱い、深夜割増の計算開始時間、休息の確保、安全投資の実装状況は、内定前に現場見学まで含めて確認しましょう。
独立(個人事業主)は年収の上振れ余地が最も大きい選択肢ですが、売上の「直接取引」に成功して初めて機能します。多重下請けの深い層では粗利が薄く、燃料・保険・整備・タイヤ・減価償却で手取りが削られます。
直接契約の開拓、元請けに近い商流への接近、継続案件の確保、支払いサイトの管理、保険・安全投資の一体設計が必須です。専門メディアの分析でも、従業員として年収1000万円は極めて困難で、独立や高度な特化(重量物・危険物・特殊輸送)で初めて現実味が生まれるという整理が一般的です。
【キャリアプラン別】目指せる年収のロードマップ
未経験の出発点は小〜中型の地場配送が中心です。ここで土地勘・ルート、荷扱い、安全運転の基礎を固め、無事故・無違反で信頼スコアを積み重ねます。経験を積むごとに、夜間や中距離を取り入れ、深夜割増と距離歩合を取り込みながら評価を安定化します。
2〜3年目を目安に大型免許、続いてけん引免許・危険物(乙4)で付加価値の荷物の門戸を開くと、センター間・幹線の高単価ゾーンに届きます。会社選びは、省力化投資(積み下ろし予約・デジタコ・荷待ち削減)が進む企業を優先すると、規制強化の状況でも時間当たりの収益を最大化しやすくなります。
未経験から始める年収アップの道のり
0〜1年目は小〜中型の地場で基礎固め、フォークリフト技能や積み付け・荷締めの正確性を磨きます。1〜2年で夜間・中距離を部分的に取り入れて実地経験を増やし、深夜割増と距離歩合の伸びしろを確保します。
2〜3年で大型免許を取得し、大型地場→中距離→長距離と段階を踏むのが王道です。けん引免許や危険物(乙4)を加えれば、高単価の荷物やセンター間・幹線輸送にアクセスしやすくなります。
評価(無事故・無違反)の継続は車種・案件の更新の前提であり、配車担当からの信頼獲得に直結します。
年収1000万円は可能?達成するための条件
結論として、会社員ドライバーで年収1000万円は極めて難しく、独立開業や高度な特化で初めて現実味が出ます。背景には、時間外の年960時間上限で残業の積み重ねが制約されること、荷主からの価格圧力と多重下請け構造でマージンが薄くなりやすいこと、需要の逼迫がそのまま賃金に転嫁されにくい産業構造があるためです。
独立で射程に入れるには、直接契約の開拓、元請けに近いポジション取り、高単価ニッチ(重量物・危険物・低温・特殊車両)への装備・資格投資、空車・帰り荷の最適化、資金繰り・保険・安全投資の一体設計が不可欠になります。
従業員枠でも「大型・けん引×センター間×夜間×高評価の継続」で600万〜700万円級の実例は散見されますが、募集は限られ競争が激化します。
堅実な現実的解決策は、無事故の継続、資格取得、車種アップ、案件の質の更新、転職の節目での商流の上方移動を積み重ねることです。
まとめとして、年収を決めるのは「車種・荷物の付加価値・働き方」と「企業の運用力・制度設計」です。2024年以降は「長時間で稼ぐ」から「設計で稼ぐ」への転換が進みます。
未経験からでも、無事故・無違反と資格で車種と案件の質を上げ、待機削減や予約での荷卸し、配車平準化が整う企業で働けば、年収の上限は確実に押し上げられます。
次の一歩は、今の給与明細の内訳を分解し、歩合の単価・上限、待機時間の扱い、深夜割増の起点、安全投資の有無を整理して、弱点に直結する行動(資格取得、配車交渉、転職検討、事業計画の試算)に置き換えることです。



