トラックを所有・運用する際には、さまざまな税金が発生します。特に事業用トラックの場合、これらの税金は運営コストに直結するため、正確な金額を把握し、適切な節税対策を講じることが重要です。本記事では、トラックにかかる主要な税金の種類と具体的な金額、そして知っておくべき節税方法について詳しく解説します。
トラックの税金は主に「自動車税(種別割)」と「自動車重量税」の2つに分かれており、それぞれ異なる計算基準と納付時期が設定されています。また、用途や車両の大きさによって税額が大きく変わるため、自身の車両がどの区分に該当するのかを正しく理解することが必要です。
トラックにかかる2つの主要な税金
トラックを所有する際に必ず支払う必要がある税金は、「自動車税(種別割)」と「自動車重量税」の2つです。これらの税金はそれぞれ異なる性質を持ち、計算基準や納付時期も異なります。
毎年納める「自動車税(種別割)」
自動車税(種別割)は、毎年4月1日時点でトラックを所有している人に課税される地方税です。この税金は都道府県が管轄しており、年に1回、5月上旬に納税通知書が送付されます。納付期限は原則として5月31日となっており、一部の地域では6月30日が納付期限となっています。
自動車税の計算基準は「最大積載量」と「用途」の2つの要素によって決まります。最大積載量とは、そのトラックが法的に積載できる最大重量のことで、車検証に記載されています。用途については「自家用」と「営業用」の2種類があり、一般的に営業用の方が税額は低く設定されています。
この税金の特徴として、車両の使用頻度や実際の積載量に関係なく、あくまで4月1日時点での所有者に課税される点があります。そのため、年度の途中で車両を売却した場合でも、その年度分の自動車税は全額納付する必要があります。
車検時に納める「自動車重量税」
自動車重量税は、車検時に納付する国税で、車両の重量に応じて税額が決定されます。この税金は新車購入時と車検時に納付する必要があり、車検期間分をまとめて前払いする仕組みとなっています。
重量税の計算基準は「車両総重量」です。車両総重量とは、車両本体の重量に最大積載量と乗員の重量(1名あたり55kg計算)を加えた重量のことで、自動車税の計算基準である最大積載量とは異なります。
車検期間は車両の用途や大きさによって異なり、一般的な小型・中型トラックの場合は2年間、大型トラックの場合は1年間となっています。そのため、重量税の実質的な年間負担額を計算する際は、車検期間で割り戻して考える必要があります。
【車種・用途別】トラックの税額一覧
トラックの税金は車両の大きさや用途によって大きく異なります。ここでは、実際の税額を具体的な数字で示し、自身の車両がどの程度の税負担になるかを確認できるようにします。
自動車税(種別割)の税額目安
自動車税(種別割)の税額は、最大積載量と用途によって以下のように設定されています。
最大積載量1トン以下の場合、営業用が6,500円、自家用が8,000円となります。1トンを超えて2トン以下の場合は、営業用が9,000円、自家用が11,500円です。2トンを超えて3トン以下では、営業用が12,000円、自家用が16,000円となり、3トンを超えて4トン以下では、営業用が15,000円、自家用が20,500円となります。
4トンを超えて5トン以下の場合は、営業用が18,500円、自家用が25,500円となり、5トンを超えて6トン以下では、営業用が22,000円、自家用が30,000円です。6トンを超えて7トン以下の場合は、営業用が25,500円、自家用が35,000円となり、7トンを超えて8トン以下では、営業用が29,500円、自家用が40,500円となります。
8トンを超える場合は、基本税額に加えて1トンごとに追加料金が発生します。営業用の場合は1トンあたり4,700円、自家用の場合は1トンあたり6,300円が加算されます。
例えば、最大積載量10トンの大型トラックの場合、営業用であれば29,500円(8トンまでの基本税額)+4,700円×2(8トンを超える部分)=38,900円となります。同じ車両が自家用の場合は、40,500円+6,300円×2=53,100円となり、用途による差額は約14,000円となります。
自動車重量税の税額目安
自動車重量税は車両総重量に応じて以下のように設定されています。車両総重量は、車両重量+最大積載量+乗員重量(1名55kg×乗車定員)で計算されます。
車両総重量が1トン以下の場合、自家用で年額8,200円、営業用で年額5,200円です。1トンを超えて2トン以下の場合は、自家用で年額16,400円、営業用で年額10,400円となります。2トンを超えて3トン以下では、自家用で年額24,600円、営業用で年額15,600円です。
3トンを超えて4トン以下の場合は、自家用で年額32,800円、営業用で年額20,800円となり、4トンを超えて5トン以下では、自家用で年額41,000円、営業用で年額26,000円です。5トンを超えて6トン以下の場合は、自家用で年額49,200円、営業用で年額31,200円となります。
6トンを超えて7トン以下では、自家用で年額57,400円、営業用で年額36,400円となり、7トンを超えて8トン以下の場合は、自家用で年額65,600円、営業用で年額41,600円です。8トンを超える場合は、1トンごとに自家用では8,200円、営業用では5,200円が加算されます。
実際の車検時には、この年額に車検期間の年数を乗じた金額を納付することになります。例えば、車両総重量5トンの営業用トラックで2年車検の場合、26,000円×2年=52,000円を車検時に納付します。
トラック税金の納付方法と注意点
トラックの税金を確実に納付するためには、納付方法と注意点を正しく理解することが重要です。特に滞納した場合のリスクは深刻であり、事業運営にも影響を与える可能性があります。
納税通知書はいつ届く?主な支払い方法
自動車税の納税通知書は、毎年4月下旬から5月上旬にかけて4月1日時点の所有者宛てに発送されます。郵送事情により最大10日程度かかる場合もあるため、5月中旬になっても届かない場合は、各都道府県の自動車税事務所に問い合わせることをおすすめします。
納付方法は多様化しており、従来の金融機関窓口での現金納付に加え、コンビニエンスストアでの支払いが可能です。セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートなどの主要コンビニチェーンで、24時間いつでも納付できます。
近年普及しているキャッシュレス決済では、クレジットカードによる納付が可能です。地方税お支払いサイトを利用することで、VisaやMasterCard、JCBなどの主要ブランドのクレジットカードで支払いができます。ただし、税額に応じてシステム利用料が発生するため、最初の1万円までは37円、以降1万円ごとに75円が加算されます。
スマートフォン決済アプリも利用できるようになりました。PayPay、LINE Pay、楽天ペイ、d払いなどの主要アプリで、納付書のバーコードやeL-QRコードを読み取ることで決済が可能です。これらの方法では、金融機関やコンビニに行く必要がなく、自宅にいながら納付できる利便性があります。
ペイジー(Pay-easy)を利用すれば、インターネットバンキングやATMから納付することも可能です。ペイジー対応のATMであれば、銀行の営業時間外でも納付できます。
税金を滞納した場合のリスク
自動車税を滞納した場合、複数の深刻なリスクが発生します。まず、納付期限の翌日から延滞金が発生し、1ヶ月以内は年率2.4%、1ヶ月を超えると年率8.7%と高い利率が適用されます。例えば、税額50,000円を2ヶ月滞納した場合、約720円の延滞金が加算されます。
さらに重要なのは、自動車税を滞納していると車検を受けることができない点です。車検時には納税証明書の提示が必要であり、滞納があると証明書が発行されません。車検切れの状態で公道を走行すると、道路交通法違反となり、違反点数の加算や罰金の対象となります。
滞納が長期化すると、督促状や催告書が送付され、最終的には財産の差し押さえが強制執行されます。事業用トラックの場合、車両自体が差し押さえの対象となる可能性もあり、事業継続に重大な影響を与える恐れがあります。
また、滞納により納税証明書が発行されないため、各種許可申請や入札参加の際に必要な書類が準備できない場合があります。運送業許可の更新時や公共工事の入札参加時に影響が出る可能性もあるため、確実な納付が重要です。
知らないと損?トラックの税金を抑える賢い方法
トラックの税金は工夫次第で合法的に節約することが可能です。ここでは、実際に活用できる節税方法について詳しく解説します。
登録内容の見直し(減トン・用途変更)
最も効果的な節税方法の一つが「減トン」です。減トンとは、最大積載量を意図的に減らすことで自動車税を下げる方法です。実際の運送業務で満載にすることが少ない場合や、軽量な荷物を中心に扱う場合には、減トンによる節税効果が期待できます。
例えば、最大積載量3トンのトラックを2トン以下に減トンした場合、営業用であれば年間3,000円、自家用であれば年間4,500円の節税が可能です。減トンの方法には、タイヤのプライ数を減らす方法や、架装でフロントを重くする方法などがあります。
減トンを行う際は、運輸支局で構造変更手続きが必要となり、手続き費用として数万円が発生しますが、長期的に見れば十分な節税効果が期待できます。ただし、減トンによって実際の積載能力が制限されるため、業務への影響を十分に検討する必要があります。
用途変更も有効な節税手段です。自家用から営業用への変更により、税額を大幅に削減できる場合があります。例えば、最大積載量3トンのトラックの場合、自家用の16,000円から営業用の12,000円に変更することで、年間4,000円の節税が可能です。
ただし、営業用への変更には運送業許可の取得が必要となり、許可要件を満たす必要があります。また、営業用車両には運行管理や点検整備に関する厳格な規制があるため、事前に十分な検討が必要です。
減税制度の活用(グリーン化特例など)
環境性能に優れた車両を導入する際に活用できるのが「グリーン化特例」です。この制度は、令和5年4月1日から令和8年3月31日までの期間中に新車登録を行った車両が対象となり、一定の環境基準を満たす場合に自動車税が軽減されます。
電気自動車や燃料電池自動車、天然ガス自動車などの場合、新車登録の翌年度の自動車税が75%軽減されます。また、排出ガス基準と燃費基準の両方を満たすディーゼル車の場合は、基準の達成度に応じて50%または75%の軽減が適用されます。
例えば、最大積載量3トンの営業用トラックで75%軽減が適用された場合、通常の12,000円から3,000円に減額され、年間9,000円の節税効果があります。この制度は新車登録の翌年度のみの適用となりますが、車両入れ替えのタイミングで検討する価値があります。
自動車重量税においても、環境性能に優れた車両に対する軽減措置があります。エコカー減税として、新車購入時や初回車検時の重量税が軽減または免税となる場合があります。電気自動車や燃料電池自動車の場合は免税となり、ハイブリッド車やクリーンディーゼル車の場合は軽減税率が適用されます。
さらに、中小企業の場合は、環境性能に優れた車両の導入時に活用できる補助金制度もあります。これらの制度を組み合わせることで、車両導入コストの削減と同時に税負担の軽減が可能となります。
なお、これらの制度は時限措置であり、適用条件や軽減率が変更される可能性があるため、車両導入の際は最新の情報を確認することが重要です。また、制度の適用を受けるためには、購入時に必要な書類を準備し、適切な手続きを行う必要があります。
トラックの税金は事業運営において無視できない固定費ですが、適切な知識と対策により負担を軽減することが可能です。税額の正確な把握と計画的な納付、そして合法的な節税対策を組み合わせることで、効率的な事業運営を実現できるでしょう。



