トラックの燃費、どう改善する?コスト削減に直結する4つの視点

トラック運行において燃費の改善は、運送会社にとって最も重要な課題の一つです。燃料費の高騰が続く現在、わずか数パーセントの燃費向上でも年間数百万円のコスト削減に直結します。しかし、多くの企業が「燃費を改善したいが、何から始めれば良いかわからない」という状況に直面しています。

燃費改善への取り組みは、闇雲に対策を講じるのではなく、まず自社の現状を正確に把握することから始まります。その上で、運転技術、車両管理、運行計画という4つの視点から体系的にアプローチすることで、確実な成果を得ることができます。本記事では、これらの視点に基づいた具体的な改善策を詳しく解説し、実践的なノウハウを提供します。

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まずは現状把握から。自社の燃費、正しく測れていますか?

燃費改善の第一歩は、自社の現状を正確に把握することです。多くの運送会社が「燃費が悪い」と漠然と感じていても、具体的な数値に基づいた分析を行っていないのが実情です。正確な現状把握なくして、効果的な改善策を立てることはできません。

トラック燃費の基本的な計算方法

トラックの燃費計算は、基本的に「走行距離÷燃料消費量」の式で求めることができます。単位は通常km/L(キロメートル・パー・リットル)で表示されます。例えば、100km走行して20Lの燃料を消費した場合、燃費は5km/Lとなります。

この計算を正確に行うためには、給油時の記録を詳細に取ることが重要です。満タン給油を基準とし、前回の満タン給油から今回の満タン給油までの走行距離と給油量を記録します。部分給油では正確な燃費が測定できないため、必ず満タン給油で統一しましょう。

また、計算時には以下の点に注意が必要です。まず、エンジン始動時から測定を開始し、暖機運転やアイドリング時間も含めて記録すること。次に、荷物の積載状況や走行ルートの特性(市街地、高速道路、山間部など)も併せて記録することで、より詳細な分析が可能になります。

デジタルタコグラフを導入している場合は、これらのデータを自動的に収集・計算することができます。手動での記録に比べて精度が高く、継続的な測定が容易になるため、燃費管理の効率化につながります。

平均燃費データと比較する重要性

自社の燃費を測定したら、次に業界平均との比較を行います。車両区分別の一般的な燃費目安として、小型トラック(最大積載量3t未満)では10~11km/L、中型トラック(3~6.5t)では7~8km/L、大型トラック(6.5t以上)では4~5km/L程度が見込まれます。

ただし、これらの数値は理想的な条件下での数値であり、実際の運行では様々な要因により低下することが多いです。実際の運行では、交通状況、積載条件、天候、運転技術などの影響を受けて燃費が変動します。

自社の燃費が業界の一般的な数値を下回っている場合は、改善の余地が大きいと考えられます。一方で、標準的な数値を上回っている場合でも、さらなる向上は可能です。燃費改善は継続的な取り組みであり、小さな改善の積み重ねが大きな効果を生み出します。

比較分析を行う際は、同じ車両区分、同じような積載条件、同じような走行環境での比較を心がけましょう。条件が異なれば燃費も大きく変わるため、公平な比較ができません。また、季節による変動も考慮する必要があります。冬場はエンジンの暖機時間が長くなり、夏場はエアコンの使用により燃費が悪化する傾向があります。

毎日の運転で差がつく。燃費を抑える運転のコツ

燃費に最も直接的な影響を与えるのは、日々の運転技術です。同じ車両、同じルートでも、運転方法により燃費は大きく変わります。環境省の調査によると、やさしい発進を心がけるだけで10%程度の燃費改善が期待できるとされています。

急発進・急加速を避けるエコドライブの基本

エコドライブの基本は、急発進と急加速を避けることです。車両が最も多くの燃料を消費するのは、停止状態から動き出すときと、急激に加速するときです。特に重量のあるトラックでは、この傾向が顕著に現れます。

急発進を避けるためには、信号が青になっても慌てて発進せず、ゆっくりとアクセルを踏み始めることが重要です。理想的な発進は、最初の5秒間で時速20kmに達する程度のペースです。これにより、エンジンへの負担を最小限に抑えながら、スムーズに加速できます。

マニュアルトランスミッション車の場合、適切なシフトアップのタイミングも重要です。一般的に、エンジン回転数が2000~2500回転に達する前にシフトアップすることで、効率的な燃費が得られます。回転数が上がりすぎてからシフトアップするのは燃費悪化の原因となります。

逆に、速度が十分に上がっていないのに早めにシフトアップするのも、エンジンに負担をかけて燃費を悪化させます。エンジンの回転数と車速のバランスを見極めて、適切なタイミングでシフトチェンジを行うことが、燃費向上のカギとなります。

また、加速時は一気に目標速度まで上げるのではなく、段階的に速度を上げることも効果的です。例えば、一般道で60km/hまで加速する場合、まず40km/hまで加速し、その後さらに60km/hまで加速するという方法です。これにより、エンジンへの負担を分散し、燃費を改善できます。

一定速度の維持と不要なアイドリングストップ

燃費向上のもう一つの重要なポイントは、走行中の速度を一定に保つことです。頻繁な加減速は燃料消費を増加させるため、可能な限り一定速度での走行を心がけましょう。特に高速道路では、クルーズコントロールを活用することで、燃費を5~10%改善できることがJAFの検証でも確認されています。

一定速度維持のためには、先読み運転が欠かせません。前方の交通状況を常に把握し、信号の変化や渋滞の兆候を早めに察知して、適切な速度調整を行います。急ブレーキを踏む必要がある状況を避けることで、その後の急加速も不要になり、燃費向上につながります。

高速道路での速度設定も燃費に大きく影響します。一般的に、トラックの燃費効率が良いとされる速度帯があり、法定速度を守りながら交通の流れに合わせた適切な速度で走行することが重要です。過度な高速走行は空気抵抗が増大し、燃費悪化の原因となります。

アイドリングストップの徹底も、燃費改善に大きく貢献します。エンジンをかけたまま停車している状態では、走行していないにも関わらず燃料を消費します。全日本トラック協会の資料によると、大型トラックのアイドリング時には1時間あたり約1.5Lの燃料を消費します。

荷待ちや休憩時などでエンジンを止める際は、再始動時の燃料消費も考慮する必要があります。一般的に、5分以上停車する場合はエンジンを停止した方が燃費上有利とされています。ただし、冷凍車や保温車の場合は、荷物の温度管理との兼ね合いを考慮する必要があります。

また、暖機運転の時間も最小限に抑えることが重要です。現代のエンジンは始動直後から走行可能な設計となっているため、極端に長い暖機運転は不要です。冬場でも2~3分程度の暖機で十分であり、その後は低速でゆっくりと走行しながらエンジンを温めることで、燃費と安全性を両立できます。

車両管理を見直そう。燃費向上につながるメンテナンス術

適切な車両管理は、燃費向上において運転技術と同じくらい重要な要素です。エンジンやタイヤの状態が悪化すれば、いくら運転技術が優れていても燃費は改善されません。定期的なメンテナンスと適切な部品選択により、車両の性能を最大限に引き出すことができます。

タイヤの空気圧とエンジンオイルの定期管理

タイヤの空気圧管理は、燃費向上の最も基本的で効果的な方法の一つです。日本自動車連盟(JAF)の検証によると、空気圧が10%低下すると燃費は約1~2%悪化するとされています。これは、空気圧が低下することでタイヤの接地面積が増加し、転がり抵抗が大きくなるためです。

適正な空気圧の維持には、定期的な点検が欠かせません。理想的には週1回、最低でも月1回は空気圧をチェックしましょう。測定は、タイヤが冷えている状態で行うことが重要です。走行後すぐに測定すると、摩擦熱により空気が膨張し、正確な数値が得られません。

空気圧は、タイヤメーカーや車両メーカーが指定する数値に合わせることが基本です。しかし、積載状況や走行条件によって微調整が必要な場合もあります。重い荷物を積載する場合は、やや高めの空気圧に設定することで、タイヤの変形を抑制し、燃費向上につながります。

ただし、空気圧を上げすぎると、タイヤの接地面が少なくなり、制動力や操縦安定性が低下する危険があります。また、タイヤの中央部分だけが摩耗しやすくなり、タイヤの寿命が短くなる可能性もあります。適正値の範囲内での調整を心がけましょう。

エンジンオイルの管理も、燃費に直接的な影響を与えます。オイルが劣化すると、エンジン内部の摩擦が増加し、燃費が悪化します。また、エンジンの故障リスクも高まるため、定期的な交換が必要です。

トラックの場合、エンジンオイルの交換周期は3ヶ月または走行距離10,000~15,000kmが目安とされています。ただし、使用条件により交換周期は変わります。重い荷物を積載して長距離を走行する場合や、渋滞の多い市街地を走行する場合は、より頻繁な交換が必要になります。

オイルの粘度選択も燃費に影響します。一般的に、粘度の低いオイル(例:0W-20)は、粘度の高いオイル(例:15W-40)と比べて燃費が向上しますが、エンジンの仕様や使用条件に適したオイルを選ぶことが重要です。メーカー推奨の粘度を基準に、必要に応じて専門家と相談して選択しましょう。

燃費改善に役立つ車両装備の知識

車両装備の改善も、燃費向上に大きな効果をもたらします。特に、エアロパーツと省燃費タイヤの導入は、比較的簡単に実施できる改善策として注目されています。

エアロパーツの導入により、車両の空気抵抗を減少させることができます。トラックは車体が大きく、高速走行時の空気抵抗が燃費に大きく影響します。特に、キャブ上部に装着するドラッグフォイラー(導風板)は、効果的なエアロパーツとして広く利用されています。

三菱ふそうの公式資料によると、ドラッグフォイラーは、キャブと荷台の間に生じる空気の渦を減少させ、スムーズな気流を作り出すことで、高速走行時の燃費を3~5%改善することが可能です。装着は比較的簡単で、費用対効果も高いため、多くの運送会社で導入されています。

また、サイドスカートやリアスポイラーなども、空気抵抗の低減に効果があります。サイドスカートは、車体下部の空気流を整流し、リアスポイラーは車体後部の空気の乱れを軽減します。これらの装備は、単体では効果が限定的ですが、組み合わせることで相乗効果が期待できます。

ただし、エアロパーツの効果は、主に高速走行時に発揮されます。市街地での低速走行が多い場合は、効果が限定的になる可能性があります。自社の運行パターンを考慮して、導入の是非を判断することが重要です。

省燃費タイヤ(エコタイヤ)の採用も、燃費向上に有効です。ミシュランの公式データによると、転がり抵抗を20%減らすことで燃費を2%向上させることができます。省燃費タイヤは、転がり抵抗を従来のタイヤより大幅に低減するよう設計されています。

省燃費タイヤの選択時は、転がり抵抗係数(RRC)を確認しましょう。この数値が低いほど、転がり抵抗が小さく、燃費向上効果が高くなります。また、ウェットグリップ性能も重要な要素です。燃費性能と安全性能のバランスを考慮して選択することが大切です。

タイヤの交換時期も燃費に影響します。摩耗したタイヤは転がり抵抗が増加するため、適切な時期での交換が必要です。一般的に、溝の深さが1.6mm以下になったら交換の時期ですが、燃費を重視する場合は、もう少し早めの交換を検討することも有効です。

会社全体で取り組む。運行計画で実現する燃費最適化

個々のドライバーの努力だけでは、燃費改善の効果に限界があります。会社全体で組織的に取り組むことで、より大きな成果を得ることができます。特に、デジタル技術を活用した運行管理と、データに基づく計画的な改善が重要です。

デジタルツールを活用した運転状況の可視化

テレマティクス技術の導入により、各車両の運転状況をリアルタイムで把握し、データに基づいた燃費改善が可能になります。GPSと通信機能を組み合わせたシステムにより、車両の位置情報、速度、エンジン回転数、燃料消費量などを詳細に記録・分析できます。

デジタルタコグラフは、運転状況の可視化において中心的な役割を果たします。急加速、急減速、アイドリング時間、速度超過などの運転行動を数値化し、ドライバーごとの特性を明確にします。これにより、個別指導が可能になり、効果的な燃費改善につながります。

Fleet Server等のシステムを活用することで、複数の車両を一元管理できます。車両ごとの燃費データを比較分析し、優秀なドライバーの運転パターンを他のドライバーに共有することができます。また、燃費の悪い車両や時間帯を特定し、重点的な改善を行うことも可能です。

運転評価システムの導入も効果的です。加速度センサーやジャイロスコープを使用して、運転の滑らかさを数値化し、スコアとして表示します。ドライバーは自分の運転を客観的に評価でき、ゲーム感覚で燃費改善に取り組むことができます。

データの活用においては、単に記録するだけでなく、分析結果をドライバーにフィードバックすることが重要です。月次レポートや個別面談を通じて、具体的な改善点を伝え、継続的な向上を促します。また、優秀な成績を上げたドライバーを表彰する制度を設けることで、モチベーションの向上も図れます。

最適な輸送ルートと積載率の考え方

運行計画の最適化は、燃費改善において見過ごされがちですが、大きな効果を生む重要な要素です。適切なルート選択と積載率の管理により、燃料消費を大幅に削減できます。

ルート最適化では、単に距離の短さだけでなく、燃費に影響する様々な要因を考慮する必要があります。渋滞の多い道路や急勾配の多い山間部は、距離が短くても燃費が悪化する可能性があります。交通量の少ない時間帯を選択したり、勾配の緩やかなルートを選んだりすることで、燃費を改善できます。

高速道路の利用も、燃費の観点から検討が必要です。一般的に、高速道路での燃費は一般道よりも良好ですが、料金との兼ね合いを考慮する必要があります。燃費改善による燃料費削減額と高速道路料金を比較し、総合的にコストが削減される場合は高速道路を積極的に利用しましょう。

積載率の管理も重要な要素です。過積載は燃費悪化の原因となるだけでなく、法的な問題も生じます。一方で、空荷での走行も燃費効率が悪いため、適切な積載計画が必要です。車両の能力を最大限に活用しながら、安全性と燃費効率のバランスを取ることが重要です。

混載便の活用により、積載効率を向上させることができます。複数の荷主の荷物を同一車両で運送することで、空荷区間を削減し、燃費効率を改善できます。また、帰り荷の確保も重要です。往復の両方向で荷物を運送することで、空荷走行を最小限に抑えることができます。

配送順序の最適化も効果的です。重い荷物を先に配送し、軽い荷物を後に配送することで、車両重量を段階的に軽減し、燃費を改善できます。また、地理的に近い配送先をまとめることで、走行距離を短縮し、燃費向上につながります。

配車システムの導入により、これらの最適化を自動的に行うことができます。AIを活用したシステムでは、過去の実績データを基に、最も燃費効率の良いルートと積載計画を提案します。人的な判断では見落としがちな細かな最適化も実現できるため、大幅な燃費改善が期待できます。

燃費改善は、一朝一夕で達成できるものではありません。しかし、現状把握から始まり、運転技術の向上、適切な車両管理、そして組織的な取り組みを組み合わせることで、確実に成果を上げることができます。これらの取り組みにより、燃料費の削減だけでなく、環境負荷の軽減、企業競争力の向上も実現できるでしょう。継続的な改善を心がけ、データに基づいた科学的なアプローチで燃費向上に取り組むことが成功の鍵となります。

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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