トラックは車両も大きく重量もあるため事故を起こした場合、普通車よりも大きな被害がでてしまいます。
自分が加害者にならないためにどういったことを意識したら良いのか、また万が一事故を起こしてしまった場合に発生する法的責任とは一体どのようなものなのでしょうか。
過去10年間の事業者用トラック事故の統計やトラック協会が掲げている目標などもご紹介しています。ぜひ、ドライバーだけでなく事業者の方も参考にしてみてください。
トラック事故の統計
過去10年間のトラック事故の統計や事故が起きやすい時間帯をご紹介します。
トラック事故の統計データ
全日本トラック協会が発表している事業用トラックの交通事故数は年々減少傾向にあり、2011年には24,865件だったのに対し2020年には9,449件まで減っています。主に追突事故がやや減少傾向で、対歩行者や出会い頭衝突は大きな変動は見られないようです。
ただ減少傾向だからといって死亡事故や重症事故が0になっているわけではありません。
更にトラックは車両自体が大きいため事故による被害がとても大きいです。
自分が加害者にならないためにも事故が多い時間帯や原因なども把握しておくと良いでしょう。
主な事故のタイプ
まずトラック事故が多い時間帯はトラック協会によると午前8時〜午後12時といった日中に多く、5〜6割近くを占めています。また、日中は歩行者や車が多く活動しているため、その分事故が多くなっていると言われています。
また、事故原因で最も多いのが、車両同士での追突事故です。
居眠り運転やスマートフォンを操作しながらのわき見運転、周囲の安全確認を怠り追突してしまう事故は後を経ちません。事業者トラックが起こす死亡事故原因も追突事故が多いという統計結果がでています。
法的な責任者とその範囲
もし自分がトラック事故の加害者になった場合の損害賠償責任と運送会社の責任範囲はどのようなものなのかご紹介します。
ドライバーの責任範囲
ドライバーの責任範囲は以下の通りです。
損害賠償責任
トラックドライバーは事故によって生じた損害を賠償しなければならないと民法で定められています。
相手方への治療費や慰謝料などの損害賠償は運送会社と事故原因やどのような過失があったかで支払額の割合を決めますが、公共の物(ガードレールなど)を破損させてしまった場合は自分で支払わなければならないこともあるようです。
労働契約上の責任
自分の過失で事故を起こし雇用されている運送会社に損害を与えた場合に負う責任です。労働契約で合意した義務にドライバーが違反した場合に運送会社から損害賠償を請求され、解雇される場合もあります。
実際にあった過去の事例
トラック事故原因で最も多い追突事故の実際の事例をお伝えします。
5月12日昼頃に配送トラックが高速道路を走行中に、渋滞最後尾の観光バスに追突し観光バスに乗っていた2名を負傷させてしまいました。事故原因は、早朝からの長距離運転での疲れと昼食後の眠気が襲ってきたためボーっとしてしまい観光バスに追突してしまいました。
この事故で観光バスの後部全面が激しく損傷し、内板骨格部にも相当波及損傷がありました。
また今回の事故で関係者に様々な影響がでており、相手方の会社は乗客の足の確保のため代替えのバスをすぐさま事故現場に向かわせたり、乗客への謝罪や負傷者のお見舞いをしたりしました。もちろん自分の配送先へも迷惑を掛けたため会社と共に謝罪に出向く必要もあります。
【相手方への損害額内訳】
・バスの修理代 1,900万円
・レッカー代 30万円
・休車料 360万円
合計 2,290万円
上記の金額とプラス自分のトラックの修理代や輸送物の賠償代などを会社と共に支払うことになります。
また、今回のトラックドライバーは運転免許停止90日の行政処分を受けて自分の生活にも影響がでています。
運送会社の責任範囲
運送会社の責任は以下の通りです。
運送品の損傷や延着の責任
運送会社はトラックが運送中に運送品を損傷させてしまった場合や延着した場合、運送会社に過失が無くても責任を追わなければいけません。
使用者責任
運送会社が雇用しているドライバーが事故を起こし第三者に損害を与えた場合、運送会社は損害賠償をドライバーとともに支払う必要があります。
支払額の割合は事故の原因や運送会社の過失の程度などいくつかの要素で決まることが多く、大体はドライバーよりも運送会社の支払額の割合が大きいです。ただ、ドライバーの飲酒運転が原因の事故や業務時間外の事故の場合はドライバーの過失による事故のため支払わなくても良いケースもあります。
運行責任者の責任
運送会社はトラックの運行の安全を確保するために、乗務記録の管理や業務前後のドライバーの健康状態等の把握を求められています。
他にも車両に不具合がないか定期的な確認や、ドライバーへの安全運転意識を高めるための指導なども行っていますが、事故が発生した場合はそれらを適切に指導していないことになるため過失によっては損害賠償を支払う必要があります。
トラック事故を防ぐための対策
事業用トラック事故を防ぐためには実際に運転するドライバーはもちろんドライバーと契約している運送会社も対策しなくてはならないことがあります。
ドライバーが行う対策
ドライバーが事故を起こさないために自分でできる対策をご紹介します。
制動距離を意識する
車はブレーキをかけたからといってすぐに停止するわけではなく、ブレーキがきき始めてから車が停止するまでの制動距離を意識しないと追突事故を起こしかねません。また、トラックは普通車よりも車体が大きいため制動距離が長いので注意が必要です。
雨や雪などの天候による路面状況によっても制動距離は変化するため、前の車と十分に車間距離をとって走行しましょう。
安全確認を意識する
左右に曲がる際にサイドミラーだけで確認をしていると、ミラーの死角に入り込んだバイクや自転車を見落としてしまい巻き込み事故を起こしてしまいます。そのような事故を起こさないためにもミラーだけでなく目視での確認もしっかりと行いましょう。
他にも基本的なことですが、車間距離を十分に空け速度制限を守ることなど安全走行を意識しましょう。
休息をしっかりと行う
長距離を運転することに慣れている人だと、途中であまり休息をとらずに長時間ずっと運転したままの人も中にはいます。体感では疲れていなくても必ず一定時間ごとに休息を取るようにしてください。
運転するには目や耳などで得た情報を脳に送り正常な判断を身体に指示し必要な動作を行います。そこに長時間の運転によるストレスや疲れが加わると、正常な判断力が鈍ってしまい誤ったハンドル操作を起こしかねません。他にも睡眠不足による居眠り運転なども大きな事故に直結しますのでしっかりと身体を休めましょう。
運送会社が行う対策
運送会社も事故を未然に防ぐためや、ドライバーが安全に走行できるために配慮し取り組まなければならないことがあります。
ドライブレコーダーを搭載する
事故発生時の状況を把握できるだけでなく、車内の録画機能がついているドライブレコーダーの場合は、ドライバーによる危険運転がされていないかなどの確認もできる安全ツールです。日頃のドライバーの運転状況が分かれば、今後の指導や教育にも役に立つため、搭載することをおすすめします。
事故防止対策マニュアルを活用する
会社独自のマニュアルを作成し、更に国土交通省の公式ホームページにある『自動車運送業者が事業用自動車の運転者に対して行う一般的な指導及び監督の実施マニュアル』の中のトラック編も一緒に活用することをおすすめします。
かなり細かくドライバー目線の注意点や事業者が行わなければいけないことなどが掲載されています。
ドライバーに対する健康管理指導の実施
事業用トラック事故の原因の中には、ドライバーの健康に起因する事故も少なくありません。慢性的な人員不足による長時間労働やドライバーの高齢化が進み急な体調変化によるハンドルの誤操作や居眠り運転など健康管理が原因とする事故を減らすためにも、事業者はドライバーに対して健康管理指導の実施は必須だと言えるでしょう。
全日本トラック協会のホームページにトラック運送事業に特化した健康管理マニュアルがありますので、ぜひ参考にしてください。
業界と新技術で防ぐ事故防止
事業用のトラック事故を減らすためにトラック協会が掲げている目標についてご紹介します。
トラック協会の2025年までの目標
全日本トラック協会では、2025年までに事業用トラックを第一当事者とする死者・重傷者の合計数を970人以下、また飲酒運転ゼロを目指すといった目標を掲げています。また、死者数と重傷者数の合計を車両台数1万台あたり6.5人以下とすることを全都道府県の今日目標とする『トラック事業における総合安全プラン2025』を策定しています。
新技術の導入で防止する
最近のトラックには衝突被害軽減ブレーキや先行車発進システムといった新技術が搭載されている車両もいくつかあります。実際に全日本トラック協会が策定した『トラック事業における総合安全プラン2025』でもICT技術等新技術の普及促進も盛り込まれています。
あくまで、ドライバーの安全に対する意識があることを前提ですが、そこに事故発生を抑制するサポート機能があると更に事故数が減少されていくのではないでしょうか。