世界には、大小合わせて、実に多くの物流会社が存在します。
近年、デジタル化の波と通販市場の急成長により、物流業界も市場規模も大きくなり、新たな局面を迎えています。
ここでは、最新の物流業界の世界ランキングを通じて、業界の動向やトレンド、主要企業の戦略に焦点を当てて、詳しく解説します。
世界の物流企業ランキングトップ10
コロナの影響が薄れ、2024年も始まり、物流業界も変化の兆しを見せ始めています。
まずは、2023年の物流業界のランキングを確認し、そのランキングに影響を与える経済的、技術的な要因を解説します。
ランキングの先頭を走る企業たち
下記の世界の物流企業(トラック輸送)ランキングは、「The Daily Records Top 10 Best Logistics in the World」が公表している売上規模のランキングです。
ランキング | 社名 | 国名 | 売上高(百万円) |
1位 | DHL | ドイツ | 7,457,022 |
2位 | UPS | アメリカ | 6,831,390 |
3位 | フェデックス | アメリカ | 6,755,237 |
4位 | SNCF(フランス国有鉄道) | フランス | 4,086,396 |
5位 | キューネ・アンド・ナーゲル | スイス | 2,147,.310 |
6位 | DBシェンカー | ドイツ | 2,116,611 |
7位 | 日本通運 | 日本 | 1,911,669 |
8位 | C・H・ロビンソン | アメリカ | 1,508,505 |
9位 | シーバ・ロジスティクス | オランダ | 744,286 |
10位 | パナルピナ | スイス | 581,900 |
トップ10はすべて日米欧の物流企業となっています。
ランキングに影響する要因
物流企業のランキングは、「環境変化」「技術革新」、そして「消費者の変化」といった三大要因に大きく影響されています。
各要因が、物流企業の競争力や評価に、どのような影響を与えているのでしょうか。
1.環境変化:持続可能性と法規制の波
環境問題への取り組みが、企業の評価に与える影響が増しています。
企業がSDGsや再生可能エネルギーに注力する姿勢は、市場での信頼性を高めています。
また、燃料価格の変動や国ごとの法規制の変更は、企業の戦略や業績に大きな影響を及ぼしています。
2.技術革新:IoTと効率性の向上
IoTなどの先進的なテクノロジーの導入が、物流業界における競争を激的に変化させています。
技術の革新は、企業の収益性に直結しているため、ランキングにおいても重要な要因となっています。
3.消費者の変化:効率性と柔軟性への要求
消費者のニーズの変化も、物流企業のランキングに大きな影響を与えています。
サービスの効率性、安全性、信頼性が企業の評価のカギとなり、市場の変動に迅速かつ柔軟に対応できる企業が高く評価されています。
これにより、企業はますます、消費者の志向の変化に対応するサービスの提供に注力しています。
物流業界の主要企業の特徴と戦略
次に、世界ランキングで上位に入っている企業の特徴と、いかに市場で成功を収めたのか、その戦略について紹介します。
リーダー企業の成功の秘訣
物流のリーダー企業が成功を収めているのには、いくつかの要因が組み合わさっています。
前章で紹介した「三大要因」をクリアしていることは当然ですが、成功の秘訣とされるその他の要因を満たしていることが、共通する成功要因となっています。
1.効率的なサプライチェーン管理
物流のリーダー企業は、生産、物流、販売までのサプライチェーン全体を効率的に管理しているのが特徴的です。
リアルタイムでの情報共有や、在庫管理を効率的に行うことにより、生産性を最大化し、コストを削減しています。
2.協力関係の構築
パートナーシップや協力関係を、積極的に構築しているのがリーダー企業の共通の特徴です。信頼性のあるパートナーとの協力関係があるからこそ、効果的なサプライチェーンが構築できるのです。
3.従業員のスキルとモチベーション
成功する企業は、従業員のスキルの向上とモチベーションの維持に注力しています。
熟練の従業員は、問題解決能力が極めて高く、企業の効率性や生産性の向上に影響を与えています。
これらの要素が組み合わさり、継続的に改善と変革を続けることで、物流のリーダー企業は成功を収めています。
企業ごとの独自の戦略
では、世界をリードする物流企業DHLとUPSの戦略について、それぞれみていきましょう。
DHL:「グローバルな展望とデジタル変革」
DHLは、1969年にアメリカで国際宅配便業者として誕生し、その後ドイツポストの完全子会社となり、グローバルなネットワークを築き上げました。
「Strategy2025」では、変化する市場環境への適応を掲げ、2025年までの成長戦略を描いています。
目標は「デジタルの世界で卓越した価値を提供する」で、デジタル変革に焦点を当て、革新的なサービスの提供を通じて、将来の物流におけるリーダーシップを確立する戦略を進めています。
UPS:「シンプルで強力なサービス志向」
UPSは、世界最大級の宅配企業として知られ、シンプルかつ強力な戦略を掲げ、日々1,400万個以上の荷物を取り扱っています。
お客様第一、社員主導、イノベーション重視というシンプルな理念に基づいて、「量より質」をモットーに掲げています。
コロナ後も、従業員の主体的な役割と革新的な発想を促進し、収益の拡大を目指しています。
両社は異なる事業戦略を持ちながらも、グローバルでの展望と顧客志向の強化を通じて、物流業界でのリーダーシップを確立しています。
物流業界を形成する要素と今後の展望
最後の章では、物流業界の成長に影響を与える主要な要素を確認し、今後の業界のトレンドについて紹介します。
業界の成長を促進する要素
物流業界は、ドライバーの人手不足やデジタル化、環境意識の高まりなど、さまざまな環境の変化や課題を抱えていて、大きな変革期を迎えています。
このような物流業界の成長を促進する要素は実に多岐にわたります。
以下、その主な要素を確認しておきましょう。
1.eコマースの拡大
ECサイトの普及に伴い、オンライン販売が増加し、物流需要も市場規模も拡大し、迅速かつ効率的な配送が求められています。
2.テクノロジーの進化
Iotなど、進化したテクノロジーの導入が物流のプロセスを効率化し、走行データ分析などを正確に行うことを可能にしています。
また、自動運転技術や人工知能などの技術の進化も、物流業界の成長に寄与しています。
3.消費者の変化
消費者は、より利便性の良いサービスへの要求が高まり、即時配送や受け取りオプションの柔軟性などが求められています。
物流企業は、新たなサービスモデルを構築し、市場に対応する必要があります。
4.ラストワンマイルの改善
お客様への最終配送の効率化が求められており、最新の技術の導入により、新たな配送オプションを提供することで、都市部において効率的な配送が進んでいます。
5.持続可能性への注力
環境問題への意識が高まる中、物流企業も、持続可能なビジネスモデルの構築や、再生可能エネルギーの利用が重要な取り組みとなっています。
環境への取り組みが、企業の信頼性をより高め、新たなビジネスチャンスを生み出します。
これらさまざまな要素が複合的に作用し、物流業界の成長を促進すると考えられています。
未来の物流業界のトレンド
最後に、物流業界の未来に見込まれている、さまざまなトレンドについて紹介しましょう。
以下は、注目されている将来の物流業界のトレンドです。
1.2024年問題
2024年に、時間外労働の上限規制により、時間外労働が年間960時間に制限されることで、1日に配達できる商品の数が減少してしまう可能性があると言われています。
しかし、物流業界は、人工知能(AI)やIoTなどの最先端技術を導入することで、生産性向上を進めつつあり、2024年問題によって、物流業界が急激に縮小するような事態にはならないとみられています。
2.デジタル化とテクノロジーの進化
AIや自動運転技術、ブロックチェーンなど、テクノロジーが進化し、物流プロセスの自動化や効率化がさらに進むでしょう。
これにより、リアルタイムでの配送の追跡や、在庫管理の最適化、需要予測分析が強化されると考えられます。
3.環境への配慮
再生可能エネルギーの活用や脱炭素など、環境問題への企業の取り組みが、より重要な要素となっています。
環境への配慮が、企業の競争優位性を構築するキーになっていて、持続可能なビジネスモデルへの移行がさらに進んでいくとみられます。