車のタイヤには、ラジアルタイヤとバイアスタイヤの2種類があります。タイヤの交換・購入の際にどちらを選べばよいか迷う方も多いでしょう。現在、乗用車の多くで使われているのはラジアルタイヤですが、ラジアルタイヤとバイアスタイヤは構造が異なり、それぞれに適した用途があります。
本記事では、ラジアルタイヤの定義、構造や特徴、バイアスタイヤとの違い、メリット・デメリット、そして選び方のポイントについて詳しく解説します。
ラジアルタイヤとは?初心者にもわかりやすく解説
ラジアルタイヤとはどのようなタイヤを指すのでしょうか。まずはラジアルタイヤの定義とバイアスタイヤとの違い、それぞれの構造が走行性能にどう影響するか解説します。
ラジアルタイヤの定義と歴史
ラジアルタイヤとは、「ラジアル構造」を採用したタイヤを指します。ラジアルには「放射線状の」という意味があり、カーカスと呼ばれるタイヤの内部にある繊維層が、進行方向に対して直角に編み込まれているのが特徴です。この構造により優れた耐摩耗性能を発揮し、主に舗装された路面での使用に適しています。現在の普通乗用車では、ほとんどがラジアルタイヤを装着しています。
ラジアルタイヤの起源は、1915年にサンディエゴのタイヤメーカー経営者によって発明されたカーカス構造のゴムタイヤだといわれています。その後、ミシュランが研究・開発を進め、1948年に現在のラジアルタイヤに相当する構造を確立しました。
ラジアルタイヤとバイアスタイヤの構造の違い
ラジアルタイヤとバイアスタイヤの最大の違いはその構造にあります。ラジアル構造では、カーカスがタイヤの中心から放射線状に配置されています。タイヤの内部にはベルトと呼ばれる補強層が入っており、カーカスを締め付けて固定し強度を高めています。
一方、バイアスタイヤは、カーカスをタイヤの回転に対して斜めに配置した「バイアス構造」を持っています。カーカスを斜めに貼り合わせることで強度が上がり、低速走行時や悪路での乗り心地が良くなるため、主に産業車両や建築車両、農業用機械などに多く使用されています。
バイアスタイヤの中には、ラジアルタイヤと同様にタイヤを内部からベルトで補強し、通常より剛性が強化された「ベルテッドバイアスタイヤ」と呼ばれるものもあります。
ラジアルタイヤの構造を徹底解剖
ラジアルタイヤの構造、主要なパーツとそれぞれが果たす役割について詳しく解説します。
ラジアルタイヤの内部構造
ラジアルタイヤは、トレッド部と呼ばれる地面に接する部分とカーカスが直角になるように作られています。そのため、タイヤの屈曲で互いにカーカスが擦れ合うことが避けられ、転がり抵抗が小さくなるのが大きなメリットです。一方で、構造上タイヤの強度が不足してしまうため、トレッド部に入っているベルトと呼ばれるパーツで補強しています。
主要な部品とその役割
1. カーカス
カーカスは、タイヤの骨格となるゴムで包まれたコード層を指します。「ケーシング」とも呼ばれ、衝撃や荷重、空気圧などに耐える仕組みになっています。
2. ベルト
ベルトは、カーカスを強く締め付けトレッドの剛性を高め、タイヤの強度を上げる役割を担います。また、タイヤ全体の構造を支えて形を整えるという重要な役割も果たしています。
3. ビードワイヤー
ラジアルタイヤには、「ビードワイヤー」という補強部材も使われています。ビードワイヤーは、繊維・ゴムを用いてスチールワイヤーを包み込んだリング状のパーツで、側面の屈曲が大きくなるというラジアル構造の弱点を補う役割を担っています。
4. トレッド
トレッドは、地面と接する部分であり、グリップ力や排水性能を決定づける重要な役割を果たします。トレッドパターンの設計によって、ウェット性能や静粛性、操縦安定性などが変わってきます。
5. サイドウォール
サイドウォールは、タイヤの側面部分を指します。ラジアルタイヤでは、この部分が柔軟性を持ち、走行時の衝撃を吸収する役割を果たしています。
ラジアルタイヤのメリット・デメリットを徹底比較
ラジアルタイヤには多くのメリットがある一方でデメリットもあります。それぞれ詳しくみていきましょう。
ラジアルタイヤのメリット
ラジアルタイヤの主なメリットは以下のとおりです:
1. 高速走行時の乗り心地がよい
タイヤの側面が適度にたわんでクッション性が高いため、高速走行時の振動が抑えられ、乗り心地が向上します。
2. 燃費性能が優れている
トレッド部の剛性が高く転がり抵抗が小さいため、燃費性能が良くなります。最近では、さらに燃費性能を高めたエコタイヤも多くラインナップされています。
3. 耐摩耗性が優れている
ラジアル構造により、タイヤの偏摩耗が抑えられ、長期間使用できます。
4. グリップ力、操作安定性が高い
トレッド部の接地面積が大きく、路面とのグリップ力が高いため、操作安定性に優れています。
5. 高速性能に優れている
高速走行時の変形が少なく、安定性が高いため、高速道路での長距離ドライブに適しています。
6. パンク時の安全性
ランフラットタイヤと呼ばれる特殊なラジアルタイヤは、パンクした際の変形を抑えて一定距離は走行を継続できる設計になっています。
ラジアルタイヤのデメリット
ラジアルタイヤには、以下のようなデメリットもあります:
1. 比較的価格が高い
優れた性能を備えているがゆえ、価格はバイアスタイヤよりも高い傾向にあります。
2. 悪路や低速走行には向かない
構造上タイヤの側面が弱いため、悪路や低速での乗り心地、荷重への耐性はバイアスタイヤのほうが優れています。
3. 製造工程が複雑
ラジアル構造の製造には高度な技術と設備が必要であり、これが価格に反映されています。
4. 修理が難しい
構造が複雑なため、バイアスタイヤに比べて修理が難しく、場合によっては交換が必要になることがあります。
5. 空気圧管理の重要性
適正空気圧での使用が重要で、空気圧が低いと性能が著しく低下する可能性があります。
ラジアルタイヤの用途と選び方
ラジアルタイヤは、車両の種類によって使われている素材やつくりが一部異なります。用途別のラジアルタイヤの特徴、自分の車に合ったラジアルタイヤの選び方についてみてみましょう。
ラジアルタイヤの適用範囲
1. 乗用車
現在では、乗用車のほぼすべての車にラジアルタイヤが使われています。特に高速性能に優れているため、サーキットやワインディングなどの走行に適したスポーツモデルにも多く採用されています。
2. トラック・バス
トラックには従来バイアスタイヤが多く使われていましたが、現在はラジアルタイヤが主流です。乗用車のラジアルタイヤではカーカスにポリエステル素材を使用していますが、トラックやバスのタイヤではカーカスとベルトがいずれもスチール素材です。そのため、重たい車両を支えることができ、悪路の走行による衝撃などでバーストしない強力な構造になっています。
3. バイク
400cc以上のスポーツバイクの大半がラジアルタイヤです。バイクも同様に、高速性能を活かせるため、サーキットなどにおけるスポーツ走行を行うタイプに適しています。
4. レーシングカー
モータースポーツにおいても、その高速性能と安定性からラジアルタイヤが広く使用されています。
ラジアルタイヤの選び方のポイント
タイヤを選ぶ際には、ラジアルタイヤとバイアスタイヤを見分けられなければいけません。タイヤ本体の側面(サイドウォール)に刻印されている情報からラジアルタイヤとバイアスタイヤを見分けることが可能です。
サイドウォールには、以下の情報が記載されています:
1. タイヤ幅・偏平率
2. ラジアル構造表記
3. リム径(インチ)
4. ロードインデックス
5. 速度記号
ラジアルタイヤのラジアル構造表記は「R」または「ZR」です。一方、バイアスタイヤはここに「-(ハイフン)」と表記されています。
例えば、「215/45R17 91H」と表記されている場合:
– タイヤ幅:215mm
– 偏平率:45%
– 構造:ラジアル(R)
– リム径:17インチ
– ロードインデックス:91(最大積載重量615kg)
– 速度記号:H(最高速度210km/h)
という意味になります。
タイヤ選びの基本手順:
1. 自分の車に適合するサイズを確認する
2. 求める性能(低燃費、静粛性、グリップ力など)を決める
3. 使用環境(都市部、山間部、積雪地域など)を考慮する
4. 予算を設定する
5. 各メーカーの製品を比較検討する
現在では、低燃費なエコタイヤや、静かで快適な乗り心地のコンフォートタイヤ、オールシーズン対応タイヤなど、さまざまな特徴・性能を備えたタイヤが販売されています。自分の車の使用状況や好みに合ったタイヤを選ぶことで、日々の運転をより快適で安全なものにすることができます。
また、タイヤ選びの際には、専門店やカーディーラーに相談するのも良い方法です。プロのアドバイスを受けることで、より適切な選択ができるでしょう。
定期的なタイヤのチェックと適切な空気圧管理も忘れずに行いましょう。これらの基本的なメンテナンスを行うことで、タイヤの性能を最大限に引き出し、安全性を高めることができます。