2024年3月の閣議決定で特定技能制度に自動車運送業が追加され、トラック運送会社でも外国人ドライバーの採用が現実的な選択肢になりました。ただ、在留資格の確認から企業要件の整備、免許取得支援、入管申請まで、やることは想像以上に多いのが実情です。
この記事では、外国人ドライバーを採用するときに最初に何を確認すべきか、どこで時間がかかるのかを、募集から入社後の定着までの流れに沿ってまとめています。
採用前に確認すべき在留資格と企業要件
外国人ドライバーの採用で最初につまずきやすいのが「そもそもこの人を雇えるのか」という判断です。在留資格の種類によって採用の可否が分かれますし、特定技能で受け入れるなら企業側にも満たすべき条件があります。採用活動を始める前に、この2点を必ず押さえてください。
在留資格ごとの採用可否を整理する
外国人を採用するとき、最初に見るのは在留カードです。在留カードには在留資格と就労制限の有無が書いてあり、ここで「ドライバーとして雇えるかどうか」が判断できます。
就労制限のない在留資格を持っている人なら、日本人と同じようにドライバーとして採用できます。永住者、定住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等の4つが該当し、在留資格に関する特別な手続きは不要です。運転免許さえあれば、すぐに乗務に就けます。
一方、特定技能(自動車運送業)は就労が認められる在留資格ですが、企業側・外国人側の双方に要件があります。
技術・人文知識・国際業務のようなオフィスワーク系の在留資格でドライバー業務に就くことはできませんし、技能実習にも自動車運送業の職種は設定されていません。留学ビザは資格外活動許可があっても週28時間以内のアルバイトに限られるため、正社員ドライバーとしての採用は不可です。
在留カードの確認で迷ったら、「就労制限の有無」欄を見てください。「就労制限なし」と記載されていればOK。「在留資格に基づく就労活動のみ可」と書いてある場合は、在留資格の種類を確認して判断してください。
特定技能の受け入れに必要な3つの企業要件
特定技能(自動車運送業)で外国人ドライバーを受け入れるには、企業側で3つの要件をクリアしなければなりません。
1つ目は、自動車運送事業の許可を持っていること。一般貨物自動車運送事業や特定貨物自動車運送事業の許可が前提で、白ナンバーの自家用運送では受け入れできません。
2つ目は認証制度の取得です。トラック運送事業者の場合、Gマーク(安全性優良事業所認定)か働きやすい職場認証制度のどちらか一方を持っていれば要件を満たせます。
バス・タクシー事業者は働きやすい職場認証が必須です。Gマークは年1回の申請で認定まで約5か月かかるので、まだ取得していない会社は早めに動いてください。働きやすい職場認証は通年受付で、一つ星以上の認証があれば大丈夫です。
3つ目は特定技能協議会への加入。2025年1月17日から加入受付が始まっており、国土交通省のウェブサイトからオンラインで申請できます。加入費用は無料ですが、届出内容の確認に1か月程度かかる見込みなので、余裕をもって申請してください。
この3つが揃っていないと、在留資格の申請自体ができません。外国人ドライバーの採用を考え始めたら、まずGマークか職場認証の取得状況を確認するのが先です。
募集から入社までの採用手順
企業要件をクリアしたら、いよいよ採用活動に入ります。募集から内定、雇用契約、入管申請、入社準備まで、日本人採用にはないステップが複数挟まります。全体のスケジュール感を把握したうえで、各段階の段取りを確認していきます。
募集開始から内定までの流れ
外国人ドライバーの採用は、日本人の中途採用とは時間軸がまったく違います。国内在住者を採用する場合で入社4〜5か月前、海外からの呼び寄せなら7〜8か月前には動き始めるのが目安です。
最初にやるべきは、登録支援機関や外国人材紹介会社への相談です。特定技能の受け入れが初めてなら、自社だけで支援体制の要件を満たすのは難しいケースがほとんどで、登録支援機関への委託を前提に動いたほうが現実的です。
直近2年間に外国人労働者の受け入れ実績がない会社や、外国人の生活相談に対応できる職員がいない会社は、支援計画の全部を登録支援機関に委託しなければなりません。
候補者を見つけるルートは主に3つ。人材紹介会社を通じた募集、特定技能のマッチングサービス、すでに日本にいる転職組の採用です。海外から呼び寄せると現地の送り出し機関との連携で手続きが増えるため、コストと時間を抑えたいなら国内にいる外国人を優先したほうが話は早いです。
選考は日本人の採用と同様に面接で進めますが、日本語力の確認は欠かせません。トラックドライバーの場合はN4レベル(簡単な日本語が理解できる程度)が求められます。面接時には在留カードの原本を確認して、現在の在留資格と在留期限を必ずチェックしてください。
雇用契約の締結から入管申請・入社準備まで
内定を出したら、雇用契約書の締結に進みます。特定技能の雇用契約にはいくつかルールがあり、まず直接雇用かつフルタイムが原則です。派遣や請負、パートタイムでは在留資格が下りません。報酬は日本人が同じ業務に従事する場合と同等以上に設定する決まりで、外国人だからといって安く雇うのは認められていません。
雇用契約の締結後、登録支援機関と支援委託契約を結び、1号特定技能外国人支援計画を策定します。この支援計画は在留資格申請の必須書類で、義務的支援10項目をどう実施するか具体的に書く必要があります。
書類が揃ったら、出入国在留管理局(入管)へ在留資格の申請です。海外から新たに呼び寄せる場合は「在留資格認定証明書交付申請」、すでに日本にいる外国人が資格を変更する場合は「在留資格変更許可申請」を行います。審査には通常1〜3か月ほどかかります。
この間に住居の手配も並行して進めましょう。入管申請中に社宅や寮の確保、ライフラインの契約準備を済ませておくと、入社までの流れがスムーズです。
海外からの呼び寄せでは、在留資格認定証明書の交付後にビザ(査証)申請→渡航という流れになるため、さらに時間がかかります。認定証明書の有効期限は交付日から3か月しかないので、スケジュール管理には十分注意してください。
入社前後に必要な免許取得・試験・支援体制
在留資格の手続きと並行して、外国人本人が取得・合格しなければならない免許や試験があります。また、入社後は法律で定められた支援を実施しつつ、現場レベルでの定着施策も欠かせません。企業が対応すべき範囲を整理します。
免許・日本語・評価試験〜3つの要件を押さえる
特定技能(自動車運送業)の在留資格を取るには、外国人本人が3つの要件を満たす必要があります。
1つ目は日本語能力の証明。トラックドライバーの場合、日本語能力試験N4以上か、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)の合格が求められます。バス・タクシーは現時点でN3以上が条件ですが、今後N4への引き下げが検討されています。
2つ目は特定技能1号評価試験の合格。自動車運送業分野の評価試験は2024年12月に始まりました。試験は一般財団法人日本海事協会が実施しており、トラック・バス・タクシーの職種ごとに区分されています。
3つ目は日本の運転免許の取得。トラックドライバーなら第一種運転免許(車両区分に応じて普通・中型・大型)が必要です。母国の免許を持っていれば外国免許からの切り替え(外免切替)という選択肢がありますが、学科試験と技能確認は避けられません。母国で免許を持っていない場合や切り替えができない場合は、日本の自動車学校で新規取得する流れになります。
免許取得のために来日するケースでは、「特定活動」の在留資格で入国・在留が認められています。在留期間の上限はトラックが6か月、バス・タクシーが1年。この期間内に免許を取り、その後に特定技能へ在留資格を変更します。なお、中型免許は20歳以上、大型免許は21歳以上という年齢要件があるので、候補者の年齢は事前に確認しておいてください。
義務的支援の実施と現場での定着施策
特定技能1号の外国人を受け入れる企業には、法律で定められた10項目の義務的支援を実施する責任があります。
中身は、事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居確保の支援、生活に必要な契約の補助、生活オリエンテーション、公的手続きへの同行、日本語学習の機会提供、相談・苦情への対応、日本人との交流促進、転職支援と定期面談の10項目です。
事前ガイダンスは在留資格申請前に3時間以上、外国人が理解できる言語で実施。生活オリエンテーションは入国後に8時間以上。定期面談は3か月に1回以上の頻度で、本人と直属の上司の両方から話を聞く形式です。
これらの支援は、登録支援機関に全部または一部を委託できます。初めて受け入れる会社は、最初の1〜2人は登録支援機関に全面委託して、ノウハウを覚えてから自社対応に切り替えるのが無難です。
ただし、義務的支援をこなすだけでは定着にはつながりません。日常業務で使う運送用語を母国語と日本語で対訳したマニュアルを用意したり、日報の記入フォーマットを最初はやさしい日本語で作ったり、同じ営業所の日本人ドライバーに外国人対応の基本を事前に共有したり、現場レベルでの工夫がモノを言います。
言葉が通じにくい分、配車指示のミスや安全面のトラブルは起きやすい。その認識を管理者だけでなく同僚ドライバーにも持ってもらうことが大事です。
採用で失敗しないための注意点
手順どおりに進めても、想定外のトラブルで採用が遅れたり、入社後に法的リスクを抱えたりするケースは少なくありません。国籍ごとの手続きの違いや、違法就労に関わる実務上の落とし穴を確認しておきます。
国籍別手続きと審査待ちの落とし穴
外国人の採用では、日本側の手続きだけでなく、相手国側で手続きが発生するケースがあります。とくにフィリピン国籍は要注意です。
フィリピン人を特定技能で雇用するには、日本の在留資格手続きとは別に、フィリピン政府のMWO(移住労働者事務所)での認証とDMW(移住労働者省)への登録が必要になります。
流れとしては、まずフィリピン政府認定の送り出し機関と契約を結び、MWO(在東京フィリピン大使館または在大阪総領事館に設置)へ書類を提出して審査を受けます。
MWOの承認を得た後にDMW登録手続きへ進み、これが完了してはじめて募集・採用活動が開始できる仕組みです。MWO申請の書類は全て英語で作成しなければならず、審査には2週間から1か月以上かかることも珍しくありません。
この手続きを知らずにフィリピン人と先に雇用契約を結んでしまうと、後からMWO手続きが発生して入社時期が大幅にずれます。フィリピン人の採用を考えているなら、日本側の手続きと並行してMWO申請を進めるスケジュールを最初から組んでおくべきです。
ベトナムやインドネシアなど他の国籍でも、送り出し機関を通じた手続きが発生する場合があります。国によって手続き内容も所要時間も違うため、候補者の国籍が決まった段階で、登録支援機関や行政書士にその国特有の手続きを確認してください。
入管の審査期間も読みにくいところです。在留資格認定証明書の交付申請は1〜3か月、変更許可申請は2週間〜2か月が標準的な処理期間ですが、書類の不備があると追加資料の提出を求められ、さらに時間が伸びます。「来月には入社してほしい」というスケジュール感ではまず間に合いません。
労働条件と違法就労チェックの実務ポイント
外国人ドライバーの採用では、労働条件の設定と違法就労の防止に細心の注意を払ってください。ここでミスをすると、会社側が不法就労助長罪に問われるリスクがあります。2025年6月の改正入管法施行で罰則が引き上げられ、現在は5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(併科あり)と、かなり重い刑罰です。
求人票を出す段階から、報酬額は日本人ドライバーと同等以上に設定してください。基本給だけでなく、各種手当や賞与の計算方法も同条件でなければなりません。
「外国人だから手当は付けない」「試用期間中は最低賃金で」というやり方は通りません。入管審査では同じ営業所の日本人ドライバーの賃金台帳と比較されます。
雇用契約書は日本語と外国人が理解できる言語の両方で作成するのが基本です。契約内容と実際の労働条件が食い違えば、在留資格の取り消し事由になります。残業時間、休日、賃金の支払い方法は特に正確に記載してください。
在留カードの確認は採用時だけでは不十分で、定期的に行わなければなりません。在留期限が切れたまま働かせれば違法就労です。在留期限の管理台帳を作って、更新時期の2〜3か月前にアラートが出る仕組みにしておくと安心です。
もうひとつ気をつけたいのが、特定技能の在留資格では転職が認められているという点。同じ業種内であれば他社への転職が可能なので、労働条件や職場環境に不満があれば他社に流れます。
採用にかけたコストを考えると、給与だけでなく住環境や人間関係のケアまで含めた受け入れ体制を整えることが、結局は一番のリスク対策です。



