物流業界には、現在、さまざまな課題があります。
物流・運送業界の「2024年問題」や、EV化、SDGsの推進など、直近で解決しなければならない課題もあります。
トラック運送・物流業界は、私たちの日常生活や、ビジネス活動に、非常に大きな役割を果たしており、物流業界が抱える課題は、私たちの社会が抱える課題と言っても過言ではありません。
現在、ITの技術を利用する「スマートシティ革命」が進められており、物流の効率化や、ドライバーの人手不足、さらに生産性の低さを解決に導こうという「スマート物流」も拡大しつつあります。
本記事では、物流業界におけるスマートシティ革命を深掘りすることで、物流業界の未来像についても解説します。
スマートシティとは何か?物流業界への影響
まずは、スマートシティとは何なのか、その基本的な定義と、物流業界にどのような影響を与えているのかについて確認していきましょう。
スマートシティの基本概念
スマートシティとは、IoTやAIといったデジタルの先端技術を使って、交通やエネルギー循環、防災や医療など、地域社会が抱えるさまざまな課題の解決を目指していく都市のことです。
最新の技術が都市の問題を解決し、人々の生活の質を高め、より快適に暮らしていける都市で、スマートシティの実現に向けて、海外や日本各地で、各種の実証実験が行われていて、ますます人々の注目を集めています。
現在日本では、さまざまな地域でスマートシティに取り組んでいて、いくつかの成功例も見られます。
日本と海外では、スマートシティへの取り組み方に違いがあります。まず、日本では政府が中心となり、スマートシティは国の戦略として、取り組みが推進されています。
これに対して海外では、地域による特性や、その地域が抱える課題に応じた、多種多様な取り組みが展開されていて、企業主導による推進が主となっています。
また、スマートシティの目標にも違いが見られ、日本では、自動化や効率化を進めることで、全体の最良化を目指しているのに対して、欧州では、環境への配慮やエコロジーと、効率の追求を同時に追い求めているのが特徴です。
物流業界におけるスマートシティの役割
IoTやAIの活用が進み、スマート化社会への進展が加速しており、特に物流・ロジスティクス業界においては、この傾向が顕著となっています。
物流業界で活用が期待されている先進技術には以下のものがあります。
・自動運転
・ドローンの導入
・ロボットの導入
・データ活用による交通量の管理
・シェアリングの導入
このような先進技術は、ドライバー不足や、労働人口の減少という、物流業界、そして日本の産業界の、深刻な課題を解決できる技術として注目されています。
スマートシティは、インフラや農業部門など、さまざまな部門での活用が期待されていますが、物流分野での新技術の活用が最も顕著で、最も重要になっています。
物流業界におけるテクノロジーの革新
では次に、どのような最先端技術が物流業界で活用可能なのかについて、導入例とその効果について具体的に紹介しますので、確認しておきましょう。
テクノロジーによる物流の自動化と効率化
物流分野における、テクノロジーの革新による進化の代表的なことは、「自動化」と「効率化」でしょう。
特にIoTとAIの役割は大きく、これまでの手法を根本から変革するものです。
AIによって、膨大なデータの分析が可能になり、需要の予測や、在庫管理などのプロセスの自動化が可能になります。そして、データの正確な分析が可能となることで、より精度の高い意思決定ができるようになります。
また、IoT技術は、物流の管理において、製品の位置や状態などを、リアルタイムで把握できるようにします。これにより、配送過程などの透明性が高まり、物流の効率が格段と良くなります。
AIとIoTの物流への応用
紹介したように、AIやIoTといった最新技術を用いて、物流コストや物流時間などの最適化をはかり、セキュリティの向上などを目的にしているのが、「スマート・ロジスティクス」です。
「自動化」と「効率化」は、スマート・ロジスティクスを実現するためには、絶対に欠かすことのできない技術なのです。
IoTやAIの具体的な活用例としては、次のようなものがあります。
・倉庫管理システム
・RFID
・EDI化によるデータ共有
バーコードのスキャンによって、実在庫や入出庫がリアルタイムで把握できることで、誰でも正確に倉庫管理ができるようになっています。
また、RFIDと呼ばれるシステムで、小さなICチップに記録された、製品に関するさまざまなデータを、無線通信によって読み取ることで、管理できるようになっています。
さらに、データの共有を運送業者と荷主間で電子的に行うことで、荷物の追跡が容易になり、また、電子化により人的ミスが低減し、業務の効率化が図れます。
物流業界の未来予測
最後に、今後、物流業界で起こると考えられているメガトレンドを踏まえて、物流業界が将来どう変わっていくのかについて解説し、さらに、現在、見られるようになった、さまざまな企業の物流の分野への参入の動きについて紹介します。
スマート物流の将来像
スマート物流は、持続可能な社会を目指す上では、欠かすことのできない役割を担っています。
スマート物流は、最新のIT技術の活用により、単に物流の効率化を図ることだけが目的ではなく、環境への負荷の軽減を目指すことで、持続可能な社会を実現することにおいて、重要なステップとなっています。
今後も、さらに技術革新が進んでいくというメガトレンドの中で、スマート物流の役割はさらに重要になり、物流業界だけではなく、社会全体に対しても、大きな影響を与えることが予想されています。
具体的には、AIの技術の進歩により、需要予測がさらに正確に、高度にできるようになることや、モノの流れが可視化されることで、非効率なモノの流れを減らすことができ、適切なコストで、適時に、さらに的確に、最終消費者に商品が届けられる時代がやってきます。
また、ドローンなどの新たなモビリティが発展したり、カーシェアや公共交通機関の活用が可能となったりすることで、いわゆる「ラストワンマイル」の配送が効率化できます。
さらに、効率の良いサプライチェーンが構築されることで、生産地から、地域特性や企業の特性豊かな商品が、直接、消費者に輸送できるようになります。
また、在庫や時間ロスなどが削減されるばかりではなく、消費者のニーズに適した商品が、地方で作られ、消費者に届けることも可能になり、生産者と消費者のより強固なつながりの、最も重要な場面を、流通分野が橋渡しできる可能性も高まります。
多様なプレイヤーによる物流領域への参入
スマート物流には、未だ最適解がなく、開拓が可能な領域が大きい分野です。
しかし、スマートシティを推進していく上では、最も重要で、人々の生活にも密接にかかわる分野です。
今後、さまざま異業種から、スマート物流への参入が増えてくることが考えられます。
現在でも、自動化の技術が進んだことが契機になり、自動車メーカーや総合商社、EC事業者や通信事業者などからも、物流の分野に参入する企業が相次いでいます。
しかし、多種多様の異業種の企業が、お互いに協働や競争をすることで、モノの流れが簡素化され、さらに最適化され、消費者のニーズを満たすサービスや商品が、適格に提供されるようになっていくだろうと考えられます。