日本でも、今年、非常に注目を集めた「SDGs」(Sustainable Development Goals「持続可能な開発目標」)ですが、これは、先進国と発展途上国が一体となって、2030年までに達成すべき、17の解決すべき国際社会共通の目標のことです。
業界を問わず、さまざまな企業が、SDGsを念頭に置いて経営方針を定めようとしている中で、トラック運送・物流業界でも、「安全で安心」な輸送サービスを提供し続ける、物流業界の社会的使命を遂行しながら、環境対策など、SDGsに向けたさまざまな取組みを進めています。
そこで、本記事では、トラック業界のSDGsへの取り組みについて紹介します。
トラック業界とSDGs
まずは、トラック業界はSDGsに向けて、どのような取り組みをしているのでしょうか?
トラック運送業界の、環境意識の向上や、燃費の改善への対策は、SDGsにつながっています。
以下で、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
SDGsと環境CSRの重要性
CSRは、「Corporate Social Responsibility」の略で、日本語では「企業の社会的責任」と訳されます。
企業は、社会の中で、地域や社会と関わりながら活動しており、社会から信頼を得るべくおこなう活動が、社会をより良くし、企業の存続にもつながります。つまり、企業が果たすべき役割や責任がCSRなのです。
SDGsとCSRは混同されることも少なくありませんが、両者には違いがあります。
CSRは、お客様や従業員、地域社会など、さまざまな人々の、会社に対する期待に応えるためにおこなう活動であるのに対して、SDGsは、世界全体で解決すべき課題への取り組みとして、ビジネスを通して貢献できる方法を、企業が取り組んでいくことです。
しかし、社会をよりよくすることが企業の役割であるという点では、SDGsとCSRは同じ考え方に立っていると言えます。
したがって、SDGsを達成するために企業が取り組むことは、社会や顧客、株主などからの信頼を得て、それがCSRにつながると考えられます。
エコドライブ活動と燃費改善の進化
エコドライブとは、燃料の消費量や、CO2の排出量を減らすことで、地球温暖化の防止に役立つように、車のドライバーが心掛けすることです。
国土交通省、環境省、経済産業省、そして警察庁で構成する「エコドライブ普及連絡会」が、エコドライブを具体的に実践するための指針「エコドライブ10のすすめ」を策定して、啓発活動をおこなっています。
例えば、車をスタートするときに、急発進・急加速をおこなわないようにすることで、約10%燃費が改善したり、車を止めるときにアクセルから足を早めに離して、エンジンブレーキを活用したりすることで、約2%燃費が改善します。
また、エコドライブを実践することは、安全運転にもつながるため、51.2%、交通事故を削減できるといわれています。
CO2削減への道
では、トラック輸送業界では、CO2の削減に向けて、具体的にはどのような活動をおこなっているのかを確認しておきましょう。
トラック輸送のCO2排出の現状
国土交通省の調べによると、日本の二酸化炭素排出量は、2021年には10億6,400万トンあり、そのうち、運輸部門の排出量は1億8,500万トンで、全体の17.4%を占めています。
自動車は、運輸部門の86.8%を占めていて、これは日本全体の15.1%に当たります。
さらに、トラック輸送などの貨物自動車の排出量は、運輸部門の39.8%、日本全体の二酸化炭素排出量の6.9%に当たります。
1990年から1996年度までの間は、運輸部門の二酸化炭素の排出量は、22.7%増加しています。その後、4年ほどはほぼ横ばいが続き、2001年度以降は減少傾向にあります。
貨物自動車の排出量も、1990年代は10%を越えていましたが、減少傾向にあります。
次世代自動車の役割
次世代自動車とは、電気自動車、ハイブリッド(プラグインハイブリッド)自動車、水素自動車、燃料電池自動車などのことです。
これら次世代自動車は、地球温暖化の原因とされるCO2の排出量が少なく抑えられるため、環境にやさしい車とされています。
国では、新車の販売台数に占める次世代自動車の割合を、2030年までに、50〜70%とすることを目標に掲げています。
地球温暖化の原因とされるCO2の排出量の削減を進めるために、次世代自動車が注目されています。
クリーンテックへのシフト
クリーンテックとは、再生できない資源をまったく使わないか、あるいは、その消費量を減らすことにより、以前と変わらない効用を生み出すことのできるテクノロジーや製品のことで、太陽光発電やハイブリッド自動車などがこれに当たります。
トラック業界でも、このクリーンテックへのシフトが徐々に進んでいます。
この章では、クリーンテック技術の進展と、トラック輸送業界での取り組みについて紹介します。
企業による再生可能エネルギーの調達
企業が再生可能なエネルギーを調達するには、主に以下の2つの方法があります。
・自社で施設をもち、再生可能なエネルギーを発電する
・発電事業者から、再生可能エネルギーを使って発電された電力を購入する
自社で発電する取り組みとしては、一般的なものでは、太陽光発電設備の設置があります。自社の敷地内に太陽光パネルを設置して、自家発電をおこない、事業用の電力を賄う方法です。
市場で、発電されたエネルギーを購入することも、再生可能エネルギーの調達とみなされています。
2016年に、日本では電力の小売事業が自由化されたため、企業や個人は、電力会社を選べるようになりました。
そのため、再生可能エネルギーを使って発電をおこなっている発電事業者と契約することで、自家発電が難しい場合でも、自社の再エネルギーの比率を上げることができます。
電動化とグリーン水素の役割
電動化(EV)は、ガソリンや軽油に頼らずに、自動車などを動かすことで、EVの導入により、自動車から排出されるCO2を無くすことができ、企業の脱炭素経営の実現に近づきます。
水素エネルギーとは、水素と酸素を結合させることで大きなエネルギーを得て、発電時に、化石燃料と違い二酸化炭素を排出しないため、新たなエネルギー資源として利用することで、脱炭素の実現を可能にします。
中でも「グリーン水素」は、水素を製造する際に必要となるエネルギーを、太陽光発電などの、再生可能エネルギーを使うことで作られた水素のことです。
こうして作られた水素は、化石燃料を一切使っていないため、CO2を排出することもありません。
持続可能な未来へ
最後に、トラック業界が、持続可能な社会に果たしていく役割や、今後の技術革新の展望について紹介します。
トラック業界の未来への貢献
トラック業界が、SDGsの未来の社会に貢献するには、どのようなケースが考えられるのでしょうか。
・エコドライブの推進
・アイドリング・ストップの推進
・CO₂排出量の把握
・環境性能に優れた次世代トラックの導入
・EMS(エコドライブ管理システム)関連機器の導入
上記のような取り組みが現在進められており、SDGsな社会の実現に貢献しています。
環境に優しい技術革新の重要性
経済面と環境面の両面で、安定した生活を維持していくためには、産業の技術革新は欠かせないものです。
そのためには、さまざまな技術革新に対して、継続的で、かつ持続的な投資が不可欠です。
トラック運送業界は、大きな変革の波に直面していて、その代表的な課題が「2024年問題」といわれているものです。
トラック運送業界は、私たちの生活や、ビジネス活動において、非常に大きな役割を果たしています。
SDGsの実現や、2024年問題などの課題を解決するための技術革新が、今こそ重要になっているのです。