普段トラックを見かけたり、実際に運転したりしていても、その種類分けを明確に理解している方は少ないでしょう。一言でトラックと言っても多様な種類があり、それぞれに特徴やメリットがあり、適した活用シーンがあります。
本記事では、トラックの種類とそれぞれの特徴・使用用途、各トラックの具体的な活用場面を詳しく解説します。さらに、目的に応じた最適なトラック選びのポイントもご紹介します。
トラックの基本分類とそれぞれの用途
トラックはサイズや形状などさまざまな要素で分類できますが、まずはサイズ別の3種類を見ていきましょう。
小型トラック:小回りの利く配送のスペシャリスト
小型トラックは、トラックの分類の中で最も小さいサイズにあたります。車両規格は、車両総重量5.0t以内、最大積載量3.5t以内です。車体が小さく小回りが利くため、主に宅配やコンビニエンスストアの配送など、近距離輸送で多く用いられます。
例えば、ヤマト運輸やサガワキューブリックスなどの宅配業者は、小型トラックを使用して戸別配送を行っています。また、セブン-イレブンやローソンなどのコンビニエンスストアチェーンは、小型トラックを使用して各店舗への商品配送を行っています。
小型トラックの車体外寸は、全長4.7m以内、全幅1.7m以内、全高2.0m以内です。最大積載量は3.5t以内、車両総重量は5.0t以内となっています。
小型トラックの運転には、準中型免許以上の所持が必要です。ただし、2tトラック(最大積載量2.0t未満、車両総重量3.5t未満)であれば普通免許でも運転できるため、中小企業や個人事業主にも広く利用されています。
中型トラック:多様なニーズに応える万能選手
中型トラックの規格は、小型トラックと大型トラックの中間に位置します。車両規格は、車両総重量7.5t超11.0t以内、最大積載量4.5t超6.5t以内です。小型トラックより積載量を確保できるため、ルート配送や引越しなど中長距離配送で活躍します。
例えば、日本通運やヤマトホームコンビニエンスなどの引越し業者は、中型トラックを使用して効率的な荷物の輸送を行っています。また、イオンやイトーヨーカドーなどの大手スーパーマーケットチェーンは、中型トラックを使用して複数の店舗への一括配送を行っています。
中型トラックの車体外寸は、全長12m以内、全幅2.5m以内、全高3.8m以内です。最大積載量は4.5t超6.5t以内、車両総重量は7.5t超11.0t以内となっています。
一般的に中型トラックに分類されるのは、4tトラックや4tの増トン車である8tトラックと呼ばれるものです。ただし、8tトラックは車両総重量が7.5t以下の場合は中型車、車両総重量が7.5tを超える場合は大型車に分類されるため、注意が必要です。
大型トラック:長距離輸送や大量輸送の主力
大型トラックは一般的に10tトラックとも呼ばれ、車両規格は車両総重量11.0t以上、最大積載量6.5t以上です。近距離輸送でも使用されますが、中長距離輸送での使用が大半を占めます。
例えば、佐川急便やFedExなどの大手物流会社は、大型トラックを使用して全国規模の輸送ネットワークを構築しています。また、トヨタ自動車や日産自動車などの自動車メーカーは、大型トラックを使用して完成車や大型部品の輸送を行っています。
大型トラックの車体外寸は、全長12m以内、全幅2.5m以内、全高3.8m以内です。最大積載量は6.5t以上、車両総重量は11.0t以上となっています。
大型トラックの運転には大型一種免許が必要です。大型一種免許の取得は、普通・準中型・中型・大型特殊免許のいずれかの運転免許を受けて1年以上経過していることが条件となっています。
形状別に見るトラックの種類と特徴
トラックは、サイズによる分類だけでなく、形状の違いでも分類することができます。ここでは、代表的な4つの形状について詳しく見ていきましょう。
平ボディトラック:どんな荷物も積める万能型
平ボディトラックとは、荷台に屋根がなく露出しているタイプのトラックです。荷台が軽量で比較的積み荷スペースを多く確保できるため、使用用途は多岐にわたります。
例えば、建設現場では資材や機材の運搬に使用されており、大和ハウス工業やTOTOなどの住宅設備メーカーが現場への配送に活用しています。また、農業分野では、JA全農などが農作物の集荷や運搬に平ボディトラックを使用しています。
フォークリフトや天井クレーンなどで貨物の積み降ろしをしやすいのも平ボディトラックのメリットです。アオリの高さはさまざまで、アオリのないものもあります。地面から荷台面までの間隔が近い低床タイプや、その逆の高床タイプなど種類も豊富です。
バントラック(箱車):荷物を守る安心設計
バントラックは箱車とも呼ばれ、荷台が覆われているタイプのトラックです。荷台を覆う部分は、アルミ素材やホワイトボード材のようなパネルタイプ、ホロタイプなどさまざまな種類があり、タイプによって最大積載量も異なります。
宅配や引っ越しなどで多く用いられるタイプで、主に後方を開閉して荷物の積み降ろしを行います。側面にサイドドアが付いているものもあり、その部分から荷物の積み降ろしが可能です。
例えば、アスクルやLOHACOなどのオフィス用品通販会社は、バントラックを使用して企業向けの配送を行っています。また、ニッセンやDHLなどの通販会社も、バントラックを活用して全国各地への配送を行っています。
バントラックの最大のメリットは、雨風などから荷物を保護できる点です。また、積み荷が落下するリスクが少なく、積み込む際の養生作業などが比較的簡単な点も特徴といえるでしょう。
ウィングトラック:積み下ろしが楽々スムーズ
ウィングトラックは、覆われている荷台部分を左右から羽を広げるように開閉できるトラックです。車体が長く、荷台の箱が左右に開くので、長さのあるものやパレット貨物などの輸送に適しています。
例えば、大塚製薬や武田薬品工業などの製薬会社は、ウィングトラックを使用して医薬品の輸送を行っています。また、キリンビールやアサヒビールなどの飲料メーカーも、ウィングトラックを活用してパレット単位での配送を行っています。
荷台後方を開けて積み降ろすこともできるため、バン車よりも利便性が高いといえるでしょう。サイドからの積み降ろしが可能なため、狭い場所でも作業がしやすいのが特徴です。
ダンプトラック:土砂や資材を運ぶ力持ち
ダンプトラックは主に建設現場で使用されるトラックです。荷台を傾けて土砂を排出できるようになっており、土砂や砂利などの積み降ろし・運搬の用途で使われます。
例えば、大成建設や鹿島建設などの大手ゼネコンは、ダンプトラックを使用して大規模工事現場での土砂運搬を行っています。また、太平洋セメントや住友大阪セメントなどのセメントメーカーも、ダンプトラックを活用して原料の運搬を行っています。
ダンプトラックには、一般道路の走行が可能な車両と、走行できない重ダンプがあります。重ダンプは、主にダムや鉱山など大掛かりな建設現場で用いられます。
また、土砂を積むことが禁止された土砂禁ダンプと呼ばれるものもあります。これは、清掃業車が使用済みペットボトルなどを運ぶ際に活用するなど、多様な用途に対応しています。
特殊な用途に応えるトラックの種類
トラックはさまざまな特殊用途に対応した車両があります。ここでは、特殊な用途に特化したトラックを詳しく見ていきましょう。
冷蔵冷凍トラック:鮮度を保つプロフェッショナル
冷蔵冷凍トラックは、バントラックの箱部分に冷蔵・冷凍機能を備えたトラックです。箱部分は断熱構造になっており、主に生鮮食品などを冷蔵・冷凍した状態で輸送することができます。
例えば、マルハニチロやニチレイなどの水産・食品会社は、冷蔵冷凍トラックを使用して冷凍食品や生鮮魚介類の輸送を行っています。また、明治やよつ葉乳業などの乳業メーカーも、冷蔵冷凍トラックを活用して牛乳や乳製品の配送を行っています。
食品だけでなく、温度管理が必要な医薬品を運ぶ際にも使われます。例えば、武田薬品工業やファイザーなどの製薬会社は、ワクチンなどの温度管理が重要な医薬品の輸送に冷蔵冷凍トラックを使用しています。
冷蔵・冷凍機能がなく、断熱構造のみが施されている保冷車両もあり、温度管理が不要な荷物輸送用としても活用されています。
タンクローリー:液体輸送のスペシャリスト
タンクローリーは、荷台部分に大きな円筒状のタンクを搭載した大型車に分類されるトラックです。主に、ガソリン・灯油・軽油・化学薬品・セメント・水などの液体、LPガスや液化窒素などの気体をタンクに入れて運搬する際に使用されます。
例えば、出光興産やENEOSなどの石油元売り会社は、タンクローリーを使用してガソリンスタンドへの燃料配送を行っています。また、エア・ウォーターや日本エア・リキードなどの産業ガス会社も、タンクローリーを活用して液化窒素や液化酸素の輸送を行っています。
タンクの形状には2種類あり、液体を入れる場合は楕円形、気体の場合は真円形です。直接液体・気体を注入して運搬するため、タンクの素材はステンレスやアルミニウムなど頑丈なものが使われています。
危険物や高圧ガスなど運搬するものによっては、危険物取扱者や毒物劇物取扱者、高圧ガス移動監視者などの資格が必要です。これらの資格を持つ専門のドライバーが安全な輸送を担っています。
クレーン付きトラック:荷役作業を効率化する万能型
クレーン付きトラックは、平ボディの荷台部分にクレーンを搭載した車両です。クレーン車の多くをユニックというメーカーが生産していることから、ユニック車とも呼ばれています。
例えば、大和ハウス工業やパナソニック ホームズなどの住宅メーカーは、クレーン付きトラックを使用して建築資材の運搬と設置を行っています。また、三菱電機やダイキンなどの空調機器メーカーも、クレーン付きトラックを活用して重量のある室外機の設置作業を行っています。
クレーンを積んでいる分、最大積載量は平ボディ車より少ないですが、クレーンで荷台に荷物の積み降ろしができる点が最大のメリットです。特にフォークリフトや天井クレーンなど荷役機械がない建設現場では重宝され、その操作性・機動性を活かしてさまざまな場面で活躍しています。
比較的小回りが利くラフタークレーンや、クレーンが付いた牽引トラックなど種類もさまざまです。例えば、タダノやコベルコ建機などの建設機械メーカーは、これらの特殊なクレーン車を製造しており、建設現場や港湾施設などで幅広く使用されています。
クレーン運転に関する免許・資格には、「移動式クレーンの運転の業務に係る特別教育」「小型移動式クレーン運転技能講習」「床上操作式クレーン運転技能講習」「クレーン・デリック運転士免許」などがあります。特に「クレーン・デリック運転士免許」は労働安全衛生法に定められた国家資格のため、所持していると仕事の幅が広がるでしょう。
目的別に最適なトラックを選ぶポイント
ここまでさまざまなトラックの種類と特徴を見てきましたが、実際にトラックを選ぶ際にはどのような点に注目すべきでしょうか。以下に、目的別に最適なトラックを選ぶ際のポイントをまとめました。
積載量と運搬する荷物の性質: 運搬する荷物の重量や体積、そして性質(固体、液体、温度管理が必要かどうかなど)を考慮することが重要です。例えば、大量の荷物を運ぶ必要がある場合は大型トラックが適していますが、温度管理が必要な食品を運ぶ場合は冷蔵冷凍トラックが最適です。
輸送距離と頻度: 近距離で頻繁に配送する場合は小型トラックが効率的ですが、長距離輸送や大量輸送の場合は中型や大型トラックが適しています。例えば、都市部での宅配業務には2tトラックが多く使用されていますが、県をまたぐ長距離輸送には10tトラックが活躍しています。
積み降ろしの方法と場所: 荷物の積み降ろし方法や作業場所の環境によって、最適なトラックは変わってきます。狭い場所での作業が多い場合は小回りの利く小型トラックやウィングトラックが適していますが、クレーンでの荷役が必要な場合はクレーン付きトラックが効率的です。
燃費と維持費: トラックのサイズが大きくなるほど燃費は悪くなり、維持費も高くなる傾向があります。そのため、必要以上に大きなトラックを選ばず、業務に適したサイズを選ぶことが重要です。例えば、中小企業や個人事業主の場合、2tや4tトラックが燃費と積載量のバランスが取れていることが多いです。
必要な免許や資格: トラックの種類によって必要な運転免許が異なります。また、特殊な用途のトラックでは追加の資格が必要な場合もあります。例えば、4tトラックまでは中型免許で運転できますが、10tトラックには大型免許が必要です。さらに、タンクローリーでは危険物取扱者の資格が必要になることがあります。
法規制と道路事情: 道路交通法や車両制限令などの法規制、そして実際の道路事情(幅、高さ制限、重量制限など)を考慮する必要があります。例えば、都市部の狭い道路では大型トラックが通行できない場合があるため、複数の小型トラックでの輸送を検討する必要があります。
将来的な事業拡大の可能性: 現在の需要だけでなく、将来的な事業拡大の可能性も考慮に入れることが重要です。例えば、現在は4tトラックで十分でも、近い将来に取扱量が増える見込みがある場合は、最初から8tトラックを導入することで、将来的なコスト削減につながる可能性があります。
環境への配慮: 近年、環境への配慮が重要視されています。電気トラックやハイブリッドトラックなど、環境に配慮した次世代のトラックも登場しています。例えば、ヤマト運輸やセブン-イレブン・ジャパンなどの企業が、都市部での配送に電気トラックの導入を進めています。これらの選択肢も検討に値するでしょう。
以上のポイントを総合的に考慮し、自社の業務内容や将来的な展望に最適なトラックを選ぶことが重要です。また、リース会社やトラックメーカーに相談することで、より詳細な情報や専門的なアドバイスを得ることができます。
トラックの選択は、企業の物流戦略や経営効率に大きな影響を与える重要な決定です。本記事で紹介した情報を参考に、自社にとって最適なトラックを選び、効率的で持続可能な物流体制の構築につなげていただければ幸いです。