トラッククラッチの寿命とメンテナンスの秘訣とは

トラックのクラッチは、エンジンとトランスミッションを繋ぐ重要な部品です。他の部品と同様に、トラックのクラッチも劣化していくため、正常に利用できるまでの寿命があります。トラックの運転方法によっては、クラッチの寿命が短くなるケースもあるため、注意が必要です。

一方、適切な運転方法での走行やメンテナンスを実施することで、トラッククラッチの寿命を延ばすことが可能です。本記事では、トラックのクラッチ寿命やクラッチの交換タイミング、修理や交換にかかるコストなどを詳しく解説していきます。

目次

トラックのクラッチ寿命の基礎知識

はじめに、トラックのクラッチ寿命の基礎知識について確認していきましょう。今回は「トラッククラッチの役割と構造」「クラッチ寿命のサイン」に焦点をあてて、基礎知識を解説していきます。

トラッククラッチの役割と構造

トラッククラッチとは、エンジンとトランスミッションを繋いでいる装置です。トランスミッションは、クラッチで伝わってきたエンジンの力をタイヤに伝える装置になります。

自動車の動力はエンジンが源となっていますが、このエンジンの力をトランスミッションに伝達するのがクラッチです。クラッチの構造は、エンジン側とタイヤ側の2枚の円盤状の板となっています。

運転席の足元にあるクラッチペダルを使ってクラッチを操作して、エンジンの動力の伝達を調整する形です。クラッチペダルを踏むと、2枚の板が離れます。2枚の板が離れることで、エンジンの動力がトランスミッションに伝わらない状態となり、タイヤの回転が遅くなります。

クラッチペダルを踏んだ状態からもとに戻すと、2枚の板が元の位置に戻り、エンジンの動力がトランスミッションに伝わります。トラッククラッチは、エンジン動力とトランスミッションの間に入った調整装置ともいえるでしょう。

クラッチ寿命のサインとは?

トラッククラッチの寿命は、年数でいうと5~7年ほどです。走行距離で見ると、一般的に10万Kmがトラッククラッチの寿命の目安になります。

クラッチペダルを踏む際に、ペダルが重くなってきた際は、クラッチ寿命のサインです。長年の利用によってクラッチディスクが摩耗すると、ディスクの摩擦力が弱くなり、クラッチが重くなる原因となります。

また、クラッチディスクの磨耗以外にも、クラッチワイヤーなどの関連部品の劣化によってクラッチが重くなるケースもあります。部品の消耗が著しい場合は、クラッチ一式を交換することも少なくありません。

また、クラッチを踏んだ際に異臭や異音がする場合もクラッチ寿命のサインです。異臭、異音がする場合、摩耗が進んでしまい、クラッチが焼き付いている可能性があります。摩耗が進んだクラッチをそのまま使用することは非常に危険です。関連部品と合わせて、早急に点検をおこないましょう。

クラッチ寿命を左右する要因

クラッチ寿命を左右する要因として、「運転方法」と「メンテナンス不足」が挙げられます。不適切な運転方法は、クラッチに負荷をかけてしまい、消耗が進んでしまいます。また、メンテナンスが不足すると、クラッチの異常を検知できず、クラッチの故障を引き起こしかねません。

具体的に、どのような運転方法がクラッチの寿命を左右するのか、またメンテナンスの重要性について詳しく確認していきましょう。

運転方法が及ぼす影響

トラックの運転時に以下の運転方法を多用すると、クラッチに負荷がかかりやすくなります。

 

1、頻繁なギアチェンジ、半クラッチ

ギアチェンジを頻繁におこなうと、それだけクラッチの使用頻度が多くなり、消耗が進んでしまいます。ギアチェンジを全く行わないことは現実的でなく難しいですが、不要なギアチェンジは避けるようにしましょう。

また、半クラッチはエンジンの動力がミッション側にかかっている状態で、完全にクラッチがかみ合う状態ではありません。

このため、半クラッチでは摩擦状態が続きます。半クラッチを頻繁にしようすると、摩擦状態の継続のために、クラッチに必要以上の負荷をかけてしまい、消耗が進みやすいです。

 

2、エンジンブレーキの多用

加えて、エンジンブレーキの多用もクラッチディスクの消耗に繋がります。エンジンブレーキを使用する際、クラッチを繋ぐ動作が生じるため、エンジンブレーキを使いすぎるとクラッチの消耗が早まってしまうので注意が必要です。

メンテナンスの重要性

クラッチの寿命を伸ばすためには、定期的なメンテナンスが不可欠です。メンテナンスが不足すると、クラッチの異常に気付くことが遅れてしまい、クラッチの故障に繋がってしまいます。

自分で実践できるクラッチのメンテナンス方法として、「クラッチフルードの交換」と「クラッチペダルの遊びの点検」が挙げられます。

クラッチフルードとは、ギアチェンジの際に油圧によって動力をクラッチ機構に伝えるオイルです。別名「クラッチオイル」とも言います。

クラッチフルードは、クラッチを使用するたびに劣化していくため、定期的に交換することが必要です。クラッチフルードの交換目安は、一般的に5年ほどですが、クラッチフルードが黒く変色して劣化が進んでいる場合は、すぐに交換した方が安全です。

 

クラッチペダルの遊びとは、クラッチペダルを軽く手で押し込んだ際に、抵抗を感じるまでの押し込み量を指します。クラッチペダルの遊びの基準値は、15~25mmです。クラッチペダルの遊びが適切でない場合、クラッチレバーを離してもクラッチが繋がらない、クラッチレバーを握ってもクラッチが切れないなど、不具合が発生する可能性が高いです。最悪の場合、クラッチディスクが破損するケースもあります。

 

クラッチペダルの遊びは、アジャスターを回すことで調整可能です。遊びの量を増やす場合は、アジャスターを締める方向へ回して、アジャスターとロックナットの間隔を狭くしましょう。反対に、遊びを減らしたい際は、アジャスターを緩める方向へ回します。

 

ただ、トラッククラッチのメンテナンスでは、クラッチや関連部品の修理・交換をおこなうケースも発生してきます。上記のメンテナンスを実施してもクラッチの異常が解消されない場合、ディーラーか独立系修理工場にメンテナンスを依頼するのがおすすめです。

クラッチ交換時の費用と対策

最後に、クラッチを交換する際の費用と、クラッチ寿命をできるだけ延ばすための対策について解説していきます。

交換費用の目安

トラッククラッチの修理・交換の費用は、トラックの種類やサイズによって変わってきます。以下、トラックの種類・サイズごとのクラッチ修理・交換費用の目安です。

 

1、小型トラック(2tトラック):約100,000~150,000円

2、中型トラック(4tトラック):約150,000~200,000円

3、増トントラック(6.5トン・8トン):約200,000~250,000円

4、大型トラック(10tトラック):約200,000~300,000円

 

一般的には、トラックのサイズが小さいほど費用は安くなり、大きいサイズになると費用は高くなる傾向です。また、クラッチの修理・交換費用は、ディーラーへの依頼か独立系修理工場への依頼かによっても変わってきます。

ディーラーの場合、クラッチ修理・交換後の補償がある点、特徴になります。また、部品の在庫が多い点も特徴で、使用しているトラックの純正クラッチに交換してもらえるケースが多いです。

独立系修理工場の場合、ディーラーにクラッチ修理・交換を依頼するよりも、費用が安い傾向にある点が特徴になります。ただし、実際にかかる費用は工場によって変わってくるため、100%ディーラーより費用が安いと断言することはできません。

最初からひとつの整備工場、ディーラーに限定せず、複数のところで見積もりを出してもらってから、最終的な依頼先を決めるのがおすすめです。

寿命を延ばすための対策

トラッククラッチの寿命を延ばすための対策として、以下の内容が挙げられます。

1、シフトチェンジをゆっくりおこなう

2、フットブレーキを活用する

3、セミオートマトラックを利用する

 

トラックは通常の乗用車としてエンジンのパワーが強いため、一回エンジンの回転数を上げると下がりにくいです。このため、シフトチェンジを素早く行うと、クラッチの消耗が早くなります。トラックの運転時は、シフトチェンジはゆっくりおこないましょう。

また、エンジンブレーキを多用するとクラッチの消耗に繋がることは、先ほど説明した通りです。トラックには、大きさによっては排気ブレーキやエアブレーキなど、様々なブレーキが搭載されています。エンジンブレーキを多用せず、その他のブレーキも活用するのがおすすめです。

さらに、クラッチの寿命を延ばす手段として、セミオートマトラックを選ぶ方法もあります。セミオートマトラックのメリットは、クラッチ操作が必要ない点です。このため、クラッチペダル自体がない状態です。

また、シフト操作はコンピューターによって自動的に実施されます。通常のマニュアルトラックと比較してシフトチェンジの操作が少ないため、クラッチの消耗を抑えやすいです。

 

セミオートマトラックは購入コストがマニュアルトラックよりも高い点、また燃費面でマニュアルトラックに劣る点、デメリットになります。車種やサイズによって価格は異なってきますが、同サイズのトラックであれば、セミオートマトラックの方が、価格が高い傾向です。また、燃費面ではどうしても、運転技術のすぐれたドライバーはマニュアルトラックを運転する方が、燃費の効率はよくなります。

さらに、セミオートマは自動でギアチェンジをする部品構造が複雑である分、マニュアルよりも故障リスクが高いです。

セミオートマトラックの利用を検討する際は、上記のメリット・デメリットを踏まえた上で、最終的に購入・導入を検討するのがおすすめになります。

トラッククラッチは、不適切な運転方法やメンテナンス不足によって寿命が短くなるケースがあります。特に運転方法がトラッククラッチの寿命に及ぼす影響は大きいです。

 

適切な運転方法、定期的なメンテナンスを実施することで、トラッククラッチの寿命を可能な限り延ばすことができます。本記事で解説した内容を参考にしていただき、トラッククラッチを可能な限り長く使用できるよう、トラックの運転、メンテナンスを実施してもらえると幸いです。

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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