トラックのエンジンがかからない!原因別に対処法と予防策を解説

業務用トラックは、新車・中古車を問わず、ちょっとした原因でエンジンがかからないトラブルが発生する可能性が常にあります。多くの荷物を運んだり、業務上でトラック運行しなければいけないドライバーの方にとって、突然のエンジントラブルは非常にストレスの溜まるものです。

今回は、トラックのエンジンがかからなくなる原因やその対処法、予防策までをご解説します。

目次

エンジンがかからない原因をチェック!

トラックのエンジンがかからない原因としては、バッテリーの不調や燃料供給の異常、点火系トラブル、エンジン始動装置の故障など、さまざまな要素が考えられます。エンジンがかからないとトラックの運行ができなくなる上、車両自体にもダメージを与えかねないため、早急な対処が必要です。では、主な原因をそれぞれ見てみましょう。

バッテリー上がり

突然エンジンがかからなくなった時、真っ先に疑われるのはバッテリー上がりです。バッテリー上がりとは、過放電や経年劣化が原因でエンジン始動に必要な電気が取り出せない状態を指します。一般的にエンジン始動には春・夏季で約90~120A、寒くなる冬季で約150~190Aの大電流が必要になり、バッテリー充電量が約50%を下回るとエンジンをかけることが困難になります。

トラックの場合、長距離走行や頻繁な積み下ろし作業など、一般乗用車よりも過酷な使用条件にさらされることが多いため、バッテリーへの負担も大きくなります。特に、冷凍・冷蔵トラックなどは、荷台の温度管理システムがバッテリーに追加の負荷をかけるため、注意が必要です。

バッテリー上がりのよくある原因として、以下が挙げられます。
• エアコンの使用過多
• ルームランプのつけっぱなし
• 夜間走行後のヘッドライト消し忘れ
• エンジンの切り忘れでの待機電力の消費
• 自然放電による蓄積電力減少(長期間車に乗っていなかった場合など)
• バッテリー自体の寿命

バッテリー上がりを自分で直す方法のひとつとして、ジャンプスターターというモバイルバッテリーを利用した方法があります。ジャンプスターター本体に付属する赤いクリップをバッテリーの+端子に、黒いクリップを−端子につないだままエンジンをかけます。注意したい点は事前にジャンプスターターを購入して充電しておく必要があることです。近年は小型かつ安価な、手に取りやすいものが多く発売されているので、万が一を考慮して持っておくことがおすすめです。

トラック用のジャンプスターターを選ぶ際は、トラックのバッテリー容量に適した出力のものを選ぶことが重要です。一般的に、大型トラックには24Vのバッテリーが使用されていることが多いため、24V対応のジャンプスターターを選択する必要があります。

バッテリーの平均的な寿命は走行状況にもよりますが2~5年といわれており、古くなると機能は衰えてきます。車が停止すると自動的にエンジンストップするアイドリングストップ機能付きのトラックは、バッテリーからの電力供給に切り替える頻度も高く、それだけバッテリーに負荷がかかるため、バッテリーの寿命はより短くなる傾向にあります。

セルモーターの故障

セルモーターも、エンジン起動には欠かせない部品のひとつです。ディーゼルエンジンもガソリンエンジンも、基本的なサイクルは吸気・圧縮・燃焼・排気の四行程です。吸気と圧縮の工程はエンジン自ら行うことができないため、そこでエンジンに動き出すきっかけを与える部品がセルモーターです。万が一故障してしまうと、必然的にトラックは動かなくなります。

この重要なパーツであるセルモーター故障の原因の多くは「バッテリー上がり」です。バッテリー上がりの状態で何度もエンジン始動を試みると、セルモーターに過度の負荷がかかり、故障の原因となります。また、他の消耗部品と比べると交換頻度は少ないセルモーターですが、エンジン始動を繰り返すことでの経年劣化やパーツ同士のズレなどが生じます。

セルモーターの寿命目安としては、使用開始から10~15年程度とされていますが、走行距離が多い業務トラックの場合は10年経たず不具合が生じる可能性があります。以下のような症状が出た場合は、完全にエンジンがかからなくなってしまう前に修理交換を行ないましょう:

• 何度も始動しないとエンジンがなかなかかからない
• エンジン始動までの時間が購入初期よりも長くなった
• セルモーターの音が弱い・小さい

トラックの場合、セルモーターの交換作業は車両の大きさや構造の複雑さから、一般乗用車よりも時間と労力がかかることがあります。そのため、早めの対処が特に重要です。

燃料系統のトラブル

燃料系統の故障もよくあるエンジントラブルの1つです。特に燃料ポンプは、燃料タンクの中にある軽油をエンジンまで送る役割をしていて、故障すると燃料の供給圧が不足したり、燃料が供給されなくなったりしてエンジンがかかりにくくなったり、かからなくなったりします。

トラックの場合、長距離走行や重量物の運搬による負荷が大きいため、燃料系統のトラブルが発生しやすくなります。特に、燃料フィルターの目詰まりは注意が必要です。燃料フィルターは、燃料内の不純物を取り除く重要な役割を果たしていますが、長期間の使用や低品質の燃料の使用によって目詰まりを起こすことがあります。

燃料ポンプの故障の症状としては、
• セルは回るが、エンジンはかからない
• キーをIGオンにした状態で、ポンプ作動音がしない(音が小さい場合もある)
などがあります。

次に重要な燃料フィルターは、トラックのエンジンがスムーズに動作するために欠かせない部品の一つです。異物などによる燃料フィルター詰まりが起こると、以下のような症状が現れます:

• エンジン振動が強くなる
• 加速力が不足する
• エンジンがかかりにくい、またはエンジンが停止してしまう
• 燃費の悪化
• 警告灯メーターが点灯している

燃料フィルターが汚れや不純物で詰まり燃料の流れが妨げられることで、エンジンへ供給される燃料量が不足すると、エンジン作動に影響を及ぼし、上記のような問題を引き起こします。これらの症状が出た場合は、エンジンダメージの進行を防ぐために早急に燃料フィルターの点検や交換を行う必要があります。作業は専門的な知識と技術が必要なため、すぐに専門業者に連絡することをお勧めします。

トラブル発生!エンジンがかからない時の対処法

エンジンがかからない原因として第一に考えるのは「故障」です。しかし実際には、その場で対処できるトラブルが原因となっている場合も多々あります。突然エンジンがかからない状態になっても慌てずに対処できるように、応急処置や専門業者への依頼方法を前もって理解しておきましょう。

自分でできる応急処置

トラックのエンジンがかからなくなった場合には、どのような対処が適切なのでしょうか。ここでは、トラックのエンジンがかからないトラブルが発生したときの対処法について解説します。

1. 燃料の確認と補充
単に燃料切れによるガス欠状態は、エンジンが始動しない理由のよくある一つです。点検時に燃料が不足している可能性がある場合は、軽油を補充してください。燃料計は車種によっては、イグニッションをONにしただけでも作動する場合があります。トラックの場合、燃料タンクの容量が大きいため、完全なガス欠になる前に気づくことができますが、長距離走行時は特に注意が必要です。

2. バッテリーの確認と対処
バッテリー上がりを起こしている場合は、一時的に電力を供給する「ジャンプスターター」を使用すれば、バッテリーに一定量充電できるので、エンジンを再度始動させることができます。ただし、ジャンプスターターは応急処置にすぎないため、1時間程走行したら充電する必要があります。バッテリーが劣化している場合は、早めの交換を検討しましょう。

トラックの場合、バッテリーが複数搭載されていることがあるため、全てのバッテリーの状態を確認することが重要です。また、ジャンプスターターを使用する際は、トラックのバッテリー電圧(12Vまたは24V)に適合したものを使用してください。

3. ヒューズの確認と交換
ヒューズが切れた場合にも、エンジンがかからないことがあります。電気回路に過電流が流れた際に、電気回路を遮断しながら通電を阻止し、回路や電装品を発火などから保護する部品がヒューズです。つまり、過電流が流れるとヒューズが断線してしまい、結果としてエンジンを回すための電流が途絶えてエンジンがかからなくなります。

ヒューズが断線していれば、新しいヒューズに交換することで即時解決します。トラックの場合、ヒューズボックスの位置や構造が一般乗用車と異なる場合があるため、事前に取扱説明書で確認しておくことをおすすめします。また、予備のヒューズを常備しておくと、急なトラブル時に役立ちます。

専門業者に依頼する

トラックのエンジンが突然かからなくなった場合、JAFや自動車保険に付帯しているロードサービスに救援依頼するのもひとつの方法です。ロードサービスは、事故やトラブル時に迅速に対応してくれて現場での応急処置や最寄りのディーラーや自動車整備工場などへのレッカー牽引などを同時に行ってくれるものです。

トラック専門のロードサービスもあり、これらは大型車両に対応した設備や経験豊富なスタッフを備えていることが多いです。特に、24時間対応のサービスは、夜間や休日のトラブルに対しても迅速な対応が期待できます。

エンジン故障には様々な原因がありますが、どの状態でも走行できないため早急な修理が必要です。エンジン内の部品や故障原因によって、修理費用には大きな差があるので、ご紹介します。

各専門業者のメリット・デメリット:

1. ディーラー
メリット:安心して安心して依頼できる、トラック専用の設備や部品が整っている
デメリット:正規部品を扱うため金額が高くなる可能性がある、修理内容によっては時間がかかる場合がある

2. 大手カー用品店
メリット:交換・修理費用が抑えられる、一般的な修理なら迅速に対応可能
デメリット:対応できる修理の範囲が狭い、大型トラックへの対応が限られる場合がある

3. 整備工場
メリット:稀少なパーツでも代替提案可能、トラック専門の整備工場なら高度な修理にも対応可能、費用を抑えられる場合がある
デメリット:店舗によって技術やサービスに差がある

時間と費用を惜しまず、安心して修理を依頼したい場合は「ディーラー」がおすすめです。軽度の修理で費用を抑えたい場合は「大手カー用品店」も選択肢の一つです。コストとクオリティを両立させたい場合は、トラック専門の整備工場に相談してみましょう。専門的な知識と経験を持つ整備士が、トラックの状態に合わせて最適な修理方法を提案してくれます。

ガス欠やバッテリーの修理費用

ガス欠やバッテリー上がりの修理は、比較的安価で即日完了できることが多いです。バッテリーの価格は数千円~数万円と幅広くなりますが、業務用大型トラックなどバッテリー容量が大きな車は10万円以上かかることもあるので、事前に見積もり依頼をしましょう。トラックの種類や大きさによって価格が大きく変わるため、具体的な費用は各業者に確認することをおすすめします。

セルモーターやオルタネーターの修理費用

セルモーターやオルタネーターは壊れにくい部品ですが、壊れてしまうと安全に走行できないため、早急な処置・修理が必要です。一般的なトラックが新品交換する場合、正規ディーラーでは部品と工賃で10~15万円程度かかることがあります。大型トラックの場合はさらに高額になる可能性があります。

一方で民間の整備工場に依頼したり、純正の新品ではなく社外品やリビルト品にすることで費用を抑えることができるでしょう。ただし、品質や保証の面で純正品との差異がある場合もあるため、重要度や使用頻度を考慮して選択することが大切です。

エンジン内部の修理費用

エンジン内部が故障した場合は、原因を調べるだけで数日かかることが多く、その間代車を借りなければなりません。さらにエンジン自体の故障や大がかりな修理となるとエンジンを載せ替えることもあり、部品、工賃を含めると数百万円かかるケースもあります。トラックの場合、エンジンの大きさや複雑さから、一般乗用車よりも高額になることが多いです。

中古車の修理の場合でも、上記で紹介したディーラー・大手カー用品店・整備工場の3者に新車と同じように依頼できます。まずは購入した店舗に問い合わせるのがおすすめで、店舗で修理可能だったり、提携先の整備工場を紹介してもらえる可能性があります。

トラブルを未然に防ぐ!日頃のメンテナンスと予防策

エンジンが突然かからなくなることは、業務に支障をきたす上に費用もかさむため、避けたいトラブルです。ここでは、日頃できるエンジントラブルを起こさない予防策をご紹介します。特に業務用トラックは使用頻度が高く、長距離走行や重量物の運搬など、過酷な条件下で使用されることが多いため、定期的なメンテナンスが非常に重要です。

定期点検の重要性

定期点検は、エンジントラブル予防においてとても重要です。定期点検をおろそかにしていたら劣化も進み、小さな不具合が深刻なトラブルにつながり、いざ走行しようとするとエンジンが始動しないことも起こり得ます。定期的な点検はトラブル発生のリスクを減少させることはもちろん、結果として高額な修理費用の節約にも繋がります。

トラックを長く安全に走行するためには、定期点検で確認すべき要素がいくつかあります。

1. エンジン関連部品
エンジンオイル、エアフィルターや燃料フィルターなどの消耗部品は、定期的な点検と交換が必要です。エンジンオイルは、車のメーカーや車種、オイルの種類、走行条件によって交換時期が異なりますが、一般的には、5,000km~10,000km毎または6ヶ月~1年毎に交換することが推奨されています。トラックの場合、一般乗用車よりも頻繁にオイル交換が必要になることがあります。特に、長距離走行や重量物の運搬を頻繁に行う場合は、製造元の推奨する交換間隔よりも早めに交換することをおすすめします。

2. 冷却水の交換
冷却水はラジエーター内を循環してホースを通してエンジンを冷却し、オーバーヒートを防いでくれます。冷却水の交換は、基本的に「車検ごと(2年毎)」が目安です。最近は交換サイクルが長くなった「スーパーロングライフクーラント」というものもあり、このタイプの冷却水は5年間無交換でも問題がないとされています。

トラックの場合、エンジンの負荷が大きいため、冷却システムの重要性が高くなります。冷却水のレベルと質を定期的にチェックし、必要に応じて補充や交換を行うことが重要です。

3. バッテリー液の量と電圧
バッテリー液の量は、バッテリーの補充液を目視することで確認できます。バッテリー液は半透明ケースの中に入っているので、それが上限ラインと下限ラインの間に収まっているかを確認し、不足しているようであれば補充をしましょう。

走行距離が長いトラックに関して重要なのは、セルを回しエンジンを始動させたときの電圧です。その時の電圧が、10V以上であれば問題なし、9.0~10Vなら低下傾向のため交換も検討、9.0V以下なら交換が必須という風に認識してください。トラックの場合、24Vシステムを採用している車両も多いため、適切な電圧計を使用して測定することが重要です。また、長時間のアイドリングや電装品の使用が多い場合は、バッテリーの状態をより頻繁にチェックする必要があります。

日常点検のポイント

仕事のパートナーであるトラックと長くつきあうためにも、日常点検もしっかり行いましょう。日頃のチェックで少しでもおかしいなと思ったらプロや販売店にすぐ相談し、点検してもらいましょう。

エンジントラブルを防ぐための日常点検としては、エンジンルームの確認は必須です。エンジンオイルを長期間交換せず使用し続けたり、オイルの量が目盛りの「L(下限)」より低い状態で使用し続けていると、潤滑不良でエンジン破損を招き、火災が発生する危険性もあります。量が少ないと確認できたら指定のオイルを補給または交換してください。

また冷却水の液面が「MIN(下限)」より低かったり、長期間交換せずに使用するとエンジンオーバーヒートにつながるおそれがあるので、必ず補給または交換してください。

最後に、バッテリーの液面を目視し「LOWER LEVEL(下限)」より低い状態で走行していると、バッテリーが上がり破裂するおそれもあります。必ず補給してください。ただしメンテナンスフリーバッテリー装備の車両もあるため、その場合は補給の必要はありません。

同時にバッテリー電圧の正常値としては、通常時が12.5~12.8V、エンジン始動時は13.5~14.5Vが正常値であり、エンジン始動時にもっとも多く電圧がかかってきます。バッテリー電圧が12.5Vを切ったら故障や寿命のタイミングであるため、目安として理解しておきましょう。

トラック特有の予防策

業務用トラックの特性を考慮した、エンジントラブルの予防策として以下の点にも注意を払いましょう:

1.適切な積載量の管理:過積載はエンジンに過度の負担をかけ、様々なトラブルの原因となります。積載量の制限を厳守し、適切な重量配分を心がけましょう。

2. 積載物の固定:積載物の固定不足は、荷崩れを起こし、事故につながる危険性があります。積載物の固定を確実に行いましょう。

3. アイドリング時間の管理:長時間のアイドリングは燃料の無駄遣いだけでなく、エンジン部品の摩耗を早めます。必要以上のアイドリングは避け、エンジンを止められる時は止めるよう心がけましょう。

4. 適切な燃料の使用:指定された燃料を使用し、できるだけ品質の良い燃料を選びましょう。低品質の燃料は燃料系統のトラブルの原因となる可能性があります。

5. タイヤの管理:適切な空気圧を維持し、定期的なローテーションを行うことで、エンジンへの負担を軽減できます。

6. エアフィルターの点検:大型トラックは吸入する空気量も多いため、エアフィルターの目詰まりに注意が必要です。定期的に点検し、必要に応じて交換しましょう。

7. 運転習慣の改善:急発進や急ブレーキ、急加速を避け、穏やかな運転を心がけることで、エンジンへの負担を軽減できます。

8. ドライブレコーダーの設置:万が一の事故やトラブル発生時に、状況を客観的に把握することができます。

これらの日常点検や予防策を適切に実施することで、トラックのエンジントラブルのリスクを大幅に減らすことができます。また、定期的な専門業者による点検も合わせて行うことで、より確実にトラブルを予防し、トラックの長寿命化につながります。

エンジントラブルは、適切な予防策と迅速な対応によって、多くの場合回避または最小限に抑えることができます。本記事で紹介した知識を活用し、大切な業務パートナーであるトラックを長く安全に使い続けていただければ幸いです。

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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