トラックで大型かつ多量の荷物を運ぶ際、その荷物の高さや幅が荷台からはみ出したまま走行することは危険です。安全性を確保するため、車に積める荷物の高さ・幅・重量の数値は法律で厳密に定められており、違反した場合は厳しい罰則が科せられます。
本記事では、トラックにおける積載量や高さの制限について詳しく解説し、違反のリスクと具体的な予防対策をご紹介します。
トラックの高さ制限とは?
日本国内の公道を走行するトラックは、道路法の車両制限令で定められている「高さ制限」を厳守しながらの走行が義務付けられています。そのため、積み荷の高さは一定の高さを超えないようにしなければなりません。
しかし、トラックの荷台地上高は車両区分によって異なるため、一概に「トラックに積載可能な荷物の高さは何mまで」と表すことはできません。そこで、各車両区分ごとの積載可能な荷物の高さ制限について詳しく見ていきましょう。
トラックの積載物に関する高さ制限の基本
従来、トラックの高さ制限は道路交通法第57条の5によって「原則3.8m以下」と規定されていました。しかし、2004年の法改正により、「高さ指定道路」に限って4.1mまで高さ規制が緩和されました。この高さ指定道路とは、構造保全の面や危険防止の観点から支障がないと認められ、国が特別に指定した道路を指します。
さらに、「制限外積載許可」の手続きを取って認可されれば、高さ4.3mまでの荷物を運ぶことが可能になります。この制度は、特殊な形状や大きさの荷物を運ぶ必要がある場合に利用されます。
日本国内の高さ制限に関する法律と規制
国内の公道における車両の高さ制限には、道路交通法第57条の5において以下の3つの段階が設けられています。
一般公道:3.8m
高さ指定道路:4.1m
所定手続きを行った場合:4.3m
これらの制限は、トラックの荷台に積載する荷物の高さを含めた車両全体の高さに適用されます。そのため、トラックに積載可能な荷物の高さも自ずと制限されることになります。
一般公道の3.8mや高さ指定道路4.1mの高さ制限を超過する荷物を積載する場合は、「制限外積載許可」の手続きを行う必要があります。この許可を得ることで、4.3mまで制限が緩和されます。
積み込み高さ4.3mまでの積み荷を運ぶための手続き
トラックに積載すると3.8mや4.1mの高さ制限に抵触する荷物を運ぶ際は、「制限外積載許可」の手続きが必要です。この許可を受けると、積み込み時の高さが4.3mまでの荷物を積載した状態で公道の走行が可能になります。
制限外積載許可は出発地を管轄する警察署で手続きします。許可申請時には以下の書類が必要です。
・制限外積載許可申請書
・特殊車両通行許可証
・車検証のコピー
・出発地から目的地への経路図
・積み込み時の荷姿図
・車両ドライバーの免許証のコピー
注意すべき点として、現在の道路交通法では制限外積載許可申請による高さ制限の規制緩和は4.3mまでとなっています。そのため、4.3mを超過する高さの荷物を積載することはできません。トラック荷台の荷物は積載時の高さが4.3mを超過しないよう、輸送前には荷台の地上高と積載する荷物の高さを厳密に計測する必要があります。
高さ制限を守るための重要なポイント
2024年9月現在の道路交通法における車両の積荷高さ制限は、一般公道3.8m・高さ指定道路4.1m・所定手続き後4.3mとなっています。これらの高さ制限に抵触しないようにするための重要なポイントを詳しく解説します。
積載時に注意すべきポイントと対策
トラックの荷台に荷物を積む際の注意ポイントを以下にまとめました。高さ制限を意識した積載時の参考にしてください。
高さ、重量を確認してバランスを意識し積む:
荷物を積む前に、まずトラックの積載制限や重心位置の制約を確認します。高さ制限を守りつつ、荷物を均等に分散して積むことで、安定性を確保しながら違反を予防した走行ができます。特に重い荷物を高い位置に積むと、トラックの揺れで荷崩れを起こす危険があるため、重量物は低い位置に配置するよう心がけましょう。
配送する順序を考えてから積む:
複数の場所に配送する場合は、積荷をグループ化して荷台の前後や左右に均等に配置することが重要です。これにより、高さ制限に引っかかるかもしれない荷物に意識が向くだけでなく、荷台の安定性が高まり、配達や積み下ろし時の効率も向上します。配送順序を考慮した積み方は、作業効率と安全性の両面で大きなメリットがあります。
荷物の大きさ、形状を考えて積む:
大きな荷物や特殊な形状の荷物がある場合は、積載方法に工夫が必要です。大型荷物はできるだけ荷台の中央に配置し、周囲に小さな荷物を詰めて隙間をなくすことで安定性が高まります。また、この方法を採用することで、高さ制限に抵触しないかどうかの判断もしやすくなります。特に背の高い荷物は、横倒しにして積むなど、創意工夫が求められます。
適切に固定して積む:
多量の荷物を積む際には、ロープや荷締めベルトを使用し、適切に固定しながら高さ制限を確認して積むことが重要です。運搬中に荷物がずれたり転倒したりすると、トラックが横転するなどの大きな事故につながる可能性があります。そのため、高さ制限を守ることはもちろん、荷物の固定にも十分な注意を払う必要があります。特に、急ブレーキや急カーブ時に荷物が動かないよう、しっかりと固定することが安全運転の鍵となります。
高さ制限違反のリスクと罰則
道路交通法で定められた高さ制限に違反したトラックには、厳しい罰則が科せられます。違反をしないことが大前提ですが、あらかじめ罰則の内容を確認しておくことで、より慎重な運転につながります。
50万円以下の罰金:
所定の積載量を超過した場合や、道路管理者の許可なく道路を通行してしまった場合、あるいは通行時に許可証を携帯していなかった場合には、道路法第104条において50万円以下の罰金が科されます。この罰金は、違反の程度や回数によって変動する可能性があります。
免許証の加点:
上記の罰金に加えて、運転免許証の点数も1点加点されます。これは、累積点数によって免許停止や取り消しにつながる可能性があるため、非常に重要な問題です。
荷主や事業者への罰則:
高さ制限超えに加えて過積載の場合には、荷主や事業者側も罰則の対象となります。荷主に対しては、管轄の警察署から再発防止命令が出されます。それでも再度違反をした場合には、6ヶ月以下の懲役もしくは10万円以下の罰金が科されます。
事業者に対しては、より厳しい処分が課される可能性があります。運行管理の資格取消や事業許可取消が行われる恐れがあり、これは社会的信用を大きく損ない、業務に重大な支障をきたすことになります。
これらの罰則を考慮すると、過大な荷物の積載は絶対に避けるべきです。高さ制限を厳守し、走行前の点検を徹底することで、ルールを守った安全な運搬を心がけることが極めて重要です。
高さ制限を守るための便利なツールとテクニック
運送業界や配送業務において、トラブルや違反行為を避けて業務を行うことは、社会的信用や経営存続のカギを握っています。ここでは、高さ制限を守るために役立つツールやテクニックをより詳しくご紹介します。
高さを測るためのおすすめツール
簡単に高さを測定するために、自重計やトラックスケールの使用をおすすめします。実際に高速道路で自動スケールによる測定が行われるのと同様に、荷物を積むときに自重計やトラックスケールで測定することで、過積載や高さ制限超えを効果的に防ぐことができます。
測定結果は必ず日時と車両番号と共に写真や記録に残し、毎回の測定記録を管理することが重要です。これにより、ドライバーだけでなく社内全体の意識が高まり、過積載のリスクを大幅に軽減できます。
トラックスケール(自重計):
トラックを駐車している土地が狭くて地盤が弱い場合、正確に積み荷量を計測できないことがあります。しかし、最近ではオーダーメイドでさまざまな大きさのスケールを製作してもらえる業者が増えています。大型スケールは施工費が発生しますが、小型スケールの設置はコストを抑えることができます。また、レンタルサービスを利用することで、初期投資を抑えつつ必要な時に利用することも可能です。
過積載判定機:
過積載判定機は、車両総重量値を事前に設定しておくことで、手軽に過積載車両の超過判定が行えるツールです。計測された重量値が設定値よりオーバーした場合には赤い回転灯が作動し、ドライバーに過積載であることを知らせてくれます。これにより、出発前に簡単かつ確実に過積載をチェックすることができます。
安全に高さ制限を守るための実践的なテクニック
特別なツールがなくても行える実践的なチェック方法について、より詳しく解説します。
目視での直接的なチェック:
検問時の警察官の確認方法と同様に、目視でリアサスペンションの下がり具合や荷台の状態をチェックすることは非常に重要です。土砂や砕石などの建築資材の場合、平らであれば高さ制限に関して問題ありませんが、定量の状態より上がっていたり下がっていたりすれば、過積載であると判断できます。
トラックの車体タイプによっても積載量に差が出るので注意が必要です。例えば、ダンプトラックと平ボディトラックでは、同じ重量でも荷台の高さが異なる場合があります。車両ごとの特性を十分に理解し、それに応じたチェックを行うことが大切です。
走行前の積載状況の二重チェック:
走行する前に、ドライバー以外に検査監督を担当する者が積載状況をチェックし、過積載がないか確認を二重に行うことをおすすめします。もし荷物を載せすぎている場合は、規定数値に戻すように促してください。
常に基準の積載量、制限値を守るように日常的に意識付けることで、過積載を効果的に防止することができます。この二重チェックのプロセスを社内規則として確立することで、安全意識の向上と違反リスクの低減につながります。
点検記録表を付ける:
トラックの荷台に高さが出る大型荷物など運搬物を積載する時には、搬出車両記録表に運搬する年月日、車両番号、最大積載量を記載して、ドライバー以外の監視スタッフに提出しましょう。明確に車両記録表を記録し、第三者である監視スタッフの点検を依頼するプロセスを経ることで、高さ制限超過をはじめとする過積載のリスクを大幅に軽減することができます。
この記録表は、単なる形式的な書類ではなく、安全運行の重要な証拠となります。万が一、事故や違反が発生した場合にも、適切な積載管理を行っていたことを示す重要な資料となります。また、これらの記録を定期的に分析することで、積載パターンや季節変動などの傾向を把握し、より効率的で安全な運行計画を立てることも可能になります。
高さ測定器の活用:
最近では、レーザー測定器やデジタル高さ計など、簡単に使用できる高さ測定器が多く開発されています。これらのツールを活用することで、より正確に荷物の高さを測定することができます。特に、不定形な荷物や複雑な形状の積載物の場合、目視だけでは正確な高さを把握するのが難しいことがあります。高さ測定器を使用することで、このような問題を解決し、より確実に高さ制限を守ることができます。
定期的なドライバー教育:
高さ制限や積載量に関する法規制は時に改正されることがあります。また、新しい測定技術や安全対策が開発されることもあります。そのため、定期的にドライバーや関係スタッフに対して教育セッションを行うことが重要です。これらのセッションでは、最新の法規制や安全技術について学ぶだけでなく、過去の違反事例や事故事例を分析し、その教訓を共有することも効果的です。
実際の運送業界の声:
ベテランドライバーの中には、「経験則で荷物の高さや重量を判断できるようになる」と語る人もいます。しかし、そのような熟練ドライバーでさえ、「目視だけでなく、必ず測定器で確認する習慣をつけている」と言います。
ある大手運送会社の安全管理責任者は、「高さ制限違反は一度起こすと会社の信用問題に直結する。そのため、我が社では二重三重のチェック体制を敷いており、それが結果的に業務の質の向上にもつながっている」と話しています。
高さ制限を守ることは、単に法律を遵守するだけでなく、道路利用者全体の安全を守ることにもつながります。過積載や高さ超過は、車両の安定性を損ない、事故のリスクを高めます。また、橋梁や道路構造物への損傷を引き起こす可能性もあります。
そのため、運送業に携わる全ての人々が、高さ制限の重要性を十分に理解し、それを守るための具体的な行動をとることが求められます。本記事で紹介したツールやテクニックを活用し、日々の業務の中で着実に実践していくことが、安全で効率的な運送業務の実現につながるでしょう。
高さ制限を守ることは、時に煩わしく感じられるかもしれません。しかし、それは自社の信頼性を高め、長期的には業績向上にもつながる重要な取り組みです。安全性と効率性のバランスを取りながら、常に最適な積載方法を追求し続けることが、運送業界全体の発展につながるのです。
以上で、トラックの積載と高さ制限に関する詳細な解説を終わります。この情報が、安全で効率的な運送業務の一助となれば幸いです。