トラックのリアバンパー、車検に通るための刻印・取付基準のポイント

トラックを運転される方にとって、車検は避けて通れない重要な手続きです。その中でも、リアバンパーの検査は意外と見落としがちなポイントかもしれません。実は、トラックのリアバンパーは単なる車体の一部ではなく、追突事故から人命を守る極めて重要な安全装置なのです。

リアバンパーは正式には「後部突入防止装置」と呼ばれ、英語ではRear Underrun Protective Device、略してRUPDと表記されます。この装置の最も重要な役割は、後方から追突された際に、後続車両がトラックの下に潜り込んでしまうことを防ぐことです。大型トラックの車高は乗用車よりもかなり高いため、もしリアバンパーがなければ、追突した乗用車はトラックの下に潜り込んでしまい、運転席部分が押しつぶされるという悲惨な事故につながりかねません。

このような重大な役割を担っているからこそ、車検では厳格な基準に基づいてリアバンパーの状態がチェックされるのです。今回は、トラックのリアバンパーが車検に適合するために必要な刻印の意味や、正確な取付基準、そして保安基準で定められた要件について、実際の現場での経験も交えながら詳しくお話ししていきたいと思います。

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トラックのリアバンパーと車検の基本

まず最初に、リアバンパーがなぜ車検で重要視されるのか、その基本的な部分から説明していきましょう。トラックのリアバンパーは、見た目はシンプルな金属の棒のように見えるかもしれませんが、実は非常に精密に設計された安全装置なのです。

リアバンパーが持つ安全上の役割

先ほども触れましたが、リアバンパーの最大の役割は後部突入防止です。これは単に「ぶつかった時の衝撃を和らげる」というレベルの話ではありません。実際の追突事故のデータを見ると、リアバンパーがない、または不適切な状態のトラックに追突した乗用車では、死亡事故に至る確率が格段に高くなることがわかっています。

私の知り合いの整備士は、「リアバンパーは命を守る最後の砦」とよく言います。確かに、追突事故が起きてしまった時、このバンパーがしっかりと機能するかどうかで、事故の結果は大きく変わってきます。だからこそ、車検では単に「付いているか」だけでなく、「正しく機能するか」という観点から厳しくチェックされるのです。

車検の検査官は、リアバンパーを見る際、まず全体的な状態を確認します。そして、特に注目するのが「刻印」の有無です。この刻印こそが、そのバンパーが安全基準を満たしているかどうかを示す重要な証拠となるのです。

リアバンパーの刻印が持つ意味と重要性

リアバンパーに刻まれている文字や記号、これらは決して飾りではありません。それぞれの刻印には、そのバンパーがどのような基準をクリアしているのか、誰が製造したのか、いつ認証を受けたのかといった重要な情報が込められています。

保安基準適合を証明するマーク

最も重要な刻印の一つが「Eマーク」です。これは国連欧州経済委員会、通称UNECEの協定規則に基づいて認証された製品に付与されるマークです。例えば「E43」という表示を見たことはありませんか?この「43」は日本を示す番号で、日本で認可を受けた製品であることを意味しています。

このEマークがあるということは、その製品が国際的な安全基準をクリアしていることの証明になります。車検の検査官がこのマークを確認できれば、「このバンパーは信頼できる」と判断し、詳細な強度計算書などの提出を求められることなく、スムーズに検査が進むことが多いのです。

また、日本国内では日本自動車車体工業会、通称JABIAが独自の認証制度を設けています。JABIAの認証を受けた製品には「JABIAプレート」や「JABIAリベット」が取り付けられます。これは特に国内の架装メーカーが製造したバンパーによく見られる認証マークです。

新しいJABIAリベット制度では、リベットの位置も決められています。具体的には、RUPDまたはスペーサの左舷側の見やすい位置に取り付けることになっています。そして、そのリベットには会員コード番号と識別記号が刻印されます。例えば、旧基準に適合している場合は「B」、新基準のUN-R58-03に適合している場合は「D」といった具合です。

これらの識別記号は、一見すると意味不明な文字の羅列に見えるかもしれませんが、実は製品の履歴や性能を示す重要な情報なのです。車検の検査官はこれらの刻印を見て、そのバンパーがいつの基準に基づいて製造されたものか、どのレベルの安全性能を持っているかを瞬時に判断できるのです。

さらに、純正部品の場合は、トラックメーカーの名前や型式番号が刻印されていることが一般的です。これらの刻印も、そのバンパーが正規の製品であることを示す重要な証拠となります。

刻印がないと車検に通らない?その場合の対処法

ここまで刻印の重要性について説明してきましたが、実際のところ、すべてのリアバンパーに明確な刻印があるわけではありません。特に古い車両や、過去に修理や交換を行った車両では、刻印が摩耗して読めなくなっていたり、そもそも刻印のないバンパーが取り付けられていたりすることがあります。

では、刻印がない場合は絶対に車検に通らないのでしょうか?結論から言えば、必ずしもそうではありませんが、かなり厳しい状況になることは確かです。

強度計算書による証明と部品交換

刻印がない、または判読できない場合、車検の検査官はそのバンパーが保安基準を満たしているかどうかを客観的に判断することができません。このような場合、基本的には車検不適合となる可能性が高いのですが、いくつかの対処法があります。

一つ目の方法は、「強度計算書」や「突入防止装置計算書」といった書類を準備することです。これらの書類は、バンパーの材質や構造、取付方法などを詳細に記載し、専門家がそのバンパーの強度を計算して、保安基準を満たしていることを証明するものです。

ただし、この方法には注意点があります。まず、これらの計算書を作成できるのは、相応の専門知識を持った技術者に限られます。また、計算書の作成には時間とコストがかかります。さらに、運輸支局によっては、計算書だけでは不十分と判断される場合もあります。

私の経験では、ある運送会社が社外製のバンパーを取り付けた際、刻印がなかったために強度計算書を提出したケースがありました。結果的には車検に通りましたが、書類の準備に2週間以上かかり、専門家への依頼費用も決して安くはありませんでした。

そのため、最も確実で手間が少ない方法は、やはり保安基準適合が明確な部品に交換することです。特に、車両メーカーが指定する純正のリアバンパーであれば、間違いなく車検に適合します。また、信頼できるメーカーの認証部品であれば、Eマークなどの刻印も明確で、車検もスムーズに通過できるでしょう。

なお、リアバンパーの交換作業を行う際には、もう一つ注意すべき点があります。それは、ナンバープレートの封印です。バンパーの交換作業によってナンバープレートの封印を取り外す必要が生じた場合、作業後に必ず運輸支局で再封印の手続きを行わなければなりません。封印がない状態で公道を走行することは道路運送車両法違反となりますので、くれぐれも注意してください。

車検でみられるリアバンパーの保安基準

ここまでリアバンパーの基本的な役割や刻印の重要性について説明してきましたが、実際の車検では、より具体的で詳細な基準に基づいて検査が行われます。この章では、車検の検査官が実際にチェックする項目について、数値基準も含めて詳しく解説していきます。

バンパーの取付位置と寸法の規定

リアバンパーは、ただトラックの後部に取り付けられていればよいというものではありません。後続車両の突入を確実に防ぐためには、適切な高さ、位置、幅で取り付けられている必要があります。これらの基準は、道路運送車両の保安基準の細目を定める告示によって、非常に細かく規定されています。

車両総重量や適用時期で異なる基準値

まず重要なのは、これらの基準値が車両の総重量(GVW)によって異なるということです。また、近年では国際基準の導入により、製造時期によっても適用される基準が変わってきています。自分のトラックがどの区分に該当するのか、正確に把握しておくことが大切です。

バンパー下縁の地上高について見てみましょう。車両総重量が3.5トンを超える貨物自動車の場合、原則として空車状態で地上550mm以下でなければなりません。しかし、2021年9月1日以降の新型車、2023年9月1日以降の継続生産車に適用される新基準(UN-R58-03)では、この数値が450mm以下とより厳しくなっています。一方、車両総重量3.5トン以下の貨物自動車では、地上700mm以下という基準が適用されます。

次に、車両後端からの水平距離です。これは、バンパーがトラックの最後部からどれくらい離れているかを示す数値です。車両総重量3.5トン超の貨物自動車では、バンパーの平面部と車両最後端との水平距離が400mm以内でなければなりません。3.5トン以下の場合は、この距離が600mm以下となっています。

バンパーの幅についても細かい規定があります。車両総重量3.5トン超の貨物自動車では、バンパー平面部の最外縁が、後軸の車輪の最外側から内側へ100mmまでの間になければなりません。つまり、バンパーは車輪の幅とほぼ同じか、それよりもわずかに狭い程度でなければならないということです。一方、3.5トン以下の貨物自動車では、バンパーの長さ(幅)が車両幅の60%以上という基準になっています。

さらに、バンパーの断面の高さについても規定があります。車両総重量3.5トン超の貨物自動車では、バンパー平面部の車両中心面に平行な鉛直面による断面の高さが100mm以上必要です。そして、車両総重量が8トンを超える自動車では、この高さが120mm以上と、より厳しい基準が適用されます。

これらの数値を見ると、かなり細かい規定だと感じるかもしれません。しかし、これらの基準は長年の事故データや安全性の研究に基づいて定められたものです。わずか数センチの違いが、実際の事故の際には大きな差となって現れることがあるのです。

材質や損傷・変形に関する基準

リアバンパーの検査では、寸法や取付位置だけでなく、バンパー自体の状態も重要なチェックポイントとなります。どんなに正しい位置に取り付けられていても、バンパーが損傷していたり、強度が不足していたりすれば、本来の安全機能を果たすことができません。

強度と安全性の確保

保安基準では、リアバンパーの材質について「この材質でなければならない」という具体的な指定はありません。しかし、その性能として「堅ろうであること」「運行に十分耐えること」という基本要件が定められています。これは言い換えれば、どのような材質であっても、必要な強度と耐久性を持っていればよいということです。

実際の車検では、バンパーに腐食がないかが重要なチェックポイントとなります。特に、塩害地域や融雪剤を使用する地域を走行するトラックでは、バンパーの腐食が進行しやすい傾向があります。表面的なサビであれば問題ありませんが、バンパーの強度に影響を与えるような深い腐食や穴あきがある場合は、車検不適合となります。

また、取り付け状態も厳しくチェックされます。バンパーがしっかりと固定されているか、取付ボルトに緩みはないか、溶接部分に亀裂はないかなど、細部にわたって確認されます。特に新基準では強度要件が大幅に強化されているため、以前は問題なかった取付方法でも、現在では不適合となる場合があります。

損傷や変形についても詳しく見ていきましょう。まず、へこみや歪みについてですが、小さなへこみ程度であれば問題ないことが多いです。しかし、バンパーの保護機能に影響を及ぼすような大きなへこみや歪みがある場合は、修理または交換が必要となります。

ここで注意したいのは、バンパーの交換によって車両の寸法が変わる場合です。全長が前後3cm、全幅が左右2cm、全高が上下4cmの範囲を超えて変化する場合には、構造変更検査の手続きが必要となります。これは意外と見落としがちなポイントですので、バンパーを交換する際には必ず確認してください。

亀裂についても厳しくチェックされます。特に溶接部分の亀裂は、バンパー全体の強度に大きく影響するため、小さな亀裂でも車検不適合となる可能性があります。また、バンパーが破損して鋭利な突起が生じている場合は、歩行者保護の観点から必ず修正が必要です。

最後に、バンパーの確実な取り付けについてです。検査官は実際にバンパーを手で揺すって、グラグラしないか確認します。また、取付ボルトの本数や締め付けトルクが適正かどうかもチェックされます。特に、事故や経年劣化によって取付部分が変形している場合は、見た目には問題なくても強度不足となることがあるので注意が必要です。

車検前に自分でできるリアバンパーの確認点

車検当日になって初めてリアバンパーの不具合を指摘されるのは、時間的にも経済的にも大きな損失です。そこで、この章では車検前に自分でできる確認方法について、実践的なアドバイスを交えながら解説していきます。

セルフチェックで不合格を防ぐ

車検前の自主点検は、特別な工具や専門知識がなくても十分に行うことができます。重要なのは、何をチェックすべきかを知っていることと、定期的に確認する習慣をつけることです。私の知り合いの運送会社では、月に一度の定期点検日を設けて、ドライバー自身がリアバンパーを含む各部のチェックを行っています。このような取り組みにより、車検での不合格率が大幅に減少したそうです。

事前にチェックすべき項目リスト

それでは、具体的にどのような点を確認すればよいのか、実際の点検手順に沿って説明していきましょう。

日常点検のポイント

まず最初に確認すべきは、刻印の状態です。バンパーの表面を清掃して、Eマークやメーカーの型式番号などがはっきりと読み取れるか確認してください。長年の使用で刻印が薄くなっている場合は、写真を撮って記録しておくことをお勧めします。もし刻印が全く読み取れない状態であれば、早めに対策を検討する必要があります。

次に、取付状態の確認です。両手でバンパーをしっかりと掴み、上下左右に軽く揺すってみてください。この時、過度なガタつきや異音がする場合は、取付ボルトの緩みや取付部の損傷が疑われます。また、バンパーの下に潜り込んで(安全を確保した上で)、取付ボルトの状態を目視で確認することも重要です。

損傷や変形の確認も欠かせません。バンパー全体を見渡して、大きなへこみや歪み、亀裂がないかチェックします。特に注意したいのは、バンパーの端部です。狭い場所での切り返しなどで、知らないうちに損傷していることがあります。また、冬季に融雪剤を散布する地域を走行する場合は、バンパー下部の腐食にも注意が必要です。

寸法や取付位置の確認も、簡単な方法で行うことができます。メジャーを使って、バンパー下縁から地面までの距離を測定してみてください。正確な数値は車両の積載状態によって変わりますが、明らかに基準値から外れている場合は調整が必要です。また、バンパーの幅が車幅に対して適切かどうかも、目視である程度判断できます。

反射器(リフレクター)の確認も忘れてはいけません。反射器に割れや欠け、著しい変色がないかチェックしてください。最近では、見た目を重視してLEDリフレクターに交換するケースが増えていますが、車検非対応の製品では不適合となります。純正品または車検対応品であることを必ず確認してください。

最後に、バンパーに組み込まれた灯火類の確認です。ナンバー灯やテールランプなどが正常に点灯するか、一つ一つ確認してください。球切れはもちろん、配線の劣化による接触不良も車検不適合の原因となります。

よくある不適合事例とその対策

ここからは、実際の車検でよく見られる不適合事例と、それぞれの対策について詳しく説明していきます。これらの事例を知っておくことで、同じような問題を未然に防ぐことができるはずです。

不合格を避けるための具体的な対策

不適合事例の第一位は、違法な改造や不適切なカスタムバンパーの装着です。特に中古車を購入した場合、前のオーナーが取り付けた社外品バンパーが保安基準を満たしていないことがあります。見た目は立派でも、強度が不足していたり、取付位置が不適切だったりする製品は少なくありません。このような場合の対策は明確で、速やかに純正バンパーに戻すか、保安基準適合が確認された製品に交換することです。

二番目に多いのが、著しい損傷や変形、腐食の放置です。「まだ使えるから」と思って放置していた小さな亀裂が、いつの間にか大きくなっていたというケースはよくあります。特に溶接部分の亀裂は進行が早いので注意が必要です。損傷が軽微なうちに板金修理を行うか、損傷が大きい場合は思い切って交換することをお勧めします。また、鋭利な突起が生じている場合は、安全上の観点から必ず修正が必要です。

三番目は取付不良や不適切な取付位置です。特に車高を変更した車両では、バンパーの高さも連動して変わってしまうことがあります。エアサスペンションを装着している車両では、車高調整後のバンパー高さにも注意が必要です。対策としては、正規の方法でボルトを確実に締め付け、必要に応じて取付位置を調整します。車高を大幅に変更した場合は、バンパー自体の交換が必要になることもあります。

四番目は反射器の不備です。反射器は小さな部品ですが、夜間の視認性を確保する重要な保安部品です。経年劣化で反射性能が低下していたり、割れや欠けがあったりする場合は交換が必要です。また、最近増えているのがLEDリフレクターの問題です。車検非対応の製品を知らずに取り付けているケースが多いので、購入時には必ず車検対応品であることを確認してください。

最後に、刻印の欠如または判読不能の問題です。これは特に古い車両や、過去に板金修理を受けた車両で見られます。刻印が確認できない場合、強度計算書を提出して強度を証明する方法もありますが、時間とコストを考えると、刻印が明確な保安基準適合品に交換する方が現実的です。

これらの不適合事例の多くは、日頃からの適切な車両管理で防ぐことができます。車検は単なる法的義務ではなく、安全な運行を続けるための重要な機会と捉え、日常的なメンテナンスを心がけることが大切です。特にトラックのような商用車は、毎日の安全運行が事業の基盤となります。リアバンパーという一見地味な部品にも、しっかりと注意を払い、適切な管理を行っていただければと思います。

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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