自動車の購入や所有には、思いのほか多くの税金がかかります。2024年は環境性能に関する税制が大きく変わり、これまで以上に車選びが税負担に影響を与えるようになりました。
この記事では、自動車にかかる税金の基礎知識から、支払い時期、具体的な節税方法まで、最新の制度を踏まえて詳しく解説します。
自動車にかかる主な税金の種類
自動車に関する税金は、大きく分けて「購入時」と「所有中」にかかる税金の2種類があります。これらの税金は、車種や使用目的、環境性能によって税額が異なり、さらに毎年のように制度が改正されるため、把握が難しいのが現状です。ここでは、まず基本的な税金の種類から見ていきましょう。
購入時に発生する税金(消費税・環境性能割)
自動車を購入する際には、主に2つの税金が発生します。1つは消費税で、これは車両価格に対して一律10%がかかります。ただし、中古車の場合、個人間取引では課税されない場合があります。
もう1つは環境性能割です。これは2019年10月の消費税増税時に導入された比較的新しい税金で、車両の環境性能によって税率が0%、1%、2%、3%の4段階で変動します。2024年からは電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)に対する優遇措置が強化され、多くのモデルが非課税となっています。
所有中に毎年発生する税金(自動車税(種別割)・軽自動車税(種別割)・自動車重量税)
車を所有している間は、定期的に3種類の税金を納める必要があります。これらの税金は、車の大きさや環境性能、使用年数によって税額が変わってきます。
まず「自動車税(種別割)」は、普通自動車の所有者が毎年支払う税金です。排気量によって税額が決まり、1,000cc以下の小型車では年間25,000円、3,000ccを超える大型車では年間57,000円以上と、大きな差があります。
「軽自動車税(種別割)」は、軽自動車の所有者が支払う税金です。自家用の軽自動車の場合、年間7,200円と定額です。この金額は普通自動車と比べてかなり安く設定されており、これが軽自動車の人気の一因となっています。
「自動車重量税」は、車検時に納める国税です。車両重量に応じて課税され、一般的な乗用車(車両重量1トン前後)の場合、2年間で約7,400円程度です。この税金は、道路の維持・修繕費用に充てられています。
各税金の具体的内容・最新改正点と支払い時期
2024年は環境性能に関する税制が大きく変わった年です。特に電気自動車やハイブリッド車に対する優遇措置が拡充され、税負担の差が従来以上に広がっています。ここでは、各税金の詳細と最新の制度改正のポイントを解説します。
自動車税(種別割)・軽自動車税(種別割)の税額・納付時期と最新制度
自動車税と軽自動車税は、毎年4月1日時点の所有者に課される税金です。納付通知書は4月下旬から5月上旬に届き、5月末日が納付期限となります。
2024年度からは、環境性能に応じた減税制度がさらに強化されました。具体的には、電気自動車(EV)は課税標準額が75%軽減され、プラグインハイブリッド車(PHV)は50%軽減されます。例えば、排気量2,000ccクラスの普通自動車(基本税額36,000円)がEVの場合、年間の自動車税は9,000円まで下がります。
また、2024年からは13年を超えて使用している車両への重課制度が厳格化されました。具体的には、新車新規登録から13年超18年未満の車両は、通常の税額に15%が上乗せされ、18年以上の車両は25%が上乗せされます。例えば、排気量2,000ccの車両では、基本税額36,000円が約41,400円に増額されます。この制度は、環境負荷の高い古い車両の使用を抑制する目的があります。
自動車重量税の税額・支払いタイミングと経年車への重課税
自動車重量税は、新車購入時(新規登録時)と車検時に納付が必要です。新規登録時は3年分、その後の車検時は2年分をまとめて支払います。
2024年度の税額は、乗用車の場合、車両重量0.5トンごとに年額3,700円が基本です。ただし、新車登録から13年を超えた車両は基本税額の約2倍、18年を超えた車両は約2.5倍に増額されます。
例えば、車両重量が1.5トンの乗用車の場合、
経過年数13年未満:年額11,100円(3,700円×3区分)
経過年数13年以上18年未満:年額22,200円
経過年数18年以上:年額27,750円
となります。
税金を抑えるための有効な対策
自動車にかかる税金は、車種の選び方や購入のタイミング、支払い方法の工夫によって、かなりの額を節約することが可能です。ここでは、具体的な節税方法と、2024年度に特に注目すべき優遇制度について解説します。
エコカー減税・グリーン化特例など優遇制度の活用方法
2024年度の自動車税制では、環境性能の高い車両に対する優遇措置が大幅に拡充されています。これらの制度を理解し、適切に活用することで、税負担を大きく減らすことができます。
エコカー減税の対象となる車両は、環境性能に応じて自動車重量税が免税となります。2024年度からは特に次の車両が優遇されています。
電気自動車(EV):自動車重量税が免税、自動車税(種別割)が75%減税
プラグインハイブリッド車(PHV):自動車重量税が免税、自動車税(種別割)が50%減税
新型ハイブリッド車:自動車重量税が免税、自動車税(種別割)が25%減税
例えば、排気量2,000ccクラスの普通乗用車を購入する場合、従来型のガソリン車と比べて、EVを選択することで初年度に約10万円以上の税負担が軽減される可能性があります。
また、グリーン化特例は、軽自動車に対する優遇制度です。電気軽自動車を購入した場合、軽自動車税(種別割)が最大で6,600円軽減され、年間の税額が600円まで下がります。
購入・登録時期の工夫と実用的な支払いテクニック
税負担を抑えるためには、購入や登録のタイミングも重要な要素となります。以下に、具体的な節税テクニックをまとめます。
まず、新車の購入・登録時期については、月初めに設定することをお勧めします。自動車税(種別割)は月割り課税のため、月末近くに登録すると、その月の税金を1ヶ月分支払うことになってしまいます。
また、中古車を購入する際は、初年度登録から13年を経過していない車両を選ぶことで、重課税を回避できます。13年を超えると税額が約15%増加し、18年を超えると約25%増加するため、経年車の購入は慎重に検討する必要があります。
支払い方法の工夫も重要です。多くの自治体では、口座振替やクレジットカード払いに対応しています。特にクレジットカード払いを選択する場合は、以下の点に注意すると更にお得になります。
・ポイント還元率の高いカードを使用する
・自動車税の支払い時期に合わせて、ポイント還元率が上がるキャンペーンを利用する
・税金の支払いでマイルやポイントが付与されるカードを選ぶ
よくある疑問への回答と注意点
自動車にかかる税金については、制度が複雑で分かりにくい部分も多いため、様々な疑問が生じます。ここでは、特に多く寄せられる質問について、2024年度の制度に基づいて詳しく解説します。
税金を滞納した場合のペナルティと延滞金
自動車関連の税金を滞納すると、思わぬトラブルを招く可能性があります。特に注意が必要なのは以下の点です。
まず、納付期限を過ぎると延滞金が発生します。具体的には、納期限後1ヶ月以内の場合は年率7.3%、それ以降は年率14.6%の延滞金が課されます。例えば、自動車税30,000円を3ヶ月滞納した場合、約1,000円の延滞金が追加で必要になります。
また、滞納が続くと、次のような不利益が生じる可能性があります。
・督促状の送付
・差押予告通知書の送付
・財産の差押え(給与、預貯金、不動産など)
・車検の更新ができない
特に車検が受けられないというのは、車の使用そのものができなくなる可能性があるため、深刻な問題です。もし支払いが困難な場合は、早めに税務署や市区町村の窓口に相談することをお勧めします。分割納付など、支払いに関する相談に応じてもらえる場合があります。
名義変更・廃車時の税金処理と還付制度
車の売却や廃車時の税金処理も、正しく理解しておく必要があります。2024年度の制度では、以下のような取り扱いとなっています。
車を売却して名義変更する場合、自動車税(種別割)は月割りで計算されます。4月2日以降に売却した場合でも、その年度の税金は日割りで計算され、前所有者と新しい所有者で負担することになります。
廃車の場合は、自動車税(種別割)の月割り還付を受けることができます。例えば、年税額36,000円の車を10月に廃車にした場合、残りの5ヶ月分(約15,000円)が還付されます。
ただし、還付を受けるためには以下の条件を満たす必要があります。
・廃車の手続きが完了していること
・納付済みの領収書など、必要書類が揃っていること
・廃車後2年以内に還付申請を行うこと
なお、軽自動車税(種別割)には還付制度がないため、年度途中で廃車しても税金は戻ってきません。この点は、普通自動車との大きな違いとして覚えておく必要があります。
以上、自動車にかかる税金について、2024年度の最新情報を中心に解説してきました。税制は毎年のように変更があるため、定期的な情報確認を心がけましょう。特に環境性能に関する優遇制度は年々拡充されており、車選びの際には税金面からも十分な検討が必要です。