都市物流とラストマイル配送が創り出す環境革新とは

物流の最終段階であるラストマイル配送は、全体のコストや効率に大きな影響を及ぼす都市の物流にとって重要なプロセスです。また、昨今では環境への影響も無視できなくなってきています。

国土交通省によると、2021年の国内のCO2排出量のうち運輸部門の排出量は、全体の16.7%を占めています。さらに、運輸部門における輸送機関別の排出量の割合では、貨物車・トラックが39.8%と最も多くCO2を排出しており、ラストマイル配送における環境対策は急務です。(※1)

この記事では、都市部における物流とラストマイル配送が環境に与える影響、また、持続可能な物流ソリューションについて解説します。また、これらの問題を克服するための最新の取り組みや技術も紹介します。

※1)国土交通省 2021 年度(令和3年度)の温室効果ガス排出・吸収量(確報値1) について

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都市物流とは?ラストマイル配送の課題

そもそも都市物流、ラストマイル配送にはどういう役割があるでしょうか。都市部での配送が直面する交通渋滞、駐車場不足などの課題とあわせて解説します。

ラストマイル配送の定義と重要性

ラストマイル配送とは、商品が消費者のもとに届くまでの最終区間を指します。具体的には、物流・配送センターから個人宅までの区間です。

一般的には通信の分野で用いられている概念で、情報がデータセンターや通信基地から各家庭やビジネスエリアに届くまでの最終段階を指します。現在ではEC市場の拡大にともない、物流業界でも広く使われるようになってきました。

消費者のニーズが多様化する中で、事業者は複雑な対応を求められており、全体のコストや効率に大きな影響をおよぼすラストマイル配送の重要性はより高まってきています。

都市部での配送が直面する主な課題

AmazonなどをはじめとするEC利用の増大で、国内の宅配便配送量は年々増え続けています。2012年には35.2億個(※2)であった宅配便の取扱個数が、2022年には50.6億万個(※3)と1.5倍近くにまで増加しています。

その一方で、物流業界全体の人手不足、ドライバーの高齢化、労働環境の悪化などの問題が浮き彫りとなってきました。また都市部では、配達効率の低下、個々の顧客の要望増加(細かな時間指定、納品方法など)密集地域の交通渋滞や駐車場不足、地形的な問題への対応など様々な課題が存在します。加えて、環境規制やエコロジーの要請との折り合いもつけていく必要があるのです。

※2)国土交通省 平成24年度宅配便等取扱実績について
※3)国土交通省 令和4年度 宅配便・メール便取扱実績について

環境に配慮した物流ソリューション

持続可能な配送オプションとしての電動車両、自転車配送、またデータ分析とAIを利用した効率的なルート計画など、環境への影響を減らすための技術を紹介します。

エコフレンドリーな配送方法

これからの物流においては、効率的かつ環境に配慮した持続可能な配送が求められています。たとえば、EV車・ハイブリッド車など、CO2排出量を抑制できる次世代自動車の導入は不可欠です。

大手運送各社では、ラストワンマイルで稼働する車両を中心に実証実験が進んでいます。また都市部では、「エコ配」などに代表される自転車配送も採用されるようになってきています。CO2排出しないのはもちろん、自転車は車両維持コストがかかりません。

また、配送先が密集した地域では配送センターや物流倉庫を近くに配置すれば、配送距離を最小限に抑えられトラックの稼働台数を減らせます。

データ分析とAIの活用

AIやビッグデータを活用した最適ルート探索、エリアごとの集約配送で走行距離を減らすといった対策も重要です。たとえばヤマト運輸では、データ分析とAI活用による配送業務量予測と適正配車システムを全国の拠点に導入し、効率的な配送システムを構築しています。

また、効率的な配送を実現させるためには、倉庫管理と輸送管理を担う物流管理システムの活用も欠かせません。特に、輸配送管理システムにおけるAI技術を用いた配送計画機能は、ラストマイル配送の問題解決に寄与すると期待されています。

成功している環境配慮型配送戦略の事例研究

先進的な企業や都市は、どのようにラストマイル配送の環境影響を軽減しているのでしょうか。ここでは、具体的な取り組み事例から読み解く、持続可能なビジネス戦略を紹介します。

都市部での実践例

大手運送企業やEC事業者を中心に、コンビニや駅などに設置されたロッカーで荷物を受け取れるサービスが広く展開されるようになってきました。

たとえば、Amazonの「Amazon Hubロッカー」では、配達完了メールが届いたら指定のロッカーに行き、認証キーやアプリを使って荷物の取り出しが可能です。これによって、受取人不在による配送スタッフの再配達の負担を抑えられ、配送全体を効率化できます。

また、NECでは輸配送管理システムを活用した最適配車で環境負荷の削減に成功しています。出荷オーダーと配車組みのシミュレーションにより計画時間の短縮と効率的な配車を実現し、CO排出量を2年間で約4.9kt、導入前と比べて約6%削減しました。(※4)

※4)NEC 最適配車による環境負荷削減事例

持続可能性と経済性の両立

これからのラストマイル配送において、持続可能性の追求は必要不可欠なテーマです。一方、事業を存続していく上で経済性との両立も欠かせません。そのためには、持続可能性をビジネスの観点で理解していく必要があります。

まず、企業としての取り組みを社会に示すためにも、環境に配慮した製品やサービスの開発が必要です。たとえば、先述した配送ロッカーのサービスなどが成功事例として挙げられるでしょう。

また、事業活動自体の環境負荷を低減していく施策も重要です。梱包材の削減や廃棄物の再利用など行えるアクションは多岐に渡ります。これらの活動を社外に開示すれば企業やブランドイメージの向上につながり、ESG経営への評価が重視されてきている昨今において、資金調達をしやすくなるのも大きな利点です。

今後の展望とチャレンジ

ラストマイル配送と都市物流の未来に向けて、技術革新は具体的にどのような役割を果たしていくでしょうか。持続可能な配送を促進するための政策や規制なども踏まえて考察します。

技術革新の可能性

多様化するラストマイル配送におけるニーズに対応しつつ、持続可能な都市物流を実現するためには、今後も新たな技術革新が必要とされています。中でも、AIやloTなどの先進技術を活用した配送効率化システムはその代表といえるでしょう。

また、VRやARを活用したトレーニング、ブロックチェーン技術による配送履歴の管理など欧米ではすでに多様な技術開発が進み、競争の波が激化しています。ほかにも、自動配送ボックス、共同配送ポイントなど続々と新たなソリューションが生まれてきており、国内でもそれに追従するスタートアップ企業などの動向が注目されます。

政策と規制の役割

ラストマイル配送の課題解消や問題改善には、企業のイノベーション創出が重要です。

一方で行政など公共部門と民間企業の協働も必要になってきます。とりわけ都市計画は、都市部のラストマイル配送において重要な意味を持ってきます。都市の構造が物流ネットワークの形成や効率化を大きく左右するからです。都市の道路設計、交通制御、物流施設の立地など、配送ルートの最適化や配送時間の短縮化を企図した都市計画が求められます。

また、直近の課題として挙げられるのが、いわゆる「物流の2024年問題」です。2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の上限規制が適用されます。労働時間の短縮によって輸送能力が大きく低下する可能性があり、様々な方面への影響が予想されています。

ただ、法規制の背景にあるトラックドライバーの深刻な人手不足といった事情も理解しながら、同時に解決に向けた取り組みを行なっていく必要があるでしょう。

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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