事業で使うトラックを選ぶ際、「小型・中型・大型」という区分が基本となりますが、この分け方は実は一つではありません。メーカー独自の呼び方、車両の検査・登録に関わる道路運送車両法、運転免許に関わる道路交通法という三つの異なる基準が存在しており、同じ車両でも基準によって「中型」にも「大型」にもなることがあります。
本記事では、これら三つの基準をわかりやすく整理したうえで、用途別の向き不向き、増トン車の位置づけ、燃費や税・高速料金のコスト、安全運行の法規とチェックポイントまで、購入・運用判断に必要な実務情報をまとめてご紹介します。
トラックのサイズを決める3つの基準と免許区分
トラックの「小型・中型・大型」という分類は、主に三つの異なる基準で決められています。まず、メーカー区分では、実務で「2t=小型」「4t=中型」「10t=大型」といった最大積載量をベースとした呼び方が広く使われています。例えば、小型は2tまで、中型は4tまで、大型は最大で16tまでという目安で分けられています。
次に、道路運送車両法の保安基準による区分があります。小型は概ね「全長4.7m、全幅1.7m、全高2.0m以内、最大積載量3t以内、車両総重量5t以内」、中型は「全長12m、全幅2.5m、全高3.8m以内、最大積載量6.5t以内、車両総重量11t以内」、大型はその上限を超えるクラスと整理されます。つまり、小型と中型は主に寸法・積載量で、中型と大型は主に車両総重量で線引きされるのが特徴です。
最後に、道路交通法(免許・取締)による車種区分があります。大型は「車両総重量11t以上、または最大積載量6.5t以上」、中型は「7.5t以上11t未満、または4.5t以上6.5t未満」、準中型は「3.5t以上7.5t未満、または2t以上4.5t未満」という線引きが設定されています。免許や取締はこの区分で運用されています。
メーカー・法律で異なる「小型・中型・大型」の定義
メーカーの世界では、現場での積載能力がひと目で伝わるよう、最大積載量に応じた呼び方が定着しています。例えば、いわゆる「2t車」は都心配送の主力として扱われ、「4t車」は地域間・中距離の主力、「10t車」は長距離・大量輸送の主力といった使い分けが機能しています。
法律面では二本立てになっています。車検・登録や保安基準を管轄する道路運送車両法は、寸法と最大積載量、車両総重量で区分を決めています。小型(4.7m×1.7m×2.0m以内・車両総重量5t以内・最大積載3t以内)と中型(12m×2.5m×3.8m以内・車両総重量11t以内・最大積載6.5t以内)の線引きに加え、これを超えると大型として扱う実務整理が広く用いられています。
一方、運転免許や交通取締を管轄する道路交通法は、車両総重量と最大積載量(および乗車定員)で大型・中型・準中型・普通を区分しており、免許の可否や違反の判断はこちらが基準となります。用途・購入検討時は「検査・登録の区分(車両法)」と「運転資格の区分(道交法)」を切り分けて考えると混乱が減ります。
運転に必要な免許の種類と取得条件
免許は「準中型・中型・大型」の順に運転できる車両の範囲が広がります。準中型は車両総重量3.5t以上7.5t未満または最大積載量2t以上4.5t未満を対象とし(18歳から取得可能)、中型は7.5t以上11t未満または4.5t以上6.5t未満(20歳以上・普通等の保有年数要件あり)、大型は11t以上または6.5t以上といった上位区分です。
2017年の制度改正で準中型が新設され、改正前に取得した普通免許等は経過措置により「車両総重量5t未満・最大積載3t未満」の限定付き準中型とみなすなどの扱いが明示されています。複数名を配車する事業では、在籍ドライバーの取得時期ごとの運転可能範囲を整理しておくと、車両更新・増車時の選択肢を広げられます。
サイズごとの得意な作業と代表的な車種
サイズ選びの正解は「どこで何をどれくらい運ぶか」で決まります。都心の狭い路地・頻繁な荷役を伴う定点配送では車体が短く小回りに優れた小型が強く、複数拠点をつなぐ地域間輸送や一回あたりの積載効率を重視する現場では中型や増トンが活躍し、長距離幹線・大量輸送・大型ボディ架装や大型機材の搭載には大型が向きます。
ここでは代表車種と実寸に触れながら、つまずきやすい境界線も含めて具体的なイメージを掴んでいきます。なお、市場の呼称では「2tワイド」などと表現される車両でも、実際の最大積載量が3tを超える仕様が存在し、その場合は小型の法的枠外となるため、免許要件・料金区分も変わる可能性があります。
小回りが利き市街地で活躍する小型トラック(2t・3t)
小型は、全長4.7m・全幅1.7m・全高2.0m以内、最大積載3t以内、車両総重量5t以内という保安基準の範囲が中心です。代表格のいすゞ エルフ、三菱ふそう キャンター、トヨタ ダイナ、日野 デュトロは、ショート(10尺)/ロング/ワイドロング/ワイド超ロングなど荷台寸法の選択肢が豊富で、現場の前提(駐車枠、搬入口、リフト運用の有無)にあわせて最適化できます。
実務目安として、2tショート箱車は長さ約3.0m×幅1.75m×高さ1.75~2.0m、2t標準ロング箱車は長さ約4.3m×幅1.75m×高さ2.0m、2tワイドロングは長さ約4.3m×幅2.0m×高さ2.0mがよく使われます。なお、市場には「2tワイド超ロングパワーゲート付(荷室5.0m×2.09m×2.1m、最大積載3,750kg)」のように、名称は「2t」でも実積載が3tを超える車両もあるため、車検証の最大積載で最終判断してください。
実車例として、キャンター標準キャブは車両寸法4690×1695×1990mm、荷台3120×1615×高さ380mm、最大積載2t、デュトロやアトラスも同レンジです。都市部の狭い道路、アーケード下、立体駐車の高さ制限など制約の多い環境に柔軟に適応できるのが小型の強みです。
中距離から長距離輸送を担う中型・大型トラック
中型(通称4tクラス)は、全長12m・全幅2.5m・全高3.8mの枠内、最大積載6.5t以内、車両総重量は5t以上11t未満が標準です。日野 レンジャー、いすゞ フォワード、三菱ふそう ファイター、UD(旧コンドル)は、平ボディ、ウイング、冷凍冷蔵、クレーン(ユニック)まで架装適合が広く、近~中距離の主力として活躍しています。
中型をベースに最大積載を底上げする「増トン車」は、車両総重量8~11t未満、最大積載5~6.5t未満が目安で、ヤードや荷捌き場の受け入れ制約を変えずに1便当たりの積載効率を引き上げられるのが利点です。
大型は車両総重量11t以上・最大積載6.5t以上のクラスで、幹線・長距離の主力です。代表例として日野 プロフィア(車両寸法11,950×2,490×3,790mm/荷台9,670×2,400×高さ約267mm)やUD クオン、いすゞ ギガ、三菱ふそう スーパーグレートなどがあり、ウイング車の荷台長は9.5m前後が一つの実務目安です。大型は車幅2.5m・車高3.8m上限付近を使うため、施設側の高さ・幅・回転半径のクリアランス確認が不可欠です。
購入前に知るべき運用の注意点
購入価格だけでなく、燃料・油脂、修理、タイヤ、尿素水などの運行費、減価償却やリースなどの車両費、各種の自動車関連税や保険、運転者の人件費、そして高速・フェリーなどのその他運送費まで含めたトータル採算設計が不可欠です。国土交通省の整理では、主要コストは「運行費+車両費+自動車関連諸税+保険料+運転者人件費+その他運送費+間接費」に大別され、見積もり時は固定費/変動費を丁寧に分けると、配車計画・運賃設計のブレが減ります。
サイズで変わる燃費・税金・高速料金などの維持費
燃費はサイズが大きくなるほど悪化するのが一般的です。現行稼働車の実運用レンジ感は、小型4.5~6.5km/L、中型4~5km/L、大型3~3.5km/Lという目安が示されています(走行条件・荷重・渋滞・運転で上下)。一方、市場の実測・体感ベースのまとめでは、小型約11km/L、中型約7.5km/L、大型約4km/Lという「実走目安」も広く参照されます。長距離・巡航主体か、都市内の停止発進主体かで差が出やすいため、自社の運用パターンに引き直して試算してください。
高速料金はNEXCOの車種区分(中型・大型・特大)で決まり、車両総重量・最大積載・軸数・連結形態などで区分が分かれます。例えば「普通貨物で車両総重量8t未満かつ最大積載5t未満(3軸以下)」は中型、「車両総重量8t以上または最大積載5t以上(3軸以下)」は大型、といった具合です。許容軸重や連結形態でも区分が変わるため、配車形態(単車/牽引)とルートをセットで点検しましょう。
安全な運行に不可欠な積載ルールと寸法の確認
安全運行の基本は「車検証の最大積載量・車両総重量・外形寸法を厳守する」ことです。実務でのサイズ枠は中型・大型いずれも「全長12m・全幅2.5m・全高3.8m以内」を上限とする設計が基調で、これを超える場合は特殊車両通行許可等の手続きが必要になる可能性があります。
現場側の高さ制限・搬入口幅・回転半径・床耐荷重、荷役機材の有無を事前に実測し、過積載や「はみ出し」が起きない積付計画を標準化してください。固縛資材の仕様(ベルト幅・破断荷重・本数)やラッシング位置も荷姿別に手順化しておくと、ヒューマンエラーの低減に効果的です。
後悔しないトラック選びのための確認事項
用途・現場・コストの三点を軸に、最後の絞り込みを行います。まず「主要な積荷の寸法・重量」と「1便あたりの必要積載量(荷姿別)」を確定し、必要な荷台内寸(長さ×幅×高さ)から逆引きします。常時4.3mの長尺物を扱うなら2tロング(内寸430cm前後)を基準に、横幅が必要なら2tワイドロング(幅200cm)を選ぶ、といった具合です。
日配でパレット運用が前提なら、ウイングの開口高さ・床高・ラッシング位置やアオリ高さの適合も同時に点検します。次に「月間走行距離・高速比率」を置き、燃費レンジと高速料金区分で運行費を試算します。小型4.5~6.5km/L、中型4~5km/L、大型3~3.5km/Lを基本に、長距離・高速主体は大型の「便あたり効率」が勝ち、都市内頻回配送は小型の「時間価値」が勝ちやすいという傾向を踏まえ、走り方に合う車格を選びます。
最後に「現場の道路・施設制限(高さ・幅・重量・進入経路)」を先に押さえてください。特に高さ3.8m・幅2.5mに近い大型は余裕が小さく、ゲート・庇・鉄骨・配管の「実測差」が出やすいポイントです。高速の車種区分は「免許区分」と一致しないこともあるため、同じ中型免許で運転できる車でも料金区分が大型・特大になるケースがある点に注意してください(軸数・連結形態で変動)。
主要な積荷・走行距離・現場環境から最適なサイズを絞り込む
実務の絞り込みは「積荷80%主義」と「ボトルネック優先」で進めます。まず、頻度上位8割の荷姿・重量で成立する車格を第一候補にし、残り2割の例外は増車・外注・ルート変更・納品条件の見直しで吸収可能かを検証します。
都市内の路地・商店街・再開発区画へ日中帯に入るなら小型(2t中心)が第一候補。地域間の混載・ルート配送やパレット運用が多ければ中型(4t中心)や増トンが堅実で、ヤードや荷捌き場の収容性に問題がなければ大型で便あたりコストを下げるのが定石です。
免許要件は最終仕様で確定するため、準中型・中型・大型のどれが必要かを図面と車検証記載値で突き合わせ、在籍ドライバーの免許範囲と照合します。経過措置で普通免許を早期に取得したスタッフがいるなら、適用範囲(車両総重量5t未満・最大積載3t未満等)も整理しておくと、採用・配置計画の自由度が上がります。
中古トラック選びで失敗しないためのチェックポイント
中古導入では、走行距離だけで判断するのは禁物です。過去の用途(市街地ストップ&ゴー主体か、長距離巡航主体か)、定期点検の記録簿・交換履歴、フレームの歪み・サビ、荷台(床板・根太)の傷み、アオリ建付・雨漏り痕、ウイングやパワーゲート、冷凍機など架装機器の動作・異音・起動電流、タイヤ偏摩耗や足回りのガタを総合評価します。
小型は荷役回数が多い車両、大型は長距離でエンジン負荷が高い車両がそれぞれ痛みやすい傾向があるため、実際に試乗で加減速・変速ショック・直進性・制動の片効きを確認し、できれば積荷を載せた状態での試走が望ましいです。
最後に、車検証の「車両総重量」「最大積載量」と実際の架装・荷台内寸が食い違いなく、狙いの業務規格(パレット・ケース寸法、フォークリフトのツメ間隔等)に合致しているか、そして免許区分・高速料金の車種区分まで整合が取れているかを照合すれば、導入後の想定外コストや運用制約を最小化できます。
以上を踏まえると、失敗しない選び方は「三つの基準の交点を見つける」ことに尽きます。すなわち、メーカーの積載呼称(2t・4t・10t)で現場の感覚と会話を合わせつつ、車両の寸法・最大積載・車両総重量というハードの枠(道路運送車両法)で現場制約と適合させ、最後に免許・取締(道路交通法)と高速料金の区分で人とコストの制約条件を満たす。この順で第一候補を出し、走るルートと積む荷のデータで微修正すれば、たいていの案件は「ちょうど良い一台」に収まります。



