近年、スマートフォンアプリの普及や訪日外国人観光客の増加を背景に、白タクの利用が増加傾向にあります。しかし、白タクは法的な許可を得ていない個人が報酬を受け取って運行するサービスであり、安全面やトラブルのリスクが懸念されます。
この記事では、白タクの定義から違法性、利用のリスク、取り締まりの現状までを詳しく解説し、白タクに関する正しい知識と安全な移動手段の選択について理解を深めていただきます。
白タクとは?
白タクとは、タクシー営業に必要な許可を受けずに自家用車で営業する違法なタクシーのことです。一般の自家用車を使って人を送迎し、対価としてお金を受け取る形でサービスを提供しています。正規のタクシーとは異なり、国土交通大臣の許可を得ておらず、明確な料金体系や安全基準、ドライバーの資格要件などが定められていません。
白タクは、一見すると便利な移動手段のように思えるかもしれません。しかし、その裏には様々なリスクが潜んでおり、利用者にとって安全とは言えません。白タクが違法とされている理由や、利用に伴うリスクについて詳しく見ていきましょう。
白タクの特徴
白タクは、正規のタクシーとは以下のような点で区別できます。
・ナンバープレートの色
白タクは、一般の自家用車と同じ白色のナンバープレートを使用しています。正規のタクシーは緑色のナンバープレートです。
・タクシー表示灯の有無
正規のタクシーには屋根にタクシー表示灯が設置されていますが、白タクにはありません。
・車体表示
正規のタクシーには、会社名や電話番号などが車体に表示されていますが、白タクにはそのような表示がありません。
・運転手の服装
正規のタクシーの運転手は制服を着用していることが多いですが、白タクの運転手は私服であることが多いです。
・料金メーターの有無
正規のタクシーには料金メーターが設置されていますが、白タクにはありません。
・乗車場所
正規のタクシーはタクシー乗り場やタクシー会社に電話で配車した場合にのみ乗車できますが、白タクは路上やアプリなどで呼び出して乗車することが多いです。
白タクが生まれた背景
白タク増加の背景には、以下のような社会的な要因が考えられます。
・規制緩和によるタクシー不足
タクシー業界の規制緩和により、一部地域ではタクシーの台数が減少しました。その結果、需要と供給のバランスが崩れ、白タクがその隙間を埋めるように増加したと考えられます。
・訪日外国人観光客の増加
日本のタクシー事情に詳しくない外国人観光客は、白タクと知らずに利用してしまうケースがあります。言葉の壁や文化の違いから、正規のタクシーよりも白タクを選んでしまう可能性も考えられます。
・スマートフォンアプリの普及
スマートフォンアプリの普及により、白タクの配車や利用が容易になりました。アプリを通じて利用できる手軽さから、白タクの利用者が増加していると考えられます。
白タクと正規タクシーの違い
白タクと正規タクシーは、様々な点で異なります。主な違いを以下の表にまとめました。
項目 |
白タク |
正規タクシー |
ナンバープレート |
白色 |
緑色 |
営業許可 |
なし |
あり |
運転手の資格 |
プロの資格がない場合が多い |
第二種運転免許取得者 |
料金設定 |
自由に設定 |
法律で管理され、メーターによる明確な料金設定 |
安全性 |
法的な安全基準やサービス基準が適用されない |
安全基準を満たし、定期的な車両点検や整備が義務付けられている |
保険 |
任意保険のみ |
事業用保険に加入 |
正規のタクシーは、国土交通大臣の許可を得て営業しており、安全基準やサービス基準を満たすことが義務付けられています。また、ドライバーは第二種運転免許を取得しており、プロとしての知識や技能を備えています。さらに、事業用保険に加入しているため、万が一の事故の場合でも適切な補償を受けることができます。
一方、白タクはこれらの基準を満たしていないため、利用者にとって安全とは言えません。料金も自由に設定されるため、高額な料金を請求されるリスクもあります。
白タクが違法とされる理由
白タクは、道路運送法に違反する違法行為です。道路運送法は、旅客の安全を確保し、運送事業の健全な発展を図ることを目的とした法律です。白タクは、この法律で定められた許可や基準を満たしていないため、違法とされています。
道路運送法違反となる行為
具体的には、以下の行為が道路運送法違反となります。
・有償で旅客を運送すること
・運賃を収受すること
・反復継続して旅客を運送すること
白タクは、これらの行為をすべて満たしているため、道路運送法に違反していると言えます。
白タクの違法行為がもたらす影響
白タクの違法行為は、以下のような悪影響をもたらします。
・タクシー業界の秩序の乱れ
正規のタクシー会社は、厳しい基準をクリアし、多額の費用をかけて営業許可を取得しています。白タクはこれらのコストを無視して営業するため、不公平な競争を引き起こし、タクシー業界全体の秩序を乱します。
・利用者の安全の脅威
白タクは、車両の安全基準やドライバーの資格、保険などが十分でない場合があり、利用者の安全を脅かす可能性があります。
・犯罪の温床
白タクは、身元不明のドライバーによる犯罪や、料金トラブルなどの温床となる可能性があります。
・税収減
白タクは、税金を納めていないケースが多く、国の税収減につながる可能性があります。
白タク利用のリスク
白タクを利用すると、様々なリスクに直面する可能性があります。
安全管理の不備
白タクは、正規のタクシーのような安全管理体制が整っていません。
・アルコールチェックや健康管理が任意
白タクのドライバーは、アルコールチェックや健康診断を受ける義務がありません。そのため、飲酒運転や健康状態が不十分なまま運行される可能性があります。
・車両整備も自己管理
白タクの車両は、定期的な点検や整備が義務付けられていません。そのため、整備不良による事故が発生するリスクがあります。
料金トラブル
白タクは、明確な料金体系がありません。
・料金が不明確で高額請求の恐れ
乗車前に料金を確認していても、乗車後に高額な料金を請求されることがあります。
・トラブル発生時の対応が不十分
料金トラブルが発生した場合でも、白タク業者には苦情処理の窓口や対応マニュアルなどが整備されていないため、解決が困難になる可能性があります。
事故発生時の補償不足
白タクは、万が一の事故に備えた補償が不十分です。
・責任がドライバー個人にある
正規のタクシーでは、事故が発生した場合、タクシー会社が運行の責任を負います。しかし、白タクの場合はドライバー個人が責任を負うため、適切な補償を受けられない可能性があります。
・補償が不十分なケースが多い
白タクのドライバーは、任意保険にしか加入していない場合があり、事故の被害者に対する補償が不十分なケースが多いです。
その他のリスク
・ドライバーの身元が不明
白タクのドライバーは身元が不明な場合が多く、犯罪に巻き込まれるリスクがあります。
・トラブル時の対応が不十分
白タク業者には苦情処理の窓口や対応マニュアルなどが整備されていないため、トラブルが発生した場合でも、解決が困難になる可能性があります。
白タク関連の事例
過去には、以下のような白タク関連のトラブルが発生しています。
・高額請求
旅行先で白タクを利用した観光客が、法外な運賃を請求されるケースが報告されています。
・車両整備不良による事故
車両の整備不足による事故が発生し、利用者が怪我を負った例もあります。
・トラブル時の対応不備
白タク利用中に運転手との口論やトラブルが発生し、利用者が目的地に無事到着できなかった事例もあります。
・安全管理の欠如
飲酒運転や不調な状態での運行など、利用者が危険にさらされるリスクがあります。
・わいせつ行為
白タクの利用中に、ドライバーからわいせつ行為を受けるという事件も発生しています。
白タクの種類と手口
白タクは、その形態や手口が多様化しています。
・従来型の白タク
駅周辺や繁華街などで客待ちをし、声をかけて乗客を募る形態です。
・アプリ型白タク
スマートフォンアプリを利用して配車を行う形態です。近年増加傾向にあり、取り締まりが難しいという課題があります。
・偽装白タク
「相乗り」や「ボランティア」を装って、実質的に有償で旅客を運送する形態です。
巧妙化する白タクの手口
白タクの手口は、年々巧妙化しています。
・外国人観光客を狙った白タク
日本のタクシー事情に詳しくない外国人観光客が、白タクと気づかずに利用してしまうケースがあります。
・深夜、早朝を狙った白タク
深夜や早朝は、正規のタクシーが不足しがちなため、白タクが活動しやすい時間帯です。
・イベント会場周辺での白タク
イベント会場周辺では、多くの人が移動手段を求めているため、白タクが活動しやすい場所となっています。
白タクを見分ける方法
白タクは、一見すると正規のタクシーと区別がつかない場合があります。しかし、以下の点に注意することで、白タクを見分けることができます。
・ナンバープレートの色
白タクは白色のナンバープレートです。正規のタクシーは緑色です。
・タクシー表示灯
白タクにはタクシー表示灯がありません。
・車体表示
白タクには、会社名や電話番号などの表示がありません。
・運転手の服装
白タクの運転手は、制服を着用していないことが多いです。
・料金メーター
白タクには、料金メーターがありません。
・乗車場所
白タクは、タクシー乗り場以外で乗車することが多いです。
白タクの取り締まり状況
現在、日本では白タクに対する取り締まりが強化されています。
日本における白タク取り締まりの現状
警察や国土交通省は、白タクの違法営業を防ぐため、積極的に摘発活動を行っています。
違法な白タク営業が確認された場合には、道路運送法第100条により「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」に処せられる可能性があります。また、ドライバーの免許停止や取り消しなどの行政処分が行われることもあります。
今後の取り締まり強化や法改正の動き
今後、白タクの取り締まりはさらに強化される見通しです。国や自治体は違法白タクの根絶を目指し、法改正や規制強化の検討を進めています。
具体的には罰則を厳格化し、違法な白タク営業に対して厳しい処分が下されるようにすることで再発防止を図る方針です。監視体制も一層の充実が図られる予定で、取締りをサポートするスタッフの増員やパトロールの強化も検討されています。
ライドシェアとの違い
白タクと混同されやすいサービスに「ライドシェア」があります。ライドシェアとは、個人が自家用車を使って、他人を有償で運送するサービスです。しかし、白タクとは異なり、ライドシェアは以下のような特徴があります。
・非営利
ライドシェアは、自家用車の空き座席を有効活用し、運行費用を分担することを目的としています。そのため、ドライバーが利益を得ることはできません。
・限定的な運行
ライドシェアは、通勤や通学など、限定的な目的で運行されます。
・事前登録
ライドシェアのドライバーは、事前にプラットフォームに登録する必要があります。
日本では、ライドシェアは道路運送法の規制により、原則として認められていません。しかし、過疎地域などでは、限定的にライドシェアが認められる場合があります。
白タクは、道路運送法に違反する違法行為であり、利用者にとって大きなリスクを伴います。白タクを利用することで、高額請求や事故、犯罪などの被害に遭う可能性があります。白タクを見分ける方法を理解し、正規のタクシーを利用するようにしましょう。
国や自治体は、白タクの取り締まりを強化しており、今後もさらなる対策が講じられる見込みです。白タクの根絶には、利用者の意識改革と、関係機関の連携強化が重要となります。