外国人をドライバーとして採用したいが、どの在留資格なら運転業務に就けるのか分からない。そんな声が運送会社の現場から増えています。2024年3月に自動車運送業が特定技能の対象に加わったことで選択肢は広がりましたが、在留資格の種類によって就ける業務やトラック・バス・タクシーの区分ごとの条件はまったく違います。
本記事では、外国人ドライバーに使える在留資格を整理したうえで、技人国や留学ビザなど「使えそうで使えない」資格の落とし穴、採用前に確認すべき書類と受入事業者の要件まで、実務で押さえるべきポイントをまとめました。
外国人ドライバーの採用で押さえる在留資格の基本
外国人ドライバーに使える在留資格は限られています。在留資格の種類によって就ける業務も雇用形態も変わるため、まずは全体像を把握しておくことが採用の第一歩です。
ドライバーとして働ける3つの在留資格
外国人がドライバーとして日本で働くための在留資格は、大きく3つのグループに分かれます。特定技能1号、特定活動46号、そして就労制限のない身分系在留資格です。
特定技能1号は、2024年3月29日の閣議決定で自動車運送業が対象分野に追加された在留資格です。トラック・バス・タクシーの3区分に分かれており、区分ごとに求められる免許や日本語レベルが違います。
受入れ開始は2024年12月で、5年間の受入れ上限は24,500人。通算5年の在留期限がある特定技能1号のみが対象で、特定技能2号は認められていません。直接雇用が条件で、派遣での受入れは不可です。
特定活動46号は、日本の大学・大学院を卒業した外国人や、認定を受けた専門学校で高度専門士の称号を付与された外国人のうち、高い日本語能力を持つ人が対象の在留資格です。2024年2月の制度改正で対象学歴が拡大されました。
日本語能力試験N1またはBJTビジネス日本語能力テスト480点以上が求められます。この資格でドライバーとして働けるのはタクシーに限られるのが実態です。
出入国在留管理庁のガイドラインでは、観光客への通訳を兼ねた案内業務を行うタクシードライバーが具体例として示されています。トラックの運転業務は対象外。乗客対応がなく、日本語を用いた高度なコミュニケーションが業務上求められないという理由です。
身分系在留資格は、永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者の4種類。これらの在留資格を持つ外国人は就労制限がないので、トラック・バス・タクシーいずれの運転業務にも就けます。日本語試験も技能試験も不要。現時点で外国人ドライバーとして実際に稼働している人の大半は、この身分系在留資格の保有者です。
採用担当が混同しやすい「ビザ」と「在留資格」の違い
採用の現場で「ビザ」と「在留資格」が混同されるケースはいまだに多いです。この2つはまったく別の概念なので、ここで整理しておきます。
ビザ(査証)は、外国人が日本に入国する前に、海外の日本大使館や領事館で発行されるものです。発行元は外務省で、入国審査で使い、上陸が許可された時点で役割を終えます。
在留資格は、日本に入国したあとの「滞在と活動を認める資格」です。管轄は出入国在留管理庁(入管)で、在留資格の種類によって就ける仕事や在留期間が決まります。
外国人ドライバーを採用する際に確認すべきは、ビザではなく在留資格のほうです。在留カードに記載された在留資格と就労制限の有無を見る。これが採用判断の出発点です。
口頭で「就労ビザ」と呼ぶ人は多いですが、法的にはビザと在留資格は別物です。社内で書類や手続きを扱う際に正式名称で区別しておかないと、手続き先を間違えたり、必要な書類を取り違えたりすることがあります。地味な話ですが、ここを曖昧にしたまま採用を進めると後で混乱します。
トラック・バス・タクシー別の在留資格と必要条件
特定技能1号は3区分に分かれており、求められる免許の種類・日本語レベル・免許取得準備期間がそれぞれ違います。区分ごとの条件を正確に把握しておかないと、候補者選びの段階でつまずきます。
トラック区分の要件と免許取得までの流れ
トラックドライバーとして外国人を採用する場合、現実的な在留資格は特定技能1号(トラック区分)と身分系在留資格の2つです。
特定技能1号のトラック区分では、本人に3つの要件が課されます。1つ目は「自動車運送業分野特定技能1号評価試験(トラック)」への合格。試験は日本語で実施され、学科と実技の両方があります。実
施主体は一般財団法人日本海事協会(ClassNK)です。2つ目は日本語能力で、日本語能力試験(JLPT)N4以上またはJFT-BasicのA2相当以上。3つ目が第一種運転免許の取得です。海外免許をそのまま使うことはできません。外免切替か日本の教習所で免許を取る必要があります。
日本の運転免許を持っていない候補者を海外から呼ぶ場合は、まず在留資格「特定活動」(特定自動車運送業準備)で入国し、最長6ヶ月の間に免許を取得する流れになります。この6ヶ月は更新できません。期間内に免許が取れなければ在留資格の変更もできない。候補者の運転経歴や外免切替の通過見込みを事前に精査しておかないと、取り返しがつかなくなります。
特定活動46号はトラック区分では使えません。トラックの運転業務は乗客対応を伴わず、日本語を活かした接客要素がないと判断されるためです。トラック事業者が外国人ドライバーを確保したいなら、特定技能1号か身分系在留資格の保有者、このどちらかが基本線です。
バス・タクシー区分で上がるハードルと特定活動46号の扱い
バスとタクシーは、トラックに比べてハードルが一段上がります。共通するのは第二種運転免許が必要な点です。
特定技能1号のタクシー区分・バス区分では、日本語要件がN3以上またはJFT-BasicのB1相当以上に引き上げられます。乗客の安全確保と接客対応がある以上、トラック区分のN4より高い日本語力を求められるのは当然です。技能試験もそれぞれの区分ごとに別で実施されます。
第二種免許の受験には原則として普通免許等の運転経歴が通算3年以上必要ですが、2022年5月13日施行の改正道路交通法により、受験資格特例教習を修了すれば「19歳以上・経歴1年以上」でも受験できるようになりました。
海外での運転経歴も算入されるため、候補者の母国での免許歴は事前に確認してください。免許取得準備のための「特定活動」の在留期間はバス・タクシーとも最長1年(更新不可)。トラックの6ヶ月より長いのは、第二種免許の取得に時間がかかるためです。
特定活動46号は、タクシーについては活用の余地があります。日本の大学等を卒業しN1レベルの日本語力を持つ外国人が、外国人観光客向けの通訳案内を兼ねたタクシードライバーとして働くケースが出入国在留管理庁のガイドラインで具体例として示されています。
ただし、車両の整備や清掃だけに従事する形態は認められません。日本語力を活かした接客・企画業務を伴うことが条件です。なお、ガイドラインでドライバーとして例示されているのはタクシーのみで、バスについての具体的な許可事例は現時点で公表されていません。
身分系在留資格(永住者・定住者など)であれば、バス・タクシーどちらの乗務も可能です。ただし第二種免許の取得は本人に課されますから、免許取得のサポート体制をどう組むかは採用計画に織り込んでおいてください。
使えそうで使えない在留資格の落とし穴
ドライバー不足が深刻になると、「この在留資格でも何とかならないか」と考えたくなるものです。しかし在留資格の活動範囲を超えた就労は不法就労に直結します。ここでは問い合わせの多い技人国・技能実習・留学・家族滞在について、なぜ使えないのかを整理します。
技人国や技能実習でドライバーは雇えない
「技術・人文知識・国際業務」(いわゆる技人国)でドライバーを雇えないか、という問い合わせは少なくありません。結論から言うと、技人国で運転手としての採用はできません。
技人国は、理系・文系の専門知識や外国文化に基づく感受性を活かした業務に従事するための在留資格です。エンジニア、通訳・翻訳、マーケティング、経理、デザイナーなどが典型的な職種。
出入国在留管理庁のガイドラインでも、ドライバー業務は「専門的な技術や知識を必要とする業務」に該当しないとされています。運転業務は訓練で習得できる技能であり、技人国が求める「学術的な専門性」とは性質が違う。不許可になる典型パターンです。
技能実習も同じく使えません。自動車運送業の職種区分は技能実習制度に存在しないからです。他分野で技能実習2号を良好に修了した人は特定技能1号の日本語試験が免除される特例がありますが、あくまで移行先は特定技能であり、技能実習の在留資格のままドライバーとして働くことはできません。
実務でよくある誤解として、「運送会社の事務や配車管理の補助として技人国で雇い、いずれドライバー業務に就かせる」という計画があります。これは在留資格の活動範囲を逸脱する行為です。入管から指導を受けるだけでなく、不法就労助長罪に問われるリスクもあります。絶対にやめてください。
留学・家族滞在のアルバイトで乗務させてよいか
留学や家族滞在の在留資格でも、資格外活動許可を取得すればアルバイトとして働くこと自体は可能です。ただし週28時間以内(長期休暇中は1日8時間以内)という時間制限があり、この枠でドライバーとして常時稼働させるのは現実的ではありません。
加えて、資格外活動許可で認められる業務は「風俗営業等を除くアルバイト全般」とされていますが、運転業務を主たる仕事として恒常的に行わせる形態は、制度の趣旨から逸脱していると判断される可能性があります。
入管は資格外活動の実態を更新時に審査しますから、「週28時間ギリギリまでドライバーとしてシフトを組んでいた」となれば、更新不許可や在留資格取消の対象になりかねません。
そもそも、留学生は学業が本分であり、家族滞在は扶養を受ける配偶者や子に与えられる在留資格です。どちらも就労を前提とした資格ではない。ドライバーの人手を安定的に確保したいのであれば、正規の就労資格に切り替える道筋をセットで考えてください。
採用前に確認すべき書類と受入事業者の要件
在留資格の種類を理解しても、実際の採用では書類確認や届出の手続きでミスが起きやすいです。特定技能1号の場合は事業者側にも協議会加入や支援計画の策定が求められるため、採用を決めてから慌てないよう事前に全体像を押さえてください。
在留カード・免許証・届出の確認ポイント
外国人ドライバーを採用する前に、最低限チェックすべき書類は3つあります。在留カード、運転免許証、そしてハローワークへの届出です。
在留カードの確認では、まず表面の「在留資格」欄と「就労制限の有無」欄を見てください。身分系在留資格であれば「就労制限なし」と記載されています。
特定技能1号の場合は「特定技能1号」の表記に加え、指定書に記された分野・区分が自動車運送業(トラック・バス・タクシーのいずれか)であることを確認します。
指定書は旅券に貼付されているので、在留カードだけでは分かりません。必ず旅券もセットで確認してください。在留期間の残りが短い場合は、更新手続きのスケジュールも採用時に把握しておく必要があります。
運転免許証は、日本で発行されたものかどうかがポイントです。特定技能1号で入国した外国人が「特定活動」(準備期間)中に取得した免許であれば問題ありません。
外免切替で取得した免許も同様です。国際運転免許証はジュネーブ条約締約国が発行したものに限り有効ですが、あくまで短期滞在者向けの制度であり、日本に住所を定めて就労する場合は日本の免許への切替が前提になります。
ハローワークへの届出も忘れてはいけません。外国人を雇い入れた場合、事業主は「外国人雇用状況の届出」を翌月末日までにハローワークへ提出する義務があります(労働施策総合推進法第28条)。届出を怠ると30万円以下の罰金が科される可能性があります。
雇用保険の被保険者であれば資格取得届に在留資格や在留期間を記入することで届出を兼ねますが、被保険者でない場合は別途「外国人雇用状況届出書」の提出が必要です。
受入事業者に求められる体制と届出先
特定技能1号で外国人ドライバーを受け入れる場合、事業者側にも複数の要件が課されます。
まず、自動車運送業分野の協議会への加入が必須です。国土交通省が設置する「自動車運送業分野特定技能協議会」に入会し、協議会が求める情報提供や調査に協力しなければなりません。
協議会への加入は在留資格申請の前に完了している必要があり、申請時に構成員資格証明書を提出します。届出から証明書発行まで1ヶ月程度かかるため、早めに手続きを進めてください。
次に、1号特定技能外国人支援計画の策定と実施です。事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居の確保、生活オリエンテーション、日本語学習の機会提供、相談・苦情対応、日本人との交流促進など、10項目の支援を行わなければなりません。
自社で支援体制を組めない場合は、登録支援機関に委託できます。委託する場合でも、支援の実施責任は受入企業にある点は変わりません。
道路運送法または貨物自動車運送事業法に基づく許可を受けた事業者であることも前提条件です。当たり前の話に聞こえますが、グループ会社間で出向させる場合や、新設法人で受け入れる場合には、受入企業自体が事業許可を持っているかどうか改めて確認してください。
受入企業が出入国在留管理庁に提出する「特定技能所属機関の届出」も定期的に発生します。受入れ状況に関する定期届出は、従来の四半期ごとから2025年4月の入管法施行規則改正で年1回に簡素化されました。届出を怠ると改善命令や受入れ停止の対象になります。届出先は管轄の地方出入国在留管理局です。
特定活動46号や身分系在留資格で採用する場合は、協議会加入や支援計画の策定は不要です。ただしハローワークへの届出義務や、労働関係法令の遵守は在留資格の種類にかかわらず同じです。外国人だからといって労働基準法や最低賃金法の適用が変わることはありません。



