トラック業界の脱炭素社会化への挑戦

トラック業界の脱炭素社会化への挑戦

CO2削減に取り組む脱炭素化は、車両を扱うトラック業界にとって切っても切り離せないものでしょう。脱炭素化の大きな潮流の中、業界内はどのような状況なのか、その取り組みと合わせて解説します。

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脱炭素社会の到来とトラック業界

脱炭素化を目指す動きが進む社会的背景と、その目指すところはどこにあるでしょうか。それの中で、トラック業界が果たすべき役割と現状の課題を見ていきましょう。

脱炭素社会のためのトラック業界の役割

地球温暖化の防止と気候変動の緩和のため、CO2をはじめとする温室効果ガスの排出を実質ゼロにする脱炭素化の潮流は今や世界的なものとなっています。

トラック輸送業界は、私たちの生活にとってなくてはならない物流を担う業界です。
その意味でトラックドライバーは「エッセンシャルワーカー」と言えます。特にコロナ禍では、巣ごもり需要も相まって、その重要性をあらためて知ることができました。

生産地から各消費地や小売店へ製品や物資を運ぶためには、トラック運送が欠かせません。また物資だけでなく、トラック運送に伴う様々サービスや支出が社会の経済活動を支えています。トラック運送に携わるのはドライバーだけではなく、車両の整備・管理者、事業所の従業員など、多くの人手を必要とします。トラック業界は雇用創出という面でも、社会へ大きく寄与していると言えるでしょう。
社会におけるこれらの役割を果たしながら、トラック業界は脱炭素化に向けて取り組んでいかなければいけません。

トラック業界のCO2排出問題

2018年度の日本における物流事業全体の市場規模は約29兆円です。そのうちトラック運送事業の市場規模は19兆2,576億円(2018年度)で、物流事業の約7割を占めています。

またCO2排出量を見ていくと、2018年度の総排出量は11億3,800万。そのうち運輸部門のCO2排出量は2億1,042万トンで全体の18.5%を占めており、産業部門に次いで多い数字となっています。さらにトラックの排出量に絞り込むと、トラック全体(自家用トラック、営業用トラック)で運輸部門の36.6%を占めています。

トラック業界にとってCO2削減は責務と言えますが、物流を止めることはできません。いかに社会のインフラとして機能しながら、脱炭素化を進めていけるかが重要となってくるでしょう。

出典・参照:全日本トラック協会 日本のトラック輸送産業-現状と課題-2022

脱炭素化を目指すトラック技術

トラック業界では、脱炭素に配慮した環境性能に優れた車両の開発と普及、促進が行われています。次世代トラック導入の現状と、課題解消に向けた今後の方向性を見ていきましょう。

次世代トラック

トラック業界でも普及が進む次世代自動車ですが、車両価格の高さ、充填時間の長さや航続距離の短さなどのデメリットを解消できていないのが現状です。とりわけ天然ガス圧縮型の「CNGトラック」は新規登録台数、スタンド数ともに減少傾向にあります。それに代わるものとして、環境省では「LNG(液化天然ガス)トラック」の実証実験をはじめ普及を推進しています。

また、電気動力と内燃エンジンの両方を装備する「ハイブリッドトラック」の普及も進んでおり、新規登録台数はここ数年で徐々に伸長しています。
「電気トラック」は、環境性能が高く排出量削減の大きな効果が期待できますが、CNGトラック同様デメリットが多くその克服が課題です。
他にも国内外の車両メーカーが協働し、「水素燃料電池トラック」の導入・検証が行われています。コンビニ配送などの小型商用車と、幹線輸送を扱う大型商用車をそれぞれ想定し、普及促進が行われています。

次世代トラック導入の課題

今後、次世代自動車への移行を進めていく上での課題は多くあります。
最も必要なのは、やはりコストの問題解消でしょう。車両本体の価格、充填・充電スタンドの設置費用を抑えること、それらへの補助・助成制度の充実などが必要です。

現在、次世代自動車の導入に関する様々な補助制度や税制優遇があります。すでに電気自動車をはじめとする次世代自動車本体の税率は、非課税もしくは低税率になっています。しかし、今後より一層普及・促進を行っていくために、「炭素税」や「自動車走行税」などの新たな税制導入も検討されています。
他にも、インフラの整備など利便性を高めること、貨物自動車として必要な積載量や耐久性を担保できるかなども課題です。今後、次世代自動車の円滑な普及に向けて総合的な対策が求められています。

エネルギー効率改善の取り組み

エネルギー効率改善に向け、トラック業界はどのような取り組みを行なっているでしょうか。エコドライブの推進や、車両設計による輸送効率化の取り組みとその影響について解説します。

エコドライブの推進

エコドライブとは、自動車から排出されるCO₂排出量を減らし地球温暖化防止につながる運転を心がけることです。具体的には、アイドリング・ストップ、急発進・急加速などをしない安全運転、経済速度で走る、適切なエアコン使用、定期的な点検・整備を行いタイヤの空気圧を適正に保つなどのアクションがあります。

トラック業界では、これらに加え共同輸配送を行い、走行台数をできる限り減らすなどの取り組みが求められています。

輸送効率化を目指した車両設計

トラック業界においてエコドライブを推進していくには、走行台数を抑えながらいかに社会のインフラとして十分に機能させられるかが重要です。そのためには輸送を効率化できる車両設計及び開発が必要になってきます。

まず、現状の車両は燃費効率の問題があります。
今後、天然ガストラックや電気トラックの導入を進め、普及促進を図っていくことは必須でしょう。他にも車両を軽量化しつつ、必要な積載量を運搬できるような車両を開発していく必要もあります。
また車両だけでなく、物流自体の輸送効率化を行っていくことも重要です。例えば、トラック等の自動車による貨物輸送から、CO2の排出量が少ない鉄道や船舶の利用へ転換する「モーダルシフト」もその1つです。その他にも、運輸網の集約・共同配送は、輸送の効率化によるCO2の削減効果を期待できますが、消費者ニーズの多様化によって小口対応の必要性が出てきているなど課題も多くあります。

トラック業界の協力体制

脱炭素において、トラック業界全体の協力体制はどのようになっているでしょうか。また、政府や自治体との連携により行われている具体的な取り組みも見ていきましょう。

メーカー間の相互取り組み

全日本トラック協会では、2030年度にCO2排出量を31%削減(2005年度比)するというメイン目標を掲げ、トラック業界全体で脱炭素化を目指すための「トラック運送業界の環境ビジョン2030」を策定しています。
最も重きを置いた「”はこぶ”でCO2削減」を始め、「”事務所”でCO2削減」、「みんなで環境対策」の3段階のメニューに分け、それぞれで具体的なアクションを提示し実践を促しています。
さらに、メイン目標をベースにした、以下の3つのサブ目標を設定しています。

・車両総重量8t 以下の車両について、2030年における電動車の保有台数を10%とする
・各事業者が自社の車両のCO2排出総量またはCO2排出原単位を把握することを目指す
・全日本トラック協会と全都道府県トラック協会が共通で取り組む「行動月間」を設定する

引用元:全日本トラック協会 『トラック運送業界の環境ビジョン2030』で目指すこと

業界が一体となって、同じベクトルに向い取り組む姿勢を打ち出し取り組んでいます。

政府や自治体との連携

トラック業界では、現状の課題をクリアしていくため政府の政策との連携も加速させています。
2021年の国土交通省による「国土交通省環境行動計画」の改定により、運輸部門の脱炭素化への主体的な取り組み強化が明文化されました。これに伴い「物流総合効率化法」に基づいて、流通業務の省エネルギー化、輸送の合理化など、物流効率化を図るための取り組みがいっそう活発になっています。

また、地域の自治体と連携していくことも重要です。
地域社会にとってトラック業界が果たす役割は大きく、脱炭素化で持続可能な社会を作っていく上では協力していくことが欠かせません。
例えば、地域の観光産業を支えていく上で、貨物輸送は欠かせないものです。また、観光客によって出されるごみや廃棄物の収集・処理は、観光地の環境保全に直結します。その他にも、地域のイベントへの協賛や、ボランティアなどのコミュニティ参加で地域振興へ貢献することもできるでしょう。

トラック業界の中だけではなく、政府や自治体など周囲と相互に手を取り合い連携していくことが重要だと言えます。

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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