建設工事の現場ではさまざまな機械が利用されています。その中の1つに「ラフテレーンクレーン」がありますが、これはどのような機械なのでしょうか。また、ラフテレーンクレーンを扱うためにはどのようなことが必要なのでしょうか。
ここではラフテレーンクレーンに関わる事柄をご紹介していますので、気になっている方はぜひご確認ください。
ラフテレーンクレーンの基礎知識
ラフテレーンクレーンとはどのような機械なのでしょうか。まずはラフテレーンクレーンの概要について確認していきましょう。
ラフテレーンクレーンとは何か
ラフテレーンクレーンはエンジンを搭載することでさまざまな場所に移動できるようになっている移動式のクレーンです。ラフテレーンクレーンは英語の「rough terrain(ラフテレーン)」から名称がつけられているため、場合によってはラフテレーンクレーンと呼ばれることもあります。
一般的にクレーン車と呼ばれるものはラフテレーンクレーンです、ラフテレーンクレーンは四輪駆動である事から馬力が強くなっています。また、車両とクレーンのエンジンが共用となっていることから車体がコンパクトであることが多いです。しかし、強い馬力かつコンパクトといったメリットがある一方で速度は最高でも50km/hとなっています。
ラフテレーンクレーンの主な用途
ラフテレーンクレーンは機動性とコンパクトさから下記のような用途で利用されています。
1.建築現場:建築現場で鉄骨や建材の吊り上げ作業に使用。とくに、高層ビルや狭い敷地の建築現場で力を発揮。
2.土木現場:擁壁や橋桁の設置作業に使用。とくに、山間部など不整地での作業で力を発揮。
3.電力設備の設置作業:電力設備の設置作業に使用。高いつり上げ能力と作業効率の面から力を発揮。
その他にもラフテレーンクレーンは下記のような用途で利用されています。
・災害復旧作業
・映画撮影
・イベント設営
・工場設備の設置
・機械の搬入・搬出
・樹木の伐採
・看板の設置
・重量物の運搬
これらのようにラフテレーンクレーンは運搬や設置に関する幅広い作業に利用されています。
ラフテレーンクレーンと他のクレーンの違い
クレーンと言っても非常に多くの種類があり、ラフテレーンクレーンはその一種です。では、他のクレーンとラフテレーンクレーンは何が違うのでしょうか。ここでクレーンの中でラフテレーンクレーンの特徴を確認してみましょう。
トラッククレーンとの違い
トラッククレーンは運転席の後ろにクレーンと操縦席が付いているクレーンです。車両は普通のトラックであり、ラフテレーンクレーンと違って長距離走行が可能になります。しかし、トラック自体の運転性能が悪いと悪路などの運行は厳しくなります。
また、トラッククレーンはラフテレーンクレーンほどの力強さは発揮できないことが多いです。そのため、トラッククレーンは舗装された場所かつ力が要らない現場で利用することが推奨され、活用現場がやや限定的になっています。
さらに、トラッククレーンとラフテレーンクレーンは必要な免許が異なります。それぞれに必要な免許は下記のとおりです。
トラッククレーン | ラフテレーンクレーン | |
運転に必要な免許 | トラック規模に応じた免許
(中型免許など) |
大型特殊自動免許 |
クレーン操作に必要な免許 | つり上げ重量に応じた免許
(小型クレーン運転士、移動式クレーン運転士免許) |
移動式クレーン運転士免許 |
このように必要な免許は異なるため、実際に利用を検討する際には注意しておきましょう。とくに、運転とクレーン操作で異なる免許が必要な点は注意が必要です。
オールテレーンクレーンとの違い
オールテレーンクレーンは、トラッククレーンの長距離運行とラフテレーンクレーンの悪路での運転性能の両方のメリットを兼ね備えたクレーンです。最高速度は60~70km/h、つり上げ重量は100tを超えています。
ただし、ラフテレーンクレーンは運転席とクレーン席が一緒であるのに対し、オールテレーンクレーンは別々になっています。そのため、実際に活用する際にはこちらに慣れておくことが必要です。また、車両価格もラフテレーンクレーンより高額な場合が多くなっています。
ラフテレーンクレーンの免許と資格
前述のとおり、ラフテレーンクレーンには免許が必要です。ここでその免許の取得方法や費用について詳しく確認していきましょう。
必要な免許とその取得方法
ラフテレーンクレーンを操作するためには大型特殊免許と移動式クレーン運転士の2つの免許が必要です。
まず、大型特殊免許の受験資格は下記のとおりです。
・年齢:18歳以上
・視力:片目0.3以上、両目0.7以上
・信号を識別できる
・聴力が日常会話で支障ない
このように受験資格自体は一般的な自動車免許と変わりがありません。取得方法は教習所に通う方法と一発試験の2つがあります。教習所の場合の試験内容は適性試験と学科試験、一発試験の場合の試験内容は適性試験と技能試験と学科試験です。
次に、移動式クレーン運転士の受験資格は不問(年齢は満18歳以上)となっており、誰でも受けることができます。移動式クレーン運転士も取得方法は教習所に通う方法と一発試験の2通りです。
免許取得にかかる費用と期間
大型特殊免許の取得にかかる費用は通う教習所によって異なりますが、7万円~13万円が相場となっています。教習所に通わずに一発試験で取得を目指す場合の費用は6,100円です。かかる期間は下記のように現在の状態で変わります。
現在の状況 | 必要日数 |
普通免許保有 | 最短4日 |
普通免許なし | 6日以上 |
一発試験 | 1日 |
移動式クレーン運転士は、教習所に通う場合は13万円~16万円ほどが相場となっています。一発試験の場合は1万4,000円です。教習所に通う場合の期間は3日間となっています。
ラフテレーンクレーンの選び方とメンテナンス
ラフテレーンクレーンはさまざまな会社から販売されており、それぞれ特徴が異なります。このことから、実際に購入する際には目的に沿ったものを選ばなければなりません。ここで、ラフテレーンクレーンはどのように選べば適切なものを選択できるのか確認してみましょう。
適切なラフテレーンクレーンの選び方
ラフテレーンクレーンを選ぶ際には以下のポイントを考慮する必要があります。
1.吊り上げ能力
ラフテレーンクレーンの吊り上げ能力は機種によって5トンから150トンまで様々であるため、吊り上げたいものの重量を事前に算出しておくことが重要です。
2.アウトリガーの展開範囲
ラフテレーンクレーンはアウトリガーと呼ばれる支柱を展開して安定性を確保します。そのため、アウトリガーを展開するスペースがあるのかを確認する必要があります。
3.ブームの長さ
ブームの長さは吊り上げ高さや作業範囲に影響します。必要なブームの長さを事前に確認しておくことが重要です。
4.車体の大きさ
ラフテレーンクレーンは車体の大きさが作業性に影響します。狭い場所で作業をするのであればコンパクトなものを選ぶことが必要です。
5.価格
ラフテレーンクレーンの価格は機種や吊り上げ能力によって異なります。事前に予算を確認しておき、その範囲内で満足のいくラフテレーンクレーンがあるのかをチェックしていきましょう。
7.メーカー
ラフテレーンクレーンは様々なメーカーから販売されています。そして、メーカーによってアフターサービスなどが異なります。各メーカーの特長を理解し、信頼できるメーカーを選ぶことが重要です。
ラフテレーンクレーンのメンテナンスと注意点
ラフテレーンクレーンは安全性を確保するために定期的なメンテナンスが必要です。メンテナンスは一定期間ごとにおこなうだけでなく、常日頃から異常が無いかは意識しておきましょう。また、自社で完結させるのではなく、メーカーなどへ点検を依頼することもおすすめです。