トラックは車体の大きさによって積載できる荷物の重さが変わります。最大積載量の定義やトラックの種類別の最大積載量、才数の換算などを解説します。
最大積載量を基礎から理解しよう
最大積載量を知ることは荷物の輸送に欠かすことのできない大切な知識の一つです。最大積載量を守り、安全な運行を心がけましょう。
最大積載量の定義と計算方法
最大積載量とはトラックの荷台に積むことができる荷物の最大の重さのことです。
最大積載量の計算方法は
最大積載量=車両総重量-(車両重量+乗車定員×55kg)
で求めることができます。
では次に、計算式の中に出てきた「車両重量」と「車両総重量」について解説します。
車両重量はトラックに人が乗りすぐにでも走りだせる状態の重量です。燃料やエンジンオイルなどのオイル類・冷却水・荷台の架装(クレーンなど)をすべて加えた重量です。なお乗員やスペアタイヤなどは含まれません。
車両総重量は、トラックの車両重量に最大積載量の荷物と乗車できる定員全員分の重量を加えた状態の重さのことです。
なお貨物車の場合、乗車定員や最大積載量、車両重量、車両総重量は車検証に記載されているので確認することができます。
最大積載量を超えるとどうなる?
最大積載量を超えて荷物などを積むことは過積載とも呼ばれ、違反した場合罰則があります。
過積載のドライバーへの罰則
5割未満 | 2点 | 3万円 |
5割以上10割未満 | 3点 | 4万円 |
10割以上 | 6点 | 6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金 |
道路や橋は使用される目的によって基準があり、設計し管理されています。そのため道路や橋などにダメージを与えないよう、走行するトラックには重量や大きさが決められています。
過積載での罰則はドライバーだけでなく、過積載の指示をしたトラック事業者や荷主も罰せられることもあります。また過積載はブレーキ制動力の低下や車両バランスの喪失など重大事故の原因にもなり、トラック車両の寿命の短縮、燃費の悪化、道路へのダメージなど多くの悪影響があります。
トラック種別別の最大積載量一覧
最大積載量はトラックの大きさによって異なります。一般的な3種類の大きさのトラックと、増トントラックの最大積載量を解説します。
トラックの最大積載量の一覧
一般的なトラックは大きく分けて小型トラック、中型トラック、大型トラックに分けられます。
一般的なトラックの最大積載量は以下の通りです。
小型トラック | 中型トラック | 大型トラック | |
車両総重量 | 5トン以内 | 11トン未満 | 11トン以上 |
最大積載量 | 3トン以内 | 6.5トン未満 | 6.5トン以上 |
小型トラックは、全長4.7m以内 全幅1.7m以内 全高2m以内のもっともコンパクトなトラックで、短距離~中距離の輸送や住宅街の配送に使用されます。
中型トラックは、全長12m以内 全幅2.5m以内 全高3.8m以内の中型のトラックです。中距離~長距離の輸送に使用されます。
大型トラックは、全長12m以内 全幅2.5m以内 全高3.8m以内の最も大きなトラックです。長距離の輸送に使用され、キャビンには寝泊りできるスペースを設けたものもあります。
増トントラックの最大積載量
小型トラック、中型トラック、大型トラック以外に、中型トラックの積載量を増やした「増トントラック」があります。
増トントラックは中型トラックのフレームや車軸を強化し、最大積載量を増やしたものです。増トントラックの最大積載量は6.5トンや8トンのものがありますが、中型免許で運転できるのは6.5トンまで。6.5トンを超えるものは大型免許がなければ運転できません。
増トントラックのメリットとしては標準的な中型トラックよりも多くの荷物を運べる、大型トラックよりも車両本体価格が安い、大型トラックに比べて維持費が安くすむ、最大積載量6.5トンまでのものは中型免許で運転できるなどがあります。
デメリットは標準的な中型トラックと比べて車体の重量が重くなるため、車検時の自動車重量税が高くなる、車体総重量が11トンを超えるもしくは最大積載量が6.5トンを超えるものは大型免許が必要になるなどがあります。
最大積載量に影響を及ぼす要素
トラックの軸重や輪荷重にはそれぞれ超えてはならない重さがあります。また、一部区間には積載量や車両重量を制限する区間があります。
最大積載量を決定する要因
最大積載量を決定する要因としては車両の構造のほかに、積載量や車両重量を制限する区間があります。車両の構造では前述した最大積載量の計算式のほかに、左右のタイヤを結ぶ一本の軸にかかる軸重は10トンを超えてはならないこと、1つのタイヤにかかる輪荷重は5トンを超えてはならないことがあります。
車軸が多いまたはダブルタイヤなどでタイヤの数が多いトラックは、そのぶん重さを分散することができるためより重いものを運べるということになります。また積載量や車両重量を制限する区間には、「積〇t」の補助標識や赤い丸で囲まれた「〇〇t」といった標識があります。〇にはそれぞれ数字が入り、「積〇t」の補助標識ではその数字を超える最大積載量のトラックは通行禁止となり、赤丸の「〇〇t」の標識では車両総重量がその数字を超えるトラックは通行禁止となります。
最大積載量と才数の違い
物流業界では最大積載量のほかに、才数といった文字を目にする機会があります。
才数とは容積のことで1才は1立方尺のことを指します。1尺は30.3cmであるため、30.3cm×30.3cm×30.3cm=27,818.127㎤=0.0278m3 が1才の容積となります。容積である才数に換算する理由として、羽毛や発泡スチロールなどの「容積は大きいが重量は軽い」といった荷物の存在があります。
容積が軽く重量が重い荷物は、重量的には積載できるが容量的には積載できない場合があります。こういった荷物の性質を踏まえ物量を把握し、重量と才数を比較することで料金を正しく算出することができます。運送会社によって異なりますが才数を重量に置き換える場合、1才=8㎏で換算するのが一般的です。
最大積載量と今後の業界
最大積載量を上げることは物流量を増やすことにつながりますが、積載率が低い現状があります。持続可能な物流にはユーザーの理解や企業間の協力が大切です。
最大積載量が物流業界に与える影響
最大積載量とは言葉通り、トラック1台に積むことができる最大の荷物の重さです。単純に考えればトラック1台の最大積載量が増えれば1回の輸送量が増え、より多くの荷物が輸送できるようになります。効率のいい物流を目指すのであれば、トラック1台あたりの荷物の輸送量が多いに越したことはありません。
ですが、2022年の経済産業省・国土交通省・農林水産省の「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」によると、貨物自動車の積載率は2010年以降40%以下の低い水準が続いています。つまり、トラックが2台走っても1台分の最大積載量に及ばないということになります。
テクノロジーの進化と輸送
積載率が低い水準で推移している理由として、EC物流による当日配送や時間指定配送などの影響があります。このような多様化するニーズに対応するためには、積載率よりも時間を優先せざるを得ず、多頻度少量輸送が多くなってしまっている現状があります。
このような現状ではいくらトラック1台の最大積載量を増やしても効果がありません。
持続可能で無理がない輸送をこの先の未来に続けていくためには、テクノロジーが進化して便利な現在の状況に少し疑問を持つことが必要なのではないでしょうか。
たとえば多くのECサイトでは送料無料と謳っているケースが多いですが、実際には輸送費が発生しています。ですが、送料無料と記載されていれば、まるで輸送費がかかっていないかのようにとらえる人も多いのではないでしょうか。
一見大したことのないように思えることでも声を上げ、企業が垣根を越えて協力していくことでこれからの物流を持続可能なものにしていくのではないかと考えます。