トラックの荷台は積み荷によっていくつかの種類があります。ここではトラックの荷台について種別に名称、特性、役割、構成部品等について述べていきます。
トラックの各種荷台の名称と特徴
トラックの荷台にはいくつか種類がありますが、代表的なものとして、「平ボディ」「バンボディ」「ウイングボディ」があります。各々についてその特性や役割、適している状況等について述べます。
平ボディの特徴と用途
平ボディは、荷台部分が平らになっていてアオリという落下防止柵で囲まれている形状をしています。種類は主に、小型の2トン、中型の4トン、大型の10トンの3種類で、積み荷の大きさや運送距離で使い分けられています。
荷台の高さによっても、超低床型平タイプ(高さ780mm~785mm)、全低床型平タイプ(高さ840mm~970mm)、高床型平タイプ(高さ925mm〜1,105mm)の3種類に分けられています。
超低床型平タイプ(高さ780mm~785mm)は、地上から荷台までの高さが最も低い平ボディトラックです。比較的小口径のタイヤを装着しており、荷台の高さが低いので積み荷の積み下ろしの負担が軽い反面、タイヤが小さいため、運転席に揺れや振動が伝わりやすく乗り心地が悪く感じることもあります。人力での積み下ろしが多く、運送距離が短い使用には最適です。
全低床型平タイプ(高さ840mm~970mm)は、地上から荷台までの高さが超低床型と高床型の中間で、高さバランスの良いです。ですから、用途や運送距離が決まっていなくても、汎用性があるため何にでも問題なく使用することができるので重宝するタイプといえます。
高床型平タイプ(高さ925mm〜1,105mm)は、地上から荷台までの高さが最も高いトラックです。比較的大口径のタイヤを装着しているため、運転席や荷台への揺れや振動は少なく長距離輸送にも適しています。荷台までの高さが高いので、フォークリフトやクレーンでの作業にも最適です。
バンボディとウイングボディの違い
バンボディとは、トラックの積載部に箱型の荷台が備え付けられた車のことです。様々な種類の荷物を積み込めることからトラックの中で最も多く使われている種類です。荷台の箱の材質はアルミ製が一般的で、波状のものとパネル状のものの2つのタイプがあります。箱の内側はベニア板で作られていることが多く通常温度調整装置はついていません。
バンボディには、小型、中型、大型とすべての大きさのトラックで用いられておりますが、箱型の荷台そのものの重量によって積載量が変わる可能性があるので注意が必要です。
バンボディ車のメリットとしては、「平ボディに比べる風雨の影響を受けにくいこと」「荷物の落下のリスクが低いこと」「箱の側面を広告スペースとして使えること」「保冷車、冷蔵車に比べると燃費が節約できること」があります。
バンボディ車のデメリットとしては、保冷車や冷蔵車のような温度管理ができない点です。特に箱の内側がベニア板だけで断熱材もない場合、気候によっては野外よりも温度変化が激しくなってしまいます。
一方、ウィングボディ車は荷物の積み下ろしがしやすいようにバンボディの側面が鳥の翼のように両側に開くように設計された車です。荷物を積み下ろしがしやすいため、運搬業、宅配便の集配送業、引越専門業などで多く利用されています。
ウイングの開き方には、「フレキシブルオープンタイプ」「ターンオーバータイプ」「上昇開閉タイプ」があり、積み荷の積み方や倉庫の大きさ等によって使い分けられています。「フレキシブルオープンタイプ」はウイングのオープン角度を柔軟に変更することができるもの、「ターンオーバータイプ」は片側のウイングが中心線を超え大きく開くことができるもの、「上昇開閉タイプ」は開口を大きくとる目的で天井を上昇させることができるものです。
ウィングボディトラックのサイズとしては、2tの小型タイプから4tの中型タイプ、10tの大型タイプまで幅広く存在し、積荷に応じて選択することが可能です。
ダンプトラックの荷台とそのパーツ
ダンプトラックの荷台にはいくつか種類があり、代表的なものとしては「平ボディ」「バンボディ」「ウイングボディ」がありますが、これら各荷台の特性、動作原理、部品名称等について説明します。
ダンプトラックの荷台の特徴
平ボディは、構造がシンプルで幅広い業種で数多く利用されています。荷台の周りがアオリと呼ばれる板で囲まれていて、アオリがフラットに開くといった特徴があります。アオリを開くと積み下ろしを妨げるものが何もなくなるので、フォークリフトやクレーンで効率よく作業をすることができます。また、荷台の後部に昇降装置であるパワーゲートを装着した平ボディもあります。
バンボディは、トラックの荷物積載部に箱型荷台を搭載したものです。荷台の 構成材料はアルミ板、鋼板、FRP板があり、性能分類として、素材板だけのドライバン、断熱材をサンドイッチした保冷バンに分けることができます。アルミを材料としたドライバンがもっとも多く、これは錆びることがなく長寿命のため、トラックシャシーを台替えして再使用することも多いです。
ウイングボディは、箱型をした荷台部分の側面が鳥の翼のように左右に跳ね上がるタイプです。フォークリフトなどによる荷物の積み下ろしが非常に効率よく行えるので、運搬、集配送業、引越などで活躍しています。
荷物を降ろした後の空の状態では、イベントやお祭りなどの舞台として活用することもできます。ウイングの開閉の動力は手動式、油圧式、電動モーター式などあり、長く安全に使うためには定期的なメンテナンスが必要です。
ダンプトラックの主要部品名称
・キャビン
ドライバーが乗る運転席の四角い部分。
・アオリ
平ボディの荷台の枠を指し、左右と後方の3面に設置されています。開けることで積載物の積卸を楽にし、閉めると積載物の転倒・転落防止に役立ちます。アオリのフックにロープをかけ固定すればより安全に搬送することもできます。
・根太(ねだ)部
荷台の床板を支える骨材のことで、縦根太の上に横根太を交差させて床板を敷きます。根太には木製、鉄製、アルミ製があります。
・サイドガード
ダンプ側面のタイヤの間に取り付けられており、タイヤ間の隙間を埋めています。歩行者などの巻き込み防止のために設置されています。
・鳥居部
荷台とキャビンの間に設置されている装置で、荷台の積み荷が崩れて、運転席側に転がってきても大丈夫なように設置されています。神社の鳥居に形が似ていることから、この名前が付いています。
・デッキ
英語で床や甲板を意味するdeckで、荷台の底の部分を指します。デッキの広さで積載量も変わります。
・サイドドア
バンボディトラックの荷台の側面に取り付けられた扉。
・リアドア
バンボディトラックの荷台の後部に取り付けられた扉。
・ウィングサイドパネル
ウイングボディトラックを象徴する荷台両側面の扉のこと。
トラックの安全装置
荷台に取り付けられる主要な安全装置とその名称、役割、さらには、トラック全体の安全装置について述べます。
荷台に付けられる安全装置
トラックの荷台に付けられる安全装置について、最近の重要な留意事項として労働安全衛生規則の改正があります。これにより、令和5年10月からは、昇降設備の設置が必要な貨物自動車の範囲が拡大されます。これまで昇降設備の設置は、最大積載量が5トン以上の貨物自動車を対象としておりましたが、新たに最大積載量が 2トン以上5トン未満の貨物自動車についても荷役作業時の昇降設備の設置が義務づけられます。これは、貨物輸送事業における労働災害では荷役作業中の墜落、転落が最も多いことから改正されました。
トラック全体の安全装置
トラックの安全装置について最新の技術を紹介します。
まず義務化されている装置としては「衝突被害軽減ブレーキ」「車線逸脱警報」「車両安定制御システム」があります。
「衝突被害軽減ブレーキ」は、自動車が障害物を感知して衝突に備える機能です。「車線逸脱警報」は、自動車が走行中に車線を逸脱することを防ぐ機能です。「車両安定制御システム」は、車がカーブを走行したり、急ハンドルを切ったりする際に発生する横滑りを抑え、車の安定をコントロールする機能です。
また、実用化している装置としては「ACC(定速走行・車間距離制御装置)」「車両ふらつき警報」「ドライバーモニター」「サイドビュー&バックアイモニター」「左右バランスモニター」があります。
「ACC(定速走行・車間距離制御装置)」は、アクセル操作とブレーキ操作の両方を自動的に行ない、運転を支援する機能です。「
車両ふらつき警報」は、運転手のハンドルの操作の具合から、ふらつき度合いを自動で判定し、警報を発して注意を喚起しる機能です。
「ドライバーモニター」は、ドライバーの運転をモニターカメラで常時確認し前方への注意不足を検知すると警報で知らせる機能です。
「サイドビュー&バックアイモニター」は、見づらい位置を映像として画面に表示してくれる機能で、車幅感覚をつかむのを助けてくれる機能です。
「左右バランスモニター」は、積荷の偏りによる横転事故を防ぐため積み荷の荷重の偏りを測定し左右の傾き角度等をドライバーに伝達する機能です。
トラックを選ぶ際のポイント
ここまで、トラックの荷台形状等について述べてきましたが、トラックを購入したりレンタルしたりする際の荷台の選択基準や安全装置の確認方法について説明します。
適切な荷台形状の選択
トラックの荷台は形状等により色々とあり、代表的なものでは「平ボディ」「バンボディ」「ウィングボディ」があります。「平ボディ」は何でも積め、汎用性が高いこと、「バンボディ」は積み荷を雨風から守ること、「ウィングボディ」は積み下ろしが楽なことなどの特徴があります。トラックを選択する場合には、こういった荷台の特徴を把握した上で検討することが大事です。
必要な安全装置の確認
積み荷のあるトラックには種々の安全装置が用意されております。
令和5年の10月には、改正労働安全衛生規則の施行により昇降設備設置基準が厳しくなり小型トラックにも設置が必要となりました。また、安全装置の開発、実用化も進んできており、積み荷の偏りを察知する左右バランスモニター等有用な装置も増えてきています。
積み荷の形態、量、運搬距離等を考慮して必要な安全装置を積極的に導入し安全運転、運送を心がけることは大事です。