スマートロジスティクスとは?次世代物流を支える技術

近年、EC化の進展や人口減少による人手不足など物流業界はさまざまな課題に直面しています。そして、これら課題を解決できるものと注目されているのが「スマートロジスティクス」です。
では、スマートロジスティクスはどのようなものであり、なぜ現在の課題を解決できるのでしょうか。ここで物流業界のスマートロジスティクスについて確認していきましょう。

目次

スマートロジスティクスとは?

そもそも、スマートロジスティクスとはどのようなものなのでしょうか。スマートロジスティクスの効果などを確認する前に、まずはスマートロジスティクスの概要について確認してみましょう。

スマートロジスティクスの定義と背景

スマートロジスティクスとは「AIやIoTなどの最新テクノロジーを活用し、物流業界における効率化(ロジスティクス)を図る」ことです。そして、物流業界はドライバーの労働時間に上限が設定されることで生じる問題の総称である2024年問題があります。

これら問題は人の手では限界が見えつつあるため、スマートロジスティクスが注目されるようになってきています。2024年問題で生じる問題には下記のようなものがあり、解決しなければならない問題です。

・配送運賃の上昇
・ドライバーの給与減少
・ドライバーの離職増加

物流業界の変革を牽引する技術

スマートロジスティクスを支える技術には下記のようなものがあります。

・AI:言語の理解や推論、問題解決などの知的行動を人間に代わってコンピュータに行わせる技術、需要予測や配送ルートの最適化が可能になる

・IoT:モノをインターネットに接続することで相互に制御する技術、荷物の位置のリアルタイムな把握が可能になる

・ロボティクス:人間の作業をロボットがおこなう技術、ピッキングや梱包などの単純作業を自動化できる

これら技術はそれぞれが進歩しており、相乗効果となっています。しかし、これら技術を組み合わせたスマートロジスティクスはまだ完璧なものではないため、さらなる技術発展が必要です。また、スマートロジスティクスに対して適切な運用をおこなえる人材の育成といった面も課題として残っています。

スマートロジスティクスの実用例と効果

前述のようにスマートロジスティクスは今後も発展が必要ですが、現時点でも非常に多くの実用例があります。ここで実際に導入された事例とその効果を確認していきましょう。

ピッキング業務の効率化

ピッキングとは倉庫内で商品を仕分けして出荷する作業です。仕分けが間違えてしまうとお客さんに届く荷物も間違ってしまうため、物流において重要なポイントのひとつです。
スマートロジスティクスを活用してピッキング業務を効率化する方法としては、以下のようなものが挙げられます。

・AIを活用したピッキングロボットの導入
・VR/ARを活用したピッキング支援

AIを活用したピッキングロボットを導入はピッキング作業を自動化することが可能です。近年はロボットの技術が進歩することで商品の位置を自動で認識し、ピッキング作業をおこなうなど作業できる幅も広がっています。

VR/ARは、VR/ARを装着することで倉庫内の3Dマップや商品の情報をリアルタイムで確認しながらピッキング作業を行うことができるようになります。例えば、トヨタ自動車では、VR/ARを活用したピッキング支援システムを導入し、ピッキング作業のミスを大幅に削減することを実現しました。

配送ルートの最適化

配送ルートの最適化とは荷物を最短距離かつ効率的に配送できるようにルートを設計することです。配送ルートの最適化によって配送コストの削減や配達時間の短縮、さらには環境負荷の低減などが期待できます。スマートロジスティクスを活用して配送ルートを最適化する方法としては以下のようなものが挙げられます。

・AIを活用した配送ルート最適化システムの導入
・IoTを活用した配送車両の位置情報の取得

まず、AIを活用した配送ルート最適化システムを導入することで配送ルートを自動的に最適化することが可能です。AIが考慮する項目は荷物の重量やサイズ、配送先の住所、天気など多くのものがあることから、人間が考えるよりも最適なものになり得ます。

IoTを活用することで配送車両の位置情報をリアルタイムで取得することができます。この情報を活用することで配送車両の位置や状態を把握し、配送ルートを最適化することができます。このように情報の取得の観点からもスマートロジスティクスが実現しているのです。

企業におけるスマートロジスティクス導入事例

スマートロジスティクスは現実としても多くの企業が導入しています。ここで実際に導入している企業について確認し、その効果を確認していきましょう。

ヤマトホールディングスの取り組み

ヤマト運輸は集配コースを自動的に組み立てるシステムを導入しており、ドライバー不足に対応しました。さらに、2022年には京セラと連携し、配送もロボットがおこなえるように実証実験をおこなっています。ロボット配送はまだメジャーなものではありませんが、今後は普及していく可能性が高いです。

Combi Terminal Twenteの成功例

オランダのCombi Terminal Twenteは、物流拠点におけるスマートロジスティクスの成功例として知られています。導入した物はIoT、AI、ロボティクスとスマートロジスティクスすべての技術を導入しています。その結果、配送コストは約20%、配達時間は10%削減することを実現しました。Combi Terminal Twenteはいち早くスマートロジスティクスを導入しており、今後も物流業界において有益なシステムの考案・導入をおこなう可能性があります。

スマートロジスティクスの課題と今後の展望

スマートロジスティクスは物流業界の課題を解決するものですが、現時点で完璧なものではありません。最後に課題や展望についても確認し、スマートロジスティクスについて深く考えていきましょう。

業界が直面する課題

スマートロジスティクスの導入には以下の課題があります。

・技術の進歩
スマートロジスティクスを支える技術は日々進歩しています。しかし、レスポンスの速さや導入のしやすさなど課題は残っているため、さらに技術を発展させていくことが必要です。

・人材育成
スマートロジスティクスを導入・運用するためには専門的な知識やスキルを持った人材が必要です。スマートロジスティクスについて深く知っている人はあまり多くないため、専門知識を付けさせるような制度もしくはツールが必要不可欠になります。

・セキュリティ
スマートロジスティクスを導入することで大量のデータをやり取りすることになります。そして、そのデータは個人の住居や頼んだ物と個人情報が多く含まれているものです。そのため、セキュリティ対策を進め、情報漏洩のリスクが極端に低いようなシステム構築をしなければなりません。

そして、これらの課題を解決するためには企業が単独で考えるのではなく、政府や業界団体なども連携して取り組んでいく必要があります。

技術の進化と将来予測

スマートロジスティクスは需要の高さ、課題解決の緊急さから技術が進化していく可能性は非常に高いです。そして、進化はスマートロジスティクスを支える技術であるAI、IoT、ロボティクスのそれぞれで起こるとされています。それぞれの技術が発達することで現在のスマートロジスティクスよりも低コストかつ高精度なものが実現していくでしょう。

そして、進化によって下記のような将来が起こるとされています。

・物流コストの大幅削減
・配達時間の大幅短縮
・顧客ニーズに合わせた柔軟なサービス提供
・環境負荷の大幅低減

このようにスマートロジスティクスは物流業界の課題を解決するだけでなく、環境問題と地球全体の問題にも関わっているものです。

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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