トラックのフェード現象とは?安全に運転するために

急制動時に制動力が低下し、車両の制動距離が延長するフェード現象はトラック運転において重大なリスクとなります。本記事では、フェード現象の定義やトラックにおける特有の症状、発生原因・対処法について詳細に解説いたします。安全運転を確保し、人命と車両を守るためにフェード現象に関して深く理解しておきましょう。

目次

フェード現象とは何か?

まず、フェード現象についてしっかりと理解しておきましょう。教習所にて習っている事柄ではありますが、定義が曖昧であったり忘れてしまったりしている場合は再度ご確認ください。

フェード現象の基本的な定義

フェード現象とは、ブレーキを繰り返し使用することで制動力が低下し、車両の制動距離が延長する現象です。つまり、ブレーキをかけても通常時よりも止まらず、滑るような形になってしまいます。フェード現象は摩擦材の温度上昇や摩耗、ブレーキパッドとローター間の潤滑油の蒸発などによって発生します。さらに、フェード現象は下記の2種類があります。

・ブレーキフェード:ブレーキパッドやローターの温度上昇によって摩擦係数が低下し、制動力が低下する現象。

・サーフェースフェード:ブレーキパッド表面に油膜が形成されることで摩擦係数が低下し、制動力が低下する現象。

原因についても覚えておこうとすると難しいかもしれませんが、ブレーキが効かずに滑るということは覚えておきましょう。

トラックにおけるフェード現象の特徴

トラックは乗用車に比べて車体が重く、積載量も多いことからブレーキシステムに大きな負荷がかかります。また、移動距離も長くなりやすいため、ブレーキを繰り返し利用します。そのため、一般的な自動車と比べてフェード現象が発生しやすいです。さらに、トラックは車体の大きさから重大事故につながる可能性が高いといった特徴も持っています。

フェード現象の原因と影響

フェード現象は様々な理由から生じます。そして、フェード現象を防ぐためにはどのような理由で生じているのかを認識しておく必要があります。ここで、フェード現象が起こる主な原因とどのようなリスクが生じるのかを確認しておきましょう。

主な原因とそのメカニズム

フェード現象は主に3つの理由から発生します。

・熱による摩擦材の劣化
ブレーキを繰り返し使用すると摩擦材の温度が上昇します。そして、摩擦材の耐熱温度を超えると、摩擦材が分解・摩耗し、摩擦係数が低下し、フェード現象が起きます。こちらは最も一般的なフェード現象の原因です。メカニズムは下記のようになっています。

1.ブレーキパッドとローターの摩擦により熱が発生
2.熱が摩擦材に蓄積
3.摩擦材の耐熱温度を超えると、摩擦材が分解・摩耗
4.摩擦係数が低下
5.制動力が低下(フェード現象)

・ブレーキパッド表面の油膜形成
ブレーキパッド表面に油膜が形成されると摩擦係数が低下し、制動力が低下します。この油膜はブレーキパットとローターが摩擦することで出てくる粉から形成されます。メカニズムは下記のとおりです。

1.ブレーキパッドとローターの摩擦により油膜が形成
2.油膜が摩擦係数を低下
3.制動力が低下(フェード現象)

・ブレーキオイルの劣化
ブレーキオイルはブレーキシステム内の圧力を伝達する役割を果たします。そのため、ブレーキオイルが劣化してしまうと圧力を伝達する能力が低下し、制動力が低下します。メカニズムは下記のとおりです。

1.ブレーキオイルが高温にさらされる
2.ブレーキオイルが劣化
3.圧力伝達効率が低下
4.制動力が低下(フェード現象)

フェード現象によるリスク

まず、フェード現象の代表的なリスクは制動距離が大きくなることです。思っているよりもブレーキが効かず、前方車輛に衝突するリスクが生じます。また、制動力が低下することからブレーキペダルを奥まで踏み込む必要が出てきます。

そして、フェード現象に気が付かず長い間ブレーキを強く踏み込むことで、ドライバーの疲労やミスにつながるなど人的な影響も出てくるのです。さらに、フェード現象が進行するとブレーキパッドが損傷する可能性もあります。ブレーキパッドが壊れるとブレーキが全く効かなくなる可能性もあるため、フェード現象については頻繁に意識しておかなければなりません。

フェード現象の予防と対策

フェード現象は日ごろからのメンテナンスが大切です。ここで、具体的にどういったメンテナンスをおこなえばフェード現象を防ぐことができるのかを確認し、積極的に取り組んでいきましょう。

基本的な予防策

フェード現象を予防するには、以下の基本的な対策を徹底しましょう。

・ブレーキの過負荷を避ける:急ブレーキや連続的なブレーキ操作は避け、エンジンブレーキを活用する。
・車両整備を怠らない:ブレーキパッドやローターの摩耗・損傷をチェックし、定期的に交換する。
・適切なブレーキオイルを使用する:沸点や粘度などの性能が適切なブレーキオイルを使用する。
・車両の積載量を適切に保つ:過積載はブレーキシステムに負荷をかけるため、適切な積載量を保つ。

これらのようにフェード現象はブレーキ機器のみを確認すれば良いものではありません。その車両を適切に扱えているのかなども確認しておきましょう。また、2番目の車両整備についてはブレーキ機器だけでなく、他の不調についても知ることができる可能性があります。

実践的な対処法とテクニック

もし、フェード現象の兆候を感じた場合、どのような対処を取れば良いのでしょうか。フェード現象かもしれないと感じた際には以下の順番で適切に対処していきましょう。

1.安全な場所に停車する:路肩やパーキングエリアなど安全な場所に停車する。
2.エンジンを停止する:エンジンを停止することでブレーキシステムの冷却を促進する。
3.ブレーキを冷却する:しばらくブレーキを冷却し摩擦材の温度を下げる。
4.エンジンブレーキを活用する:エンジンブレーキを活用して速度を落とす。
5.必要に応じてロードサービスを利用する:自力で対処できない場合はロードサービスを利用する。

これらはあくまでも対処法であり、フェード現象は未然に防ぐことが重要です。知識として知っていてもとっさに行動できるとは限らないため、未然に防ぐことを第一にお考え下さい。

安全運転とフェード現象への対応

前述の理由から、安全運転はフェード現象を防ぐことにもつながります。ここで、安全運転を自然とおこなうためにはどうすれば良いのかを確認してみましょう。また、長距離運転をしなければならない場合、どうすればフェード現象を防ぐことができるのかについてもご紹介しますのでご確認ください。

安全運転のためのヒント

安全運転を心がけるためには以下の事柄を意識しておくことが必要です。

・車間距離を十分に取る:前方の車両との車間距離を十分に取ることで急ブレーキの必要性を減らす。
・速度を控えめにする:安全な速度を心がけ必要以上に速度を上げない。
・下り坂ではエンジンブレーキを活用する:下り坂ではエンジンブレーキを活用し、ブレーキの使用頻度を減らす。
・渋滞では車間距離を広く取る:渋滞では車間距離を広く取り急ブレーキを避ける。
・疲労を感じたら休憩を取る:疲労を感じたら休憩を取り、集中力を維持する。

これらはすぐにおこなえるようになるものではなく、意識をしなくともおこなえるように習慣化を目指さなければなりません。運転前にメモを見返すなど意識できる取り組みを考えてみましょう。

長距離運転とフェード現象への対処

長距離運転ではブレーキをおこなう回数が増えることでフェード現象が発生するリスクが高くなります。そして、長距離運転では安全運転のためのヒントに加え、下記のような点も意識することが重要です。

・出発前に車両点検を行う:ブレーキパッドやローターの摩耗・損傷をチェックし、必要に応じて交換する。
・休憩をこまめに取る:2時間に1回程度は休憩を取り、疲労を溜めない。
・水分補給をこまめに行う:脱水症状を避けるために定期的に水分補給を行う。
・車載工具や予備のブレーキオイルを用意する:万が一フェード現象が発生した場合に備え、車載工具や予備のブレーキオイルを用意する。
・長距離運転に適した車両を選ぶ:長距離運転に適した性能を持つ車両を選ぶ。

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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