次世代ダンプってなに?進化するトラック技術とは

トラック後部の荷台を動かして荷物の積み下ろしが可能な「ダンプ」には、種類や大きさがさまざまあります。今回は進化し、多様性に富んでいるダンプや次世代ダンプについて、特徴や活用場面、技術などを、詳しくご紹介します。

目次

次世代ダンプとは何か?

後ろの荷台を動かし、荷物を積み降ろす役割のダンプ。現在、日本で流通しているダンプの形状は主に次の5種類があります。

 

– リアダンプ

– ローダーダンプ

– 重ダンプ

– 三転ダンプ

– サイドダンプ

 

これらが一般的に運搬・輸送業務で導入されていますが、近年導入され始めている次世代ダンプというのが、最大積載量はなんと10トン超えという「テレスコ式ダンプ」です。このテレスコ式ダンプについて見てみましょう。

テレスコ式ダンプの特徴と技術

次世代ダンプとして導入され始めている「テレスコ式ダンプ」は、基本のダンプ機構に、重なり合ったシリンダーが伸び縮みし、柔軟性に加えて相応の引っ張り強度を持つ「テレスコピックシリンダー」を採用し、耐摩耗鋼板を用い、荷落ちを防ぎ強度を高めたダンプです。

 

また、大容量の荷台ですがハーフパイプ形状ボディーの採用により架装物の軽量化に成功し、それにより最大積載量が多く確保され、大量輸送に貢献しています。さらに足回りにはエアサスペンションとリフトアクスルが採用され、ランニングコストの低減を図ることも可能になっています。

 

テレスコ式ダンプの特徴や技術としては、以下のようなメリットがあります。

 

– テレスコピックシリンダーを採用することにより、ダンプ機構の軽量化と重量のバランス最適化を実現し、10トン以上という高い積載性による大量輸送を可能にする

 

– ボディー材質に高い硬度と強靭性で実績を誇る耐摩耗鋼板「HARDOX」を使用し、曲げ構造のボディー形状で強度を保ちながらも軽量化を実現

 

– エアサスペンション機構によりリフトアップを可能にし、片路空荷輸送時の1軸走行で高速料金のコスト削減やタイヤの摩耗減少によるランニングコストの軽減

 

– 「ダンプ横転警告システム」を装備し、ダンプ角と傾斜角の状態を検知して危険状態を判定した際にキャブ内のモニターに警告表示を行い、安全性を向上

 

このテレスコ式ダンプは、土砂の大量輸送と輸送経済性の確保という、近年需要の大きなそれぞれのニーズを両立させた次世代ダンプとして、注目が高まっています。従来の大型ダンプでも最大6.5トンなので、テレスコ式ダンプの最大積載量10トン超えのすごさは分かるでしょう。

トランスミッションの進化とニーズ

エンジン同様、トラック・ダンプカーにとって心臓部ともいえるトランスミッション。トランスミッションは近年各メーカーが技術力の総力を注ぎ込み開発する非常に重要なパーツであり、中でも高性能なセミオートマ開発を行っています。

乗用車に搭載されているトルコン式ATとは異なるシステムで、トラックやダンプカーの自動変速運行を実現する高性能なセミオートマシステムについて見てみましょう。

トランスミッションの3種類

トランスミッション(変速装置)には、シフトに応じて歯車が組み替えられ、エンジンの駆動力を最適な形で車軸に伝えて走行します。トラックのトランスミッションは、大きく以下の3種類に分けられます。

 

  1. マニュアルトランスミッション(MT):ドライバー自身がすべてのシフトチェンジからクラッチ操作を行うタイプ。シンプルなため多くのトラックに標準採用されているが、操作への慣れは必要。

 

  1. オートマチックトランスミッション(AT):複雑なシフト操作が不要な自動の変速装置。変速の切り替え操作が簡単だが、トラック・ダンプカーには不向きとされてきた。

 

  1. セミオートマチックトランスミッション(AMT):マニュアルとオートマの良い面を合わせもつ。クラッチ操作が不要で走行中のシフトチェンジ操作は不要だが、状況に合わせて変速操作も可能。

 

近年トラック・ダンプカーに採用されているセミオートマ(AMT)は、世界的にもマニュアルトランスミッション(MT)をしのぐ勢いで普及してきています。昨今のAMTはかなり進化し、スムーズな変速を実現。さらに次世代ダンプに搭載されている先進技術の多くが、AMTの制御なくしては成り立たなくなっています。

セミオートマの環境への配慮と持続可能性への効果

セミオートマのトラック・ダンプカーは複雑なクラッチ操作が不要で運転がしやすく、適切なシフト操作で燃費向上が見込めます。オートマ限定免許取得者でも運転可能なため、ドライバー不足の解消にもつながります。

 

また、セミオートマトラックはオートマトラックよりは導入費用や維持費のバランスがよいため、マニュアルのみを扱う業者でも採用しやすくなっています。セミオートマはだれが運転しても安定した燃費消費量が見込めるので、コストなども把握しやすく、導入計画は立てやすくなります。

トラック新車市場と次世代ダンプの影響

日本のトラック新車市場では、燃費効率の向上や環境規制への対応、安全性の高い技術投資が進み、最先端技術が搭載された次世代トラックが頻繁に登場しています。次世代ダンプの導入が業界にもたらす影響と将来性について見てみましょう。

業界への影響と将来性

日本のトラック業界は2021年に再び成長に転じ、業界規模は約4.8兆円に。近年ではSDGs推進をする環境負荷の軽減のためにも、次世代自動車の開発が急がれています。世界のダンプトラック市場規模も2026年までに108億3,000万米ドルに達すると予測され、特にアジア太平洋地域では次世代ダンプの導入増加が収益成長を補っています。

 

2024年1月にはHW ELECTRO株式会社と新明和工業株式会社の協業で、「社会貢献」と「環境問題」の視点から電動ダンプカー「ELEMOダンプ」が発売開始されました。電動モーターと電気的安全性の確保により、CO2を排出しない作業を実現。自治体での清掃車仕様や多目的仕様の展開が期待されています。

 

次世代のテレスコ式ダンプは10tダンプ3台分に迫る最大積載量28000kg前後を確保可能で、ドライバー1名で2〜3名分の積み荷が運べます。増加傾向の物流量に限られた人数で対応するため、次世代ダンプでの運搬や荷役作業の機械化によりドライバーの負担軽減が期待されます。これにより「ダンプ・トラックドライバー業務はきつい」というイメージを払拭でき、ドライバー不足解消につながると期待されています。

また、電気・燃料電池車両の導入によるCO2排出量の削減も注目されていますが、トラック・ダンプカー用の充電・水素スペースの確保が課題となっています。

 

このように、次世代のダンプカーやトラックは、CO2排出量の削減、人的資源の負担最小化などにより、新たな社会的価値を提供し、運輸業界の質の向上に貢献しています。

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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