この記事を読まれている方の中には「玉掛け作業における合図の重要性とその方法について知りたい」「玉掛け作業に必要な資格、安全上の注意点について知りたい」と思われている方も多いのではないでしょうか?
この記事を最後まで読んでいただければ、上記の悩みについて解決できるかと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。
玉掛け作業とは何か?
まずは、玉掛け作業の定義と、荷物を安全に吊り上げるための手順について解説します。
玉掛け作業の目的
玉掛けは、建設現場や工場などで、クレーンで重い荷物を吊り上げる際に、荷物をフックに掛けたり、外したりといった作業を行うことです。
後に詳しく解説しますが、作業を行うためには資格が必ず必要になります。
なぜ資格が必要なのか?それは非常に重い荷物を高い場所へ持ち上げるため、大きな危険を伴う作業になるからです。作業に使うロープの長さや強度、クレーンで吊り上げた時のバランスや角度は適正かなど、作業を実施する上で安全性を確保するためには、経験や知識が求められます。
玉掛け作業の流れ
玉掛け作業の流れは、以下の通りです。
- STEP1:クレーンを呼ぶ
– クレーンを利用したい位置に呼びます。
– 合図は代表者1人で行い、複数人で行うと混乱を招く可能性があります。
– クレーン運転者に明確に伝わるよう、大きく明確な動作で合図します。
– 合図が不明瞭だと、誤操作による接触や激突の危険性があります。
- STEP2:玉掛けを行う
– 重心がズレて荷崩れしないよう、2方向から吊り上げる荷の重心を確認しながら玉掛けします。
– クレーンのフックと重心目印の位置を確認し、重心の真上にフックがあるか確認します。
– 玉掛けする角度が大きいとワイヤが切断される可能性があるため、30~60度以内で玉掛けします。
- STEP3:ワイヤを張る
– 急にクレーンがワイヤを巻き上げると、荷とワイヤの間に手を挟む危険があるため、微動巻き上げで介錯ロープを付けて実施します。
– 介錯ロープは吊り荷端部に付け、安全な位置で合図者が誘導しながら使用します。
- STEP4:地切りを行う
– 荷の重心がズレていると、荷が揺れて周囲の物や人に激突する恐れがあります。
– 補助者を安全な場所に避難させ、微動巻き上げで地切りを行います。
- STEP5:巻き上げ
– 荷締めが足りない場合、荷崩れして荷が落下する可能性があるため、介錯ロープを使用し誘導します。
– 巻き上げる際は、荷から3m以上の距離を取り、自身の安全を確保します。
- STEP6:横移動
– 荷を横に移動する際は、周囲の障害物との接触に注意し、介錯ロープで誘導します。
- STEP7:降ろして荷解きする
– 作業員の巻き下げ合図で荷を降ろし、荷解きは2人で行います。
玉掛け合図の種類と具体的な方法
次に、玉掛け作業で使用する主要な合図の種類と、それぞれの方法について解説します。
手の合図:基本動作とその意味
手の合図は、玉掛け合図において最も基本的な方法です。親指と小指を使用したり、手を挙げて指示したりなど、クレーンオペレーターや作業員同士とコミュニケーションを取るために使用されます。
具体的な動作と意味は、以下の通りです。
– 片手を高くあげる:呼び出す
– できるだけ近くで人差し指で指す:位置を指示する
– 手のひらを上にし、指先を軽く振る→腕を水平状態から、手の掌を上にし、上方へ振る:徐々に巻き上げる
– 片手を挙げ輪を描く:急激に巻き上げる
– 腕を水平状態から、手の掌を下にし、下方へ振る:巻き下げ
– 腕を水平に伸ばし、移動方向に動かす:水平移動
– 小指で巻き上げ・巻き下げ・水平移動の合図を行う:微動
– 親指を上にして、その他の指を握り、水平から上げる:ジブ上げ
– 親指を下にして、その他の指を握り、水平から下げる:ジブ下げ
– 手をグーに握り高く上げる:停止
– 手を広げ高く上げ、大きく左右に振る:急停止
– 挙手の礼もしくは、頭の上で両手を交差させる:作業完了
笛・旗・無線:それぞれの合図と活用ポイント
笛
笛は、吹く間隔などで合図を送りますが、聞き間違いによる事故の危険性があるため、手信号の補助として使用されます。
合図内容
– 長く一声:呼び出し
– 短く間を置き二声:巻き上げ
– 短く間を置き三声:巻き下げ
– 指示の前に短く一声:微動
– 少し長めに強く一声:停止
– 短く連続的に:急停止
旗
旗は、広い場所や距離がある場合に有効で、旗の上下や手信号と組み合わせて使用します。
合図内容
– 高く旗を上げる:呼び出し
– 荷の近くに移動し旗を示す矢印:位置の指示
– 旗を上げて輪を描く:巻き上げ
– 旗を水平にし、左右に旗を振る:巻き下げ
– 頭部に旗を乗せ、上に上げる:ジブ上げ
– 頭部に旗を乗せ、下に下げる:ジブ下げ
無線
無線は、広い建設現場や高層建築などで使用されます。「コ」はクレーンフック、「オヤ」はクレーンジブを指します。
合図内容
– (コ)ゴーヘイ:巻き上げ
– (コ)スラー:巻き下げ
– オヤゴーヘイ:ジブ上げ
– オヤスラー:ジブ下げ
– チョイ、チョイチョイ:少し移動
– 伸ばし(縮め):伸縮
玉掛け合図で必要な資格と安全対策
最後に、玉掛け作業に必要な資格と、作業中の安全対策について解説します。
玉掛けに必要な資格とその取得方法
玉掛け作業では、合図者には特別な資格は不要ですが、実際に玉掛けを行う作業員には、吊り上げ荷量に応じて以下の資格が必要です。
– 1トン未満の場合:玉掛け特別教育
– 1トン以上の場合:玉掛け技能講習
玉掛け特別教育
1トン未満の荷物を扱う際に必要な知識と技術を学ぶ講習で、18歳以上であれば誰でも受講できます。講習会場やWeb講座で受講でき、クレーンや力学の知識、玉掛け方法、関係法令などを学びます。費用は2万円弱、時間は9時間程度で、2日間で取得できます。
玉掛け技能講習
1トン以上の荷物を扱う際に必要な知識と技術を学ぶ講習で、18歳以上であれば誰でも受講できます。講習会場で受講でき、特別教育の内容に加え、質量目測、用具選定、基本合図、実技試験などがあります。費用は2~4万円程度、時間は15~19時間程度で、3日間で取得できます。
作業中の安全対策と事故防止のポイント
クレーン操縦者
– 合図が不明瞭な場合、複数人からの合図、指名者以外からの合図を受けた場合は、作業を中止します。
– 作業前に周囲を確認し、地盤が柔らかい場所には入らないようにします。
– 吊り荷の下に作業員が入った場合は、直ちに作業を中止します。
– 荷重超過が予測される場合は、作業を中断します。
– 合図を復唱し、間違いがないか確認します。
合図者
– クレーン操縦者から確認できる位置で合図します。
– 玉掛けの経路や着地場所を確認してから作業を進めます。
– 吊り荷の状態を常に確認し、不安定な場合は作業を中止します。
– クレーン操縦者に合図の復唱を求めます。
過去に起きた事故事例
事例:玉掛けワイヤロープ切断により、吊り荷が落下し死亡
強度の足りないロープの使用、不適切な玉掛け方法、定格荷重以上の荷の吊り上げなどが原因で、ワイヤロープが切断し、吊り荷が落下して死亡事故が発生しました。
この事故を防ぐためには、適切なロープの選定、定格荷重の厳守、吊り荷の下に入らないなどの対策が重要です。
この記事では、玉掛け作業の流れ、合図方法、資格、安全対策について解説しました。玉掛け作業は、正しい知識と技術を身につけ、安全に注意して行うことが重要です。この記事を参考に、安全な玉掛け作業を行ってください。