特定技能「自動車運送業」の受入れガイド 〜 制度の仕組みから採用実務まで

2024年3月の閣議決定で、自動車運送業が特定技能の対象分野に追加されました。トラック・バス・タクシーの3区分が対象で、同年12月から正式に受入れが始まっています。

本記事では、制度の全体像から本人要件・企業要件、採用後の実務フローまでを整理しました。「結局うちの会社は何をすればいいのか」が分かる内容にまとめています。

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自動車運送業が特定技能に加わった背景 | なぜ今、外国人ドライバーなのか

制度が追加された経緯と、トラック・バス・タクシー3区分それぞれの位置づけを押さえておきます。受入れ開始までのタイムラインも含めて整理しました。

制度追加の経緯と受入れ開始までのタイムライン

2024年3月29日、政府は特定技能制度の対象分野に「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」の4分野を新たに追加する閣議決定を行いました。自動車運送業界にとっては、外国人ドライバーを正面から受け入れる初めての制度的な道筋ができた形です。

背景はシンプルで、業界全体の人手不足が限界に近づいていたことに尽きます。政府の推計では、2029年度までにバス・タクシー・トラックのドライバーが合計で約28万8,000人不足する見通しです。2024年問題による時間外労働規制の強化も重なり、DX化や国内採用の努力だけではどうにもならない。その現実が制度追加の判断につながりました。

気をつけたいのは、自動車運送業で受入れ可能なのは特定技能1号のみという点です。特定技能2号は対象外なので、通算5年の在留期限があります。閣議決定から実際の受入れ開始までにはタイムラグもありました。

上乗せ基準告示が施行されたのは2024年12月19日で、ここからようやく正式に受入れが可能になっています。特定技能評価試験の開始も2024年12月、協議会の加入受付は2025年1月、特定活動ビザの申請受付は2025年2月と、制度の実運用は段階的に立ち上がってきました。

5年間の受入れ見込数の上限は24,500人。28万人超の不足に対してこの数字ですから、あくまで「補完的な手段」です。これだけで人手不足を解決できるわけではない、という前提は押さえておいてください。

トラック・バス・タクシー 3区分の違いを整理する

自動車運送業の特定技能は、トラック・タクシー・バスの3つの業務区分に分かれています。どの区分も運行管理者等の指導・監督のもとで業務にあたる点は共通ですが、求められる免許の種類や日本語要件、特定活動の在留期間がそれぞれ違います。

トラック区分は、貨物自動車運送事業における運転と、運行前後の点検、乗務記録の作成、荷崩れを起こさない積付けなどが業務範囲です。必要な免許は第一種運転免許で、日本語要件はN4以上。3区分のなかでは最もハードルが低い設定になっています。

乗客対応がないぶん、日本語レベルが抑えられている形です。タクシー区分は、一般乗用旅客自動車運送事業での運転と乗客対応が中心。バス区分は、一般乗合・一般貸切・特定旅客の各事業でのバス運行が対象です。

タクシーとバスはいずれも第二種運転免許が必要で、日本語要件もN3以上と高めに設定されています。乗客の安全に直結する業務であり、接客対応も含まれるので、トラック区分との差は当然のことです。

免許取得までの準備期間として認められる「特定活動」の在留期間も区分ごとに異なります。トラックは6ヶ月、タクシーとバスは1年。いずれも更新はできません。第二種免許の取得にはそれなりの時間がかかるため、タクシー・バスのほうが長く設定されています。

特定技能で求められる本人要件と企業要件

外国人本人が揃えるべき試験・免許・日本語レベルと、受入れ企業側に求められる認証や協議会加入の要件を分けて説明します。とくに企業側の上乗せ要件は準備に時間がかかるため、早めの確認が欠かせません。

外国人本人に必要な試験・免許・日本語レベル

外国人本人がクリアすべき要件は大きく3つ。技能試験、日本語試験、日本の運転免許の取得です。この3つがすべて揃わないと特定技能1号の在留資格は取得できません。

技能試験は「自動車運送業分野特定技能1号評価試験」で、トラック・タクシー・バスの区分ごとに実施されます。試験言語は日本語、学科試験と実技試験の両方があり、実施主体は一般財団法人日本海事協会(ClassNK)です。試験の最新スケジュールは日本海事協会の特定技能試験ポータルサイトで確認してください。

日本語試験は、トラック区分なら日本語能力試験(JLPT)N4以上またはJFT-BasicのA2相当以上、タクシー・バス区分はN3以上またはB1相当以上が求められます。技能実習2号を良好に修了した人は日本語試験が免除されますが、自動車運送業には技能実習の区分が存在しないため、他分野の技能実習修了者が対象です。

運転免許は、日本国内で有効な免許を取得しなければなりません。海外の免許をそのまま使うことはできず、外国免許切替(外免切替)か日本の教習所での取得が必要です。

トラックは第一種運転免許、タクシー・バスは第二種運転免許。第二種免許の受験には原則として普通免許等の運転経歴が通算3年以上必要ですが、2022年5月施行の改正道路交通法により、受験資格特例教習を修了すれば「19歳以上・経歴1年以上」でも受験できるようになっています。海外での運転経歴も算入されるので、候補者の経歴は事前にしっかり確認しておいてください。

18歳以上であることは当然の前提ですが、免許の種類で年齢要件が変わります。中型免許は20歳以上、大型免許は21歳以上。外免切替でも同じ年齢要件が適用されるため、若い人材の採用では注意が必要です。

受入れ企業側の認証取得・協議会加入・雇用条件

受入れ企業に求められる要件は、他の特定技能分野の共通要件に加えて、自動車運送業固有の上乗せ要件があります。ここが準備不足になりやすいポイントです。

前提として、道路運送法第2条第2項に規定する自動車運送事業を経営していること。日本標準産業分類でいう「道路旅客運送業」または「道路貨物運送業」に該当する事業者であることが必要です。

上乗せ要件で最も重要なのが、「運転者職場環境良好度認証制度」(通称:働きやすい職場認証制度)の認証を受けていることです。一般財団法人日本海事協会が審査・認証を行う制度で、一つ星から三つ星までのランクがあります。

トラック区分に限っては、全日本トラック協会が認定する「安全性優良事業所」(Gマーク)の保有でも代替可能です。トラック事業者は「働きやすい職場認証」か「Gマーク」のどちらかがあればOK。一方、タクシーとバスの事業者は、働きやすい職場認証の取得が必須です。

認証を持っていない事業者は、取得手続きから動く必要があります。審査料や申請期間は年度ごとに変わる可能性があるため、日本海事協会の公式サイトで最新の申請案内書を確認してください。

参考として、過去の審査料は電子申請で3万円(紙は5万円)程度、営業所追加ごとに加算がある仕組みでした。有効期間は原則2年間で、取得まで一定の時間がかかります。外国人採用を検討し始めた段階で早めに動くのが現実的です。

国土交通省が設置する「自動車運送業分野特定技能協議会」への加入も求められます。2025年1月17日から加入受付が始まっており、国土交通省のウェブサイトからフォームで申請します。

事務局での内容確認に1ヶ月程度かかるため、在留資格申請のスケジュールから逆算して早めに手続きしてください。登録支援機関に支援計画の実施を委託する場合は、その登録支援機関も協議会に加入済みでなければなりません。

雇用形態は直接雇用のみ。派遣は認められていません。報酬額や労働時間は日本人と同等以上であること、5年以内に出入国管理法や労働関連法令の違反がないことなど、特定技能制度の共通要件も当然に適用されます。

採用から乗務開始までの流れ

自動車運送業の特定技能は、採用が決まってもすぐにハンドルを握れるわけではありません。特定活動での入国から免許取得、在留資格の切替え、初任研修、届出・支援計画まで、乗務開始に至るステップを順を追って見ていきます。

特定活動での入国から運転免許取得までの手順

自動車運送業の特定技能が他分野と大きく違うのは、採用が決まってもすぐに乗務できない点です。日本の運転免許を持っていない外国人を海外から呼ぶ場合、免許取得のための在留期間が必要になります。

流れはこうです。まず、採用候補者が特定技能評価試験と日本語試験に合格する。ただし、この時点ではまだ日本の運転免許がありません。

そこで、受入れ企業との雇用契約を前提に、在留資格「特定活動」(特定自動車運送業準備)で入国します。この特定活動の申請受付は2025年2月17日から始まっています。

特定活動の在留期間中に、外免切替または教習所での免許取得を進めます。外免切替とは、本国で取得した運転免許を日本の免許に書き換える手続きのこと。

各都道府県の運転免許試験場で、書類審査、知識確認(学科試験)、技能確認(実技試験)を受けます。本国の免許を取得してから通算3ヶ月以上その国に滞在していた実績が要件なので、候補者には事前に確認しておいてください。

タクシー・バス区分の場合は、外免切替で第一種免許を取得したうえで、さらに第二種免許の試験に合格する必要があります。第二種免許は原則として運転経歴3年以上が受験要件です(特例教習修了で1年以上に緩和あり)。

海外での経歴も含められます。福岡県では英語・中国語・ベトナム語・ネパール語での受験が可能になっており、今後他の都道府県でも多言語対応が広がる見込みです。

特定活動の期間中は、免許取得の手続きに加えて、受入れ企業での車両清掃などの関連作業に従事できます。ただしドライバーとしての乗務はできません。この期間は特定技能1号の通算在留期間(5年)には算入されない扱いです。

免許を取得できたら、在留資格を「特定活動」から「特定技能1号」へ変更する申請を行います。すでに日本国内で有効な運転免許を持っている外国人(永住者や定住者からの転職など)は、特定活動を経ずに直接特定技能1号の申請が可能です。

入社後の研修・届出・支援計画の進め方

運転免許を取得し、特定技能1号への在留資格変更が完了したら、いよいよ乗務に向けた準備です。

タクシー・バス区分では、乗務開始前に「新任運転者研修」の実施が義務づけられています。旅客自動車運送事業運輸規則に基づく研修で、乗客対応の基本、安全な運転技術、業務用車両を運転する際の心構えなどを教育する内容です。

トラック区分の場合は、国土交通省告示第1366号に基づく「初任運転者研修」の実施が求められます。座学と実技で合計35時間以上の指導が必要になるので、スケジュールには余裕を持たせてください。

研修と並行して、届出や支援計画の実務も進めます。特定技能外国人を受け入れた場合、出入国在留管理庁への各種届出が必要です。2025年4月の入管法施行規則改正により、定期届出の頻度はそれまでの四半期ごと(年4回)から年1回に変更されました。

対象年度(4月〜翌年3月)の受入れ・活動・支援実施状況を、翌年4月1日〜5月31日の間にまとめて提出する形です。

頻度が減ったぶん1回あたりの添付書類が増えているので、登記事項証明書や決算関係書類など、年度末に向けて計画的に準備しておく必要があります。届出を怠ると受入れ企業としての適格性に関わりますから、担当者を決めてスケジュール管理を徹底してください。

1号特定技能外国人支援計画の策定・実施も必須です。義務的支援として定められているのは、事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居の確保支援、生活オリエンテーション、日本語学習の機会提供、相談・苦情対応、日本人との交流促進、転職支援、定期面談の実施。

定期面談は3ヶ月に1回以上の実施が引き続き求められており、2025年4月からはオンラインでの実施も認められるようになりました。自社で支援対応が難しければ登録支援機関に委託できますが、委託先も協議会に加入済みであることが条件です。

現場での運用として、最初から長距離や難易度の高いルートを任せるのは避けてください。近距離の配送や比較的シンプルな業務からスタートして、段階的にステップアップさせるのが安全面でもモチベーション面でも効果的です。日本の交通ルールや道路標識への理解が不十分な段階で無理をさせると、事故リスクが一気に高まります。

受入れ準備で見落としやすいポイント

制度が動き始めたばかりのいま、現場では誤解や勘違いがまだ多く見られます。つまずきやすい点と、最新情報を追うための情報源をまとめました。

現場でよくある誤解と対処法

制度が始まったばかりなので、現場での誤解や混乱はまだ少なくありません。よく見かけるものを整理しておきます。

「閣議決定されたからすぐに受入れ可能」という誤解が最も多い。実際には閣議決定から上乗せ基準告示の施行まで約9ヶ月かかっており、協議会加入や特定活動ビザの申請受付はさらに後でした。制度の「決定」と「運用開始」は別物です。

「特定技能だから即戦力としてすぐ乗れる」という期待も危ない。他分野の特定技能と違い、自動車運送業では日本の運転免許取得という独自のハードルがあります。外免切替がスムーズにいけば数ヶ月で済みますが、実技試験で不合格になったり、教習所に通うケースではもっとかかります。

特定活動の在留期間内(トラック6ヶ月、タクシー・バス1年)に免許が取れなければ、在留資格の延長はできません。更新不可です。この期限を甘く見て採用計画を立てると、取り返しがつかなくなります。

Gマークがあれば働きやすい職場認証は不要、という点はトラック区分に限った話です。タクシーやバスの事業者がGマークで代替することはできません。逆にトラック事業者であれば、Gマークさえ持っていれば認証取得の手間を省けるので、すでに取得済みの会社はそのぶん有利です。

特定技能2号への移行を期待する声もありますが、現時点で自動車運送業は特定技能2号の対象外です。通算5年の在留期限がある前提で雇用計画を組んでください。

制度改正の最新情報をどこで追うか

この制度はまだ動き始めたばかりで、運用面の変更や追加は今後も続きます。担当者として定期的にチェックすべき情報源をまとめておきます。

最も信頼できる一次情報は、国土交通省の「自動車運送業分野における特定技能外国人の受入れについて」のページです。分野別運用方針や運用要領の最新版、Q&Aがここに集約されています。分野別運用方針は2026年1月23日に改定されていますので、古い資料を参照している場合は差し替えてください。

特定技能評価試験の日程や申請方法は、一般財団法人日本海事協会のポータルサイトに掲載されています。試験の実施頻度や開催地域は今後広がっていく可能性があるので、候補者の受験タイミングに合わせて定期的に確認しておくと安心です。

協議会への加入手続きや届出様式の変更も随時あります。2025年10月にはフォームのURLが変更され、旧URLをブックマークしていた事業者が申請できなくなるケースが実際に起きました。国土交通省からのメール連絡が確実に届くよう、登録メールアドレスの管理にも気を配ってください。

出入国在留管理庁のサイトでは、特定技能制度全般の最新情報が確認できます。2025年4月の定期届出の年1回化のように、他分野と共通の制度変更が自動車運送業にも影響するケースがあるので、自分の分野だけでなく制度全体の動向にもアンテナを張っておくことが大事です。

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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