トラックは重量があって物も積載するので、乗用車等に比べると燃費が悪く、燃料も大量に消費します。ですから、燃費が少しでも改善されると経済性や環境性に与える影響も大きいです。ここではトラックの燃費改善について紹介します。
トラックの燃費を理解する
ではトラックの燃費はどの程度なのでしょうか。まずはトラックのサイズ別の燃費値等についてお話します。
自動車燃費一覧によるトラックの燃費
国土交通省は、燃費性能の高い自動車の普及を促進するため、「自動車の燃費性能の評価及び公表に関する実施要領(平成16年国土交通省告示第61号)」に基づき、自動車の燃費性能を評価し、毎年「自動車燃費一覧」として公表しています。
「自動車燃費一覧」には燃費性能等について、各メーカー別・車種別・測定モード別に掲載されています。例えば2022年度に新車販売ランキングの乗用車部門で1位になったトヨタの「ヤリス」は、型式にもよりますが1.49L、ガソリン車だと燃費値は20km/L程度。
ヤリスと同じトヨタの乗用車で乗用車の中では比較的大きい「クラウン」1.986L、ガソリン車だと燃費は15km/L程度で、軽油燃料のディーゼル車では、例えばマツダの「CX-5」が1.997Lだと燃費は14 km/L程度。
トヨタの「ランドクルーザープラド」2.693Lだと燃費は9 km/L程度です。
一方、2022年に普通トラック年間販売台数で日野自動車を抜いて首位の座についた、いすゞ自動車の大型トラック「ギガ」が9.839Lで、ディーゼルエンジン車(軽油燃料)の燃費は4.5 km/L程度。
いすゞ自動車に抜かれるまで9年連続首位だった日野自動車の大型トラック「プロフィア」は12.913Lで、ディーゼルエンジン車(軽油燃料)の燃費は3 km/L程度となっています。
ここで紹介したトラックは大型のものですが、このようにトラックの燃費は桁違いに悪いことがわかります。
種類別トラック燃費の標準値
トラックは道路運送車両法の保安基準で、大きさ、最大積載量、車両総重量等により小型、中型、大型に分類されています。最大積載量に限って見ると、小型は2~3t以下、大型は5t以上、中型はどちらにも属さないものとなります。
種類別のトラックの燃費のおおむねの値は、小型は3 km/L程度、中型は7 km/L程度、大型4km/L程度といったところです。
トラックの燃費計算方法
トラックの燃費計算方法には「満タン法」と「給油ランプをもとに計算する方法」の2種類があります。各々の方法のメリット、デメリットを比較してみます。
満タン法とは
満タン法は、給油時に満タンまで燃料を入れ、次の給油時に再び満タンになるまで入った燃料の量と走行距離から燃費を計測する方法です。例えば、トリップメーターの走行距離が100kmでガソリン給油量が10Lの場合は『100÷10=10』となり、燃費は10km/Lとなります。
この方法のメリットは燃費の計算方法で一番わかりやすいこと、デメリットは給油を行う人によって「満タン」には差があるために、完全な方法ではないことです。
給油ランプをもとに計算する方法
この方法は、燃料が減ってきて給油ランプが点灯したら給油して、再度給油ランプが点灯したら給油して、といったことを何度か繰り返し、給油量と走行距離の平均値を算出する方法です。
例えば、ランプが点灯、10L給油、100km走行、ランプ点灯、10L給油、80km走行、ランプ点灯したとすると、1回目給油の燃費は10km/L、2回目給油の燃費は8km/Lなので、2回を平均して燃費は9km/Lと計算する方法です。
この方法のメリットは、例えば、車に燃料を積んで走行しランプが点灯すればすぐに停止して給油するという方法を採ることができれば、比較的正確に測定することができることです。デメリットは、ランプが点灯した時にすぐに給油をするということができなければ測定するたびに誤差がでてくるということです。
効果的なトラックの燃費改善法
平成24年に警察庁、経済産業省、国土交通省、環境省からなるエコドライブ普及連絡会がまとめた「エコドライブ10のすすめ」には、特にトラックに限ってはいませんが、燃費改善方法として10項目を掲げています。次に、燃費改善方法を運転技術とメンテナンスの面から説明します。
燃費に効く運転方法
・発進するときは、穏やかにアクセルを踏んで発進することを心がけるだけで10%程度燃費が改善します。
・走行中は一定の速度で走ることを心がけます。ムダな加速・減速は市街地では2%程度、郊外では6%程度も燃費が悪化します。
・信号が青から赤に変わるなどして停止することがわかったら早めにアクセルから足を離しエンジンブレーキを作動させます。それにより2%程度燃費が改善します。また下り坂ではフットブレーキではなくエンジンブレーキを活用します。
・暖房のみ必要なときはエアコンスイッチをOFFにします。エアコンスイッチをONにしたままだと12%程度燃費が悪化します。また冷房が必要なときは車内を冷やしすぎないようにします。
・駐停車の際はアイドリングはやめます。10分間のアイドリングで130cc程度の燃料を消費します。また現在の車では基本的に暖機運転は不要ですのでエンジンをかけたらすぐに出発しましょう。
・出かける前に行き先やルートをあらかじめ確認し時間に余裕をもって出発します。渋滞を避けスムーズに走行すれ燃費と時間の節約になります。例えば1時間のドライブで道に迷い10分間余計に走行すると17%程度燃料消費量が増加します。
定期的なメンテナンスと燃費
・タイヤの空気圧チェックを習慣づけます。タイヤの空気圧が適正値より不足すると市街地で2%程度、郊外で4%程度燃費が悪化します。
・エンジンオイル・オイルフィルタ・エアクリーナエレメントなどを定期的に交換する。これによっても燃費が改善します。
荷物が燃費に与える影響
トラックは通常荷物を載せて走行します。荷物の重量がトラックの燃費に及ぼす影響と荷物の適正な管理方法についてお話します。
車の燃費は荷物の重さに大きく影響されます。例えば100kgの荷物を載せて走ると3%程度も燃費が悪化します。また、車の燃費は空気抵抗にも敏感ですので、荷物が荷台からはみ出ていたり外装品を付けていたりすると燃費が悪くなります。
車に載せておく必要のない荷物は車からおろし、車の空気抵抗を増加させるような外装品等は使用しないときには外します。
燃費改善をした場合の長期的な効果
車の燃費を改善すると燃料が今までよりも少なくて済みますので出費を抑えることができたりします。ここではその他燃費改善がもたらす効果について説明します。
経済的なメリット
燃費が改善すれば今までよりも燃料が少なくて済みますので経済的にメリットがあります。燃費改善の動きが一部だけではなく全体的に広まれば、個人の経済メリットだけではなく省エネルギーな社会構造に転換されエネルギー自給率の向上等社会経済的なメリットが創出されます。
環境・車両寿命への影響
燃費の改善は、経済的なメリットのほかにも環境や車両寿命等にも大きな影響をあたえることになります。燃費改善のために急発進や急停止、アイドリングを減らせば、燃料燃焼による二酸化炭素の排出を抑制することができますし、道路交通の安全も図られます。
また、燃費改善のためのそのような行動をとれば、車への大きな負荷を減らすこともでき車両の部品あるいは車両そのものの寿命を長くすることができます。
少し古いデータになりますが、平成16年の交通エコロジー・モビリティ財団による「エコドライブ推進方策に関する調査報告書」によりますと、エコドライブを実践する理由は、1位が「環境によいから」の 75.2%、2位が「省エネルギーのため」が 74.1%、以下、「出費を抑えるため」(41.7%)、「安全のため」(38.2%)、「車両(部品)を長持ちさせるため」(21.2%)と続いています。