トラック運転手にとって、運送業の2023年問題や遵守すべき法律、福利厚生面を考えることは重要なポイントです。実際に「今後の運送業の未来」について深く考えている方は意外と多くありません。「危機的な状況になったら考える」では、人生の判断を間違えてしまいます。
そこでこの記事では、トラック業界における労働法律や実情、貨物自動車運送事業法、労働問題について解説します。トラック運送業に関係する法律的な知識を身につけたい方は、是非参考にしてみてください。
トラック運転手の実情
労働基準法に定められているトラック運転手の労働時間や、休息時間、連続運転時間の制限、働き方改革が、トラック運転手にどのような影響を及ぼしているかを詳述します。
労働基準法
トラック運転手として仕事を行う際には「労働基準法」を理解する必要があります。
トラック運転手の労働条件は始業時間から終業時間までの時間(労働時間+休憩時間)の合計が1ヶ月ごとに293時間までと定められています。293時間を超える月は1年のうち6回までです。
ただし、労働時間が293時間を超えた場合でも1ヶ月の拘束時間は320時間以内と定められており、1年の拘束合計時間は3,516時間以内になります。
また、勤務終了時から次の勤務までの休息時間は「8時間以上」開けなければなりません。
1日の中でトラック運転手が最大働ける上限は「13時間」となっており、延長する場合でも「最大16時間以内」です。
1日の拘束時間が「15時間」を超える回数は、1週間ごとに2回までとなります。
トラック運転手の働き方改革
将来的なトラック運転手の不足が問題視される中、トラック業界も一般企業と同じく「働き方改革」を急速に推進しています。
現段階の働き方改革では、残業が月45時間以内(年360時間以内)、45時間を超える残業は「1年の中で6回」までと定められました。
推進されている働き方改革を超える労働時間で勤務した場合、企業に対して罰則付きの法改正が実施されます。
運送業者が遵守すべき法律
次に、「貨物自動車運送事業法」の主要な規定と違反時の罰則について解説します。
また、他の関連法(道路運送車両法、都市計画法など)も併せて説明しています。
貨物自動車運送事業法
貨物自動車運送事業法とは、貨物自動運送事業の運営を正しく実施できることを目的に定められた法律のことです。
貨物自動車運送事業法は以下6つの条件を設けています。
・営業所
・車両数
・車庫
・休憩、仮眠施設
・運送賃金
それぞれ詳しく解説します。
営業所
営業所については以下3つの条件が設けられています。
・建物が建築基準法や都市計画法、農地法などの法令に反していない
・営業所として適切な広さを確保していること
・借入で事業を行う場合、最低1年以上の「使用権限」を持っている事
運送事業を実施する場合、多くの貨物を収容する必要があります。営業所として事業を行う場合、上記条件を満たすことは必須条件です。
車両数
車両数については、営業所ごとに「5台以上の車両」を用意しなければいけません。
車両数は「営業所を設置する最低条件」です。実際の業務では、安定した収益を確保するためにも、5台以上のトラックが必要になる可能性が高いでしょう。
車庫
車庫についても「都市計画法」と「建築基準法」「農地法の法令」に違反しないことが条件となります。さらに保有するトラックを収納できるスペースの確保や車庫の立地が「営業所から10km以内」である必要もあります。
東京特別区内や横浜、川崎などの都心部については「営業所から20km以内」という条件となっています。
他にも、以下の2つの条件があります。
・前面道路幅が6.5m以上
・営業所が借入で事業を行う場合、1年以上の使用権限が必要
休憩、仮眠施設
トラック運転手が休憩、仮眠する施設を設けている場合にも「都市計画法」「建築基準法」「農地法」に触れないことが条件です。仮眠する広さは、1人あたり「2.5㎡以上」のスペースが必要です。
休憩、仮眠施設は原則「営業所や車庫に併設していること」が設置条件となっています。
さらに、施設を借入している際には「1年以上の使用権限」が必要です。
運送賃金
運送賃金は「申請直前の預金残高証明書に記載された金額が100%以上である事」が条件です。
事業開設の許可が下りるまで、資金を口座に入れた状態にしておく必要があります。
資金の目安としては、人件費や燃料費、修繕費、タイヤチューブ費など、運送業務に関係する「2ヶ月分の費用」を保有しておくと安心できるでしょう。
運送業者が知っておくべきその他の法律
その他、運送業者が知っておくべき法律は2つあります。
道路走行時に関する決まり
道路を走行する際には「道路交通法」が定められています。道路交通法とは、道路走行時に安全と円滑を図るために制定された法律のことです。道路交通法に違反すると、懲役刑や罰金刑が科される可能性があります。
事故発生時の決まり
トラック事故発生時には、「自動車事故報告規則」を作成する必要があります。
自動車事故報告規則を作成し、国土交通省に提出することが義務付けされています。報告書の提出を怠った場合、役所から指導や業務停止命令が下る可能性も考えられます。
トラック運転手の労働問題
運送業界での労働基準法違反の現状や、過労運転などの問題を取り上げ、それらを解決するための取り組み(労働時間や休日の管理、残業代未払いや長時間労働の防止策等)について詳述します。
労働基準法違反の実情
労働基準法違反に関する実情を確認してみましょう。
平成30年に東京労働局が都内の道路貨物運送業に対して実施した臨検監督結果によると、271の対象事業場の内、220事業場に法令違反が認められています。
他にも平成29年に実施した臨検監督結果では、208の対象事業場の170事業場の79.8%と推移しています。
違反内容については、「超過労働」や「賃金、休日」に関係する案件が多く見受けられている状況です。
労働問題を解決する取り組み
労働問題の解決の為に以下の取り組みが実施されています。
相談窓口や電話での相談
労働問題解決のために「労働基準法監督ヘの相談窓口」が設置されています。相談方法としては、以下3つの方法があります。
・窓口での直接相談
・メールでの連絡相談
・電話での相談
窓口での相談の際には、労働基準監督署にまず足を運びましょう。
電話での相談時には「労働条件相談ほっとライン」への連絡をおすすめします。メール連絡でのご相談は「メール窓口」にて24時間受付しております。
労働条件相談ほっとライン:https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/lp/hotline/
厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/location.html
メール連絡:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/mail_madoguchi.html
未払い残業代請求に対しての法律事務所
残業代の未払い請求に対しては専門の法律事務所にまずは相談してみましょう。残業代の請求については、法律的な知識は必要ありません。まずは法律事務所に足を運び今後の方針や対策について、アドバイスをもらうことをおすすめします。
トラック運転手が現在定められている「労働基準法」や「働き方改革」について今一度、理解を深めることは重要です。今後トラック運転手が活躍する場を自分自身で作り出すためにも、理解して損はしない知識ばかりでしょう。
今後の「働き方改革」を意識しつつ、仕事の効率化を図れば、さらなるキャリアアップと業務の効率化に繋がります。
この記事の内容を参考にして、トラック運転手の労働条件や今後の働き方改革に向けて対策してください。