「機械学習」「ディープラーニング」はどちらも近年よく聞く言葉です。しかし、その違いはあまり知られていません。ここでは機械学習とディープラーニングの共通点や違いについてご紹介していますので、ぜひご確認ください。
機械学習を理解しよう
そもそも、機械学習とはどのような技術なのでしょうか。ディープラーニングとの違いを確認する前に、まずは機械学習についてしっかりと理解していきましょう。
機械学習とは?
機械学習とはコンピュータに大量のデータを与えることで学習させ、ルールやパターンを発見する技術を指します。機械学習の種類は下記の3とおりです。
・教師あり学習:大量のデータと正解データを与えることで大量のデータが正解データであるのかを判断する
・教師なし学習:大量のデータを与え、そのデータを共通項などでグループ分けする
・強化学習;コンピュータ自身がデータを取得しながら最適な出力を予測する
このように機械学習ではデータが非常に重要です。そして、与えるデータには、そのデータがどのようなものであるのか、どういったものを出力したいのかと特徴量を指定しなければなりません。
機械学習の利用分野
機械学習はさまざまな分野で利用されています。とくに、インターネットや医療、システム制御などへの導入例が多いです。
たとえば、インターネットの活用としては迷惑メールの判別機能が挙げられます。迷惑メールは不自然なURLや文書が定型文となっていることが多いです。そこで、機械学習で迷惑メールのあらゆるパターンを認識し、次から自動的にそのようなメールを省きます。
この技術はメールだけでなくクレジットカードにも用いられています。普段どのような場所で、時間で、料金で、をデータ蓄積しておき、不自然な動きがあったらロックをかけるのです。
そして、いつもと違う動きをすると検知といったシステムは日常以外にも利用できます。たとえば、工場ラインでいつもと違う形の製品が流れてくる、電子機器がいつもよりも熱い、など応用先は非常に多いです。
このように機械学習は研究分野などだけではなく、日常生活や仕事にも深く関わるようになってきています。
ディープラーニングを理解しよう
ディープラーニングは深層学習とも呼ばれる技術であり、機械学習と同様に開発・普及が急激に進んでいる技術の1つです。では、機械学習との違いを確認するため、ディープラーニングはどのような技術であるのかを確認していきましょう。
ディープラーニングとは?
ディープラーニングはニューラルネットワークを駆使して複雑なパターンや特徴を学習し、適切な結果を返す技術です。このニューラルネットワークは人間の脳の仕組み(ニューロン)を模したものであり、入力層と出力層の間に隠れ層を追加することで人間の思考を似たシステムを実現しています。
そして、この仕組みを何層にも重ねることでより複雑なデータに対応することができるようになっています。最近では人間の知覚よりも高い精度を出すことも少なくありません。ディープラーニングと聞いた際は、人間の思考の仕組みを模した技術であることが浮かぶようにしておきましょう。
ディープラーニングの利用分野
ディープラーニングは与えるデータ量が巨大なものに利用されることが多いです。よく用いられるものとしては音声認識や画像認識があります。
まず、音声認識の具体例としてはAmazon Echoが挙げられます。Amazon Echoは人間の声を認識し、適切な行動を取るスマートスピーカーです。私たちの声や発音はそれぞれ異なり、判別が非常に難しいとされていました。しかし、Amazon Echoではディーブラーニングを用いることで私たちが判断していると同様、誰の声でどのような意味を持っているのかを判断できるようになったのです。
画像認識の例としてはAppleの顔認証システムが挙げられます。事前に顔を登録することで今映っている顔と共通点を探し、本人であるかどうかを判別しているのです。このようにディープラーニングは私たちの生活に近いものにも導入され始めています。
もちろん、これらのような生活以外にも工場でのロボット制御、不良品の検知・排除、インターネットの高速化などにももい要られています。
機械学習とディープラーニングの比較
ここまで機械学習とディープラーニングそれぞれの概要について紹介しました。では、これら2つにはどのような違いがあるのでしょうか。ここで混合しやすい2つの技術について相違点を理解していきましょう。
機械学習とディープラーニングの共通点
まず、機械学習とディープラーニングはどちらも大量のデータから適切な結果を返すといった面では同じシステムを持っています。実際に、ディープラーニングは機械学習の1つの分野として扱われています。
また、どちらも大量のデータを計算する処理能力を持っています。そのため、非常に多くの分野に適用することができ、私たちの身の回りにも導入されている商品・サービスが多いです。
さらに、どちらも現時点の分類などだけではなく、将来の予測をすることもできます。実際に、予測モデルとして導入されているものは機械学習とディープラーニングのどちらも多く見られます。また、この際も適切な結果を返すといった目的は共通です。
このように、機械学習とディープラーニングは技術によって最終的に達成したい目的が共通点しています。また、これらを含めた大別がAI(人工知能)です。
機械学習とディープラーニングの違い
まず、最大の違いとしては特徴の抽出が挙げられます。
機械学習はどのような特徴によってデータを抽出するのかを人間側が与えなければなりません。しかし、ディープラーニングは特徴の抽出も自動的におこないます。これはディープラーニングにはニューラルネットワークがあることから現れている違いです。
2つ目の違いとしてモデルの複雑性が挙げられます。前述のとおり、機械学習は特徴の抽出は人間側がしなければなりません。つまり、人間が理解できる比較的単純なモデルに適用することが適しているのです。
3つ目の違いとしては応用分野が挙げられます。機械学習は文章分類、統計解析など特徴の抽出が明確であり、データ量がそれほど多くない場合に適している技術です。それに対し、ディープラーニングはデータが大量であり、人間側で把握することが難しいものに適しています。
4つ目の違いは過学習です。過学習とは学習を進みすぎ、新しいデータが得られた際にうまく反映できない現象を指します。そして、過学習はディープラーニングのほうが起こりやすいです。もし、ディープラーニングで過学習が起こったのであれば正規化や大規模なデータセットを使用しなければなりません。
最後の違いは学習速度と精度です。ディープラーニングは多くのデータと計算処理をおこなうため、一般的には学習に時間がかかります。しかし、大規模なデータを用いていることから精度は高いです。一方で機械学習は短期間で学習が完了しますが、精度はディープラーニングと比べると劣ります。つまり、精度重視であればディープラーニング、速度重視であれば機械学習が適しているのです。
機械学習とディープラーニングのどちらが良いのかは目的によって異なります。データの特徴が明確な場合は機械学習、不明瞭な場合はディープラーニングと判別することが重要です。
そして、ここまで確認してディープラーニングは機械学習を応用したものであることがわかったかと思います。ここで、前述のとおりディープラーニングと機械学習を総称したものがAI(人工知能)なのでした。つまり、これら3つの関係はAI>機械学習>ディープラーニングとなっているのです。